821. それでもボクはやってない
裁判の途中で裁判官が交代した。最初の大森裁判官のままだったら、おそらく有罪にはならなかっただろうと思う。最初の裁判官は、「検察側の証明を吟味して、有罪の確信が持てなかったら無罪なのです」と言った。すなわちこの映画の主題ともいうべき「十人の真犯人を取り逃がしても、無実の罪を一人でも作ってはならない」が守られていたのだ。だが・・・。この映画は警察の取り調べや日本の裁判に警鐘を与えているのだが、通勤の満員電車解消も考えていかなければ、この問題はなくならないのかもしれない。 [DVD(邦画)] 8点(2013-02-10 22:20:28)(良:1票) |
822. 黄色いリボン
老兵は静かに去っていくという終わり方かと思ったらそうではなかった。残された4時間を上官の命令に背いてまでも大尉として任務を遂行する。そこから後の展開がよくわからなかった。何が何でもジョン・ウェインを英雄にしたかったのだろうか。それでも主題歌を初めとする音楽が良かったのと、酒飲み軍曹の人間味で加点。 [映画館(字幕)] 5点(2013-02-10 08:57:52) |
823. 大病人
お葬式を映画にしたかと思うと、今度は死んでいく大病人を映画にする。こういうところがいかにも伊丹十三監督。映画はコメディに見えたり、医学ドラマに見えたりもするが、やっぱり社会派人間ドラマだと思う。医者、患者、看護婦さん、妻、愛人など人間と人間がぶつかり合うシーンはリアルであり、滑稽であり、はたまた感動的であり、考えさせられたりもする。私は好きな映画だし、三國連太郎の役者ぶりには拍手を送りたい。 [DVD(邦画)] 8点(2013-02-09 13:08:05) |
824. 椿姫(1921)
これまで私が見たサイレント映画といえば、オーバーなジェスチャーとアクションで笑わせるコメディがほとんどだった。その対極にあるような「椿姫」という悲恋の物語を、サイレントでどう表現するのか大変興味深かった。するとどうだろう、台詞字幕と音楽だけで実にうまく表現しているではないか。特に映画に付けられた音楽は雰囲気や細かな感情面まで実に多彩で、原作や歌劇あるいはガルボの映画と同等いやそれ以上のものを感じさせてくれた。愛する人から贈られた「マノン・レスコー」の本、それを胸に抱き死んでいく姿は涙なしで見ることができない。下の【クロエ】さんに感謝、DVDは持っていても特典として入っているとは知らなかった。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-09 07:18:34) |
825. 椿姫(1937)
少年の頃原作を読み、成人してからは歌劇「椿姫」を見て、ストーリーを熟知した映画だったせいか、さすがに感動とまではいかなった。でも原作にないエピソード(男爵とアルマンを間違えて出会うシーンなど)が悲恋の物語に一服の清涼を与えてくれる。ガルボの気品のある美しさは、高級娼婦というイメージとはちょっと違うかも。ただガルボとしては、他の出演映画よりも良いと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2013-02-07 23:22:01) |
826. 高校三年生
歌は大ヒットだったのだけど、映画のできは良いとは言えない。舟木一夫は映画初出演だから仕方ないとしても、主演の倉石功が足を引っ張っているし、ストーリーもたいしておもしろくない。姿美千子ばかりが力んでみても、吉永小百合や倍賞千恵子にはかなわないし、青春映画で大映が日活や松竹に及ばないわけだ。大人びた高田美和だけが魅力的。 [映画館(邦画)] 4点(2013-02-06 17:52:23) |
827. 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
柴又慕情あたりからずっと映画館で見続けていた「男はつらいよ」だったが、この映画でとぎれてしまう。理由はただひとつ太地喜和子さんが苦手だったこと。今思えば大不覚だったのだが、DVDで初めて見て、シリーズでもトップクラスの名作だと言われる所以を思い知る。太地喜和子さんも、明るく奔放な面を見せたかと思うと大金をだまし取られた薄幸の女性を演じ、その幅がダイナミックでさすが。そして何と言っても宇野重吉の画伯、その味のある演技は人気が出てきたばかりの息子とは比べようもない。そして送られてきた絵を売って金の工面にあてるのではなく、宝として飾るところが何とも言えない。 [DVD(邦画)] 9点(2013-02-04 22:07:24)(良:1票) |
