81. コーチ・カーター
《ネタバレ》 『これは部活動である』というテーマを徹底している点に好感が持てました。スポ根にある『栄光』で話を進めるだけでなく、その背後にある『慢心』をあます所なく描いている。ただの感動映画に収まってなくて非常に良いです。犯罪・貧困・妊娠・進路。粋がっていてもまだ10代の若者が直面する問題に、カーターコーチは助けるのではなく、直接的にまたは間接的に生徒たちが自分で解決するよう、厳しく教育していく様にズシリと感じるものがありました。カーターコーチがエリートビジネスマンであったら、かつて成功した男に過ぎなくなってしまいますが、小さなスポーツ店の店主で収まっているあたり、ジュニアやワームと同じく、優秀な選手でありながら学業の壁に悩んだ人生を送ってきたのを想像させられ、この若者たちを自分と同じような高校プレーヤーで終わらせたくないという厳しさの奥にある優しさを感じます。序盤、「黒人同士で”二ガー”と呼び合うのはクールか!?」と疑問を訴えるカーターコーチがいました。話が進むにつれて、卒業生の8割が刑務所に入所するリッチモンドを、誇りをもって「俺たちの故郷はリッチモンド!」と叫ぶバスケ部員たちこそ、最高にクールです。しかし『腕立て伏せ500回』は恐怖ですね(笑)。 [DVD(吹替)] 8点(2005-12-20 18:02:16)(良:1票) |
82. 木曜組曲
これはミステリーとして観れば、ネタはしょぼかったです。でも各人物の性格設定など、サスペンスとしての魅せ方は十分堪能できました。年に一度みんなで集まって、という設定は、小説ではありきたりですが、映像としては初見だったこともあり、新鮮でした。果たして時子さんは誰に殺されたのか?という謎を、最後の最後まで引っ張り、観ている僕をやきもきさせる。真相を知っている者の締めくくりも丁寧に作り上げてある。真犯人?の回想も人間ドラマがあって非常に良い。お金はかかってなさそうですけど、経験豊富な女優さんたちの演技でお腹いっぱいになりました。浅丘ルリ子の目が変だったので、8点です。 [地上波(吹替)] 8点(2005-12-19 16:46:54)(笑:1票) |
83. 50回目のファースト・キス(2004)
周囲の人間が、いかに身内の病気と向き合うかを教えられました。ルーシーの家族はルーシーを傷つけたくないがために、普段の生活に気を配る。恋人となりたいヘンリーは、なんとかしてルーシーに思い出を残そうと奔走する。逃げたほうがいいのか立ち向かうべきなのか? 観ている人は、自分だったら果たしてどちらを選択して振舞うのがいいのか?そういう点で深く考えさせられました。舞台がトロピカルなので重々しさは帳消しされていますが、ラブストーリーに関心がない人でも胸につまるものがあると思いました。序盤がお下品だというコメントがちらほら見られる映画だったのですが、吹き替えで観ましたので毒は感じなかったですね。保健体育的なエロと思ってもらっていいと思います。ラストは納得できるものがあり、後味すっきり爽快です。 [DVD(吹替)] 8点(2005-12-07 22:52:50) |
84. ピエロの赤い鼻
《ネタバレ》 変人の父親を嫌がる少年の気持ち、よく分かります。しかし、なぜピエロを演じ続けるかを知り、本当の父親を知る。泣かせるじゃないですか。戦争ものって、ドイツ軍人を悪人にする映画が多いですけど、この映画では、やむなく軍にいる軍人の哀しみも謳っている。軍人も平民も身を挺して人を助ける。あのとき「生ある限り希望がある」と言ったゾゾの一言があったからこそ、愛する妻、子供がいる。たとえ変人と思われてもいい。そんな生き方を選んだお父さんってエライ! しかし『奇人たちの晩餐会』のピニョンさんが主人公なので、顔だけで笑ってしまいます。 [DVD(吹替)] 8点(2005-11-05 13:06:09) |
85. 復讐者に憐れみを
《ネタバレ》 この映画、主人公が聴覚障害者のリュなのか、娘の復讐を誓うドンジンなのか、主人公の判別が難しいです(もしかしたら、それが狙いなのかもしれません)。探すのが大変なくらいBGMというものが流れません。ビシッ!とか、バキッ!とか、そういう効果音の編集もありません。徹底的に、ムダな”音”を排除しています。音が無いということは、観客を聴覚障害者の感覚へと巧みに誘導しています。上手い。それが、殴る、切るなどの渇いた、しかしリアルな生の音を効果的に活かしています。BGMがあると、テクノサウンドなら激しいアクション、コミカルポップならコメディ、クラシックなら重厚さなど、音楽の影響で観ているシーンについて勝手なイメージをもってしまうと思うからです。この映画を作った人、よく考えてます。しかもラスト、ドンジンへの復讐を果たしたのは、リュにもドンジンにもあった、憎しみや苦悩といった感情が全く無い集団。復讐の手引きをしたのはヨンミだったんですが、そこへ導いたのはリュだったのではないか? 謎は尽きません。復讐の螺旋は終わらないという恐怖と憐れみを感じてしまいました。 [DVD(吹替)] 8点(2005-09-15 13:25:52) |
