81. 祇園囃子
《ネタバレ》 神崎の前で美代春が脱いだ白足袋。何とも言えぬ艶めかしさに息を呑みました。観終わって、単なる売春婦ではない「富士山同様日本の宝」と言われる祇園芸妓としての気位の高さ、乙に澄まして紳士面するものの仕事に欲情を絡める薄汚い本省課長にカラダを売らねばならぬ理不尽さ、相反する二つを繋ぐ人としての情け、それぞれが白足袋に凝縮されていたように思いました。女優三人の好演の相乗効果が構図同様に作品の奥行きの深さを与えていました。 [DVD(邦画)] 8点(2011-08-26 23:24:12)(良:2票) |
82. 大阪物語(1957)
一家の長として守るものが、家族から金へと変わる生き様に、共感するやら呆れるやら。日々遣り繰りに汲々としている身にとっては、何が幸せなのかを考えさせられた訓話の如き作品でした。カラリとした味わいが心地よかったです。 [DVD(邦画)] 8点(2011-07-31 11:41:52) |
83. 私は貝になりたい(1959)
戦争行為や自国軍隊の有り方はもとより、勝者が正義面する軍事裁判の理不尽さを見せ付けられます。天が罰を下せるのなら何千何万何十万の非戦闘員を爆弾で殺戮した米兵も絞首刑になるのです。当人や残された肉親が味わう思いを何時の世代までも語り継がねばならない事をエンディングに思いました。 [DVD(邦画)] 8点(2010-11-23 23:34:49) |
84. 道(1954)
《ネタバレ》 自己を不必要に低く評価し、好きになる事・好かれる事に生きる意義を求め、どんな扱いにもひたすら従順なジェルソミーナ。壊れてしまった都合のいい女を持て余し見切りをつけたザンパノ。支配する者とされる者の恋、上下の隔てのある恋をまざまざと見せつけられました。「好きだ」の一言をかけてもらえなかったジェルソミーナの胸中は察するものがあります。砂浜に突っ伏するザンパノの姿は、何の痛痒も感じぬ事に比べ救いがあるのかもしれませんが、お前はこの先どのように生きるのかと作者が問うているように見えました。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-02 23:37:27)(良:1票) |
85. 白い馬(1952)
《ネタバレ》 躍動感、臨場感、ほのぼのさが溢れる映像です。心穏やかな少年の内に秘めた芯の強さ、白馬の誇り高さには驚かされます。絆の強さ故の戻る事を全く考えぬラストシーンに呆然とさせられました。白馬と少年が穏やかに過ごせる場所がこの世にはないのでしょうか。世間の常識、倫理観とやらいうものから外れた友情や愛情がこの世から除外されなければならないのでしょうか。そうであったとしても絆を互いに切る事をしない「意志」に感じ入った作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2008-07-28 01:15:53)(良:1票) |
86. 赤い風船
《ネタバレ》 映画の旧称が活動写真である事を思い起こさせる、動く写真の魔力を実感させられました。ラストは切ないです。少年と風船が穏やかな日々を過ごせる場所は空の彼方しかなかったのでしょうか。 [映画館(字幕)] 8点(2008-07-28 00:58:52)(良:2票) |
87. また逢う日まで
《ネタバレ》 念願の初鑑賞。伝説のキスシーンに関しては、生涯ただ一度交わした口づけがガラス越しであったと想像していましたので肩透かしを受けました。しかし、互いを隔てるガラスという障害は克服出来た二人が戦争という障害に抗えずまた逢う日が訪れなかった儚い恋物語は見応え充分でした。「1間でいいから・・・フライパンを買って・・・子供は何人がいいかしら・・・」「絵の勉強をしなさい・・・・本は読まなくちゃいけない・・」「何としても生きてなきゃ・・」別れの悲しみは口にせず将来を語り合うシーンは何ともやるせないものです。「お国の為」を謳いながら国の民のささやかな願いを踏み潰す戦争の過ちを唱える監督の信念がずしりと響く作品で、この先忘れる事はないでしょう。 [DVD(邦画)] 8点(2008-06-07 00:38:16)(良:1票) |
88. 戦場にかける橋
