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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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841.  モリノキオク 《ネタバレ》 
これが「小野真弓 初主演作品」とのこと。 東京のOLという設定はCMのイメージの延長だろうが、そのほか見ていて連想させられる映画としては「もののけ姫」「あしたはきっと…」「時をかける少女」(1983)と「風の谷のナウシカ」が挙げられる。何にせよ自分が思いつきそうなものしか思いつかないわけだが、魂の故郷は山(森)にある?というような考えはこの映画固有のものかも知れず、そうすると山中の子どもらは「もののけ姫」のコダマと同じではないらしい。それから途中でこれはホラーかと思わせる展開があったのはかなり驚かされた。  内容に関しては、宣伝文に「大自然の…ヒーリング・ムービー」とある通りで、まともなドラマではあるがそれほど深刻な話でもない。主人公はまだ入社2年目の設定だろうから多少うまくいかないのも仕方ないことで、おそらく祖母が元気でいさえすればわざわざ屋久島に行って怪奇現象にまであわなくても済んだだろうと思われる(現に劇中の祖母は大したことは言ってない)。しかし個人的には泣かれてしまうと弱いところがあるので、終わってみればまあよかったねと言ってやりたい気分にはなるのだった。  そのほか主演女優は魅力的に映されているが水着場面は控え目で、劇中では何となく手~腕の色っぽさが強調される場面があったように感じられる。また顔の表情については、ドラマであるからお疲れだったり泣いたり寝ていたりと様々だが、終盤で東京に戻ってから元気に仕事をしている場面を見ていると、やはり主人公というか小野真弓はこういう笑顔が一番かわいいと思わされる。おちこんだりもしたけれど、屋久島のおかげでCMの笑顔が戻りました、というのがアイドルムービーとしてのオチだったかも知れない。 なお屋久島の風景では海の見える坂道が印象的だった。実際行けばただの漁村だろうが。
[DVD(邦画)] 5点(2013-10-03 19:58:00)
842.  水の旅人 侍KIDS 《ネタバレ》 
むかし国民の環境意識が高まる中で“水”が変に注目された時期があり、そういえばそんなこともあったと遠い目になるが、そういう時代の産物にしても気分先行で客観性に欠けるように思われる。水循環をわざわざ神様化してみせたことで、かえってわけがわからなくなっている感がある。 またドラマ部分では姉弟の成長が大きな主題になっていたようで、いずれは別れの時が来る、というような話とともに個別の名言や親からの自然な体得、ふとした気づきといったようなことがいろいろ出ていたが、まあ見た児童がどれかに引っかかれば可という感じであまり一貫性は感じられなかった。 そのほか、神様というなら貴人の格好が本来ふさわしく(「千と千尋」を参照)、武士にする必然性が感じられないのは基本的な難点と思う。  ところで個別の登場人物に関しては、まずは25歳(推定)にもなって夢見がちな由紀先生が注目される。終盤で少女のようにはしゃいでいるのはやりすぎだが、これはこれでお茶目で可愛らしいのでまあいいかと思う。原田知世のおしりに触るなどというのは子どもであっても許せない。 それから一回り若い世代としては、主人公の姉がいかにも幼い頃の伊藤歩、という感じで可笑しく、きょとんとした顔に見える場面もあって愛嬌がある。思春期の少女が何を考えているかはよくわからないが、第三者が見ていても普通にかわいいと思うし、将来は間違いなく魅力的な女優になると保証する。 そういうことで、理屈の面では評価が難しいとしても、全体としては微笑ましいお話に思えて来るのでまあいいのではないかと寛大な気分になる。どうも女優を見ていると採点が甘くなるのは個人的な悪弊だが、ほか全体的にもファンタジックで大げさな感じが実はそれほど嫌いでなかったりする。ネコとのからみもよかった。
[DVD(邦画)] 5点(2013-09-30 19:00:00)
843.  メリーさんの電話 《ネタバレ》 
「ムラサキカガミ」(2010)に続く紗綾(さあや)の主演ホラー2作目で、今回はAKB48の菊地あやかとのダブル主演という名目だが、実質的には紗綾の行動が主軸である。登場人物が女子だけなのは1作目と同じで、今回は微妙に男子向けサービスと思われる場面もあったのは前回の反省かも知れないが苦笑した。 題名の都市伝説に関しては、本物は冒頭(と最後?)に出るだけで、ほとんどは映画独自の話に変えられている。ホラー要素にオリジナリティが感じられず、設定やストーリーも緩い感じなのは前回同様だが、肩透かしながらも微妙に怖い画面づくりがされており、意図的ミスリード?ともいえる箇所があったりするのは低予算なりの工夫とも思われる。登場人物が暗くて怖いところへ入る際、普通のホラーであれば怖がらせのために暗くしたままにするところ、あえて電気を点けていたのは一般常識に合わせた感じで好印象だった。それからクライマックスで、前回に続いてまた便所に逃げ込むのかと思わせておいてからの展開は意表をついていた(笑)。  