921. 妖怪大戦争(2005)
《ネタバレ》 評価が低かったのであまり期待していなかったのですが、序盤から中盤にかけてはかなり面白いです。 子供向けながらもホラーテイストが感じられる雰囲気と音楽。特に神木君演じるタダシが大天狗の山に初めて行くときの緊張感はなかなか。更にはタダシが妖怪たちから驚かされるシークエンスは、子供っぽくもエンターテイメント性抜群で楽しい。モンスターや妖怪、CGによる演出が好きな私にとって、大好きな展開です。 で、『そんなに悪くないじゃん。面白いじゃん。』って見ていたのですが、後半~終盤にかけて、なるほどと思いましたね。最も盛り上がるべき最終決戦まで前半と同じか、それ以下のゆるいノリでは、そりゃあ盛り上がりませんな。 また、せっかく東京という大都市を舞台にしたのに、タダシや佐田以外の人間の存在が全く感じられないのも痛いです。 タダシのお姉さんや大天狗などがどうなったのかも全然出てきません。映画というか、物語としてのレベルが後半になっていくほど下がっていくわけですから、世間様から厳しい評価を受けるのも納得です。 『妖怪+マシーン』でターミネーターの出来損ないみたいなやつができるっていうアイデア、ビジュアル、まさに『日本漫画』っぽくて好きです。それだけに、妖怪たちとのバトルがほとんど描かれなかったのが残念。 クライマックスも、妖怪たちはお祭り騒ぎに終始するものですから、やたらシリアスモードのタダシ君たちのほうが茶番に見えてしまうのが悲しい。 極めつけはラスト。タダシ君が大人になってからのエピソードは蛇足の極み。いろんな意味で脱力するだけで、絶対要らないシーンです。 [DVD(邦画)] 6点(2017-11-19 15:25:48) |
922. ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!
《ネタバレ》 中盤まではコメディなんでしょうが、笑いのツボが合わず。むしろイライラする場面ばかり。 中盤以降は妙にサスペンスホラーな展開。『スクリーム』のようなスラッシャー系+ポリスアクションといった、ありそうでなかったコンボ。この辺りは結構好きです。ミステリー要素もあって、ワクワクします。 そして後半から終盤。オチがわかってからが、もうしっちゃかめっちゃか。動機なんてあったもんじゃない。これじゃあ村ぐるみで『悪魔のいけにえ』やっているのと一緒ですね。 署長も警官達もみんな怪しいと思っていた私。だって、人がこれだけ死んでいるのに事故だって言い張って、にこにこ冗談言い合っている警官たちはかなり異常。これがイギリス流コメディなのか、自分の肌には全く合わず。でも黒幕は署長のみで、警官達はみんな関係なかったって、逆に無理がありませんか。更には、あれだけ散々バカにしてきたのに、突然警官たちが署長ではなくエンジェルを信じるってかなり不自然。そんなことを気にしちゃだめなんでしょうか。 そしてエンジェル。冒頭でスーパーコップみたいな紹介されていたので、結構期待しちゃってたわけですが、ラストのアクション、結構普通。もっと圧倒的な強さで天誅くだすもんかと思っていたので拍子抜けです。 要所要所ではもっと面白くなりそうな雰囲気をはらんだ作品。内容を見ても、万人受けするタイプではなく、見る人を選びそうな作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-11-18 04:25:58) |
923. 私がクマにキレた理由
《ネタバレ》 ドラマとしてもコメディとしても中途半端で、はっきり言って面白くない。 説教臭いのに、説得力はないストーリー。 身勝手なミセスXや、クズ人間ミスターXに終始イライラ。その分がラストでカタルシスとなって昇華されるならまだしも、なんとも思い切りの無いオチ。見る人を引き込むちからのある作品だけに、何かありそうで何もないストーリーにがっかり。 かたっぱしから休みをつぶされる。なんやかんやとののしられる。『子守』という名の『なんでも屋』。次から次に押し付けられる雑務。一方的に解雇通知。最後のお給料はごくわずか。なんすかこれ。完全ブラックじゃないですか。何ヶ月もそんな仕打ちを受けといて、謝罪とお礼の手紙一通もらって、よく笑顔になれるなと、まったくもって理解不能です。登場人物の誰にも魅力を感じず、誰にも共感できませんでした。いや、唯一アニーのお母さんだけは良かったかな・・・。 それにタイトルでネタバレ。 そもそも日本ではなじみのない『子守ビジネス』がメインな映画なんですから、ピンとくるわけがないんです。 久しぶりのハズレ映画でした。 [DVD(字幕)] 3点(2017-11-16 05:27:13)(良:1票) |
924. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 サスペンス的に言えば、『火サス』とあんま変わらない。ですがそこに出てくる人間の描き方がエグイい。 子供の頃に一人だけ誘拐。性的虐待を4日間にわたって受け、そのトラウマが元で精神不安定に。小児性愛者を偶然見つけ、突発的に幼少期の自分と重ねてしまい殺害。妻にそのことを告白。だけど運悪くケイティ殺しの日と重なったため、妻はケイティ殺しを疑う。結果、ケイティの父であり幼友達でもあるジミーから報復されてしまう。救いの無い話。デイブが悲惨すぎて、後味は悪いです。 ジミー、デイブ、ショーン。自分が誰と重ねあってしまうかで評価が分かれてしまいそうな本作。私はデイブ。だから良い映画だったとは言い難いです。 それにしてもショーン(ケヴィン・ベーコン)と奥さんのエピソード、これって必要だったんでしょうか。ショーンが奥さんからの電話を受けるたび、いちいちストーリーが止まる感じがします。で、その奥さんが事件や過去のエピソードとつながってくるわけでもありません。メインのストーリーが完璧なだけに、無言電話がジャマで仕方がなかったです。 また、事件の犯人は映画だから許されるような人物で、意外性があるのですが、動機が突発的なものっていうのは、オチとしていささか弱い気がします。いや、銃社会としてリアリティを感じさせるようなオチではありますが・・・ この作品は子供の頃から立場が違う3人の物語がメイン。その一方でミステリー要素が強く、犯人も全然わからないので、サスペンスとしても面白い。デイブのミスリードが効いていて、映画の緊迫感を増しています。ドラマとしても刑事サスペンスとしても緊張感のある良作。ですがオチが弱いのと後味が悪すぎるのがちょっと残念ですね。 映画としては◎ですが、好みとしては△といったところでしょう。評価しづらい作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-11-12 13:04:42)(良:3票) |
925. ダニー・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 ハードなアクションかと思いきや、実は『ちょっと深イイ話』に見せかけて、『浅イイエンターテイメント』というしめくくり。でも嫌いじゃないです、こういうの。意味ありげで、あんま大した意味はないっていうの。 最初からジェット・リーのアクション目当てだったので、それを見れただけでも満足。むしろ、なかなかヘビーなドラマを仕込んでくれたおかげで、見応えのある作品となっています。 その一方で、クライマックス辺りのドタバタアクションには少し物申したい。おいてけぼりの部下たち。そのまま放置で突然舞台はコンサートホール。今までの丁寧な脚本作りが嘘のようなこの適当な展開はいったい・・・?そして欲を言うならば、ダニーがサムとヴィクトリアを守りながら戦うといったシチュエーションにしてほしかった。押入れに二人を押し込んじゃった後は、ひたすらバート一家とダニーとの一騎打ち。せっかくダニーが見つけた『本当の家族』との絆を描く絶好のチャンスなのに、その二人が全く絡んでこないってもったいないです。 前半~中盤くらいまではグイグイ引き込まれたんですが、ラストのバトルとオチが弱い典型的な竜頭蛇尾的作品。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-08 12:43:49) |
926. マイ・ボディガード(2004)
