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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1021.  幸福のスイッチ 《ネタバレ》 
自己実現のために仕事をして、それで金をもらって当然と思うのは人間社会の道理に反している。芸術家なら結果責任を甘受する前提で勝手に何をやっても構わないが、イラストレーターというならその言葉自体にクライアントの意向重視ということが含まれているはずである。業務上の自由な発想が奨励されるとしても、それはあくまで本来の業務目的や組織目的に沿った効果を挙げるためであって、自由な発想の権利自体が保証されているわけでは全くない。劇中で、これに関する勘違いを若いうちに正したのは大変結構なことだった。 これからの時代、劇中の電器店の商法で個人営業が続けられる保証もないわけだが、しかし顧客第一ということ自体は永遠の真理だろうし、そのエッセンスの部分が次代に伝えられたのはよかったかと思われる。   また登場人物に関しては、主人公が当初ガチガチに固めていた攻撃的姿勢が後半に至ると崩壊してしまい、それまでは完璧に可愛くなかったのが可笑しく見えるようにもなる。一方でその妹もただ可愛いばかりではなく、ドライだったり強硬派になったりするのが見えて来て相対関係も崩れていく。その中で母親似の姉だけは、安定的に母性を発揮しながら妹2人を見守る立場ということか。 劇中の浮気事件の結末を見ていると、疑惑の相手とこの姉が暗黙の連携でうまく言いくるめたようでもあるが、しかしこれはこれでオトナの納得のしどころというのも間違いないことである。実際に姉は笑って完全に疑念を解いていたし、また主人公と妹も、最終的にはこれに同調したことで人格レベルを一段上げたと思われる。さらに、主人公の父親に対するわだかまりの根本原因がこれで解消されたのだろうと想像され、最後は穏やかに家族関係が再編されたらしいのは幸いなことだった。   そのほか全般的に、劇中の事物の取扱いが細やかでユーモラスな映画になっている。手紙の文面や電気を止められた時の顔など見ていると、妹の個性がより深く感じられて面白い。また友人の息子の動きとか、ラストで来店した子どもの表情とかも可笑しく、農家の親爺がくしゃみのあとに悪態をついただけのことでも笑ってしまう。モチがかわいいというのは男の感性ではない気がするが、何が言いたいかは映像的にちゃんと表現されている。 これに加えて、何気ない小さな音が人の心を豊かにするというのも少し心に染みる話だった。
[DVD(邦画)] 8点(2015-03-31 00:23:36)
1022.  予言 《ネタバレ》 
何も出なくても雰囲気だけで感じさせるのは悪くない。映像的には明るい場面も多いがそれで不吉感が削がれることもなく、談話室の窓から見えていた青空は画家のルネ・マグリット(「呪い」など)を思わせるものがあった。また腹に響く大音響はこの監督の特徴なのかも知れないが、この映画でも極めて衝撃的で効果的に使われていた。 ほか登場人物については父親役の顔がくどいので極めて不快だが、車が爆発する直前の子役の表情と、小野真弓が電車で去るときの不思議顔は印象に残った。この映画の小野真弓は全く華がないが、それでも個人的には不憫で愛しく思われる。   ところで基本設定に関して、原作と違うことは別に構わないが、この話の中で新聞を持ち出すこと自体に違和感がある。アカシックレコードなどというありきたりな説明を付けているが、紙媒体の記録をそのまま保管しているのでない限り新聞を介する必然性はないはずだ。また惨事だけでなく普通の出来事についても膨大な記録があるはずだが、ホラー映画という性質から殺人事件とか大事故ばかりを話題にしなければならず、結果として主人公夫妻がたまたま複数の事故に見舞われるという不幸な偶然になっている。それでも新聞だから悲惨な事件に飛びついて当然、といった感じで何となく正当化されてしまっているのが気にいらない。 そもそも全体を司る主体が見えておらず、「地獄に陥れようとする」といったことを誰の判断でやっているのかわからない。これがいわば自然現象として起こっているとすればかなり無理があり、単純な数字合わせとか時間の前後の問題というならまだしも、観客が疑問を持たずにスルーできる限界を超えている。どうせホラーだから雰囲気だけで可などというのでなく、基礎的なところでちゃんと筋を通してもらいたいものである。   ただ、家族愛の話としてはこれでよかった。父親/夫の心情としては満足だろうと思われる。 なお最後に新聞が書き換えられていたのは、主人公の最後の行動が裁定者によって承認されて無限ループを抜け出したことを意味しており、これは霊能者の先生が自分を犠牲にして主人公に選択肢を与えておいてくれた結果だったというように解する。
[DVD(邦画)] 5点(2015-03-28 21:45:27)(良:1票)
1023.  地球防衛ガールズ P9 《ネタバレ》 