ところで劇中では、誰でも知っている有名な交霊術の名前をわざわざ変えて使っていたが、これは撮影中に本当に交霊術をやってしまうのを避けるためだとすれば良心的な対応と考えられる。また凶兆におびえた友人が思わず不吉なことを口にするのを主人公が諌める場面があったが、こういう不用意な連中が人心を不安に陥れ、あるいは自ら墓穴を掘るようなことをやらかすのに対して警告を発しているようなのも理性的に見える。特に今回は、主人公が前回同様に怖がりな性格ながらもしっかりした人物だったことで、“正しく怖がるのを恥じることはない”という若年者への教育的配慮が感じられる映画になっていた。 ただその割に、登場人物が芝居がかった調子で延々と昔語りをする場面があったりするので、そういうことを現場で口に出すのは自ら災難を呼び寄せるようなものだからやめろと言いたくなるが、まあこの語り自体は前回に続いての定例行事と理解した方がいいのかも知れない。何にせよ前回同様の実直な印象で個人的には結構好きだ。前回と共通のエンディングテーマも悪くない。  ちなみに冒頭のタイトルが無粋な感じの明朝体になっているのは、自分としては1968年のTV番組「怪奇大作戦」の第4話「恐怖の電話」を連想させるものがあったが、意識してやっていたのかはわからない。
[DVD(邦画)] 5点(2013-09-17 19:58:39)
844.  ムラサキカガミ 《ネタバレ》 
主演の紗綾(さあや)という人は結構いろんな映画で目にするので(主にホラーだが)、この映画が初主演というのは少し意外だった。本業はグラビアアイドルだったはずだが、終盤でおののく表情など見てもちゃんと役者の顔で熱演しているように見える。 女子しか出ないホラーとのことだが実際かなり地味な感じで、高校のテニス部であるのに季節柄ということなのか露出も少なく、屋内の場面も含めて男子向けサービスがほとんど皆無である。興行的にこういう作りでよかったのか疑問だが、自分としてはかえって真面目な映画に見えて好印象だった。 劇中の出来事は題名の都市伝説の通りでは全くないが、もとのままでは映画にならないので鏡が出る他の都市伝説の要素を取り入れて勝手に作ったものと思われる。既存のホラー要素の組み合わせが基本のようで独自性はほとんど感じられず、また特に前半は単なるこけおどしが多いが、それは低予算なりに全体的な緊張感を持続させるためとも思われる。終盤に出た生ゴミ集積所などは結構生々しい感じだった。  ストーリーとしては、何が起こったのかはよくわからないが一応真面目に考えると、まず鏡の中の人物はそもそも主人公のように感受性(共感力)が強く、従って怖がりな女子だけをターゲットにしていたと思われる。面白半分で来る連中は、そういう人物を強制的に連れて来る役割を果たすだけで、ほかは役に立たないので殺されるということではないか。 ここにあえて教訓的なものを求めるとすれば、①そもそも余計なことはするな ②やるなら他人を巻き込むな、ということだろう。やるならあくまで自己責任でと言いたいところだが、それができないのが女子高生ということか。そのほか序盤で、わざわざこの場で口にする話かというようなことを喜々としてしゃべっていた怪談マニアの教員が、最後に巻き添えを食っていたのも自業自得であり、これはなかなか道徳的な映画のようである。 派手なところは全くないが、低予算ながらも極めて実直な印象のあるホラーだった。
[DVD(邦画)] 5点(2013-09-17 19:58:35)
845.  恋するナポリタン 〜世界で一番おいしい愛され方〜 《ネタバレ》 
よくある話とはいえ、こういう荒唐無稽な設定を普通に受け入れる現代人は思考が柔軟なものだと感心する。そもそも題名からしてチープで安易だが(「恋する…」「世界で一番…」の両方)、中身の恋愛ドラマの方も納得がいくものではなく、ヒロインを幸せにするために男2人を使い捨てにしておいて、“だって死んじゃったんだからしょうがないじゃん”的に決着をつけたようなのは男の立場として悲しい。一方ではヒロインが乗り換えた先の男が、口は達者だがどことなく胡散臭い顔で素直に祝福してやる気にならないのも問題である。  ところで、自分にとっては食い物など①嫌いなもの、②まずいもの、③その他の3種類しかないので、劇中の料理がどれだけ美味そうなのかも実のところわからない。しかしこの映画では、劇中の武と瑠璃に“作る人”と“食べる人”の立場をきっちり代表させることで、人間にとっての料理(食料ではなく)の意義を端的に表現しようとしていることくらいはわかる。瑠璃が料理を食べるときのデレっとした嬉しそうな表情は中学生時代も現在も共通であり、またこの顔を見ることが武にとっても何よりの喜びだったわけで、そこには料理が仲立ちになって“作る人”と“食べる人”の両方が幸せになる関係が成り立っていたが、これは現実に料理に携わる人々の理想とするところではないかと思われる。それで成人後の武はシェフになり、また瑠璃もグルメ情報誌の編集者になったということなら、この関係が互いの資質を高め合って自己実現にもつながっていたということだろう。 味オンチの自分はそういう幸せな関係から疎外されていて不幸だとは思うものの、世の中に幸せな人が多いのはいいことだし、この映画を見て触発される人が多ければわが国の食文化の向上にもつながるのでは、と他人事ながら思わなくもない。武(佑樹)が南紀白浜の海岸で即興的に作った料理をその辺の皆さんにふるまうのを見ていると、料理人というのはみんなに幸せをふりまく人、というように感じられて、自分には利害関係がないながらも変に感動的だった。  まあ世間的にはあまり評判がよくない映画のようだが、それも料理に関わる上記の関係と恋愛感情をあえて混同させないようにしたことで、恋愛ドラマとしては捉えにくくなった面もあってのことと考えられる。そのため自分としては、まずは料理映画という面から一定の評価をしておきたい。