828. 男はつらいよ 葛飾立志篇
おはなはんの樫山文枝さんがヒロイン。今回は立志伝の名のごとく、学問に志す寅さんか。考古学とか孔子とか教養あるところが出てきても、登場人物が皆いい人ばかりで嫌みがない。シリーズの中でもほほえましさに関しては抜きんでている。おっと中三トリオでデビューの桜田淳子さんももう高校生か。お巡りさんが、クッククックと歌いながら店を通り過ぎるのに思わずニヤリ。 [映画館(邦画)] 7点(2013-02-03 23:41:52) |
829. ボローニャの夕暮れ
確かに評価しにくい映画だし、私の好みとも合わない。なぜ母親は面会に行こうとしなかったのかもピンとこない。だが考えさせられる映画には違いないし、セピア色の画面がとても雰囲気が出ている。ところで「マレーナ」で聞いた"Ma l'amore no"という曲が挿入されているが、戦後のイタリアで流行ったのだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2013-02-03 19:37:42) |
830. フィールド・オブ・ドリームス
最初見たときは、野球好きの私でもすごく突拍子もない物語に思えたのだが、何年か経って改めて見てみると、その突拍子がすばらしいファンタジーに思えて違和感がなくなった。その間八百長事件やムーンライト・グラハムなどを調べこともプラスになったのかもしれない。 要は理屈で見る映画ではないということ、そういう人たちはたぶんあのフィールドの野球選手が見えないのだろうし、この映画を作った人たちはシューレス・ジョーの「作れば観客がやってくる」の声が聞こえたのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2013-02-03 09:29:30)(笑:1票) (良:1票) |
831. もしも昨日が選べたら
《ネタバレ》 途中まではおもしろくても、品が悪かったり調子に乗りすぎたりして感心しないなと思って見ていたが、後半から終盤にかけて途端に感動的になる。雨の路上で主人公が「家族が第一」と言ったときは思わずもらい泣きしてしまった。そして途端夢落ちかと思ったが、最後にひねりがあってGOODになっている。後半だけなら高得点なのだが・・・。 [DVD(字幕)] 6点(2013-02-02 22:46:22) |
832. オール・ザ・キングスメン(2006)
《ネタバレ》 最初見たときはストーリーがあまりわからず好きではなかったが、1949年のロバート・ロッセン版を見た後もう一度見直すとまた評価が変わった。実にリアルで彫りが深く、アカデミー賞受賞の前作よりも原作(未読)に近いように思われる。それに俳優は豪華だし音楽も良いし、私の中ではこっちの方がすばらしいと思う。ただ恰幅の良かったブロデリック・クロフォードより、ショーン・ペンが知事らしくないのと、アダムがなぜ知事を撃ったかの表現が不十分で残念。原作はピューリッツァー小説だけあって、重みのある映画だが、暗殺者を捕らえず射殺するところはいかにも銃社会肯定国の米国だと思う。もしかしたら臭い物にはふたをしろの陰謀にも読み取れるが・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2013-02-02 10:08:50) |
833. オール・ザ・キングスメン(1949)
マスコミを使って大衆を見方にし、権力を振るう政治家は時代や国を違えても未だに多い。黒いものでも上に立つ者が白と言ったら白くなる、そういう世界はあってはならぬはず。そういった権力に立ち向かって政治家を志しても、いったん権力を握れば・・・と言う映画だ。マスコミに踊らされる聴衆がだまされやすいのは致し方ない向きもあるが、そばにいる者は何が善で何が悪かはわかりそうなもの、映画を見ていて腹が立ってしょうがなかった。最後にズドンと一発で終わるところが、いかにも銃社会肯定の米国らしい。 [DVD(字幕)] 6点(2013-02-01 22:28:44) |