旧作の「地球防衛少女イコちゃん」より隊員数が増えていて豪華だが、人数が多いため全員の顔を憶えられないのは現代アイドルの実態そのままである。昭和的な清楚さといったことは全く重視されておらず、年齢差も大きいため「少女」というより「ガールズ」というしかない雰囲気になっていた。 そのせいもあって、旧作における美少女の“お願いパワー”などという発想も通用しそうにない。そのため劇中では昔の隊員を引っ張り出してきて“みんなで祈れば願いはかなう”というような昭和的な知恵を授けていたようだが、最後には敵が滅びるわけでもなく潜伏しただけであり、その効果のほどは不明だったというしかない。 今作で最大の危機をもたらしたのは内部崩壊を狙った工作であり、これは昭和特撮の古典的な戦争観からの脱却のように見える。また侵略者だか何だかよくわからない連中が市中に出没するようになっており、もはや単純な敵味方の観念が通用しない時代の反映のようでもある。しかし抑止力としての武装が重要性を失っていないのも国際社会の実態であり、劇中でも実力を保持したまま戦わないで済む防衛軍が復活していたのは幸いだった。  ところで今作で北朝子を名乗っていた人物は、最後に月に帰るのかと思ったら災害に苦しむ人々のもとへ赴くとのことだった。この映画の撮影は2011年の夏だろうと思うが、劇中発言にあった内部崩壊も“宇宙人”も当時の時事ネタと考えれば、この人物が人間(日本)など見放したように言っていたその感覚を同時期の自分もまた共有していたことを思い出す。そうしてみるとこの人物の最後の言葉には、意外に真面目に震災後の日本を元気にしようという意図が込められていたのかも知れない。 以上のように、さまざまな面で21世紀進化型ver.にふさわしい映画になっているといえなくもない。実際どこまで真面目に考えて作ったのかは不明だが、一定の解釈のようなものが可能であるからには、必ずしも純粋なバカ映画として制作されたわけでもないようである。  なお劇中で特に印象的だったのは「ハセトンって何?」であり、ここで壁のサインに通電しているからには広告の意志があるはずなのに意味不明、という不条理さがこの場の異界感を際立たせていた。また「バナナはお菓子じゃないのよ」という台詞には、大昔に忘れ去ったはずのものを突然指摘されて虚を衝かれたような心理的衝撃があった。
[DVD(邦画)] 5点(2015-03-28 21:18:12)
1024.  地球防衛少女イコちゃん 大江戸大作戦<OV> 《ネタバレ》 
前回から1年以上経っており、主人公は少し頼もしくなったように見えなくもない。前回の三人娘体制はあっけなく解消されたようだが、今回ゲスト出演で妹分の「おいこちゃん」(演・吉野里亜)が江戸っ娘らしく可愛いので問題はない。 特撮物としても少しずつ進歩しているらしく、主力戦闘機の発進シークエンスも整えられたように見える。補助ロケットを装備して宇宙に出るのは「ウルトラマン」のジェットビートルのようだが、ただし放射線マークを付けた原子力ロケット?を大気中で飛ばすのはまずいだろうと思われる。  ところで前回では美少女特撮の体制が出来上がったように見えていたが、今回は3作目にしていきなり番外編的になっている。かつての矢追純一氏のTV番組で平賀源内とUFOの関係が扱われていたかどうかよく覚えていないが、とにかく特撮モノの中に時代劇とUFOネタが融合していて統一性が感じられず、また昭和特撮から当時に至るまでの小ネタが詰まっているのも無秩序感を増大させており、特撮物の亜種というよりバカ映画としての印象が強くなっている。 今回は中山昭二氏の怪演が見られるが、ほかにわざわざ出てもらった土屋嘉男氏の存在感が半端だったのは残念なことで、せっかくなので役名のミズノにちなんだネタも出せなかったかという気がする(旗のマジックに続いて、本人も煙になって消えるなど)。その代わり伴直弥(伴大介)氏が、初対面の主人公の美少女ぶりに全く動じることなく平然とチーズおかきを差し出すのは非常によかった。今回は微妙に東映特撮風になっているところがあるのはこの人のせいか。  以上、こういうわけのわからない状態で「イコちゃん」シリーズの本編は終了してしまったことになるが、今回ラストの新曲「イコちゃんマーチ」がなかなかよかったので後味は悪くない。この曲は出だしが「ウルトラ六兄弟」を思わせるメロディながら、「キャプテンウルトラ」(1967年放映)の「宇宙マーチ」を思わせる歌詞(「ネコよりカワイイ タコよりオチャメ」)と威勢の良さを兼ね備えた曲だったのが少し嬉しい。
[DVD(邦画)] 3点(2015-03-28 20:51:09)
1025.  地球防衛少女イコちゃん2 -ルンナの秘密-<OV> 《ネタバレ》 
前作よりも若干映画らしくなった気がする。特撮は一応頑張っており、一応の怪獣モノらしく地上・地底・海中の怪獣が出て、それぞれに対応した防衛隊の超兵器が活躍するので少し見ごたえがある(地底戦車がユニーク)。 主人公はいきなり二代目になっており、初代に比べると少し素朴であどけない感じを出している。蝉の声がする中を(夏休み中?)涼しげな服装で現われて、基地内を軽やかに走り回っていたのが可愛らしい。敵の攻撃で素っ裸にされてしまう場面もあったが、一瞬映った全身像を見るとパンツだけは着けている。この場面と、それに続いてヒーローが見せたフォロー行動には正直笑った。 また今回は主人公以外にライバル美少女(演・田山真美子)が登場し、さらに終盤ではウルトラ兄弟よろしく助けに来た初代も入って三人娘状態になっている。前作がとりあえず作ってみた的な雰囲気だったのと比べると、より本格的に美少女特撮の形式を整えたように見えるが、そのせいで本来は職場の花だったはずの女性隊員(演・松崎ユカ)が割を食わされているのは気の毒だ(前作も同じだが)。 それにしても、終わってみれば二代目は失敗ばかりで全く活躍しておらず、いいところは全部ライバルに取られてしまって、これで「二代目襲名よろしくね」もないものだと思う。しかしラストで三人娘が揃って踊る「イコちゃん音頭」(3番のみルンナ音頭)の場面を見ていると、全員の歌唱力のなさが微笑ましいので最終的には全部まとめて許してしまう感じである。初代イコちゃんは少しふっくらしたようだが、それはそれで可愛らしい。  なお見ていて気づいたのは、主人公が夜空の下でギターを抱えて歌うのが岸本加世子の「北風よ」(1977)のようだったことで(その頃は岸本加世子も可愛かった)、この場面はほかに加山雄三的な感じと「時をかける少女」(1983)的な感じと伊藤つかさ的な感じ(主に声質)も含まれていて複合的な印象がある。ここで歌われる「イコのバラード」は少し心に染みるものがあった。