[DVD(邦画)] 5点(2013-08-11 18:25:36)
846.  60歳のラブレター 《ネタバレ》 
大変ハートウォーミングな映画で、医者と魚屋に関してはまあ素直に共感できる。 ただし中村雅俊氏の役は感情移入が難しいキャラクターだけに、最後の締め方もアクロバティックというか突然ファンタジー調になった感じで、これが映画的な盛り上げというものかも知れないが少々無理がある。この男だけは、これまでの積み重ねを怠ったために因果応報ということでもよかったのではないかと思うが、だからといって元妻と人気作家がこのままうまく行くというのも変であり、見ている側としては困ってしまった。団塊世代の大量退職を背景にした企画というのはわかるにしても、それまでの行状にかかわりなく60歳というだけで免罪してしまい、とにかく全員にエールを送らなければ済まないというのでは、“年齢関係なく”という脚本家の言葉も説得力が薄れる気がする。  なお個人的な見どころとしては、医者をめぐって対決する中学生女子と50代女子が、それぞれ本気で一生懸命で愛らしく見えることだった。それから綾戸智恵という人は映画の外でも相当に可笑しい人物であるらしい。
[DVD(邦画)] 5点(2013-08-11 18:25:22)(良:2票)
847.  テケテケ 《ネタバレ》 
それなりに面白いという印象である。特に深刻な破綻もなく、大きな減点もないというのが有利に働いて、少なくとも口裂け女(2007)よりはかなりマシになって見える。また主役は絵に描いたような美少女ではないがなかなか愛らしく、必要な場面ではそれなりの表情をして見せるので好感が持てる。しかし一方、準主役(従姉)は言動が粗野なことに加え、主役(152cm)と並ぶとでか過ぎる(169cm)ので全く可愛くないが、だからといって半分に切れば可愛いというわけではない。  ところでこの映画では、怪異の原点として兵庫県加古川市という非常に具体的な地名が出るのが若干唐突な印象を受ける。標題の都市伝説そのものは北海道が起源として語られるのが普通だろうと思うが、これと関連付けて語られている別の都市伝説では実際に加古川市(と高砂市)が出るようなので、これで誤りということでもないようである。 この加古川市の場面では、地元の親父の「こんな田舎に進駐軍なんか来るかいな」という元も子もない発言が可笑しい。また赤い色を嫌う理由を老婦人が説明していたが、これもかなり適当に理屈をこねた感じである。ここでは、冒頭で児童が安易に昔の処刑場を理由づけにしていたのと同じような、怪談や都市伝説というもののいい加減さが端的に表現されているようで興味深く思われた。 ただしこの件については、実は2の方でまた新たな説明が出るので、これはあくまで途中経過としての印象である。  またこの映画によれば、一般人でも可能な対策として、まずは歩道橋(跨線橋)に行かないこと、また振り向かないことが必要とされていたが、後半になると赤いものを身につけないことが重要視されるようになっていた。何にせよその程度なら結構簡単なので恐れるに足りないともいえるが、これも実は2の方でまた新たな展開が生じる。 どうも1と2は初めから連続で見ることが期待されているようだが、別に誘導するつもりはないので、1で終わりにしてもそれまでだ、と断言しておく。
[DVD(邦画)] 5点(2013-07-31 19:23:39)
848.  五条霊戦記//GOJOE 《ネタバレ》 
宇宙空間から見た過去の地球の映像というのは、自分の記憶ではNHK大河ドラマ「北条時宗」OPの例があるが、年代的にはこの映画が先かと思われるので、当時としては斬新な発想だったろうと想像する。子午線に沿ったグリッドパターンの都市設計が惑星表面に浮かび上がるのは、理性と意志をもった文明の存在を如実に示しているように思われる。 ただし、地面に降りて見ればあまりに草ぼうぼうで文明の実態が伴っていない。まあ大昔の京都などこんなものかも知れないと自ら納得するにしても、さすがに五条橋がこれほど辺鄙に見える場所かどうかは疑問である。またロケ地がどこかを知ったとたん、そこら中全部が岩手県にしか思えなくなるのはご愛嬌である。  内容としては義経と弁慶の話を大胆に組み替えた娯楽映画になっており、過度に期待せず気楽に見ていればそれなりに面白い。また事件後は普通に知られた歴史の流れになったのだろうから後腐れのないフィクションともいえる。しかし逆にこの事件があってもなくても平家の没落自体は変わらなかっただろうから架空の歴史モノとしては半端な気もするが、そこはまああえて突っ込むほどのことでもない。 また登場人物の背景は別にわからなくても見られるが、DVDのキャラクター解説では「平家の高官に手込めにされ…」といったことを監督本人が書いており、考証的にはどうかわからないが「白河飛礫(つぶて)」という設定は面白い。刀鍛冶の男は歴史上の有名人とは思われないが、最後は失明していた(鬼を見ると目がつぶれる、と自分で言っていた)のを見ると、その後は琵琶法師にでもなったのだろうと想像される。  なお個人的に不快な人物としては巫女(すぐ出なくなった)、水辺で自害しようとしていた男(すぐ死んだ)であり、また遮那王側の僧も途中で斬られるかと思ったのに最後まで生きていたのが残念だが、これは実在の人物だったらしいので仕方ない。ほか京劇風の剣術はどうも好ましいとは思えない。現代風の映像表現や背景音楽は別に構わないが、日本の伝統には敬意を払っていただきたい。
