81. ダメジン
《ネタバレ》 この映画のすごいところは、「俺はなんか大事なことを見落としてしまったのではないか?」という感情を観客に抱かせてしまう所ではないかと思う。いろんなところにいろんなものがひそんでいて、こういう映画をみると、世界を見る目が鍛えられる気がするのは僕だけだろうか? [DVD(邦画)] 7点(2007-07-16 20:56:18)(笑:1票) (良:1票) |
82. おいしい殺し方 -A Delicious Way to Kill-
《ネタバレ》 ストーリー的なひねり、トリックという点では、並みいるミステリーの傑作群に一歩足りない気がするが、コメディーという点では完璧である。掛け合いの台詞、キャスト、どれをとってもめちゃくちゃなまでに面白い。もともと舞台人による脚本・監督だけに、コメディー映画の中でも異彩を放つ独特の笑いのテンションがあって、それだけで一見の価値がある。画像がなんとなくテレビドラマっぽいが、それはご愛嬌。教頭先生の夫婦がたこ焼き食べながら銀杏並木を歩くシーンとか、夫婦間の心の葛藤と愛情をうまく表現するとても映画的な良いシーンだと思う。あとは主演の3人の女優が素晴らしかった。 [DVD(邦画)] 8点(2007-07-16 20:49:58) |
83. お嬢さん乾杯
《ネタバレ》 はじめてであったときには下ばっかり見て、家に遊びに行けば、飲み物出して「どうぞ、どうぞ」攻撃。この時代の恋人が話すことって、現代の恋人たちの会話とずいぶん違うんだろうなぁと想像すると楽しい。佐野周ニの手にキスしたあと、あせって家の入り口でこけちゃう所とか、こういうボケが成立する映画の雰囲気に触れると、懐かしいというか、すてきというか、シンプルに心が癒される。足がしびれた佐野の演技もいいし。あれこれと考えることなく、すかっとたのしめる作品。原節子のアップが、今まで見た彼女の作品の中で一番神々しいように感じられた。 [DVD(邦画)] 8点(2007-07-16 20:40:01) |
84. めし
人間の幸せっってなんだろうか。この問いに「○○のような生活ができることを幸せという」という形で答えようとすれば、すくなくとも時代的な背景・影響を逃れることはできない。この映画で語られる夫婦の姿は戦後間もない時期のものだし、男性観、女性観についても現在にくらべるとずいぶん違和感が感じられる。その点で、現代の感覚をもって鑑賞した場合、すなおに共感できない部分をこの映画が持っていることは致し方ないだろう。ただ、この映画が普遍的な意味を持つすれば、複数の人間が一緒に暮らしていくって事が、思いのほか、そういう「共同生活」を快適なものにしていこうという構成員各自の努力が必要であるということだ。また、そういう努力をすること自体がある種の幸せであるという「思い込み」あるいは「暗示」を「価値観」という名のもとに集団として共有しているのが「家族」であるということだ。そういう幻想が初めて「幻想」であるということにきづかれだしたのが戦後ということなのだろう。 [DVD(邦画)] 7点(2007-07-16 20:22:48) |
85. キサラギ
舞台の映画化。よく練られた脚本はさすが。無駄な台詞、無駄な登場人物がなくて、非常に心地よく観れた。全体としてはよくできていると感嘆するところだが、話の主題が謎の死を遂げたアイドルについてなので、結構重たい部分があり、コメディといっても素直に笑いに徹せられないところがすこし中途半端になってしまった印象。しかし、同じ出来事がちょっとした条件の違いでここまで異なる事象に読み替えられるってすごいことだ。おそるべし人間の物語力。 [映画館(字幕)] 8点(2007-07-08 23:00:15) |
86. 天使のくれた時間