[DVD(邦画)] 4点(2015-03-28 20:51:04)
1026.  地球防衛少女イコちゃん<OV> 《ネタバレ》 
もしかすると当時は怪獣特撮の亜種として扱われていたかも知れないが、いま見ると美少女愛を表現することの方が主目的に見える。恥ずかしげもなく少女嗜好を丸出しにするのは80年代初期からあった気がするが、特撮でそれをやったのは初めてだったということか。いわゆるスクール水着で登場するとか、緊縛されて悶える表情とかもあるが良識人が眉をひそめるというほどでもなく、まあ笑って済まされる程度に収まっている。 そういう観点からすれば特撮などどうでもいいとはいえるが、それにしてはちゃんとミニチュアセットを作って火をつけてみたり、成田亨氏監修の着ぐるみ怪獣を出したりするのは意外にまともな感じがする。また人形劇の部分は一定の出来になっており、これは特撮というより「プリンプリン物語」(NHK、1979~1982放映)などからの連続性を感じる。 そのほか、唐突に演歌のカラオケ場面が挿入されたりするのはバカ映画としての先駆けであり、また敵の最終兵器が有線で電力供給されていたのも後のアイデアを先取りしていた感がある(これは違うか)。  ところで主人公が可愛らしいのは認めるが、極めて昭和的な純真?美少女のため一定の抵抗感があり、主題歌の「わたしのハートはルンルンよ」とかいう歌詞にも失笑させられる。それでも役者はこれ以前から子役として実績のあった人らしく、ちゃんと期待されたとおりのカワイイコを演じており、特にエンディングテーマの部分などはあまりにかわいいので笑ってしまう。それをいえば友人のアサミ役(演・山崎あかね)も別種のかわいさがあるが、後半は出ないので存在感が低下してしまうのが残念である。そのほか防衛隊に初めからいた女性隊員(演・菅原弓子)は地味に扱われて気の毒だか、個人的にはこの人が最も昭和らしい感じを出していて好印象だった。 それにしても中山昭二氏ほどの人をよくこんなものに出したと呆れるが、個人的にはこれで往年のキリヤマ隊長への尊敬の念が失われるわけではないので別に構わない。  なお点数は低目にしておくが、あまり高い点を付けると他の映画に失礼だからということであって、個人的にこういうものが嫌いというわけではない。
[DVD(邦画)] 3点(2015-03-28 20:50:51)
1027.  とある飛空士への追憶 《ネタバレ》 
全体として何が表現したいかは理解可能であり、雰囲気も大体伝わるので悪い話ではないとは思うが、残念ながら見る方の気持ちがついて行かない。特に初見時に問題と思ったのは、当初は控え目に見えたヒロインが途中で豹変してツンデレ化することであり、これはいかにも美少女アニメ的な悪ふざけとしか思われない。またクライマックスもほとんど気分が高揚せず不完全燃焼に終わった感があり、ここに至るまでの盛り上げに何らかの問題があったのだろうという気がした。 その後に一応原作を読むと、基本的な構造を損なわずに短縮しているのはわかったが、やはり細かい人物描写や台詞に出ない言葉を省略したことに無理があったと思われる。特にヒロインの人物像に関しては、原作の少し複雑な設定は完全放棄して単純化し、例えば当初のおとなしい人物のまま次第に思いを募らせていき、ラストに至って初めて感情を爆発させるとかの方が、短い映画の枠内に素直に収まった気がする。 また終盤で、主人公が愛機の心を思いやる(または、自分の思いを愛機に仮託する)箇所が省略されていたのは残念だった。アニメで表現するのは難しいだろうが、これがあってこそ主人公が最後にわざわざ飛んで来て「踊ってる」理由も明らかになるというものである。ついでに軍艦の機銃員が思わず撃墜したくなりそうな危ない動きも避けてもらいたかった。  ところで声の出演に関しては、特に最初の方で主人公の声が生硬に思われるところがあったが、後半はまあ慣れた。ヒロイン役に関しても、そもそも人格設定に一貫性のないキャラクターの役をそれなりにこなしていた印象がある。 そのほか、ヒロインの姿は原作の挿絵よりは抵抗感がないので結構である。また海空の映像もそれなりに印象的だが、まあこれがなければこの原作を映画化する意味そのものがなかっただろうとは思う。全体として佳作ともいえないが駄作という感じのものでもなく、暖かい目で見ればそれなりの感慨を残す映画ではあったので、原作に免じてここは少し甘い点を付けておく。
[DVD(邦画)] 6点(2015-02-16 23:23:15)
1028.  ゆめのかよいじ 《ネタバレ》 
