861. ミッドナイト・ラン
《ネタバレ》 相手役チャールズ・グローディンはファースト・チョイスではなかったそうだけれど、コミカルな役は初めてで少し重たさもあるデニーロを引き立てている感じ。 ツイードのコートを着た見た目より飄々として、辛い人生を歩んできたジャックにまつわりついたものを吹きはらって自由にしてあげるデュークは、去り際もあっという間で一陣の風のよう。 SEE YOU NEXT WEEK(また来週)をもじった、SEE YOU NEXT LIFE(来世で会おう)もしみじみとしていながら軽やか。 話の面白さもさることながら、2人の友情の軽妙さが魅力です。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-30 19:24:40) |
862. サスペリアPART2
アルジェント作品の中でも上位に位置すると思われる‘DEEP RED’。「欲望(66)」の売れっ子カメラマンD・ヘミングスが同じく巻き込まれ型の英国人ピアニストに扮し、アルジェント夫人ダリアといいコンビネーションを見せる(完全版は2人のラブコメ追加)。不名誉な邦題(近年サブタイトル追加)とは裏腹に、ホラーよりも素人探偵物としての面白さ。不気味な旋律や小道具も深く印象に刻まれる。執拗な残酷描写が玉に瑕。 [地上波(吹替)] 7点(2005-11-28 20:53:11) |
863. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
《ネタバレ》 1985→2015→1985→1955と、シリーズ中一番複雑な構造の2作目。 1作目がビデオになった際に監督ゼメキスがお遊びで入れたTO BE CONTINUED(つづく)が、ウソがマコトになり4年ぶりに作られた続編には、ジョージ役のクリスピン・グローバーはギャラのトラブルで出ておらず(代役で対応)、5人のキャラクターが4人になった影響は多大で、フォックスとウィルソンの比重が大きくなり全体のキレも弱まりましたが、脚本のリライトで十分面白いものになっているのはさすが。 ジェニファー役も可憐なクローディア・ウェルズから演技力のあるエリザベス・シューにバトンタッチ。 見どころはホバーボードが楽しい2015年と1955年リプライズ、1955年は1作目を別アングルから見られるのが斬新な試みでした。 墓石はゼメキスが20年後に映像化する「クリスマス・キャロル」の原作からのアイディアと思われ、(マーティやジョージの名も同じく「キャロル」の影響ありな「素晴らしき哉、人生!」からとったかもしれず)ゼメキスの嗜好が反映されているよう。 最後にサービスのようについている3作目の予告編、アレいらなかったんじゃ? 「スター・ウォーズ」のように3年後ではなく、わずか半年後に公開されるんだもの。 終盤でデロリアンが消え去った直後、豪雨の中から電報局の車が現れるシーンがSFらしさがあってよかったです。 [映画館(字幕)] 7点(2005-11-28 19:56:44) |
864. ミクロキッズ
美術や特撮経験のある監督ジョー・ジョンストンのこだわりが感じられる、ディテールに凝ったマニアックな作り。見せ場のミツバチに乗って飛ぶシーンはファンタジックではあってもメルヘンチックではないのがいいし、レゴやクッキー、シリアルなど小物の使い方も楽しい。お隣さんの描写もやけに凝っていてどこかノンビリしたムード。リック・モラニスの面白さもタップリ味わえますが、ちょっとだけ気になるのはエイミー・オニールがあんまり演技うまくないこと。 [映画館(字幕)] 7点(2005-11-27 10:00:27) |
865. スティル・クレイジー
《ネタバレ》 過去の栄光ふたたび、でリユニオンするストレンジ・フルーツ(「奇妙な果実」、ビリー・ホリデイから?)の友情と奮闘の日々。 イギリスらしい題材で面白くなりそうなのに演出が地味であまり盛り上がらないのが少しもったいなく、ややマイナーなのもわかる感じ。 いい味してるんだけど。 同じバス巡業バンドでも「あの頃ペニー・レイン」のスティル・ウォーターよりバンドとしての魅力はあるのに、それが十分生きていないような気がするし、「コミットメンツ」のようにマネージャーの視点があるわけでもない。 カレンがずっと憧れていたブライアンでなく、トニーと親密になっちゃうのもなんかつまんない。 「クライング・ゲーム」のスティーブン・レイが一応メイン、「ラブ・アクチュアリー」でも同じようなオールド・ロックスターをやるビル・ナイがピザ宅配のサインを勘違いする場面は笑えて、豪放なローディのビリー・コノリーに税金滞納ティモシー・スポール、唯一若いギターのハンス・マシスンはシリアスな「ドクトル・ジバゴ」とは違う面白キャラ。 最後のステージは視覚効果も手伝って本物のフェスティバルらしく見え、曲も聴かせます♪ [映画館(字幕)] 7点(2005-11-26 19:53:43) |