《ネタバレ》 え?実話?みたいな終わり方なんですが、実際はどうなんでしょう。実話だとしたら、釈然としないあの終わり方にも一応の納得はできるというものですが。 それにしても前半がだるい。クリーシーとピタの心の交流や絆を描くために必要だというのはわかります。とは言え、尺に頼りすぎ。限られた時間のなかを、作り手側の工夫や演出で、共感させてほしいものです。 中盤、ピタがさらわれてからが、かなり面白いです。次から次へと悪党を芋づる式に釣り上げていく様子は痛快。復讐の仕方も徹底していて良い。クリーシーの怒りが伝わってきます。ただし、ピタが生きていたとなると、多少話は変わってくるかもしれません。もちろん誘拐に加担した人々は、ピタが生きていたとしても、ピタを救い出すために殺されちゃうのは致し方ないのでなんとも思いません。ただ父親はどうでしょう。確かに悪いことに加担したかもしれませんが、その動機は『借金まみれの家庭を守るため』というもの。せっかくピタが生きて帰れても、父親が死んでいたんじゃピタがかわいそうですよ。 それに、クリーシーの過去にいったい何があったのか、さんざんもったいつけておいて結局教えてはくれないのですね。過去のエピソードを明かしてくれないと、どれだけクリーシーがピタによって魂の救済をされたのかが伝わっきません。それってこの映画のいっちばん大事な部分だと思うんですけどねぇ。 と、ゆーわけで、気になる部分がなきにしもあらず。更にはラストがしっくりこなかった。ということで、やや辛口評価です。 [DVD(字幕)] 6点(2017-11-08 01:41:52) |
927. ニューオーリンズ・トライアル
《ネタバレ》 復讐劇のストーリーとしては、悪くないと思います。 銃乱射の責任をすべて銃器メーカーに押し付けようとするスタートに疑問を感じていましたが、オチを知って納得です。 過去に別件の銃乱射事件で姉を亡くした妹。恋人を奪われた彼氏。更には被害にあった町が銃器メーカーを相手に集団訴訟を起こすが、敗訴。町は破産。その悲劇の根源となっているのが、銃器メーカーと、フィッチの違法な陪審員操作。だとすれば、その両者を完膚なきまでに叩きのめすストーリーに、本来であれば溜飲を下げ、この上ないカタルシスを感じることでしょう。ですが実際はそこまでの感情は湧きません。 原因の一つとして、前置きがちょっと長すぎたかもしれないです。もったいつけすぎと言っても良い。ニックが陪審員になるまで、結構な尺をとっています。更には情報過多な割りに、物語が進んでいる感じがしないので、疲れます。もちろん、前半部分が大事であることは間違いありません。要は『テンポ』と『バランス』の問題だと思います。 もう一つの要因は、『原告側を勝訴に導く』という肝心の部分に、これといった工夫が全然なされなかったこと。フィッチに買収されている陪審員の失言を引っ張り出すなんてやり方が、うまくいったから良かったようなものの、これでは不確定要素が多すぎて敗訴になっていた可能性だってあります。 よって、『法廷』を舞台とした人間ドラマとしては面白いと思いますが、『法廷もの』、『知的サスペンス』としては、長い割りに物足りない。消化不良です。 ただし、ストーリーと人物配置を理解したうえでもう一回見たら、評価が変わるかもしれません。2回目見たほうが面白いんじゃないかな。もう見ないけど。 [DVD(字幕)] 6点(2017-11-04 10:25:16)(良:1票) |
928. オーシャン・オブ・ファイヤー
《ネタバレ》 冗長で退屈。とにかく長い。起伏がなく、ダラダラとしたイメージ。 『馬の大陸横断レース』みたいな趣きなんだけど、みんな馬に乗ってただ歩いているだけなので、レースならではの疾走感や緊張感みたいなものは感じられないです。位置関係だって見ているほうは全然わからないし、いま主人公が先行しているのかどうかさえよくわかりません。 と、ゆーことで、どちらかといえば『レース』はあくまで舞台装置であり、メインは『人間ドラマ』なのかもしれません。じゃあそのドラマはどーかというと、微妙。登場人物は自分勝手な人ばかり。悪人も多く、辟易します。富豪の人は主人公のアソコを濡れ衣で切り落とそうとする暴君なのに、主人公と友情が芽生えたみたいな強引な展開についていけません。その主人公にもっと魅力があれば良いのですが、いまいち足りないんですよね。 また、レースの最中にレースと関係ないイベントがいろいろ起きちゃうのも、プロットに一貫性がなくて苦手。話があっちこっちに飛んでいくので、主題がはっきりせず、満足感を得られないのかもしれません。どちらにせよ、つまらない映画です。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2017-10-30 03:31:27) |