盛り込み過ぎてそれぞれが半端になった感じの映画である。“忘れてほしくない”“残されるのはもういや”という思いはわかる(台詞に出ているため)が、心情的に迫って来るものがあまりない。またその“忘れてほしくない”と連動する形で、街の古いものが失われていくのを悲しむ思いが込められていたようにも見えたが、それと地震の関係もよくわからない。街全体が壊滅したならともかく、単に校舎が失われるだけなら火災で十分だったと思われる。 またご当地映画であること自体は構わないが、実在の街に人魂だの座敷童子だのが普通に存在しているのは遠野物語になったようでやり過ぎである。それより自分としては、地震当時(2004?)にはまだ「栃尾市」であったはずのものがその後の合併で自治体としては消滅してしまい、劇中でも「栃尾」だけで「市」の言葉が出て来ないということの方に微妙に悲哀を感じる。   ところでこの映画の撮影は2010年とのことで、東日本大震災(2011)の影響もあって公開は2013年まで延びたということらしい。主演の石橋杏奈は撮影時点で18歳くらいだったようだが、高校生にしては大人っぽく色気あり過ぎなのが目についてしまって仕方ない。特に個人的には、それまで微笑んでいたのが突然不安な表情に変わる不安定さが愛しく感じられる。またラストの「お構いなく」の場面では、大好きなのに近づかせてくれなかった相手との距離感が確実に縮まっていて、次のステージが見えて来たのが観客としても嬉しいわけだが、そういう印象を持たせる上でもこの人の持つ雰囲気が非常に効果的だった。 一方で相手役の竹富聖花という人は申し分ない美少女ではあるが、この時まだ15歳で事務所のオーディションに受かったのと同年ということらしく、演技の面で心許ないのは突っ込まないようにしなければならない(少し呆れたが)。ほか主人公の友人役の日置かや(当時・浅野かや)もいい感じだった。 ちなみに同級生のカメラ小僧役で出ていた男は、「制服サバイガールⅡ」(2008)への出演によって強い(最悪の)印象を残しているが、この映画はその2年後の状態であり、まあそれほどの違和感もなく役をこなしていた。この映画では微妙にトボけた感じのある役だが、さらにこの2年後の「仮面ライダーウィザード」(2012)では、文句のつけようのない格好いい主人公を演じていたに違いないと想像する(見てないので不明)。
[DVD(邦画)] 5点(2015-02-16 23:23:06)
1029.  コネコノキモチ 《ネタバレ》 
ネコの出番は意外に少ないが、映像面での美しさは全編にわたり徹底されていたようで、また音楽の使い方もオーソドックスで心地いい。監督はPV制作で有名な人とのことで、その面の特徴も出ていたものと思われる。 主演はアイドルグループ「アイドリング!!!」3号の人(ただし2014.2月卒業)であり、この人のPV的な意味があったような感じもある。別映画で主演していたのを見たときは、役どころのせいもあって茫洋とした感じでどこをほめればいいのかわからなかったが、この映画では喜怒哀楽も出ており、ちゃんと普通の人間だったことがわかって好印象だった。この人の歌う「空の木」が映画のテーマ曲であり、劇中でも墨田区が舞台だったことから、東京スカイツリーのプロモーションを兼ねたような印象もある。   それでストーリーとしては、父親/夫の死による心の欠落を埋められずに2年が経過した家で、ネコの登場により娘と母の心境変化が促され、やがて家族の再生に至るという話である。そのようにまとめてしまうと非常にありきたりな感じだが、実際見れば相応の感動がある。娘と母それぞれの年代に応じた気づきや悟りが描かれているが、特に母親が“生きている今が大事”と思い至る場面は印象的だった。言葉のほかに状況や映像で語られている内容も多いので、一つひとつの場面を大事に見なければという気にはさせられる。 ただし中盤以降では、なぜか意味不明な登場人物が乱立している印象もあった。しかしこれは一見意味がないようでも、世間ではどこで何がどう関係して来るかわからないので、一瞬のつながりでもとりあえず大事にしておこうという意味に取ればいいのかも知れない。   そのほか友情出演のアイドリング!!! 6号(外岡えりか)が、終盤でネコ役になって登場していたのは斬新な試みかも知れない。演じるヒトとネコの年齢がイメージ的に一致せず、とても同一人とは思われないのだが、まあ微笑ましい趣向とはいえる。この擬人化ネコがラストで再登場するのも失笑というかユーモラスだが、ただしいくらアイドルでも本物の子ネコには絶対かなわないだろうと一応書いておく。
[DVD(邦画)] 7点(2015-02-04 22:50:39)
1030.  子猫の涙 《ネタバレ》 
大阪の映画というととにかく怒鳴り散らす人物が出るとか暴力沙汰が頻発するのは呆れる(本当にそういう土地柄なら仕方ないが)。ギャグも多いのだろうが自分としては笑えるところがない。 また主人公の人生については特に積極的に肯定する気にもならず、単にこれはこういう人だと思うだけである。個人的な感覚としては、オリンピックで銀メダルを取り、その後の途中経過はいろいろあったにせよ、子息に継承したボクシングジムが現在も続いているというだけで普通人としては十分な業績と思われる。そのため本人のボクシングに対する思いがどうだったかというようなことはそれほど重大事にも思われず、葬儀の場面に至って蒸し返されても何の感慨もない。 一方で、主人公の娘は毒舌だが邪気がなくて愛嬌があり、この人が映画全体を支えているのは間違いないようだが、成人後のイメージがあまりに違っているため統一感が全くない。その他の人物も半端な感じで、実母は娘を棄てるためだけに出て来て、また継母は娘に説教するためだけに出て、それぞれの役目を果たすと用済みになって存在感を失ってしまう。猫を拾って来たのも、途中で死なせて一家を泣かすためだけのようだった。 以上、個人的には見どころがない上に、全体構成としても個別エピソード優先ということなのか、ストーリーとしてのまとまりが不足しているように感じられ、残念ながら面白いとはいえない映画だった。  なお余談として、娘の友人2人のうち1人は、後のAKB48→NMB48所属の市川美織(みおりん、レモンちゃん)という人のようで、この時点で結構な美少女に見える。もう1人が誰かも大体想像はつくが、根拠が見つからないので書かない。