866. ブライド(1984)
2年前にDVD化され再び見ることが出来た「フランケンシュタインの花嫁」のリメイク。 ソロデビューをひかえて整形したばかりのスティングは、手をかけた温室咲きのバラのように美しい。(笑) フランケンシュタイン博士の台詞が少ないことも幸いしており、さもなければアンソニー・ヒギンズやケイリー・エルウィズら同じ英国の俳優たちに見劣りしたかもしれない。 混血のジェニファー・ビールスは新しく生み出された女性に相応なエキゾチックさは備え、造物主である博士を頼りながらもう一人のパートナーとも心を交わす。 そのヴィクターは知り合った仲間と共に旅回りの一座に加わるが、彼もまたイーヴァを気にかける。 このあたりがオリジナルとは全く異なり、運命的な二人の関係を大事にしている。 惜しむらくは見せ場のBGMが古典映画のように古色蒼然としていることか。 監督はフランク・ロッダム、彼の「さらば青春の光」のフィル・ダニエルズも顔を見せている。(2011/02/05 REWRITE) [DVD(字幕)] 6点(2005-11-26 19:15:26) |
867. 思春の森
原題通りの、「病める思春期」。ほとんど映画としての体裁も保てていない崩壊した世界であるが、唯一の見所は女流写真家の娘兼モデルでフランス版B・シールズの異名を賜ったブロンドの妖蝶エヴァ・イヨネスコ。「ポケットの愛」では普通のリセエンヌを演じた彼女が、ここでは本領発揮で毒をふくんだ金粉を振りまく。 [映画館(字幕)] 3点(2005-11-26 15:30:09) |
868. トイ・ストーリー2
テーマではアカデミー脚本賞ノミニーになった前作に及ばない気がしますが、ビデオ用だったのが劇場用に格上げされただけあるクォリティの高さで、エンターテイメントとして優れてますよね。 「偽バズ」は大量生産されるオモチャならではの面白さ、彼もバズなのは確かなのですから。 残念なのはヒロイン、ジェシーが自分本位であまり魅力がないこと。(なので彼女のセンチメンタルな歌もそれほど心にひびかない) NG集は「バグズ・ライフ」にもあったので調子ノリすぎな気もしましたが、ビッグバンド風にアレンジされた「君はともだち」を歌うウィジー・オン・ステージ♪はダメ押しのゴージャスさでキマリ! [映画館(字幕)] 8点(2005-11-26 15:18:25) |
869. ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
《ネタバレ》 前2作の喧騒も消え、彩度も抑えて奥行き深く陰影に富む画面が大人っぽい「アズカバン」。雲・霧・雨が生む湿った空気と土の匂い。自らの影を追う追走劇も変奏曲の趣き。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2005-11-22 20:27:23) |
870. シュレック2
《ネタバレ》 2作連続受賞は逃したものの、そんな事は些細に思える程出来は素晴らしい。(F4ネタのファミリー物より劣るとは思えないのだが。米国歴代3位が災い?)姑息なゾロ猫も加わり、一秒たりとも退屈させない鉄壁の作り。ダイレクト・パロディは飾りに過ぎず、インダイレクトな俗物愚弄に真骨頂を見る。仮初めの姿を得ての見栄も微笑ましく、娘に理想の相手を求め続けた「王様の秘密」が泣かせる。ラスト、一瞬「もったいない・・・」と感じてしまうのが所詮は美に惹かれる人間の心の弱さか。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2005-11-20 14:50:05) |
871. 飛ぶ教室
マルチン!ヨナタンに主役の座を奪われて悔しくないの?家も貧乏じゃないし、親が離婚しそうって何よ!ヨナタン!女の子とイチャイチャしてるんじゃないの!マッツ!あんたはまだいいけど、もっとパン食べなさいよ!ウリー!なんで傘じゃなくて風船なのよ!だいいち一体どっから持ってきたの?あ、禁煙さんの客車の家!いいなあ、住みたい!ゼバスチアン!クロイツカムと合体させられて情けなくない?校長先生もクロイツカム先生と一緒くたにされてるから仕方ないっての?あっそう。テオドール!あんたって美少年のはずだったわよね!エーガーラント!敵のボスがいつから女になっちゃったのよ!は?あなたがベク先生?こ、これはどうも・・・・・・再生と置換により複雑な思いが交錯する21世紀の「教室」。 [映画館(字幕)] 6点(2005-11-17 19:04:35) |
872. 友だちのうちはどこ?