929. ディセント
《ネタバレ》 いろんな意味で怖い作品。イギリス映画ならではの陰湿な雰囲気が映画のテイストに合っている気がします。 ただのモンスターパニックかと思っていたのですが、ちょっと違いますね。平常時ではお互いを気遣いあう仲良し6人組み。それが非常事態では自分を優先し、それぞれが勝手な行動に出てしまう、そういう危うさも描いています。 中盤までは、結構ダラダラ。やや退屈。洞窟が崩落して退路を断たれたあたりから緊迫感が急上昇。更に正体不明のモンスターが現れてからストーリーが加速して面白くなります。 マイナスポイントその1。仕方がないことですが、舞台が洞窟なので、基本画面が暗く見づらい。今何が起こっているのかわかりづらい。 マイナスポイントその2。『怖がらせる』というよりかは、『驚かせる』演出を多用しているのがちょっと気に入らない。突然大きな音を出せば誰だってビックリします。ホラー映画の常套手段として否定はしませんが、それに頼り切った演出はどうかと思います。 個人的に面白かったのは、ジュノやサラの女ランボー化ですね。ちょっと強すぎる気もしますが、二人が覚醒してモンスター相手に互角以上の戦いを繰り広げるのはちょっと爽快です。 で、個人的にはこーゆーテイストの映画って、『あと少しで脱出できる。』ってわかっていたほうが、よりハラハラできると思うんです。この作品にはそれがありませんね。あまりにも八方塞がりな状況すぎて、『希望的観測からくる緊張感』といったものを感じられなくて残念です。 [DVD(字幕)] 6点(2017-10-23 14:03:26)(良:2票) |
930. 電車男
《ネタバレ》 ドラマは未見。これは良いです。傑作です。コメディで笑い、涙で感動し、ラストはハッピーエンドでこの上なく幸せな気分になれます。邦画ならではの後味の良さが感じられます。この感じは洋画では絶対に出せない。こーゆー作品を見ると邦画の存在意義ってのを感じられます。 それにしても良い人ばかりの映画です。『毒』や『刺激』、『どんでん返し』や『謎解き』がなくても面白い作品ができるっていうお手本のような映画です。『倦怠期の夫婦』『ひきこもりの青年』『おたく3人組』『失恋看護士』、世界も価値観も違う人たちが、『電車男』っていう見ず知らずの人の相談に乗ってあげて、応援するっていうのが、人の温かさを感じられて好きです。日本もまだまだ捨てたもんじゃないなって思います。 それに、電車男を応援しながら、自分達にも良い意味で心境の変化や心の成長が現れるっていうストーリー構成が、ベタだけど良い。純粋な人の一生懸命さっていうのは、周りに良い影響を与えるものだと再認識。 それにしても『奥手の恋愛』っていうのは、良いものですね。人としての真心を感じられるというか。 そして中谷美紀。憧れの人としてキャスティングされるにはちょっと年齢高めかもと思いましたが、見ていくうちにどんどん魅力的に。そのたたずまい、何といっても『声』が優しい。優しい声で、優しい言葉をかける素敵なお姉さん。 ずっと電車男の主観できて、ラスト、エルメスの主観ではこう見えていましたっていうネタばらし。『いま、会いにゆきます』でも使われていた手法。このテクニックにとことん弱い私。もう切なくて嬉しくてやばかったです。 また、本筋とは関係ありませんが、『合コンに誘われず、メンズエステの試供品さえ渡してもらえない電車男』が、合コンに誘われ試供品を渡されるシーン、そこで見せる山田孝之の表情が本当にうまくて、細かいところがめちゃくちゃ丁寧な作品だと感心しました。と同時に、やはり外見も内面と同じくらい大切なことなんだと気付かされます。 [DVD(字幕)] 9点(2017-10-22 09:26:01)(良:2票) |
931. デアデビル