86. いま、会いにゆきます
《ネタバレ》 中村獅童と竹内結子の結婚をワイドショーで知ってから観たので、なんだ、おのろけ映画か? ツマンネ、と思って観ましたが、謝ります。ホントにごめんなさい。泣いてしまいました。獅童が演ずる、不器用だけど誠実で一途な巧が、とても良かった。澪の終盤に秘められた秘話も涙を誘います。賀来千香子, 佐野史郎, 野際陽子の『ずっとあなたが好きだった』とか、ドロドロしたドラマを観てきた人間からすれば、こういう純愛ドラマって、新鮮で素敵です。まだまだ僕も性根が腐ってなくて安心しました。どちらかというと僕もモテない寄りの人間なので、思いを告げられないながらも、澪を想う巧が、自分のことのように思えてなりません。感動を、感動をありがとう! [DVD(吹替)] 8点(2005-09-03 21:24:09) |
87. 香港国際警察/NEW POLICE STORY
《ネタバレ》 ここまで犯人に対して怒りと憎しみを覚え、しかし犯人を憐れむ映画も初めてでした。ド派手な銃撃と手に汗にぎるカンフーのバランスが上手く調和したアクションシーンの凄まじさは筆舌に尽くせないので、あえて省略します。あれこれ感想を書くよりも、実際に観てもらったほうが手っ取り早いです。むしろアクションよりも、過去の失敗から立ち直ろうとするチャン警部の苦悩がひしひし伝わってきて、人間ドラマとしての脚本の素晴らしさに惹き付けられました。警察官としてではなく、仲間を守れなかった後悔。新たなる悲劇。シウホンの叱咤がチャン警部を復活させていく。犯人グループの主犯格もまた…。”罪を憎んで人を憎まず”。この映画が警察官の映画であることを、最後の最後まで通してくれました。 [DVD(吹替)] 8点(2005-09-03 11:15:37) |
88. セルラー
《ネタバレ》 御年51歳のキム・ベイシンガーが相変わらずお美しい。ある意味、『LAコンフィデンシャル』で、この映画と同じく○○の汚職を取り上げた映画で演じた彼女を配役したのは、この映画の監督の、『LA~』に対するリスペクトを感じます。この映画のポイントって、ところどころに出てくる【バカ女】たちですね。元カノから、ケータイしながら運転女、ラジオガンガン女、弁護士の母親、レッカー屋の受付。いいタイミングでライアンやその他登場人物たちをイライラさせる演出が、観ている側のハラハラを煽ってくれて、非常に面白かったです。『ファーゴ』で妻の誘拐を計画したウィリアム・H・メイシーを配役したのは、正にはまっていましたね。この映画を日本でリメイクするとしたら、ボブ・ムーニー巡査部長の役は、ドリフの加トちゃん以外、考えられませんね。近年、まれに見るよく出来たサスペンス映画でした。ホント、一分のスキもない(驚)。 [DVD(吹替)] 8点(2005-09-02 18:12:55) |
89. ファイナル・デスティネーション
怖かった~! ”運命は自分で切り開くもの”というのは、週間少年ジャンプあたりの漫画に よく出てくるセリフですが、 ”死は予定通り計画されている”という切り口は斬新だったと思います。 撮影されている部分に一部のスキもなく、もれなく全てが 死神による殺しの伏線として連鎖している。 面白い。非常に面白い。 ”tod”と、”爆破経路”のくだりがゾッとしました。 しかし、終盤のクレアのくだりだけはどう考えてもやりすぎだよ~。 近年、稀にみる良質のサバイバル・サスペンスだったことは評価できると思います。 でも、最後にどうしても一言だけ言わせて下さいっ!「んなアホな」 [DVD(吹替)] 8点(2005-08-28 02:47:57)(良:1票) |
90. 深呼吸の必要
《ネタバレ》 全員がそれぞれに挫折をいまだに引きずりながら、束の間の仲間たちとのさとうきびの収穫を通して、心の傷を乗り越えていく。誰にも話せなかった胸の内を、さらりと語る一人一人を見ていると、本音で語れる環境に憧れを感じてしまいます。沖縄という楽園が都会での生活から解放してくれる。旅行ではなく、働くことで、あれこれ考えずに何かに没頭できる。淡々としていますが、良い映画でした。派手派手な女の子が、連絡船で帰らずにおにぎりを美味しそうにほうばるシーンが一番好きです。 [DVD(吹替)] 8点(2005-08-09 23:20:49) |