オリーブ畑を抜け、ジグザグの山道を越え、見知らぬ町の迷路の小路や怖い大人にもひるまず少年はゆく、「ネマツァデ君」を探して。 「宿題のノートを届けないと、あの子は退校」小さな胸に自ら使命の火を燈し、次第に降りる夜の帳の中に消え入りそうになりながら。 一輪の花の香りとともに鮮やかな解決をみる「誠意」の価値を控えめに提示した佳作。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-16 21:59:57) |
873. フランティック
フォード×ポランスキー異種交配。パリの地で忽然と消えた妻の姿をフランティック(半狂乱)に捜し求める米国人医師。彼に恋する協力者のフランス娘がディスコで踊る無言の求愛ダンスが切なく、エンニオ・モリコーネの悲痛な調べがこの不穏な空気に揺らめく白い炎のような作品を引き立てる。 [地上波(吹替)] 7点(2005-11-16 21:52:35) |
874. シュレック
いつしかピクサーを超えていたドリームワークスCG。シュレックの仮面をとった素顔にフィオナが難色を示したのに「っと・・・やっぱりな・・・そ~さ、これが俺様の顔でござい!」という彼の感情を画だけで表現しているのも見事である。見るほどに親近感のつのるキャラクター、ブラックな笑い、自然の描写力と魅力も多く、グリーンを基調とした色彩設定も目になじむ。米国のアニメにつきものの「古臭い」イメージを完全に払拭したという点でも突き抜けた一作。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-13 09:38:30) |
875. トイ・ストーリー
《ネタバレ》 初の長編CGアニメーションでも技術だけではない「ストーリー」があり、ヒーローきどりで自信家のバズがアイデンティティを砕かれるシーンは図らずもせつない。 そしてウッディの自分の居場所を失う不安とジェラシー。 見た目はオモチャでも中身は人間のリアルな心を、カラフルで楽しい世界にのせて描いた傑作。 アンディの部屋の仲間たちも個性があっていつもにぎやか。 一番人気で活躍するのはバズでも、メインはウッディというスタンスはこの1作目から。 ソリの合わないふたりが自分の弱さを乗り越えて成長し親友になる過程、2人で大空にはばたくシーンはすがすがしさを残す。 To infinity and beyond! [映画館(字幕)] 8点(2005-11-13 09:03:48)(良:1票) |
876. ショーガール
とてもお上品とはいえないが、正直な感じがして嫌いにはなれない。稼いだお金でヴェルサーチのドレスを買って「ヴェルセイスよ」と自慢してしまうノエミを笑ったりできない。こういう業界によくいそうな自堕落なカイルも嫌いじゃない。彼女がGODDESSの前にいたストリップ小屋の主人で、粗野ではあるが内心可愛がっていた「ウチの看板娘」を引き抜かれ、落胆を味わっても訪ねて励ますロバート・ダヴィも好き。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-12 09:49:30) |
877. ヴァン・ヘルシング
ハムナプトラ以上に破天荒でスティーヴン・ソマーズの娯楽美学ここに極まれり。とにかく観客を楽しませたい!という映画人としての心意気は否定しがたい。派手な見せ場の連続よりもプリンセス・アナが口にする人造人間への感謝の言葉が印象的。「アンクル・トムの小屋」で令嬢エヴァが奴隷少年にしたように。人間扱いされたことのない者が初めてひとりの人格として扱ってもらえた、その驚きと嬉しさは何物にもかえがたいにちがいない。 [映画館(字幕)] 6点(2005-11-12 09:32:28) |
878. 男性・女性
麗しきシャンソン人形シャンタル・ゴヤと、その傍を孤独な遊星のように周るジャン・ピエール・レオ。ソレイユが遊星に光を投げかけた時には、物語はすでに終わりに近づいていた・・・60年代仏蘭西の若者風俗と空気を閉じ込めたゴダールの銀色絵巻。 [映画館(字幕)] 7点(2005-11-11 20:04:21) |
879. あの頃ペニー・レインと
キャメロン・クロウの記事が掲載されたROLLING STONEも持ってるし、邦題とポスターは素敵。けれど満たされることはなかった。漂うニンフ、ペニー・レインは70年代グルーピー像としてはあまりに淡くはかなく、意図的な上澄み映画であったとしても物足りなさが残るオブラートでくるまれたファンタジー。未知の世界に飛び込む少年の高揚感と、実際にZEPが逗留したハイアット・ホテル(現在のコンチネンタル・ハイアット、撮影用に当時のロビーを再現)が見られたのが収穫で、名曲の数々もいくらか空虚に響く。ノスタルジックな邦題はクロウも気に入ってるそうだけど「あのころはフリードリヒがいた」がベースかなぁ? [映画館(字幕)] 7点(2005-11-11 19:47:57) |
880. ダークシティ
幻夢の如き魔力でもって、失笑モノのチープな設定まで覆い隠してしまいそうな魅惑の暗黒都市。つややかな黒髪のジェニファーもこうした絵に描いたような世界であればオーセンティックな美女ぶりが輝き、ルーファスの真摯な演技がこの紙一重な映画に物語の厚みを与える。メタモルフォーゼするレトロな街に、レジェンダリーなリチャード・オブライエンまで拝めてしまう有難さ。熱き想いが遠い碧海を呼ぶ。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-07 22:09:06) |