《ネタバレ》 父を殺され、愛する人も殺されちゃう主人公。ヒーローものとしてはちょっと暗いストーリー。だけどそれが復讐のカタルシスへとつながって・・・いかない!なんだこれは。ブルズアイ生きてる。キングピンへの制裁ぬるい。そして何かを匂わせたまま迎えるエンディング。そりゃあ反感を買っても仕方がないストーリーです。 とは言え、序盤から中盤にかけては文句なしに面白い。特に『子供と父の絆』のスタートから、『少年が視力を失ってデアデビルになるまで』のエピソードなんか、ほとんど満点と言ってもいいくらいの出来栄え。更には無罪放免になった悪党を成敗するヒーローものならではの勧善懲悪アクション。これは期待が高まるというものです。 そしていよいよブルズアイ、キングピンという真打登場。ところがこの辺りからバトルも物語も減速。一番の見せ場になるはずであろう対決が、一番つまんないってのは、この手のヒーローアクションものでは致命的ではなかろうか。 映画の出来としては全然悪く無いのに、ラストが全然スカッとしないだけで、こんなに満足感を感じられないとは。 キングピンを前にして、なんかよーわからん『ヒーローの美学』みたいなもんを持ち出して、愛する人を奪った諸悪の根源に情けをかける、なんともパンチの弱い結末。後味が悪い映画って好きじゃありませんが、中途半端な結末の映画ってもっとタチが悪いかもしれません。 序盤から中盤くらいまでの、圧倒的なダークヒーローで最後までいってほしかったですね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-10-20 14:08:41) |
932. 口裂け女
《ネタバレ》 まあまあ怖い。雰囲気好きです。話のスケールがそんなに大きくない、でも警察や報道といったものはきちんと描かれているバランス感覚が良い。 『口裂け女ビギニング』とも言える内容。なぜ『口裂け女』が生まれたのか、その背景を描いているのは面白いですね。邦画ホラー特有のカビ臭さが感じられる画作りも良い感じです。更には『憑依される前の咳き込み』が、惨劇の前兆として恐怖心を煽られます。好きなんですよね、こーゆー単純でわかり易い予兆。 『口裂け女』には物理的な攻撃が効く。なんとかなりそう。と、思いきや、どうあがいても滅ぼすことはできない。憑依している肉体が死ぬだけ。この設定は単純ながら効果的。悲劇を量産できる優秀なギミック。子供達は『口裂け女』に襲われる恐怖だけでなく、母親を奪われるという絶望まで味わわされることになる。これがホラー。『痛み』『恐怖』『絶望』といったものを、緊張感とともにフィクションの世界で感じさせてくれるのがホラーの醍醐味であり原点ですね。女の子が憑依された自分の母親からハサミで切られちゃうのはショッキングでしたが、ホラーだからこそできるその思い切った演出には、あえて賛辞を送りたいです。 ただ、ラストはだめ。そこだけなんでサトエリのまんま?そこは当然水野美紀でくるべきでしょう。 [DVD(邦画)] 7点(2017-10-16 08:41:38)(良:1票) |
933. リトル・ミス・サンシャイン
《ネタバレ》 自殺未遂の叔父。麻薬中毒の祖父。家族嫌いの兄。傍若無人な父。母は結構まともな人物でしたが、旦那に対して少々ヒステリック。そんななか、家族の心をつなぎとめるオリーブの存在。そんなオリーブがミスコンの決勝大会に出ることに。家族総出で応援だー。最初は父も兄も叔父も乗り気ではないんですが、ラストはオリーブのためにみんなの心が一つになるという、極めて自然な家族の再生ストーリー。 プロットは良さげだし、勢いもそれなりにある。でもいまいち物語に入り込めない。理由はいろいろあるんでしょうが、まずそれぞれの人物の背景の描き方が足りない気がします。『リチャードの仕事』『ドウェーンの夢』『おじいちゃんの気持ち』そのどれもが表面的な説明で終わっている気がするのです。誰の言葉もなんか作りものっぽく聞こえちゃいます。 じゃあコメディとして頭空っぽにして楽しめば良いのか?それにしては笑いどころが少ない。マイクロバスを毎回押しがけするのは面白いし、ばらばらな家族を強制的に一致団結させるツールとしては斬新なんですけど、何回もそのシーンが出るのでさすがにくどいです。 じゃあこれはサクセスストーリーなのか?いや、誰もサクセスしていないし・・・。 