[DVD(邦画)] 5点(2015-02-04 22:50:34)
1031.  ねこのひげ 《ネタバレ》 
中身のある映画なのはわかるが、個人的には全く共感できない。 周囲とどれほどの軋轢を生じようと「好きなんだ」「好きなんです」といえば通ると思う感覚がそもそも容認できないが、そういう後先考えない軽薄な連中の割に、子どもを想うと皿が割れるほど悔やむとか、相手の母親に会うのが怖いなどと人並みに思っているというのが同じ人物とは思われない。それでも表面上は男女とも変に愛想がよく、また周囲にも変に物分かりのいい人間が多いため、主要人物のほとんどが自分と反対向きのように感じられ、穏やかな会話や表情を通じて全く異質なものに圧迫される感覚がある。 一般論として、過去にしでかしたことを悔やんでも仕方ないので、結局はその時点で前向きに最善の選択をするしかない、と思える時もあるのはわかるが、しかしこういう連中にそれをやられてもわが身のこととは思えないということである。これは人物造形の問題ということかも知れない。 そのほか全編を通じて始終ものを食って酒を飲んでいる享楽的な雰囲気にも馴染めないものがある。音楽も俗な感じで、劇中でアレンジを変えて何度も繰り返すので耳についてしまって苛立たしい。   以上は個人的な感想だが、要はある程度観客を選ぶということであって、人によっては問題なく見られるだろうとは書いておく。役者に不足は感じられず(ねこ含む)、映像面や人間描写にもこだわりが見えるので、褒める要素は多いと思われる。
[DVD(邦画)] 5点(2015-02-04 22:50:30)
1032.  飛べ!ダコタ 《ネタバレ》 
まず終盤の村長の言葉は、印象的ではあるが微妙である。軍部の起こした戦争だった(国民は無責任)というのは現在も国民的常識であるから、ここであえて国民側の責任を指摘してみせた度胸は買う。しかし続いての“次の戦争を止める”との発言を聞けば、結局“誰か(要は国)が戦争を起こそうとしているので国民は止めなければ”といった昔ながらの脅威論のようで鼻白む。 当時はともかく、現実に有権者の投票行動が国の方向性を左右している(実際にした)現代においてこそ、民主主義の制度を通じた国民の主体性と責任感の発揮が求められており、その中で、今後の戦争の抑止に向けた現実的な努力も期待されることになる。そういった意図なら賞賛するが、そうでなければせっかくの感動作に古風な政治的メッセージなど込めるのは歓迎できない。むしろ劇中の経過を素直に受けた形で、広い民間交流が世界平和の礎を築くのだ、という素朴な文脈で語ってもらいたかったというのが率直な感想である。   ところで、劇中で変な親爺が日露戦争時の歌(「広瀬中佐」)を歌った後で「昔の同盟国」と言っていたのは、近視眼的な敵味方の区別をあざやかに無化してみせていて説得力があった。これはどちらかというと建前論の部類だろうが、その後の母子の情愛や歌の場面を見ていると、いわゆる諸国民の融和というような内容が、庶民(イギリス側を含む)の自然な感情に根差した形で表現されていて心に染みるものがある。 また登場人物では、その辺のオカアサンのように出ていた2人がユーモラスで、結構ブラックな軽口をたたいておいて結局笑いに巻き込んでしまうのが可笑しく、これはある種庶民のたくましさの表現だろうかという気がした。方言のため何を言っているかわからない場面とか、背中の叩き方など見てもこれは本当に地元の人かと思ってしまうが、こうした住民の姿が役者の力で映像化されているのは嬉しくなる。 そのほか、冬の日本海の風景は寒々としているが美しい。全国的観点からは“裏日本”などただ陰鬱なばかりと思われているかも知れないが、そこにはちゃんと四季もあり、ちゃんと人間が住んでいて喜怒哀楽も人の情もある。自分は佐渡と直接の関係はないが、同じく日本海沿岸の四季と人を知る者として、佐渡の皆さんの幅広い協賛と参加で作り上げたこの映画を(前記の苦情を除き)ほぼ全面的に支持したい。これは見てよかった。
[DVD(邦画)] 8点(2015-01-24 17:47:36)(良:1票)
1033.  ニライカナイからの手紙 《ネタバレ》 
先日、沖縄からの来客とお会いしたので記念に書いておく(映画と無関係だが)。 最初から大体の結末は予告されているが、終盤で事情が明らかになってみればやはりその通りである。その後にまだ少し時間があったのでもうひと捻りあるかと思っていたらそうでもなく、そのまま力押しして終わったような形だった。単純な保護しか考えていなかった祖父に比べ、母の愛情はより深く周到だった、といった作り込みはなされており、決して悪い話ではないのだが特に感動を催すほどのこともない。従って、どちらかといえば風景や設えなどの映像美と、ただ愛らしいだけではない個性的な女優としての蒼井優をしっかり見ることが重要なのだと思われる。  また登場人物のうち友人役で出演していた比嘉愛未は、最近の主演映画(「飛べ!ダコタ」2013)を見るとかなりいい感じに年齢とキャリアを重ねていたようだが、この映画ではまだ18歳くらいで超絶美形かつモデル体型なのが印象付けられてしまった。この人の演じる登場人物は、どうも最初から主人公にライバル意識を持っていたようであり、そのことからしても最後は主人公が島へ帰らないことで全体が調和するよう予定されていたようである。 ほか劇中では地元民のような人々が台詞付きで登場していたようだが、中でも「おばあ」と呼ばれていた人の容貌と発言には何ともいえない風格があって忘れがたい。 全体として絶賛する気にはならないが、けっこう好意的に見られる映画ではあったので、ここは少しだけいい点を付けておく。