佳作だと思う。ティア・レオーニがとても魅力的だ。それとこの種の映画には不可欠なユーモアがちりばめられていて、十分に楽しめる。内容は、家族愛と仕事のどちらを大事にするかという価値観の対立がテーマになっている。もちろんアメリカが理想とする家族愛は必ずしも日本人が抱いている理想像とは違うと思うし、日本の場合はそもそも会社もひとつのファミリーみたいなものだから、この映画のテーマをそのまま日本人が共有することは難しいかもしれない。でもそういう堅苦しさを除けば、非常にシンプルで分かりやすいテーマを、いい脚本とテンポある演出のなかで実力のある演技陣がしっかりと表現しているので、はずれるわけがない。 [DVD(字幕)] 7点(2007-07-08 22:51:04) |
87. 間宮兄弟
《ネタバレ》 これは惜しい。エピソードが多いせいか散漫な印象。佐々木蔵人が江尻エリカを誘うシーンの「断る」が一番面白かった。あとはまあまあな切れのシーンが多い。全体的にコメディにするならそういうテンションのカメラが必要。ほのぼのを強調しすぎなのか、カメラフレームの落ち着きっぷりが、笑いをずいぶん削いでしまっている。 [DVD(邦画)] 6点(2007-04-29 22:49:22) |
88. アルファヴィル
《ネタバレ》 コンピューターが全てを支配・管理するために、感情を発露した人間を処刑する。しかもその処刑はコンピューターを開発した科学者が行っている。ものすごい本末転倒だ。JLGのパロディー精神躍如。コンピューターがレミー・コーションを尋問する時の台詞「すべては語られた。意味の意味が変わらないのであれば。」もかっこいいし、見た目はともかく、中身はクールにできてる傑作だと思う。ラストの「愛」発見もすてきだ。生きるということは言葉を語るのと同義なのであることをこれでもかと見せ付けられる映画。ずいぶん前の作品だが、今見てもいろいろと考えさせてくれる。 [DVD(字幕)] 9点(2007-04-29 22:44:47) |
89. ナイロビの蜂
《ネタバレ》 ラストを批判する人がいる。あれでは救われないではないかと。それはまずい。だって、映画だけ救われてどうする?というのが、あの映画の言いたいことなのだから。現実は救われていないのだ。という僕自身も、のうのうの日本に生きていて、過酷な現実の話だけを聞いて、どうする訳でもなく、思いをめぐらすことぐらいしかできていないのだが。この手の映画にはいつもこの種のジレンマがある。映画の話に限っていえば、主演の2人がとても素敵な空気をかもし出している。それがほんのわずかな救い。 [DVD(字幕)] 6点(2007-04-29 22:36:13) |
90. かもめ食堂
すてきな台詞が多かった。「やりたいことをやれていていいわね。」「やりたくないことをやってないだけです。」そういう、スタンスが個人的に好きです。物事の判断で方法で、やりたいことをやるというよりも、やりたくないことをしないとうほうが、誤りにくいと思うのはぼくだけでしょうかね。/「私が日本に帰ってしまったら寂しいですか。」「うーん」「やぱりさびしくないんですね。」自分が「さびしい」と答えることによって相手の決断を鈍らせてしまってはという思い。わかる気がするっす。自分の存在が相手にとって重荷にならないように思う優しさをもっと多くの人が理解すればいい世界になると思うのですが。それにしても、普通にしてるのにユーモア感たっぷりのこの映画のキャスト、その時点でもう降参です。合気道の膝行やガッチャマンにも◎。 [DVD(邦画)] 9点(2007-04-29 22:29:41)(良:1票) |
91. ハチミツとクローバー
この映画は予告編に惹かれて観ました。観てみると、あらゆる意味で予告編だけで事が足りた気がします。雰囲気も台詞も。 [DVD(邦画)] 5点(2007-04-29 22:20:10) |
92. RENT/レント
