81. 白痴(1951)
《ネタバレ》 登場人物の価値観に共感できないから、良さが感じられないんですよねぇ。やはりロシアの原作で、発表時期も古いから仕方がない? しかし監督としては、現代日本にも通じるから映画化したのでしょうが……。 舞台劇を思わせる構成で、それにふさわしく台詞のやりとりには堪能させられましたが、同時に舞台劇的重さも併せ持っていて、映画的な軽妙さがあまり感じられなかったのもマイナス。軽妙といえば、第二部前半での東山千栄子の軽妙なお芝居は楽しい。この方こういうのもできるのかと感心しました。そのほかの皆さまも熱演で、監督の演出自体も見るべきところが多く、引き込まれる部分もありましたが、しんどいところも少なくなく、結局はあまり高く評価できませんです。 [地上波(邦画)] 6点(2017-04-17 20:27:39) |
82. 浪花の恋の物語
《ネタバレ》 こういう「女に入れ込んで破滅する男」というのはよくわからないし、同情する気にもならないので、あまり高く評価できません。梅川は心優しくて魅力的に描かれてはいますが。それにしたって仕事で預かった金の封を切るというのはねぇ。よかったのは内田監督の演出で、特に終盤の道行からあとは見ごたえがありました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-04-13 08:54:40) |
83. 赤線地帯
《ネタバレ》 風俗映画としてはまあよくできていると思いますが、人物の描き方が薄いので、夫が自殺を図ったり息子に拒絶されておかしくなるというのが、唐突であまり説得力がないところが残念。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-05 08:41:35) |
84. キングコング: 髑髏島の巨神
《ネタバレ》 せっかくの割引の日ということで、IMAX3Dで鑑賞。かなり面白かったです。人物紹介もそこそこに髑髏島へ乗り込み、あとはとにかくアクションのつるべ打ち。途中での原住民との出会いもいい具合に箸休めになっています。適度にドラマを盛り込み、大上段に振りかぶっていないところが効果的でした。小道具の使い方もうまい(どうも最近、こういう映画を見たという記憶がありません)。まあ難点は、いつ怪物が襲ってくるかわからないのに、けっこうお気楽な雰囲気のところでしょうか。もう少しユーモアも入れてほしいところですが、この話の流れだと難しいかもしれません。ともあれ、次作の設定がどうなるのか、いろいろと想像をかき立てるところもあるし、娯楽作品としてよくできていたと思います。特に「コング対大ダコ」というのは嬉しかった。 [3D(字幕)] 9点(2017-04-03 16:09:58) |
85. 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)
《ネタバレ》 たとえ犯罪者であっても映画の主人公には何らかの魅力があってほしいのですが、本作の2人にはあまり惹かれるところがありません。フランクはなんだかフラフラしているし、コーラは我の強さが足りないような気が。本当は殺人を犯したくない2人が実行を決意するまでの「やむにやまれぬ」感もなし。要するに、総じて薄味なんです。作られた時代が関係しているのかもしれませんね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-03-30 07:52:11) |
86. アラビアのロレンス 完全版
《ネタバレ》 学生の頃、リバイバルされたオリジナル版を見ましたが、まったく面白くなかった。その時は時代背景について知らなかったので、そのせいだと思っていました。今回、ロレンスに関するドキュメンタリーで予習してからこちらの完全版(というか、4Kレストア版)を見たのですが、つまらなさはあいかわらず。しかし、その理由もよくわかりました。 本作では、時代背景についてまったく何の説明もありません。そこのところはわかっているものとして話が進んでいきます。しかし私のような無知な者にとっては、不親切この上ない。これでまず印象が悪いです。さらに、ロレンスの行動や心理についてもよくわからない。なぜこの人があれほどアラブに肩入れするのか、この映画を見ただけで素直に理解できるでしょうか? どれほどアラブの人々と苦楽を共にしたかという“生活感”がうかがえないこの映画では、無理でしょう。結局、遅れた仲間を助けに行くとか、仲間を自らの手で射殺しなければならないといった、普遍性のあるある部分しか印象に残らないのです。 軍隊での会話は何やら意味があるのでしょうが、時代やロレンスの価値観があまりよくわからないので、どういう意味があるのも理解できません。とどのつまり、「エピソード」として出来事が続いていくだけで、中身は空疎のものとしか映りませんでした。だから「とにかく長い」という感想が多くなるのです。これならばテレビの連続ドラマで、いろいろと詳しく説明しながら展開してもらったほうが、よほどありがたいです。本作ではロレンスの生い立ちすら、「両親が結婚しなかった」ことぐらいしか語られていないわけで、魅力もなければ嫌悪感も抱かせない、まったく無味乾燥な人物にしか描かれていませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-03-22 10:16:08) |
87. 理由なき反抗