ラスト、すがすがしそうな家族を見て、一時しのぎの雰囲気で現実から目を背けようとしているんじゃと感じる私は心が荒んでいる?だって、これからの家族のことが心配でならないんですけど。 どうも『現実的』にものを考えすぎる私とは、相性が良くないと言わざるを得ません。ただ冷静に見ても、この作品のウリっていったいなんだろうと思ってしまいます。少なくとも、万人受けする作品ではないし、娯楽作品でもない気がします。 ただ、なぜか全然飽きない不思議な映画です。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-10-13 12:06:36) |
934. タイムリミット
《ネタバレ》 最初の30分くらいはまあまあ退屈。浮気相手が殺されてからがもうずっと面白い。ひたすら綱渡り状態が続く。まさに手に汗握る展開。 『目撃者』『花の贈り主』『通話記録』『麻薬で押収した金』。次から次に食い気味で重なり合うピンチの連続。そんななか聞かされる『アンは癌ではないよ。』という衝撃の事実。そして担当医はまったくの別人。ただでさえ身の危険がやぱいってときに、真相解明にまで動き出すから凄い。僕だったらすぐにめんどくさくなって、『あ、浮気相手自分です。』ってすぐ手あげちゃう。で、正直に全部話して、後は運を天に任せちゃう。しかしこのデンゼル・ワシントン演じるウィトロックは違う。全部自分でなんとかしようとする。凄い。感心します。 本来は『不倫』とか『浮気』とか、ちょっと苦手なんですが、この作品に関してはなんか気にならなかったです。まあそれがメインになっているわけではないからでしょう。それに『浮気相手のアンが夫から暴力を振るわれている。』『それを助けようとしている。』『更には癌の治療のために、いつもルールを守ってきた男がついにルールを破って、押収したお金を渡しちゃう。』主人公だけあって、やってることは間違っているけれど、なんか良い人なんですよね。ウィトロックの妻が、理由は知らんけどウィトロックと別居中でしかも出て行ったのは妻のほう、という設定も良かったんでしょう。ウィトロックにこれといったモラル面での過失が劇中では見当たらないから、結果『不倫』をしていても、彼に批判的にならずに済みます。 どうなることかと思いましたが、ラストはこれ以上ないくらいのハッピーエンドですっきり。 映画の設定をサスペンスとコメディの両方にうまく使っている良質のエンターテイメントです。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-11 12:53:22)(良:1票) |
935. プロジェクトBB
《ネタバレ》 いつものコメディアクションに加え、後半からはヒューマンドラマの要素も強くなる盛り沢山な内容。なかなかの長尺。ですが軽快なテンポとノリで、あまり長くは感じません。 ジャッキーとルイス・クーが、それぞれサンダル、フリーパスというダメ人間を演じます。そのダメ人間っぷりが結構ひどくて、前半はとても二人に肩入れできません。楽しそうなコメディアクション見せられても、二人が好きになれないので全然楽しめません。 面白くなるのは中盤くらいから。二人が赤ん坊を一生懸命世話しだすあたりから、だんだん二人を応援したくなります。 ヒロイン役のメロディやパッイン、幼馴染の警部や借金取りなど、脇を固める面子も良い味出しています。特にメロディは抑え気味な演技、演出ながら、抜群に良い存在感。この人の存在がサンダルを少しずつ正しい道へと導いていくストーリーは心地良い。容姿もすごく可愛い。性格も落ち着いていて良い。 それに対し苦手だったのは大家とその妻。結構イライラさせられましたね。ダジャレ連発な吹替えが寒いうえにうっとうしいです。 いつものドタバタコメディと、アクション、それにヒューマンドラマが意外と良いバランスでまとまっているので、エンターテイメント作品として良質です。 [DVD(吹替)] 7点(2017-10-09 14:19:54) |
936. クライモリ デッド・パーティ