《ネタバレ》 決して節を曲げず部下の前では背筋を伸ばして歩き、仕事を通じて部下を成長させようとするニコルスン。現実を把握し、独り悔し泣きにのたうちながらも譲歩した斉藤大佐。リーダーのあり方を考えさせられました。爆薬の設置から爆破に至る息詰まる展開を経てのラストシーン、 madness madness 狂った指導者が巻き起こす戦争という気違い沙汰を知らしめてくれます。今回、劇場で鑑賞出来た事は幸運でした。 [映画館(字幕)] 8点(2007-04-21 01:29:27) |
89. 蝿男の恐怖
《ネタバレ》 蝿男が何千万の蝿を率いて街を占拠する、蝿男が未知の病原菌を街にばらまく、ような恐怖を想像して、つい借りてしまいましたが、蝿男が恐怖ではなく、蝿男になってしまった事が恐怖の『悲しみの蝿男』というタイトルがぴったりの物語でした。登場人物全員が善意の人々からなる見事な脚本で、科学者として抑えきれない好奇心が生み出す悲劇が科学の進歩と隣り合わせの危険な落とし穴を感じさせ、妻を愛しているという人間としての意識がある内にという思いから彼がとった行為には胸が詰まるものがあります。左手だけ見せて頭の黒い布がここが最高というタイミングで取れて変わり果てた姿があらわになる恐怖の演出にも唸らされます。自分の予想を良い意味で裏切られた印象に残る作品でした。 8点(2005-02-13 15:51:01)(良:2票) |
90. サンセット大通り
初めて観ました。ノーマの老いを受け入れられない姿は強烈な印象ですが、自分にはマックスの存在が圧倒的でした。ノーマに仕える姿は執事としての忠実さを超えたものを感じましたが、最初のご亭主だったとは・・・自分の想像をはるかに超えるものでした。無償の愛というのでしょうか。ラストシーンの、マックスの別れを覚悟したような眼差しは胸が痛くなり、最後の晴れ姿を見届けてあげるから悔いなく精一杯演じよ、という思いがこめられたような「アクション」 この一言には胸が一杯になりました。心に残る作品です。 8点(2004-10-07 08:31:19) |
91. 戦慄の七日間
《ネタバレ》 英国首相に核兵器製造中止を宣言しなければ一週間後にロンドン市内で核爆弾を爆破させる。脅迫状を送りつけたのは国の機関の核兵器研究者教授。マッドサイエンティストには見えないが、マトモじゃない感が滲む教授。物足りなさを感じた淡々とした(過ぎる)立ち居振る舞いですが、ドキュメンタリータッチな作風にはこれで良いのかも。 老女優とトリクシーが印象深い存在でした。 理路整然とした特筆もののロンドン市民疎開大移動。 1945年8月から5年後の製作にエキストラ及びリアルタイムで鑑賞した方は恐ろしさを感じたのでは。 結末は予想出来たものですが、手に汗握る程の緊迫感が無かったのが残念ではあるものの、アカデミー原案賞獲得が納得の掘出物の一品です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-04-29 00:03:31) |
92. モロッコ慕情
マルタ・トーレン、ハンフリー・ボガート、リー・J・コップの三角関係にワクワクしたのですが。 尻すぼみな結末が歯痒い。 舞台は1925年ダマスカス、適当な邦題付けたらあきませんよ。 [DVD(字幕)] 7点(2024-03-25 22:03:40) |
93. マックィーンの絶対の危機(ピンチ)
《ネタバレ》 子供時分に観て今でも覚えているシーン。陽気な理髪師が長髪青年をシャンプーして、すすぐ段になって排水溝からニョロ~と出てきたアメーバに・・・震え上がりましたよ。長年観直してみたかったところで出会えた本作は28歳マックィーン主演の正編だったというのに無限へぇ。他愛ない筋立てでニョロニョロも微笑ましい安上がりな作品。しかし、面構えとちょっとした身のこなしに後の大スターの片鱗がうかがえた若きマックィーンが観られる掘出物の一品。 [DVD(字幕)] 7点(2024-01-23 01:14:58) |
94. 地球最後の日
ドント・ルック・アップの元ネタに思えた作品。かの作品のバカ騒ぎが皆無の生真面目な筋立てと昭和26年製の小じっかりした特撮は、無理筋が散見されましたが白ける事無く一気の完走でした。ルドルフ・マテ、ジョージ・パルを始めとする一流スタッフ参加は伊達じゃないと思ったところです。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-01-15 02:06:46) |