[DVD(邦画)] 5点(2013-07-15 18:49:03)
849.  危険な斜面<TVM>(2000) 《ネタバレ》 
ストーリーは原作をほぼ踏襲しているが、犯人探しの情報提供者がたまたま人事課所属かつ鉄道愛好者という点は少々都合良すぎという感じである。 またこのドラマでは殺した男・殺された女とも、打算で動くだけでなくそれぞれの思いを抱えているという点で、無彩色の印象だった原作よりも少し色付けされているように見える。しかしそれが必ずしもストーリーに生かされているとは思われず、理屈はわかるが心を揺さぶられるまでに至らない。特に殺した男を変に情けなく安っぽい男にしたことで、“タフでしたたかな壮年の男 対 純粋で一途な若者”という対立軸が成り立たなくなり、結果として若い男は単に話を進めるための駒のようでしかなくなっている。この若い男が殺した男を前にして憤ってみせているのも白々しい。  一方で、殺された女が本来の夢だった文房具屋ではなくブティックにしたというのは、業界の実情に照らして新規の開業は無理と会長が判断したということだろうか。最初の方でグループ企業の独立採算の話が出ていたが、愛人に対しても経済的な自立性を付与することで一方的な扶養ではない関係を作ろうとしていたかに見える会長は、ここに出ていた男の中で最もオトナだったということかも知れない。 なおこの女に関しては、とにかく女優が適役でたまらなく魅力的な人物になっており、それで見ている側も少し肩入れしてしまうところがある。ドラマ版で加えられた設定(三角定規の件など)を見ていると、個人的にはこの人のために泣いてやりたくなったのだが、残念ながら最終的にはそうもならなかった。TVドラマならもっとベタに泣かせてもらいたい。
[DVD(邦画)] 5点(2013-07-15 18:49:00)
850.  カーテンコール(2005) 《ネタバレ》 
下関市役所では個人情報を出さないのに、民団の事務所ではコピーをホイホイ提供していたのは苦笑したが、まあ民団では日頃からそういう業務が重要だということなのかも知れない。あるいは、日本人は冷淡で情が薄い、とかいう皮肉のつもりだろうか。  それで内容としては、差別だとかいうのをあまり気にしなければ普通に心温まるお話である。また途中から在日の話に移行するのも、実はそれほど不自然には思わなかった。実際こういう取材の仕事をしていれば、途中で当初想定と全く違う背景事情がわかって来て収拾に困ることもありそうだし、そのような展開をそのまま映画に取り入れたといえなくもないからである。ただ自分はあらかじめどういう映画かわかって見たわけだが、公開当時の宣伝がどうだったかは知らないので、騙された気になる人が多かったとすればそれも否定できるものではない。 一方、最終的にはどうやら父と娘の関係がテーマになっていたようだが、それと在日の話をからめる必然性はよくわからず、また登場人物の映画愛も半端な扱いで終わっていて、どうも全体として焦点が定まっていない印象が残る。  それでもまあ心温まるお話に一応なっていると思うのは、穏やかに見える人物が多いせいだろう。特に藤村志保さんが全体の印象を柔らかくしていると思えるが、個人的には夏八木勲氏が意外に温和な父親役だったのも少しほっとした。 そのほかキャストに関しては、劇中の“良江さん”や若い頃の“宮部さん”は、いくら昔の話でも化粧っ気がなさすぎに見えるのが個人的に不満で(この女優2人を見るのも目的のうち)、特に“良江さん”の方は役柄上、もっと普通にきれいな女性に見えないと困るのではないかと思う。ただ、とりあえず主演女優をゆっくり見られる映画だという点では基本的に満足だった。  なお些細なことだが、最後に父と娘が再会した場所の選定はかなりわざとらしい。これは地元の文化財(王朝時代の郷校)であり、観光資源ではあるかも知れないが、こんなところでハーモニカを吹いている者はいないだろう。それから昔の話を白黒にするというのはよくあることだが、そのせいで当時すでにカラーだった映画まで白黒に見えているのは絶対に変だ。
[DVD(邦画)] 5点(2013-07-01 21:32:19)(良:1票)
851.  鉄人28号 《ネタバレ》 