《ネタバレ》 前作同様、これ以上ないくらいのバッドエンドで後味は極めて悪い。後味の悪さでいったらシリーズ中最高かもしれないです。ラストなんかは、『ファニーゲーム』を連想させるオチ。でもそれが良いんです。この作品はスプラッタ愛、ホラー愛に満ちています。言い換えれば悪趣味ということです。 スプラッタ描写ばかりに目がいきがちですが、キャラに個性があり、ストーリー運びが上手いので大変見応えがあります。前作同様、今作でも『何とかなりそう』な展開のさせ方がうまいです。 最初から手も足も出ない相手であれば逃げの一手です。でもなまじ対等に戦える相手だし、逃げようと思えば逃げられそうな状況なので、『油断』『慢心』が生まれます。そこに付け入るやり方がうまいんです。それぞれが迎えるバッドエンド。でも、もっとうまくやれたんじゃないかというもどかしさ。いや、そう思わせるのがうまいのかな。 フェスで街の人間がほとんど出払っているというシチュエーション作りもうまいです。 フェスが終わるか、フェスの警護についている警察仲間が戻ってくるだけでいい。連絡が取れるだけでも良い。でもそうはさせないストーリー展開。反撃も、助けを呼ぶのも、後一歩というところですべて失敗に終わります。本当にもどかしい。 奨学金や麻薬の罪の心配。卒業後の進路。みんな明日以降のことで頭がいっぱいな前半が効いています。訪れない未来。報われない結末。この絶望感は、不条理ホラームービーとしてなかなかです。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-07 13:53:37) |
937. S.W.A.T.
《ネタバレ》 あまり評価されていないみたいですが、普通に面白いです。ただみなさんのコメントを読んで凄く納得。なるほど。『予告』。多くの人に酷評される映画には、やはりそれなりの理由があるものですね。 映画の中身はと言いますと、サミュエル・L・ジャクソン、コリン・ファレル、ミシェル・ロドリゲスの3人がはまり役です。型破りながらも頼りがいのある上官。クールなキレ者。武闘派の女性隊員。それぞれ良いキャラしています。惜しむらくは、後半、その個性があまり活かされなかったことでしょう。登場シーンはなかなか良かったんですがね。 同じようなことが、悪役グループにも起こっています。いっちばんわかりやすいのがアレックス。登場シーンで叔父の首を一瞬で切るシーン。迫力があって凄みを感じます。こいつはただものじゃないって感じです。おおっと、まさかのテールランプ切れで逮捕だ。いったいどうなるんだ・・・。で、ずーと囚われのお姫様状態で、結局そのまま刑務所ですか。なんじゃそりゃ。と、思われても仕方がありませんね。 ストーリー自体も、前半と後半で関連が薄いのが気になるところです。『鎮圧』や『突入』タイプの訓練シーンに対し、『護衛』と『追跡』の実戦。せっかく訓練に尺をとったのに、それを活かさない展開にしたのは不思議でしょうがないです。 T.Jの裏切りに関しては、確かにその雰囲気を上手いこと醸し出してはいたのですが、明確な動機がないので、もやもやとした気持ちは残りますね。ギャンブルの最後もいまいち。 などなど、気になる点は多々あれど、じゃあつまんないかと言われると、『いや、結構面白かったよ』と言える作品。 いや、むしろこれぞエンターテイメントなのかもしれないですね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-10-06 05:00:34) |
938. ラブソングができるまで
《ネタバレ》 『あなたにも書ける恋愛小説』とプロット的には同じですね。個人的にはあちらのほうが好きですが、こちらも好き。鑑賞したタイミングに10年以上の差があるので、そもそも比較はできないかもしれませんが・・・。 『二人で一つの目標に向けて力を合わせる。』というシチュエーションが大好きな私にとって、非常に相性が良い作品。更には、作曲シーン、作詞シーン、レコーディングのシーンなど、一つ一つの作業をきちんと見せてくれる丁寧な脚本。ストーリーに水を差さない程度に、コメディの要素もちゃんとあり。ソフィー(ドリュー)が緊張して声が超ちっちゃいとか、凄く面白いです。 ドリュー・バリモアの容姿は、そんなに好みのタイプではないのですが、彼女の作る表情や空気感、セリフの言い方など、彼女の演技はとてもお気に入りです。そしてラブコメと言えばヒュー・グラント。