《ネタバレ》 近頃ではこうした親と子の相克を扱った作が少なく、特に昔は定番であった「父と息子」の話はほぼ絶滅状態なので(特に日本では)、逆に新鮮に感じました。まあ「強い父親に対するあこがれ」というのはマッチョな発想で現代的ではないのかもしれませんが、それでも今見ても見どころが多く、十分引きつけられました。やはり家庭劇というのはドラマの基本であり、家族の問題をちゃんと描けることが、劇作の上で必要とされるのではないかと思います。本作ではそれと「同世代との交流」が適度にからめてあり、最後の悲劇と希望を持たせる幕引きでうまくまとめてあると思います。今のような時代だからこそ、見る価値がある作品かもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-11 17:21:52) |
88. 夢(1990)
《ネタバレ》 後半の理屈台詞に辟易して、黒澤さんはこんなにシナリオが下手だったのだろうかと思ったのですが、おそらく何らかのメッセージを乗せようとすると、説明的になってしまうのでしょう。要するにそういうのは得意ではないと。だからやっぱり、この人は娯楽作品の方が評価が上がるようです。メッセージ性が強くて、本当にこんな夢を見たとは信じられず、リアルでない話を作るエクスキューズとして「こんな夢を見た」と言っているだけだと思われます。実際のところ、どちらでもいいんですけど。それに、それとは違った意味での「夢」が込められているようにも感じられました。 全体としてはつまらなかったわけではなく、むしろ楽しんで鑑賞しました。とにかく画がきれい。暗くてよく見えない話もありますが、それでもそれなりに見せてしまうのはさすが。気に入ったのは桃の話と、ゴッホの話。特に後者はほとんど映像だけで、「ゴッホの絵をセットにしたかっただけだろう」なんて思えて、おかしかったです。最後の鴉がアニメーションに見えてしまって、不思議な感覚でした。 おおむね「異界」の者との接触を描いていますが、その異界が結局「自然」であり、最後になって自然のままであるのが一番であると締めるのは、よい構成でした。監督も変に肩肘を張らず、気楽に作ればよかったのにねぇ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-03-01 09:19:43) |
89. リオ・ブラボー
《ネタバレ》 「ジョン・T・チャンスと愉快な仲間たち」って感じの娯楽作。悪党を相手にするのにそんなにお気楽でいいのか、と思うほどユーモラスで楽しい。その一方でアル中から立ち直るデュードの話をからめ、シリアスな部分もありバランスを取っています。ドラマと笑いとロマンス、三拍子そろった楽しい快作でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-02-15 08:18:20) |
90. 血槍富士
《ネタバレ》 メイン(?)の道中劇もかなりよかったのですが、最後の立ち回りも迫力があり引き込まれました。「法のもとの平等」を謳った戦後民主主義の思想がよく表れているのですが、それを時代劇でやってしまうところがすごい。敵討ちのむなしさを「海ゆかば」に象徴させるというのも、皮肉が効いています。なかなかの力作。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-02-08 20:20:57) |
91. 白熱(1949)
《ネタバレ》 マザコン犯罪者とか潜入捜査とか、なかなか面白い。話の展開が山あり谷ありで、飽きさせません。最後も迫力があって見せます。簡単に死なない(弾が当たらない)のはどうかと思いますが……。とはいえ、見終わってみればそれでおしまい。あとに引くものがなく、なんだか物足りないものを感じさせます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-01 22:35:58)(良:1票) |
92. 新選組(1958)
《ネタバレ》 一応近藤勇が主人公ですが、鞍馬天狗や月形半平太、会津の小鉄も登場して、なんでもありという感じ。しかも近藤が公武合体派で、「武力に訴えてばかりでは不毛だから、話し合うべき」とか言うのを聞くと、戦後の思想というものが反映されているようで興味深いです。ただしその近藤も、京の町に火をつけるとかいうテロ行為が計画されていると知ると、池田屋に討ち入ったりするわけですが。このあたり、どこかの国と似ていますね。 話としては、近藤と新選組を抜けて反乱の首謀者となる関兵庫の関係が主軸のようですが、有名人をそれなりの人が演じており、見せ場を作らなければいけないためかちょっと散漫に思いました。近藤と月形半平太との関係なども面白く、あくまでフィクションだと割り切ればそれなりに楽しめそうです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-01-18 18:29:41) |
93. 初恋のきた道
《ネタバレ》 とにかく映像が美しい。ほとんどそれだけなのですが、ここまで徹底されると天晴れ。お話の方は特にどうということはなく、当時の中国ならではということもあまり感じさせない。ほかの時代や国に置きかえても大丈夫そうだし、それだけ普遍性のある話ということで、むしろよかったと思います。映像の非凡さとの対比が生きています。最後の締めも秀逸。 [映画館(字幕)] 8点(2017-01-12 19:34:16) |
94. はやぶさ奉行
《ネタバレ》 片岡千恵蔵の金さんシリーズ。大川橋蔵の鼠小僧も出てキャストは豪華ですが、中身が伴っていない。とにかく悪人の計画が無茶すぎ。証人だらけだし、効率悪すぎるでしょう。もう少しなんとかならなかったのか……。ねずみを出したのも、2人に描写が分散してしまって結果的にはマイナス。啖呵を切るあたりは千恵蔵節になってファンは嬉しいんでしょうけど、なんだか笑えてしまいます。それにあそこまで来たら、わざわざお白州の場面を作らなくてもよいような気がしますし。そんなこんなで、なかなかトンデモな内容でした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-01-10 23:04:38) |