昭和30年代の原作漫画やTVアニメは見てないので、個人的な思い入れは全くない。 とりあえず前半は退屈せずに見ていたが、後半は主人公関連の描写が長くてだれる。自分が打たれたわけでもないのに苦痛を感じるのはスポ根的な展開を意図したのかも知れないが、毎度ひっくり返って見せるのでは面倒くさくて仕方ない。またキャストは変に豪華だが、結果的に不要な人物が多かった気がするし、ほか半端にレトロなのもあまり意味がないように思えた。 以上についてはまあいろいろ考え方なり事情なりがあるのかも知れないが、しかし個人的にはっきり不満を感じたのは、専門家をわざわざMITから呼んでいたことである。正義のロボットは最高の職人仕事から最高の工学まで、全てを純国産技術でカバーしてもらわなければ困るし、また平和利用と戦闘用の違いはあるにせよ、別人が作り直したのでは父親の立場がないだろうとも思う。  ところで、映像面は必ずしも悪いとは思えない。二回戦の品川埠頭は対戦に集中するため場所が地味だったのは仕方ないとして、最初に敵ロボットが出現した増上寺から東京タワー、一回戦の大手町から霞ヶ関付近は、ただの子どもが現場にいたとすれば怖気づく程度の十分な迫力があった。 また登場人物のうち少女科学者に関しては、個人的趣味としてはそれほど可愛いとも思わないが、主人公にとっては初恋のお姉さん的な存在だったらしく、顔を覗き込まれて狼狽する場面などは面白い。これを同世代の少年が見て実際にどう感じるか、この年になってはわからないのが残念だが、自分が子どもだったころを思い返せば、これでけっこう胸キュンな展開なのかも知れないと思ったりする。 最後に、父親向けのサービスとしてはやはり薬師丸ひろ子の存在が効果的で、この人はもう本当にいつまでたっても可愛いので感心してしまう。これで少し加点しておかなければならない気になる。
[DVD(邦画)] 5点(2013-06-03 21:08:09)
852.  オトシモノ 《ネタバレ》 
[2017-06-17改訂] 鉄道を舞台にしたホラーで、大まかにいえばトンネルを発生源にして線路伝いに怪異が伝播する設定だったらしい。序盤では、名字なしの個人名が「貞子」を連想させるとか白塗り少年が登場するとかで、あからさまに既存の邦画ホラーをなぞったようにも見えたが、しかし終盤になると意外な方向へ話が展開していくのが特徴で、最初はわざとありきたりに見せておいて後で不意打ちをくらわすつもりだったのかとも取れる。主人公が留学を考えていたのが ”Miskatonic University” だったことからすればラヴクラフト、あるいは諸星大二郎路線を目指していたということか。全てが終わってトンネルを出たら朝だった、という解放感は結構いい。 しかし結局、出来事の意味がよくわからないまま終わったようなのは困る。怪異の根本原因は不明でもいいから、ノベライズ本を読めば簡単にわかることくらいは映画でもわかりやすく作ってもらいたかった。  一方この映画が悪くないと思うのは最後がバッドエンドでないことである。いろいろあったが最低限この家族だけは助かって、犠牲になった者も祝福してくれていたというのは救われる。自分としてはホラー映画がどうあるべきかは知らない(知ったことではない)が、人の生死に関わる物語は一般に、いわば極限状況の中で人間の真実を露わにしてみせる力を持っている。この映画ではそれほど深い話にもなっていないが、女子高生2人が初めてわかり合えた場面で友情が生まれたことは素直に感じられるし(「…だね」の応酬がいい)、また表情豊かな子役を見ていると、この妹も母親も揃った元の家庭を取り戻したいという主人公の願いもわかる。 結果として、その辺によくある粗製乱造ホラーに比べれば一定の志が感じられる映画だった。個人的な相対評価としてはアイドルホラーの代表作?「クロユリ団地」(2013)よりは点数を高くしておきたい気がする。  ちなみに沢尻エリカ嬢は制服姿が清楚だが、私服になると露出が多かったりして見どころはある。「なんで知らないふりするの!」のあたりはこの人らしくて好きだ。また若槻千夏という人は全般的に可愛く見えないが、最後に制服姿でにっこり笑った場面はよかった。
[DVD(邦画)] 5点(2013-04-15 20:49:35)
853.  宇宙人王(ワン)さんとの遭遇 《ネタバレ》 
宇宙人の使用言語について、使用人口が一番多いから、という説明はイカにもウソっぽく、個人的にはこれで宇宙人の信用度ががっくり落ちる(現に意志疎通の役に立ってない)。しかしほかに納得できる理由が思いつくわけでもなく、かえってどこまでも怪しい感じが残る。 それより映画の製作上は、やはり東洋人に対する西洋人の先入観を観客から引き出すための設定なのだろう。尋問者の「鏡見たことあるか」という発言に対する主人公の反応には、単に“外見に素朴な違和感を覚える”以上の偏見がちらりと感じられた。醜くて可哀想な劣等種族を法規や国際機関の手で守るという欧米流?の人道主義を、この人が何のためらいもなく全宇宙に適用しようとしていたのは微笑ましい。 以上はまあ東洋人としての感想だが、加えて当該国の最近の情勢や国際社会でのふるまいを反映した現実的な反応も予想され、日本人としてはこっちの方に誘導されそうである。「私の故郷では礼儀が重んじられています」という発言には大笑いした(それは仲間内限定の話だろうに)。  それで結末について、途中経過としては①完全にA、②完全にB、③全体としてはAだが個人の問題としては別、という3種類程度を予想していたが、劇中で実際にやっていたように、断片的な材料を並べるだけでも一応の心証は得られるように思う。自分は登場人物のうちでは秘密警察タイプだろうが(笑)、日本人が好むのは③のような結末ではないだろうか。あるいはそういう方向のどんでん返しがあるかと最後まで構えてはいたのだが、実際はあまりにもあっけらかんとした①だったのが逆に意外だったともいえる。 この映画を見て怒り出す人々もいるようだが、しかし出身地や外見や個別の物言いに関わらず信用できるかどうかは別の判断、という程度なら言っても支障ないだろう。劇中では移民系のアモニーケさんが、リアリストで猜疑心は強いが友好的な人物だったのはホッとした。  なお主人公は日本アニメを小馬鹿にしているようだが、「侵略!イカ娘」を見たことはないのだろうか(自分は見てないが)。