[DVD(邦画)] 6点(2015-01-24 17:47:32)
1034.  マックィーンの絶対の危機(ピンチ) 《ネタバレ》 
邦題には変遷があるが、原題は一貫して”The Blob”である。 以前「消えるヒッチハイカー」という本を読んだ時に、アメリカの都市伝説で夜間に車で出かけた若い男女が恐ろしい目にあう話が書いてあり、なるほど映画でもそういうパターンのがあるなと思った。その時に何となく念頭にあったのがこの映画で、その時点ではこれをアメリカの恐怖映画の代表のように思っていたわけである。実際、幼少時に見たときは非常に怖かったように記憶しており、最初からずっと夜の場面が続くので怖いまま息抜きができず、ラストに至って北極の場面だけが明るい青空なので少しほっとするが、そこでまたさらに?が出るのでもうやめてくれ、という感じだった。  しかしいま見ると、問題のブロブなどあまり出番はなく、出ても少し固目のをモソモソ動かしたり、粘度の低いのを押し出したりするばかりで、特撮映画としては極めてショボい。人が実際に食われる場面は映像化を回避して画面に出さず、またクライマックスの巨大ブロブはアニメーションでごまかしたりしている。そもそもオープニングテーマからしてノホホンとしてとぼけた感じだし、劇中でも主人公とヒロインが、穏やかな音楽をバックに信頼と愛情を深めていく場面が延々と続いたりする。どうも世評の通り初めから青春映画のようなノリで作っているらしく、古き良き時代の愛すべき娯楽映画という感じである。昔と今でこれほど印象が違う映画も珍しい。 また映画の中身と直接関係ない話だが、DVD封入のリーフレットを読むと、撮影が行われたペンシルバニア州チェスター郡フェニックスビルの映画館では毎年「ブロブ祭り」というのをやっているとのことで、映画館の公式サイトを見てみると実際に”Blobfest 2013”のPRをしていた。どうやら地域住民に今なお愛されている映画であるらしいことが窺える。  なお1958.9.12米公開のこの映画と直接の関連があったのではないかと疑われるのは、同年6.24公開の東宝映画「美女と液体人間」で、両者を比べればわが国の誇る昭和特撮の方がまだしも勝っていると思うのだが、ここでの現時点での平均点はこの映画の方が高くなっているのが悔しい。思い切って1点とか付けて点を下げてやるかとも思ったが、この映画はこの映画で愛着があるためそういうこともできず、適正と思われる点を付けるしかない。結果として、かえって平均点を上げてしまった。
[DVD(字幕)] 7点(2015-01-19 21:22:36)(良:1票)
1035.  POV〜呪われたフィルム〜 《ネタバレ》 
グロ映像などはなく雰囲気で感じさせるのは基本的に好印象である。主要人物2人が本人役で出ており、そのためフェイクにしてもあまり無理がないというか、初めから作り物と割り切って見ていられるところがある。序盤の携帯番組がとぼけた感じで楽しい。 ただストーリーとしては平凡なものであり、「リング」以来のメディアを通じた怪異の拡散といったところは冒頭から想像がつくわけだが、それが観客側まではみ出して来ると匂わせておきながら、実際は特に脅威を感じさせることもなく終わっていたのは拍子抜けである。ほかに若干の捻りはあるものの個別アイデアのレベルであり、映画全体の価値を高めるほどのものでもないと思われる。   ところで、突然の大音響で驚かすのは真面目なホラーファンなら嫌うのだろうが、この映画に関しては狙って多用しているらしい。皆が怯え切っているところで携帯のブザー音が鳴ったのは大笑いしたが、その後に正体不明の衝撃音が鳴り渡る中、浮足立った連中が一斉に走り出してわけがわからなくなる場面の臨場感は結構楽しめる。 またその場にいても立ってもいられない感覚の表現が巧みであり、特に前半では、画面に顔が映る直前に逃げ出す人々や再生を止めようとする人が交錯してカメラが倒れた場面が秀逸だった。後半では、一か所だけ明かりがついた場所から何かが近づいて来るのを実況中継で見ながら誰も動けないでいるのが印象的だったが、ただしこの場面では、一番怖がりなはずの人物が最前線の位置を動かずにいたのが不自然で残念である。   そのほか登場人物に関して、主要人物2人のうち志田未来は相方の川口春奈(166cm)と比べると小柄なのが目立ち、怖がっているところなど見ても非常に可愛らしい。この人が毅然とした発言でプロ意識を示したり、後輩思いなところを見せたりしていたのは、本人役でやっているため女優としてのイメージアップを促している感じもある。また個人的には、AD役の人(嶋﨑亜美)の微妙な顔つきも印象に残った(このADは何でわざわざ現場に来たのか?)。   以上、世間の評判はどうかわからないが、自分にとってはいろいろと面白い映画だったので、出演者への加算を含めて少しいい点を付けておく。
[DVD(邦画)] 6点(2015-01-03 21:54:32)(良:1票)
1036.  リング0 バースデイ 《ネタバレ》 