ストーリーはオペラ「ラ・ボエーム」を1990年前後のニューヨークに移し替えたもの。それはともかく、音楽がいい。メロディーはオーソドックスといえばそんな片付け方もありかとは思う。でも、考えてみると、あの歌力、そうは集まりませんぜ。踊りでもなく、スターでもなく、歌を売り物にするミュージカル映画なんて、正直僕はこの作品が初めてです。歌好きにはたまらない一作。 [DVD(字幕)] 7点(2007-04-29 22:16:48) |
93. トランスポーター2
「ありえねー」「まじで!」と連呼しました。少林サッカーみたいな笑える裏切りでなく、アクションの技で予想を裏切ってくれる痛快作。こういう手ごたえ、最近少ないから、貴重!おもしろい。 [DVD(字幕)] 8点(2007-04-29 22:11:59) |
94. トニー滝谷
この映画には独特な雰囲気がある。空気感がある。観れば分かる。それを感じるだけでもすごく刺激的だ。普通の映画に比べておおすぎる朗読、すくなすぎる音、短すぎる上映時間。そういう比較が虚しく思えるほど、この映画は表現したいことのために表現できているという意味で完結している。映画の中でトニー滝谷の孤独が感じられたことで、僕は、孤独なのは僕だけじゃないと思えた。孤独なものどうしが逆説的に共感し合えるなんて素敵ではないか。 [DVD(邦画)] 8点(2007-04-29 22:08:43) |
95. クローサー(2004)
《ネタバレ》 ジュード・ロウから別れを告げられたときのナタリー・ポートマンの演技が素晴らしかった。そのシーンが一番好き。ひたすらそれしか目に入らなかった。しかし、こんなすてきな女優さんと音楽があるにもかかわらず、この映画はあんまりすくわれない。それはなぜか。結局、根本的な拠り所がないからだ。アリスがイギリスへ来たのはなにか変えたかったからだろう。ロンドンで出会った恋人には偽りの名前で接し、写真家に撮られた自分の写真を見て「全部嘘よ」といい、最後には愛という感情までもがふと燃え尽きて、アメリカに戻ることになる。結局、彼女は違う自分をつかの間演技することはできたけれど、それを本当の自分として引き受けることはできなかったのだ。自分の今やっていることへのコミットができるかどうかは、実は自分の意志で操れることではない。だとすればそもそも"自分”なんて概念は必要だろうか。題名のcloserからは、相手だけでなく、本当の自分に近づこうとしてるけど、到達することができない、そういうもどかしさが伝わってくる。でも、そういうもどかしさは僕自身がいつも一緒にいる感情だから、わざわざ映画を見て改めて思い知らされる必要はない。 [DVD(字幕)] 5点(2007-04-01 02:20:23)(良:1票) |
96. 世界最速のインディアン
本当にまっすぐな映画。数年前の「ストレートストーリー」にも似た味わいがある。深みというより、ひとつの目標を達成するためにまい進して、ぶち当たる困難にはユーモアと回りの人たちがをひきつける魅力で乗り越えていく。そういう単純なれど、できればいいなという生き方が満ちている。それにしても、この人のように、自分の好きなことをやるという姿は肯定的に描かれているにもかかわらず、世の中の大半の人間が、家族のため、誰かのため、国のため、に動こうとし、そのためにいろんな惨事が起きているのは残念だ。自分以外の存在のために生きることは、誤りうること。そういう認識を持たないナイーブな人たちにはこの映画を見てほしい。 [映画館(字幕)] 7点(2007-02-18 09:22:10) |
97. ブロークン・フラワーズ