[DVD(字幕)] 5点(2013-03-20 19:52:18)(良:1票)
854.  ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 《ネタバレ》 
当時わざわざ映画館に行って見たが、子ども心にやり切れない思いが残った。自分は“ゴジラのいる世界”を見に来たのであって、スクリーンにゴジラが映りさえすればいいというものではない。これでは子どもでも騙せない、というのは自分の経験で証明されている。過去映像を最大限に使う工夫なのはわかるが、そのためにシリーズ中で唯一、ゴジラが出現しないゴジラ映画になってしまっており、こんなことならガメラ映画のストレートな流用の方がまだましだろうと思える。  ただし今見てみると、荒唐無稽な怪獣場面は全て子どもの夢物語と割り切ることで、かえって普通の映画として見られるという効果もある。まず注目できるのは何と言っても昭和40年代の工業地域の景観で(川崎市か)、冒頭、やさぐれた感じの「怪獣マーチ」にも出る大気汚染は画面上でも表現されており、小学生の通学路も殺伐とした雰囲気で、廃工場の荒れた風景は初見時の記憶としても残っている。一方、劇中のTV報道に出ていた「若者の狂った行動」などは高度成長期の社会の歪みと認識されていたのだろうが、こういった時代感覚は次回作にも引き継がれているように思われる(スタッフは違うようだが)。  ところで主人公は、当時増えて来ていたと思われる「カギっ子」という設定だが、性格が「引っ込み思案」というのはカギっ子という以前に一人っ子のせいだろう。劇中のガキ大将は、いじめっ子というより仲間に入れと誘っているようにも見えて、その後の深刻ないじめ問題とはまだ無縁な時代と感じられる。終盤では、ナマの実力行使がものを言ったというよりも、主人公が少しだけワルになったことで仲間になれたことを評価したい。 ほかキャストでは、母親役の中真千子さんの出番があまりないのは少し残念だが、母親のいる部屋を独りのときより明るく見せていたのは若干印象的だった。また天本英世氏が優しい大人の役で、主人公を見る慈愛の目が他人事ながら嬉しく思われた。当時の人は殺伐とした世相と思っていたかも知れないが、こういうご近所さんが普通にいる映画ができているというのは逆に、まだまだ日本社会も捨てたものではなかったと感じさせる。
[DVD(邦画)] 5点(2013-03-16 12:44:07)
855.  ガメラ対大魔獣ジャイガー 《ネタバレ》 
前作は1969年の月面着陸だったが、今回は1970年の大阪万国博覧会ということで、高度成長期の山場を飾るイベントの一つが登場する。同時期に「ゴジラ ミニラ ガバラ…」を見たからかこの映画は見なかったが、本物の万博会場には親に連れられて行ったので実写風景は懐かしい。映画のセットにはソ連館(だけ)のミニチュアが作ってあり、敵怪獣に鼻で押されて揺れていたが、ソビエト連邦を選んだのは政治的理由というより建物の見栄えを重視したのと、実物が会場の隅にあったことが理由だろう。周辺がどれだけ破壊されても会場だけは壊すなという雰囲気だったのは、万博の成功にかけた当時の意気込みが感じられる(と言えなくもない)。  それで今回は過去映像をオープニングだけにとどめ、あとは個別場面の流用はあるが基本的には新撮の映像であり(当然だが)、都市のセットもなかなか頑張っている。怪獣同士の戦いで、ガメラが同じ攻撃を二度受けないというのは相応の賢さを表していて面白い。 また例によって小賢しく無鉄砲な子どもが勝手な大冒険をやらかしているが、今回は映画全体のテーマが“子どもの優れた点を大人も見習うべきだ”ということだったために子どもらがますます増長してしまい、大人の事情で悩みの多い万博事務局長が渋い顔をしていたのが可笑しかった。子どもらがガメラに直接助けられる場面はなく、反対に深刻な危機に陥ったガメラを救う展開になっており、子どもらの貢献度はシリーズ中最高レベルだったかも知れない。 ほか今回は大阪が舞台のためかユーモラスな場面が多く、寄生虫の映像を見せられた一同の表情と、大村崑氏がボケをかまして娘にどつかれる場面は可笑しかった。今回はこの娘(主人公の姉)の活躍度が高く、十分に画面の華になっていた気がする。  なおこの映画を見ると、当時もいろいろ問題はあったろうが、基本的には先行きが明るく感じられる良い時代だったのだろうなと想像する(自分が無責任な年齢だったからかも知れないが)。この頃になると劇中の子どもが自分の年齢に近くなって来るが、「人類の進歩と調和」を志向した時代に「次の時代を背負って立つ」と思われていた世代が今はこんな歳になって、われわれは現実に社会をよくしてきたかと思うと少々寂しいものがある。
[DVD(邦画)] 5点(2013-01-19 10:07:06)
856.  ガメラ対大悪獣ギロン 《ネタバレ》 