この人が演じているだけで、どの作品もなんか面白いです。また、この二人は基本的に『他者に対して寛容な雰囲気』を持っているので、見ている間ずっと心地良いのです。 ストーリーは王道。ひねりなし。ストレート一本勝負の気持ち良いラブストーリー。また、過去を引きずる2人の再生物語でもあり、サクセスストーリーでもあるので、元気がもらえます。アレックスのマネージャーとソフィーの姉家族が、第三者的視点で雰囲気を盛り上げてくれます。歌姫コーラの存在とそのスタッフの存在もスパイスになって良いですね。 コメディとドラマがちょうど良いバランスの、万人に愛される良作エンターテイメント作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-10-03 14:15:49)(良:1票) |
939. ダークナイト ライジング
《ネタバレ》 映像に迫力があります。音楽も良い。見応えがあります。 アン・ハサウェイ演じるキャットウーマンやベインのビジュアルが好きです。また、新しく登場する戦闘機がしびれます。バットマンシリーズは『メカ』や『武器』、とりわけ『乗り物』で楽しませてくれますね。 バットマンだってヒーローものにはちがいありません。圧倒的なパワーを見せてくれるパフォーマンスは、やはり興奮するものです。 ストーリーはどうでしょう。個人的には、はっきり言って面白くありません。なにしろ防戦一方。状況は悪くなるばかり。バットマンに頼れる味方が少ない。前作のような『チーム感』に欠ける。キャットウーマンには騙されるし。ベインにぼこぼこにされるし。アルフレッドは出て行くし。破産するし。この作品を見ると、前作までのバットマンをとりまく環境の暖かさがいかに大切だったかがよくわかります。 それに、この内容で160分というのはあまりにも長い。 前作では、そのエンターテイメント性の高さから、長さを全く感じませんでした。それは、面白かったのと同時に、映画を完成させるのに必要な尺の長さだったからだと思うのです。 今作の脚本で、本当にこの尺の長さは必要だったのでしょうか。 描きたいものを詰め込むだけなら、誰でもできると思うんですよね。無駄をけずり、必要なものを残し、限られた時間の中で見せようと試行錯誤された映画が好きですね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2017-09-30 14:54:16)(良:3票) |
940. クライモリ デッド・ビギニング
《ネタバレ》 久しぶりにドキドキしながらホラーを見ました。『1』や『2』と比べても、この『3』はかなり面白いです。 病院に収容された人食い一族。言葉は話せないが、頭は良い。それを印象づける冒頭の惨劇。この導入だけで、心が釘付けになります。 そしてメインストーリー。吹雪の中道に迷った若者達が冒頭の廃病院へとたどり着く。恥ずかしくなるくらいお約束の王道パターン。でも、それがイイ! なかなか人食い一族が出てこない。でも、冒頭の病院が舞台になっているため、緊張感のある画作りに成功しています。音楽もいいですね。 人食い一族がでてきたら怒涛の展開。ホラー映画でよくある、『主人公は知っているけれど、まわりは誰も信じない。』なんて、しけた演出は一切なし。みんなが集まっているところに投げ込まれる人体の一部。あっという間にパニックに。みんなが見ている前で吊り上げられる女性。慌てて外に飛び出し逃げようとするが、点火プラグが抜かれている。このシークエンス、無駄がなくて好きですね。 外は極寒。中は殺人鬼。どちらを選ぶか、究極の選択。 途中で女性が一人外部との連絡係として助けを呼びに行くが、結局凍死。この女性の絶望的な状況も、限られた時間の中できちんと描いて見せたのは高評価。 マイナスポイントとしては、千載一遇のチャンスに、何を思ったか『殺人鬼たちを殺すのをやめさせる』という不自然すぎるモラルが水を差す。 まあそういった気になる部分があったとしても、適度な恐怖感、ぎりぎりラインのグロ描写、スピード感、サバイバル演出、そのどれもがバランスがとれていて、一級品のホラーとして仕上がっています。 [DVD(字幕)] 8点(2017-09-29 02:15:11) |