話の性質上それほど派手な場面はないが、イヤな場所感は要所でほどよく出ており、また小物や役者で前作との連続性も感じられる。ストーリーは原作とかなり違っているが、これはこれで悲恋物語になっており、劇団にまつわる性的に不道徳な雰囲気も出ている。また個別の場面としては、楽屋の鏡が割れた時の腹に響くような大音響が印象的だった。 そのほかこの映画最大の独自性は、当初は貞子が邪悪な存在とばかり思っていたのが途中から反転し、後半は貞子の方に共感する作りになっていることで、その決定的なポイントは車椅子の老人が立ち上がったところだろう。一人をわざわざ二人に分けたのも、片方をちゃんと人間として扱ってやるためだったと思われる。後に松嶋菜々子が共感したのは仲間由紀恵の心情であり、また真田広之を殺したのはもう片方だったと考えればいいのではないか(理屈が通らないところもあるが)。   ところで序盤で死んだ女優のほかに、年長の先輩女優もかつては団長のお手付きだったらしく、これが貞子討伐に率先参加していたのは見苦しい。しかしそれより劇中最悪の人物は何といっても新聞社の女であり、婚約者だったという下司な記者が自業自得で死んだからといって逆恨みしたこの女が愚かな情熱を燃やしたことで手が付けられなくなってしまい、それが後世の悲劇の拡大につながったということらしい。 こういう結果を引き起こした馬鹿には自決などさせず、どうせなら最高度に無残な殺し方をしてもらいたかった(顔に穴が開いて下顎の歯列が見えるなど)が、せめてもの救いは同行した劇団員が一人残らず全員ぶち殺されたことであり、ここはちゃんと正義が貫かれたストーリーになっている。音響係(音効)の男だけは巻き添えだろうが、本人もこれで満足だろう。   そのようなことで、とにかく貞子が哀れで悲しく切ない映画だった。ちなみに仲間由紀恵は特に好きな女優ということはないので、この人のせいで劇中の貞子に肩入れしているわけではない。
[DVD(邦画)] 6点(2015-01-03 21:29:10)
1037.  風切羽~かざきりば~ 《ネタバレ》 
公式サイトに経過が書かれているが、もともと後半のロードムービー部分を先に制作し、後に前半部分を追加して長編にしたとのことである。撮影自体は2012年だが、序盤で出ていた震災関連のニュースは2011年のものであり(4/17日曜日、気仙沼の朝市)、自分としては現実世界のこの時期に、春の明るい陽射しと裏腹に感じていた内心の不安を呼び覚まされる気がしたが、これは意図されたものかどうかわからない。  映画のテーマは“親に愛されない子ども”ということらしいが、劇中の出来事自体は個人的知見から想像しうる範囲に収まっていて特に目新しいものはないように見える。しかし改めてこのように見せられるとやはり心穏やかではなく、劇中の少女が弛緩したような荒んだ感じを全身で出しているのも痛々しい(4月中旬にこの格好では寒いだろう)。まるで世の中にまともな大人がいないように見えるのは同じ大人としてつらいものがあるが、逆に少女の境遇が周囲をこういう連中ばかりにしていると解すべきか。 今回の件で、この少女としても何かふっ切れたものがあったようではあるが、しかし少年と違って閉じられた円環からは抜け出せず、元の場所に回帰しただけのようにも見えている。劇中で生じた現世的トラブルは残されたままであり、携帯を使う営業からも簡単に抜け出せるのか怪しい気がするが、まあ根本的な解決は劇中人物というよりも、現実世界での対策如何によるというのが映画の趣旨だろう。  ところで主演女優に関しては、舞台挨拶で「あたし走るのが本当に下手で…」と言っていたが本当に下手である。自分としてはこの人をよく知っているわけではないが、よく知っている人が持つイメージとはかけ離れた役をやっているのは間違いない。前髪を下ろしたことでも雰囲気がかなり違っているが、特にこの人の顔で特徴的な目が、いつもと同じはずだが全く違う目のように見えており、冒頭では視点の定まらないうつろな表情がいきなり印象的だった。公式サイトを見れば、オーディション時にこの人がとりわけ努力家だったことも記されている。 そういったことから私情にはなるが、評点はこの人のために若干加点しておく。
[DVD(邦画)] 7点(2015-01-02 10:25:47)(良:1票)
1038.  ひ・き・こ 降臨<OV> 《ネタバレ》 
監督(吉川久岳)、脚本(宮崎大祐)、製作(アムモ98)が前作「ひきこさんの惨劇」(2013)と同じだが、出来は一段違った印象がある。 普通一般のホラーを志向したようには全く見えず、社会の中の人間を主題にしているのは「口裂け女2」(2008)を思わせるものがあり、個人的にそれほど共感するわけでもないが言いたいことはだいたい伝わる。悪しきものがインターネット上で拡大する発想は基本的に同じだが、前作にはあった安手のホラー場面を思い切りよく放棄したことで、まともな映画としての印象が一気に増している。 ただ不満だったのは割と簡単に別映画のアイデアを流用したと思われる場面があること、及びラストの締め方である。ここでの主人公の表情はいいのだが、具体的にどのような脅威が本人に及ぶのかわからないので恐ろしくない。そもそも動画に撮られて晒されること自体が怖いのか、撮られる際に身体的な暴力を受けることの方が問題なのかが整理されていないように感じられ、まだ詰めが甘いところがあると思われた。  ところで前作に続き、劇中で実在の地名(千葉県K市)を特定しているのは目につく。以前、ここの近隣在住の人から“うちは臨海工業地域と都市部、農村部から限界集落までが一つの市に含まれている”と聞いたことがあるが、今回の舞台もそういう場所であり、普通の生活環境のようでもどことなく不穏で荒れた雰囲気と隣合わせのようなのは舞台設定として効果的だった。