公開時に映画館で見た(同時上映は「東海道お化け道中」)が、記憶にあるのは怪獣が出る場面だけで、ほかはおねえさん2人が悪役だったくらいしか憶えておらず、子どもの認識などその程度だというのがよくわかる。せっかく贔屓のギャオスが出たのに簡単にやられてしまうのは不満だったが、敵怪獣がギャオスを食おうとスライスした場面で、切断面に骨も内臓組織も音叉もなく一様に肉が詰まっていたのは当時の高級ハムのイメージだろう。ほか特撮面でそれほど見るべきものはないが、隕石や第十惑星の岩の表面に赤黄青の光る粒がついていたのは、宇宙の鉱物のキラキラ感を表現するための工夫と思われる。  ところでこの映画でも、前作に続いて異世界探検の要素が含まれており、過去映像が長いのとあわせて姉妹編のようでもある(…ギャオスの超音波で腕が切れる場面は、毎度のことだが痛々しくて見ていられないのでもうやめてほしい)。他の惑星を舞台にしたのは、映画公開の1969年にアポロ計画の月面着陸が予定されていた関係かと思うが、具体的な場所についても、少し現実味のある話にしようとして太陽系内に設定したのかも知れない。 また今回は、子どもとガメラの連係プレーで宇宙人と怪獣を退治する形になっていて、これも子ども向け路線の一つの表現に思われる。子ども2人は例によって小賢しい連中で、悪役のおねえさんにも「うるさい子どもだわ」と言われていたが、やはりみんなそう思っていたらしい。このおねえさんがいかにも悪役然として可愛くないのが最も残念な点だったかもしれない(前作の方がまだしもよかった)。  一方ドラマ部分では、わからず屋の教育ママというのは昔よくあったパターンと思うが、最後は子どもの側でも空想より現実問題が大事と悟り、両者が互いに歩み寄って終わりだったのは気が利いている。またガメラは子どもの味方というのが定着し切っているが、人間世界では大村崑氏が子どもの味方になってストーリーに温かみを加えていた。この人が終盤で「先手打ってきたな」と言う場面は面白く、ほか特に子役の女の子が好演だったこともあって、おおむね好意的に見られる映画だった。
[DVD(邦画)] 5点(2013-01-19 10:06:58)
857.  大怪獣ガメラ 《ネタバレ》 
突っ込み所は多数あるにしても、基本的にはゴジラ(1954)並みの本格的怪獣パニック映画を目指した感じで、大作怪獣映画の雰囲気はある。カメをひっくり返そうとする人間側の発想は自然だと思うが、それをものともせずに回転ジェットでかわす展開や、最後に出たサプライズのZ計画は、公開時に知らずに見ていれば素朴な驚きがあったろうと想像する。また大人と子どものストーリーが同時進行していて、それぞれを担当するヒロイン役が1人ずついるのも豪華といえなくはない。映像面も当時としてはそれなりで、特に東京襲撃の場面で逃げまどう人々の姿を丁寧に描こうとしているのはまともな怪獣映画として評価できる。  しかし、ゴジラが水爆なのにガメラはなぜか原爆というのはスケールダウンに感じられ、なぜか白黒映画なのも時代を遡ったかのようである(どうせあとでさんざん流用するのだから、初めからカラーで撮っておけばよかっただろう)。冷戦が原因で大惨事を引き起こしておきながら「人類愛」で締めようとするのも安っぽい。 また子ども向け映画であれば子どもが出ること自体は変ではないが、この映画を見る限り、後の“子どもの味方”という発想がどこから出て来たのかわからない。東京の悲惨な情景を見てしまえば、少年のいう「カメはみんないい奴ばかり」も説得力皆無であり、幼少時にガメラに親しんだ立場からしても共感するのは難しい。 …ただし、この少年の成長という視点からのレビューが前の方にあったのは真面目に参考になった。なるほどこの映画を単体で見ればそういうことかも知れず、それならガメラ自体の性質がどうあろうと直接関係ないことになる。これは少し反省した。  全体としては正直それほど面白くないが、後世の目から一面的に判断するのは見当違いになる恐れがあり、また少なくともガメラ第一作としての歴史的価値はあるので普通の点数にしておく。なお登場人物(築地の住民)が隅田川を「大川」と言っていたらしいのは自分も少し驚いた。江戸情緒を感じる。
[DVD(邦画)] 5点(2013-01-15 22:03:19)
858.  リリイ・シュシュのすべて 《ネタバレ》 
場所は両毛線沿線のようだが、季節の水田風景が美しい。エンディングで稲わらを乾燥させている風景は、うちの地元では見られない。  ところで個人的にはこのような苛めなり迫害なりの経験はなく、また今さら思春期の少年少女の立場にもなれないわけだが、もともと逃避的傾向のある人間だからか、現実世界から独立した精神世界を求めることには共感できなくもない。おまえいい年してこんな連中と同じじゃないだろうなと言われている気もするが、しかし登場人物が実体のないものを空虚な言葉で一生懸命飾り立てようとするのは痛々しく、たった一人の不規則発言で共同幻想が崩れてしまいそうになるのも虚しく感じる。 一方、この映画で印象的なのはやはり久野の強さである。この人には自分を支える力があると思えるが、それは本人の資質はもちろん、拠るべき普遍的価値を知っているからこそだろうと思う。劇中で冷酷無残な描写をよそに流れるピアノ曲は、現実世界がどれほど陰惨であるかに関わらず、美しいもの、価値あるものが確固としてこの世に存在することを示しており、それは何があろうと“汚された”などということもなく、超然としてそれ自体の価値を主張する。そう考えるとこの映画は、若年者だけでなく全年代に向けて、彼女にとっての芸術音楽のようなものを見つけられるかと問いかけているように思えなくもない。  