91. 僕はラジオ
《ネタバレ》 障害者を題材にした映画って弱いんです。下のほうでライヒマンさんも書いてますけど、観終わった後、優しい気持ちになっちゃいました。障害者をそのまま放っておけば、社会では邪魔になってしまう。可哀相だと思っていても、思っているだけで終わってしまいますよね。病気のせいとはいえ、健常者から見れば”変な”行動をしているからという理由で障害者を疎外してしまう。どんなにいい子ぶってる人だって、悪いと分かっていても、ジョニーと同じマネをしてしまいます。この映画では、子供のころ、障害をもった子に手を差し伸べなかったことを後悔していたジョーンズコーチが、ラジオに対して憐れみではなく、学校に欠かせない真っ当な人間であるという、感動の押し付けでない接し方に感動させてもらいました。ジョニーが改心したのも嬉しかったです。…、いや、ダメだダメだ!感動しているだけじゃダメなんだ!観終えた人たちも偏見から変わらないと!【ネタバレ】実話だと思ってなかったので、かなり衝撃的でした! [DVD(吹替)] 8点(2005-08-09 20:39:06) |
92. パッチギ!
《ネタバレ》 冒頭の修学旅行のバスのシーンから一気に惹きつけられて最後まで観てしまいました。ここまであまりに痛々しい暴力群像劇には慣れていないけど、いまの時代にない、ギラギラしたパワーを感じました。アリラン戦線、南北統一は険しいけれど、国籍の関係ない恋愛(キョンジャや桃子ね)や下町の絆だけは失いたくない、という気概を感じました。主人公がキョンジャを通して知る在日朝鮮人社会。決して話を美化させない井筒監督に一本取られました。よく考えると、この映画のクランクインって、ちょうど拉致問題でワイドショーを賑わせているときなんですよね。よくぞこの時期に撮ったもんだ。桃子の子供は、日本と朝鮮の明るい未来を予感させます。この映画の真の主役は、配役がばっちりハマっていた大友康平をも動かした『イムジン河』と、壊れたギターと若者の血潮が流れ落ちた、『京都の川』ですね。2つの川が象徴的でした。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-04 23:36:03)(良:1票) |
93. スパイダーマン2
《ネタバレ》 アクションだけなら10点満点です!残念ながらところどころのセリフが三文芝居じみていたので8点にします。しかし、ヒロインが可愛くないという理由で評価が下がっている映画も珍しいですね。この映画の場合、悪とは人間ではなく、人間の心の弱さのことを表していたのだと思います。裏を返せば、心の強さが正義であるといったところでしょうか。電車の中で、乗客がスパイダーマンの素顔を見ても、誰にも言わないと誓い合うシーンが感動しました。ラスト、ハリーが父のマスクを見つけて動揺して終わりますが、あえて続編を作らない方が、このシリーズはいいと思いました。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-22 16:40:47) |
94. ソウ
《ネタバレ》 テクノ・サウンドが恐怖とテンポを煽ってくれて、終始飽きさせてくれませんでした。罰ゲームの恐怖というんですか、赤の他人から命を弄ばされることで生きていることを感謝するとは、この映画の監督の視点に興味をそそられます。しかも小道具の使い方が絶妙です。生きるために面識のない2人が、協力と反目を繰り返すという、人間のエゴをえぐり出しており、心理サスペンスとしての描写も非常にうまい。低予算でも良い映画を作ることができる、良い手本だと思いました。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-22 11:58:26)(良:1票) |
95. おばあちゃんの家
《ネタバレ》 自分もどちらかというと、おばあちゃん子だったので、懐かしく感じてしまいました。サンウのわがままぶりが鼻につきますが、おばあちゃんのスローな動きが孫に気に入ってもらいたいとする気持ちを察してしまいます。普段は孫のわがままに甘いおばあちゃんですが、近所のおじいさんのお見舞いに行ったときに、サンウにちゃんと挨拶をするよう、サンウの頭を手で押す場面を観て、改めて、あぁ、おばあちゃんだなぁ、と思いました。最後の絵はがき、文字だけでなく一生懸命に描いたであろう絵も、うるっときちゃいますね。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-17 21:14:00) |
96. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 あれから9年、結婚して家庭をもったジェシーと、2人でいる孤独より1人でいる孤独の方を選んでいるセリーヌの物語です。放映時間からして、リアルタイムな内容でした。ウィーンで再会できなかったことを悔やみながら、お互いに強く、時には傷つきながら人生を歩んでいる姿がジーンとしました。9年経っても、決して「愛してる」という恋愛感情を口にできないながらも、友情を育めたのは良かったです。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-17 17:24:11) |
97. リベリオン
この映画、B級なのに出来栄えがA級ですね! むかし世界史で、【焚書坑儒】というのを勉強しました。思想を封じたものですが、この映画もそうでした。感情を殺すっていうのはむずかしいです。脚本と着眼点だけでも、おなか一杯です。このあと、ダウンタウンのDVD『ガキの使いやあらへんで!! 絶対に笑ってはいけない温泉宿』を観ました。やはり僕には感情を殺すことなどできやしませんでした(笑)。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-10 22:24:18) |
98. モンスター(2003)
《ネタバレ》 まず第一声は、シャーリーズ・セロンはどこに映ってんの?でした。それぐらい全然別人のようでした(裏を返せば完全に役になり切ってました)。オスカーは当然でしょう。生きるために殺す。この映画、いや、アイリーンという女囚にとっての真実です。人間が悪になるのは全ては環境のせいと語るのは簡単です。しかし、報道によって我々は、実際に犯罪を犯してしまった人間に対するイメージは悪であると当然のように思い、そこへ行き着くまでの過程を考えなしに断罪してしまいます。アイリーンの行為は本人があざけていた通り”汝殺すなかれ”の教えに従えば悪ですが、人生をやり直そうにも周囲が受け入れてくれない状況の中で、それでも生きなければいけないなら、殺人も自分の中では正当化せざるをえない。人間のそんなジレンマを上手く演じていたと思います。 [DVD(吹替)] 8点(2005-06-02 21:58:17)(良:1票) |
99. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 この映画はミュージカルとして観るのではなく、どこにでもいるシングルマザーのドキュメンタリーとして観たほうがいいですね。実は2回目の観賞にて、この点にしました。最初はセルマの顔になじめずリタイヤ。その後、いろいろな映画の観賞を経て再見。この映画を観る上で準備すべきは、①シングルマザーを題材にした映画を観る②身体障害者を題材にした映画を観る③フランダースの犬やテレビドラマ版家なき子(安達祐美)など、理不尽な目にあう主人公の話を観ておく。④たまには美男美女ばかりではない映画も観ておく(笑)。などを挙げておきます。セルマに対する批評が多いみたいですが、彼女は小さくても強いシングルマザーなんです。子を養ったり失明を恐れる重圧から解放されるのが、彼女にとっては舞台だったんだと思います。ミュージカルシーンになると、エキストラが急に仕事を辞めて踊ったり、死体が起き上がって踊ったりと不思議なシーンになりますが、ラストの締○台のシーンだけは、エキストラが現実世界のまま、セルマひとり歌う。そして”これは最後の歌じゃない”と出てフェードアウト。ラストの真意は観ている我々の想像に任せてもらえます。”これは最後の歌じゃない”。再見して良かったです。 [DVD(吹替)] 8点(2005-05-30 19:39:35)(笑:1票) |
100. ショーン・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 恋人同士の倦怠感、義理の親子関係、ニート問題、現代に特有の社会問題を、全然関係のないゾンビ映画をベースに展開していくのが面白かったです。観ている人みんなが、それぞれ共感できるのが、ショーンであり、エドであり、リズであり、バーニーであったと思います。絶妙な”間”で突いて来る笑いがドテっ腹に来ますね(笑)。 [DVD(吹替)] 8点(2005-05-25 18:03:01) |