95. 源氏物語(1951)
《ネタバレ》 そもそも『源氏物語』って嫌いだし、当時の宮廷女性たちが勝手に作り上げた理想の男性にきゃーきゃー言っていた、いわばライトノベルなんじゃないかという風にしか思っていません。文学としてありがたがるとか、よくわかりません。この映画でも、光源氏がとっかえひっかえ女性と関係を持つだけで、さして面白くない。エピソードの連続なのですが、話が平板でメリハリがありません。途中で源氏が右大臣の刺客に襲われ、返り討ちにするところがありますが、まったくそぐわなくて笑ってしまいます。脚本は与謝野晶子の現代語訳を参考にしているようで、セリフは全て現代語。当時の言葉をそのまま話されても困るのでこれでいいと思いますが、ほとんどファンタジーの世界の物語なので、これもちょっと違和感を感じました。吉村公三郎の演出は、特に光の使い方がよく印象的ですし、モノクロの撮影も美しいと思いますが、とりえはそれくらいでしょうか。大映創立十周年の豪華キャストがもったいないです。 [地上波(邦画)] 5点(2017-01-07 22:07:42) |
96. 特攻大作戦
《ネタバレ》 演習まではまずまず面白い。囚人たちがチームとしてまとまっていく展開、特にライズマン少佐との関係はユーモアもあって楽しめました。相手の裏をかく演習もいい。ただ、相手がドイツ軍だとドイツ語を話せる人間がもっといないと無理なので、あくまで演習用ということですが。本番の攻撃も序盤は緊張感がありますが、ドンパチが始まってしまうと大味になってしまい残念です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-01-04 20:32:10) |
97. 帰らざる河
《ネタバレ》 とりあえず、話が面白くない。アメリカ人が見ればいろいろあるのでしょうが、どうもピンとこないし、本来先住民族のものだった土地を勝手に「所有」したうえ、襲撃者と殺し合いするっていうのはどうよ、と思ってしまう。見どころはモンローの歌ぐらい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-01-03 16:37:03) |
98. 赤穂浪士
《ネタバレ》 最初は忠臣蔵と関係なさそうな話なので「?」と思っていましたが、次第にそれらしくなってきました。それにしても、テンポが遅い。松の廊下まで40分、大石が登場するまで60分、城の明け渡しまでさらに30分かかっているので、ちゃんと時間内に討ち入りするのかと思ったら、それからはあっという間に話が進んでしまいます。その間の見せ場は立花左近とのご対面ぐらいで、正直肩すかしを食わされました。映画の場合時間の関係上「名場面集」のようにならざるを得ないと思いますが、それにしても偏りすぎではありますまいか。2年後にNHKでドラマ化されたのもうなずけます。堀田隼人は原作では重要人物のようですが、本作では正直「いらない人物」と思われてもしかたがないのでは。吉良が柳沢とつるんでいたりして、完全に善悪がはっきりしているのは、やはり時代を感じさせます。 科白回しや所作に舞台的な要素があって、こういう「歌舞伎風時代劇」はけっこう好きですし、豪華オールスターキャストは嬉しいのであまり低い点数もつけたくないのですが、中身はあまり豪華とは言えませんでした。 それにしても、3月の公開で「正月映画」と呼んでいいのでしょうか。かなり疑問です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-01-02 16:10:33) |
99. 桃太郎侍(1957)
《ネタバレ》 『桃太郎侍』というのはもともと山手樹一郎の小説なのですが、有名な高橋英樹のテレビドラマはかなり内容が異なるようです。この映画は、比較的原作に忠実なようです。 お話としては、娯楽の王道。お家乗っ取りを防ぐ物語に、別れ別れになった双子の兄弟の人情噺がからみ、時代劇らしい時代劇になっています。敵と味方がはっきりしていて、敵役もいかにもそれらしい。特に河津清三郎の格好良さが魅力的で、悪役はこうでなくてはいけません。ショボい悪役なんて見ていられませんからね。木暮実千代の小鈴師匠のみ、悪役ながら桃太郎に思いを寄せるという役回りで、単純になりがちなお話のいいアクセントになっています。堺駿二はおちゃらけが少なくシリアスな部分が多いのですが、こういう役でもちゃんといい味を出しています。 冒頭、桃太郎の助けた女が実はスリで、善側の神島伊織の密書をスリ取っていたとなるあたり、話の展開もなかなかうまい。それほど長くはないのですが、敵味方入り乱れて波瀾万丈の物語が展開し、見ている方を飽きさせません。このあたりは原作に負っているのでしょうが、先にも書いたように正統派の娯楽作品となっており、かなり楽しめました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-01-01 22:37:58) |
100. ショウほど素敵な商売はない
ミュージカルというかショー映画で、そのあたりはたっぷり堪能させてもらいました。特に前半の「アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド」は圧巻。これがラストに効いてくるのもよかったし、締めの主題歌につなぐところもいいです。問題はお話がありきたりすぎること。あまりにも魅力に乏しすぎる。キャスト・演出はとてもよかっただけに残念です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-12-31 17:33:21) |