以上のように、それなりに評価できる点もなくはないが、さすがにこの劇中世界を全面的に受け入れるわけには行かない。また自殺する人物が誰かによっては上記の感想は持てず(小説版は読んでない)、その場合はただ嫌悪だけが残ることになる。当然ながら自分も大人の側の人間だということである。 なお余談として、メイキング映像を見たところ、劇中で極悪女子生徒役だった女優(松田一沙)がクランクアップ直後に大泣きして「最悪でした」と言っていたので、女優本人は極悪人ではなかったらしい。当然だが。   [2019-04-13追記] クロード・ドビュッシーのアラベスク第1番は美しい曲である。このような何物によっても損なわれない普遍的価値の存在を知ることが久野という生徒の強みであり、彼女のこれからの心の支えになるはずだというようなことを上に書いたが、昨日たまたま立ち寄った高速のSAの便所でこの曲が流れていて、この映画のことを思い出してしまって非常に嫌な気分になった。見た者にどこまでもつきまとう最悪な映画だ。
[DVD(邦画)] 5点(2012-12-03 20:53:26)
859.  先生を流産させる会 《ネタバレ》 
「告白」を超える問題作とのことだが、見ていないので比べられない。 女子固有の問題には踏み込む気にならないので、それ以外で思ったことを書く。  まず前半では、生徒・家庭・学校と周辺社会の問題をコンパクトにまとめていた印象がある。その上で主人公の教員が、「やって許されないことがある」という方針で断固戦う姿勢を見せていたのは痛快に思っていた。家庭事情や親子関係がどうのということはあるにせよ、やはり極端な問題行動は力づくでもやめさせることを考えなければならない。 しかし、この方針が最後まで貫徹されずに終わっていたのは非常に落胆した。実行するまでは一生懸命止めても、やっちゃった後はただ放免というのでは、止めようとしたこと自体が無意味になる。あれだけ恐い顔で脅していたのは単なる方便だったということなのか。現実世界の実態はどうあれ、主人公自身が自分の行動を無意味化したように見えるのは映画のストーリーとして変である。許されないことはあくまでやらせないか、やらせるのならそれなりの報いがあるか、どちらかでなければならない。  また終盤ではスプラッターまがいの惨劇が起こっていたが、その割に最後を教育映画っぽく丸めてしまったのは整合性に欠けている。制作者の意向としては、オヤジ連中が事件報道を見てケシカランと憤慨するとか、若い連中がネット上で厳罰を求めるような感覚に迎合したくないということのようだが、あれだけのことをやらせてしまっては、見ている側もただでは済ませられない気になって当然である。穏健にまとめるのが本意だったというなら、その前の過激な場面はミスリードとしか思えない。 さらに個人的に気に入らないのは、ご立派な教育映画のように終わったことで、何が何でも学校内でくるめてしまおうとする態度を容認しているように見えたことである。学校が外の社会とつながっていることは劇中でも出ていたはずであり、この点でもっと尖った形の問題作にできなかったのかというのが正直なところだった。  以上、そもそも制作意図がよくわからないのでいい点は付けられないが、生徒役の皆さんにはごくろうさまと言いたい。よくこんな映画に出たものだと思うが、舞台挨拶で出ていた「先生を感動させる会」の話は微笑ましい。 [2015-7-1追記]「告白」(2010)を見たが、全く超えていないではないか。アホか。
[DVD(邦画)] 5点(2012-12-03 20:53:16)(良:1票)
860.  おおかみこどもの雨と雪 《ネタバレ》 
何でオオカミ男でなければならないのか、と見る前から思っていたが、見た後も疑問は解消されなかった。別にハエ男でもいいだろうと言っているのではなく、子どもの成長と巣立ちに対する親の思いを描くなら にんげんおとこ、にんげんこどもでも当然可能だということである。もちろんファンタジックなアニメだからこそ見る気にもなり、それでこそ可能な映像表現もあるわけなので荒唐無稽なのは構わないが、全体のテーマとの関係では必然性のない浮いたアイデアのように思われた。これは時かけ、サマーウォーズとの比較でもそう思う。  またこの映画の内容だと、子連れの観客のうち母親にはアピールするだろう(何しろ受精の場面からある)が、子どもが面白がるかは不明だし、また従来のファン層と思われる青少年(男)は置き去りにされかねず、アニメ大作としては妙にバランスが悪い気がする。それでよければ別にいいのだが、前作までは作り手も観客も青少年(男)向けの映画という意識で一致していたのに、今回は背伸びして柄にもなく子育ての問題を扱ってみた、という感じで落ち着かない気分だった。  いずれも本筋から外れたことで申し訳ないが、どうも全体として釈然としない感覚が残り、また少し時間が経つと、見ているときにペンディングしていた細かい疑問点が山のように積み重なっていることにも気づく。ここで高評価の皆さんが書かれていることにも同感ではあるが、納得できないことを見過ごしにしたままで絶賛しようという気にはなれない。
[映画館(邦画)] 5点(2012-08-11 17:33:59)
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