95. 白鯨
《ネタバレ》 原作未読。恥ずかしながらエイハブが独りでモビーディックと闘う話だと今日まで思っていました。多くのクルーの仕事ぶりが興味深く、リチャード・ベーズハート、レオ・ゲン、ハリー・アンドリュース、フリードリッヒ・フォン・レデブールの個性豊かなキャラがグレゴリー・ペックに劣らぬ存在感でした。結末は心底仰天、あの場面でレオ・ゲンに心変わりさせたのは何なのか? 一人を残して道連れにさせられたクルーに出航時を思い消沈であります。1956年製の映像はなかなかの迫力の力作を堪能しました。 [DVD(字幕)] 7点(2023-07-22 11:52:43) |
96. ロベレ将軍
《ネタバレ》 藁にも縋る思いの家族から金をまきあげてはバクチですってしまうバルドーネ大佐(大佐であるわけないと思ったら案の定)の火の付いたおが屑のような一言一句の嫌らしさときたら。ヴィットリオ・デ・シーカの達者な演技に仰天します。彼をロベレ将軍に仕立て上げるミュラー大佐(こちらは正真正銘)の一分の隙もない出で立ちと言動に惚れ惚れ。 愛国心に目覚めて迎えた誇り高い最期はイタリア国民を鼓舞していますが、私的に最後までクズのままで哀れな最期を見たかったところです。実話というのが驚きの見応えある良作でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-06-24 03:13:15) |
97. 崖
《ネタバレ》 フェリーニ作品に腰が引けるのですがリチャード・ベースハート出演に釣られて恐る恐る鑑賞。 心配は杞憂に終わった良作でした。詐欺師3人一体となっての騙しの手口で貧しい人々のなけなしの金を巻き上げるのに血圧計が振り切れる。外道生活から抜け出すべく後戻り出来た妻子持ちで若いリチャード・ベースハートと出来なかったブロデリック・クロフォード。48歳が強調されておりましたが、一回り上の私はどないなるんや! しょんぼりします。 救いの無い結末ですが因果応報、止む無しなのでしょう。 私的には「道」>「崖」≧「カビリアの夜」であります。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-03-26 16:12:24)(良:1票) |
98. 危険な関係(1959)
《ネタバレ》 子宮でモノを考えるジャンヌ・モローのゲスい事この上なく。類は友を呼ぶジェラール・フィリップ。 外ヅラのみ上品な極悪ゲス夫婦に罰が下るのを待った甲斐があった結末。 ジャン・ルイ・トランティニャン、ジェラール・フィリップが同じフレームに収まっているお宝映像に加点。 本作がジェラール・フィリップ遺作というのに、当時のファンの無念さが想像出来ます。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-12-09 13:31:38) |
99. 裸の拍車
《ネタバレ》 西部劇のアクセントとしてインディアンとの銃撃戦があるものの、登場人物5人による心理戦がメイン。お目当てロバート・ライアンが素晴らしい。ヘラヘラ微笑みを浮かべて実は無実なのでは、最後のほうまで分からず。一周回って元の位置のようなラストの対決は目もくらむ映像と相まって手に汗握るもの。拍車があのように使われるとは! ハリウッドの良心ジェームズ・スチュワートらしい結末が唐突で無理筋を感じたところが惜しいものの、見惚れる大自然を舞台にした見応え十分の作品です。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-11-29 18:59:42) |
100. 白い砂
WW2時南太平洋の孤島に流れ着いた海兵隊員と島唯一の住人の尼僧の物語。ロバート・ミッチャムとデボラ・カーのキャスティングが絶妙で彼女のシスター姿は絶品。ジョン・ヒューストンらしからぬ崩れそうで崩れない慎み深い結末が感慨深い。一升瓶のラベルが「白鹿」だったのに100へぇであります。 [DVD(字幕)] 7点(2022-11-05 19:48:22) |