834. ほらふき丹次
《ネタバレ》 ほらは吹いても実直で曲がったことは大嫌いの丹次の人柄がにじみ出る。そういう丹次に惹かれ世話になるはつこにもいじらしさを感じる。そして、良い役をしているのが東野英治郎の巡査。ハッピーエンドにならなかったのが実に残念。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-31 07:19:13) |
835. ザ・ロック
オープニングの音楽といい音響効果といいすごい。すごくスケールの大きい映画なのだが、アルカトラズに潜入してからがうんざりするほど長く疲れる。それに終盤のハメル准将の仲間割れもよくわからないし、ラストの教会シーンに至ってはまるで・・・。 それにしても悪いのは米国FBIと首脳ら、人命を何とも思わぬ不当な扱いと醜さ、メイソンもハメルも皆被害者だと思う。それにしてもこの映画の主人公が元祖ジェームズ・ボンドだったとは、見終わった後知った。さすが貫禄。 [DVD(字幕)] 6点(2013-01-30 19:28:48) |
836. ぜんぶ、フィデルのせい
変化していく社会情勢や価値観の違う世界を子どもの目線で捉えた秀作。しかしそれ以上に、疑問を持ちそれを自己の成長へとつないでいる主人公アンナの姿がとても良い。世の中にはわからない事がたくさんあり、この映画にも戸惑うところもあるが、アンナと共に考えたい。 [DVD(字幕)] 7点(2013-01-30 13:06:23)(良:1票) |
837. ラスト・クリスマス(1980)
親友の手助けがあったとしても、外の世界をまったく知らない子どもが、遠い田舎の家まで旅ができるだろうかなど疑問は残るが、感動できるドラマだと思う。命は危うくとも両親と一緒にクリスマスを過ごしたいという気持ちは十分すぎるほど伝わってくるし、子どもを主役にしたイタリア映画にはずれなしというのを改めて感じる。最後に登場するパトカーのお巡りさんの心遣いも良い。 [映画館(字幕)] 7点(2013-01-30 08:11:28) |
838. 衝動殺人 息子よ
この映画を見たときの衝撃は大きく、震えが止まらなかったことを今でも覚えている。「犯罪被害者等給付金の支給に関する法律」はこの映画が製作されたとき(映画を見たとき)はまだ制定されていなかった。しかし私と同様、多くの人が絶対に制定しなければならない法律だと思ったことだったろう。そして映画が一役も二役も貢献したことは言うまでもない。映画では吉永小百合さんなど主役を演じてもよさそうな大物スターが何人も脇役で出演しているが、これはおそらく運動に共鳴し引き受けたものと思われる。映画は加害者側を描くことによって問題を複雑にすることなく、ひとえに川瀬周三とその周辺を中心に描いたのが良かったし、訴える力になったのではないかと思う。 [映画館(邦画)] 9点(2013-01-29 08:45:30) |
839. 九ちゃんのでっかい夢
こうやって見ると、九ちゃんってずいぶん芸人いやエンターティナーだったんだなあと改めて思う。この映画の中でも、「星のフラメンコ」や「骨まで愛して」など他の人のヒット曲をおもしろおかしく歌う芸達者な面も見せるし、ダンサーに混じって踊りも踊ってしまう。あの笑顔は何と言ってもすばらしかった。ちょっぴり切なくもある。おっとあのスチューワーデスは、コメットさん九重佑三子ではないか。 [映画館(邦画)] 6点(2013-01-28 19:58:48) |
840. 美しき抵抗
吉永小百合と浜田光夫が共演するが、この映画は彼らの青春映画ではない。北沢彪演じる大学助教授とその妻、そして三人の娘たちの家族の物語だ。男は仕事、女は家庭と言われてきた時代の中で、娘たちが新しき時代を求め、それぞれ少しずつ小さな抵抗を示す。それが父親との絆を再認識させるホームドラマであり、短編ながら隠れた佳作とも言うべき映画だ。映画では夫を支え、家族をまとめる母親役の高野由美に好感が持てる。ところでこの映画に出てくるお医者さん、伊藤雄之助によく似ていると思ったら、弟(伊藤寿章)さんだったとは・・・。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-27 08:40:17) |