だれひとり幸せばっかりな人がでてこない。動物病院の受付の姉ちゃん以外は。それにしても妙に父親ぶっちゃうジョンストンが青年に逃げられてしまうシーンは痛烈な皮肉である。人が社会的な役割を演じるには、それまでの実績がものをいうのである。たとえ、どんないい言葉をいっていたとしても。だから、人はそれまでに培ってきた経験をもとにしてしか生きていけない。人に資質の差があるとすれば、それは経験からどれだけ豊かなものを掬い取ってこれるか、その点における差でしかないのだろう。でも、そういった哀愁や感傷っていままでジャームッシュ作品には出てこなかった雰囲気ではないか。いつもはジャームッシュ作品を見て、すっきりできたのに、今回はなんか年齢を帯びた複雑さが風通しを悪くしている気がする。 [映画館(字幕)] 7点(2007-02-17 23:12:41) |
98. 約三十の嘘
舞台となっているトワイライトエクスプレスは鉄道ファンの間では名高い寝台特急。僕はコンパートメント内に二段ベッドが二組はいっているのにしか乗ったことがないので、一等客室の中が見れてラッキーだったが、大半の映画ファンはそういう楽しみ方はしないだろう。基本的に微妙なドラマが微妙なミステリーと一緒に進行する普通の映画。たとえばミステリーにするならもっとプロットや伏線に気を使うべきだし、ドラマ重視にするなら、もっとキャラクターを描きこまないと深みが出ない。結局結論として、この映画はドラマでもミステリーでもなく、コメディだったということか。田辺誠人の役設定の時点でそのことに気づくべきであった。コメディだと思って最初から見ればもっと印象がいいに違いない。宣伝方法誤ってます。 [DVD(邦画)] 5点(2007-02-17 23:00:52) |
99. ぼくを葬る(おくる)
テーマは死を宣告された主人公の心の葛藤。どれだけの数の映画が同じテーマを扱ってきただろうか。ごまんとある同じテーマの映画の中で、この映画が記憶に残されるべきだとすればただ一点につきる。それは、主人公が苦しみを打ち明けた時の祖母の言葉。「じゃ、今夜おまえと死のう」。この祖母の言葉をうけて主人公が流す涙。このシーンだけで、この映画は十分なのである。なぜなら、この台詞が示すように、この監督が本当に描きたかったのは「死を宣告されたもの」ではなく、「死を宣告されたものの周りにいるもの」だから。通常、主人公が死を宣告される映画では、観客は「自分が死を宣告されたらどうするだろう」と考え、主人公に自分の姿を重ねる。でも、この祖母の台詞があることで、観客は「もし誰かから死を宣告されていることを告白されたら自分はどう応えるか」という問いに巻き込まれる。そう。本当に人生で大切なことは、自分の死に方ではなく、他人を見葬る(みおくる)仕方なのではないか。自分がどのように死んだところで、死んだあとに自分の人生などないのだから自分の糧とはならない。でも他人の死を見葬ることは自分の糧になるのだ。どのように他人を見葬るか。それがその人の心のレベルを決めるのではないかと思う。そういう思考を喚起してくれる点で、この映画は記憶に残るべき作品になっている。 [DVD(字幕)] 6点(2007-02-17 22:50:57) |
100. サヨナラ COLOR
「さよならからはじまることもあるんだよ。」っていいせりふかもしれない。僕はどちらかというと「さよならからはじまることしかない」というかんじなのだが。たまに、人間はいろんな人を看取るために生きているのではないかと思う。この映画も、死んだ人が送られ、残った人が力を得て歩き出す。残った人もいずれは送られる。そんな流れを静謐に描いている。二人の浜辺のシーンとか、病室で影絵をするシーンとかは、映画的にもよくできているシーンだと思う。あとは、原田知世がすてきだ。みんなが捨てたガラス破片を通過することでぬくもりのある光を燈すランプが生まれる。おそらく、この世の中を守っているのは、みんなが見捨てたものだけを見つづける視線なのだろう。そういう視線がなければ、世界は簡単に極端な暴走までいってしまう。人が捨てたものを見る(by宮本常一)。だからこの映画もみんながみるものにしか興味を示さない人にとってはナンセンスに移るに違いない。 [DVD(邦画)] 7点(2007-02-17 22:33:28)(良:1票) |