また劇中では先の震災が微妙に影を落としていたようで、「私の故郷を汚した政治家」への復讐が話として出ていながら実現しなかったのは残念だったかもしれない。 そのほか登場人物に関して、主人公は特別かわいく撮られているわけでもないが、ちゃんと健全な色気を見せている点で前作の制作姿勢とは著しい差がある。この主演女優は事態に翻弄される普通人の役柄を誠実に演じており、「風切羽~かざきりば~」(2013)に続いて脱・制服女子高生といった印象があった。他の2人もそれぞれ個性的かつ印象的な人物を演じており、ニコ役(小宮一葉)は全編にわたって凄味を出していたほか、紀里子役(サイボーグかおり)は役者本人がかなりユニークな人物らしく、ネット上でこのOVの魅力を極めてお堅い感じで語っていたのが可笑しい(真面目に読みました)。
[DVD(邦画)] 6点(2015-01-02 10:25:14)
1039.  ひきこさんの惨劇<OV> 《ネタバレ》 
基本的には真面目に作ってある感じだが、何を売りにしようとしているかわからない。この都市伝説を題材にしたのが世界初というわけではなく、フェイクドキュメンタリー的な構成やPOV風の映像が珍しいわけでもない。劇中にネットワーカーの存在を組み入れる一方で、現実世界のネット上で映画と連動したフェイク情報を流すといったことも2013年時点では革新的とも思われない。 そういうわけで凡作としかいいようがないのだが、制作上の各種制約との関係ではパフォーマンスが結構いいのではと想像され、実際見てもそれほど悪い印象はない。逆に低予算C級ホラーを色気も何もなくひたすら真面目に作っていること自体が特徴というべきかも知れない。   ただし難があると思われたのは、誰が何のためにこの映像を撮っているか、という理由づけに関して多少綱渡り的なものが感じられたことである。また終盤では、たまたまこのタイミングで廃校に行った人間だけが殺されたように見えていたが、虐げられた連中の怨念が発端だったことはこの時点で関係なくなっていたようで、これは観客側からすると一貫性に欠ける気がした。そのほか具体的な日付(2012/3/11など)が特定されていたのは若干目につくが、これが劇中の出来事に関連付けられているように思われず、意図不明なまま終わってしまったのも不足な気がする。 一方で褒めるようなこともでないが特徴的だったのは、劇中で埼玉県内の実在の地名を出していたことである(実際は足立区や茨城県下妻市の映像も入っていたようだが)。マイナー感のある市名のため、これがリアルさの演出にも多少貢献していると思われたが、個人的にはこのM市を選んだ動機が何だったのか少し関心が持たれる。   なお主人公はアイドルという割には華がないが、役者がタレ目気味なこともあって嫌々やらされているような情けない雰囲気は出ていた。それにしてもこの監督(吉川久岳)は、主演女優をキレイに/かわいく撮ろうという気はないのであろうか。取材される側には普通にかわいい女子が出ていたが、その差がリアルということなのか。 一方で、AD(もっちー)役の人も本職の女優さんなのだろうが、劇中では顔もろくに見えないままAD役に徹しており、ほかではどういう役をやっているのかかえって気になる。
[DVD(邦画)] 5点(2015-01-02 10:24:36)
1040.  不安の種 《ネタバレ》 
原作は実話系怪談集をマンガ化したようなものだが、この映画では近年のホラーにあるように時系列を錯綜させながらも一つのストーリーにまとめた形になっている。そのため原作ではかろうじて“実際あるかも知れない話”だったものが“ホラー映画として作った話”になっており、その点で原作とは完全に別物である。また場所を限定しているために、全国どこにもある日常の中に不安が潜む形になっていないのも本来の趣旨とは異なっている。そもそも怪異の発生が役所の管轄区域できっちり限定されるというのも変な話だが、特に隣接市との合併は本当にバカのように見えた。  また一方で、全体を一つのストーリーにまとめた割には何が起こっていたのかよくわからない。感覚的にいえば、幼少時の事件のせいでヒロインが邪悪なものを背負ってしまい、接触する男を次々に破滅させていたが、それを自分の意志で免れた男と結ばれてやっと幸せを掴んだと思ったにもかかわらず、結局は他ならぬ自分の身内に破滅させられた、というような印象がある。しかし個別場面の論理的な積み上げからそういった結論が出るわけではなく、また正確なところがわかったからといって感動が増すとかいうこともなさそうな予感がある。ほか映像面も造形物も安っぽく、全体として取り柄のない映画という印象だった。 ちなみにゴミ捨て場の女は作家の岩井志麻子氏がカメオ出演しているのだが、こういう人物に演技させると映画としての質にかかわるのでやめた方がいい。本人はどう思ったか知らないが、見る人間にとっては何の益もないことであり、ホラーファンなら許容するだろうと思うのは間違いである。   なお原作はショートヘアのカワイイ系女子(原作者の好み?)が災難に遭うことが多いので心が痛むマンガだが、この映画のヒロインは全くタイプが異なっている。しかし女優本人は極めて好印象であり(少し惚れてしまった)、そういう理由で結局最後に少し加点してしまうというのも困ったものである。毎度のことだが。
[DVD(邦画)] 4点(2015-01-02 10:21:29)
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