1041. 鳥(1963)
小学生くらいでテレビで見たのが最初で、ヒッチコック作品としても初体験となった今作は、私にはっきりとトラウマを植えつけた。「鳥」に対してではなく「ヒッチコック」に対してのトラウマである。劇場初体験の『JAWS/ジョーズ』は間違いなく「サメ」に対するトラウマ的な不安を長らく持たされることになったのだが、この作品はやっぱり「鳥」ではなく「ヒッチコック」。たしかに「鳥」は怖かった。でも小学生の私の脳裏に焼きついたのはあの母親の焦点の合わない目であり、小さな子供を抱えた女のヒステリックな顔なんです。はっきり言っちゃいますが、コレで「ヒッチコック」を嫌いになりました(今は立ち直りました)。幸いにも「女」に対するトラウマでなかったことが救いです。で、思ったのですが、何人かの方も「鳥」と「女」を関連付けたレビューをされてますが、この鳥はやっぱり女の象徴ですよ。集団ヒステリーですよ。女が一番怖いってことですよ。と、支離滅裂な結論で逃げる私はまだトラウマを克服しきれていないようです。 あと初見時のプチトラウマがもう一つありました。淀川さんの顔。「怖いですね」って言ってる顔が嬉しそうだったから。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-27 13:53:56)(笑:1票) |
1042. 乱
冒頭の猪狩りの主役はどこまでも青く続く広大な山々。唯一家族がそろったシーンを唯一陽光まぶしい晴天としたこだわりの中で、丘の頂点に立つ人物を別の丘から撮るという贅沢。カメラから何百メートルではきかないかもしれない距離をおいて演技をする俳優たち。人間の小ささと共に舞台の背景である「世界」を最大限に見せてくれる。後半でも野村萬斎が城跡に佇む超ロングショットが無常観を醸している。一方、合戦シーンは全体を捉えずにまるでカメラが合戦のど真ん中にあるかのようにその躍動だけを見せてくる。台詞回しは不自然な舞台劇風。もちろんその時代の自然な会話というものを知らないのであくまで私見ですが、仕切りの無い、あるいは無いように見せた世界で演劇をする。つまりは映画は嘘の世界であり作られた世界であるということを前提に、でも視点は無限にあるのだという監督の映画観の表れのような気がしました。とにかくこの妥協無き画は天晴れである。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-03-26 14:16:42)(良:1票) |
1043. 陽のあたる場所
物語は金で目がくらみ人間らしさを見失ってしまったための悲劇、つまり資本主義を糾弾したものがベースにあるのですが、カメラはメロドラマを捉える。その背景には撮影時の赤狩りに対処したという事実があるらしいのですが、まちがいなくエリザベス・テイラーの美貌がメロドラマへの欲求を加速させています。そして訪れる、肩越しから超どアップで捉えたチュー!!映画史上に残る美しいキスシーン。リズの美貌があのシーンを可能にし、あのシーンがリズのその後の活躍を確約したといっても過言ではないと思う。そして物語はこのシーンへ向けて進み、このシーンが余韻としてその後のシーンに影響を与えている。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-23 13:28:55)(良:1票) |
1044. ジャイアンツ
ロック・ハドソンとエリザベス・テイラーの出会いが描かれる冒頭の東部でのシーン、そしてガラッと情景が変わる西部へ。このあたりが実に期待を抱かせる素晴らしい画作りに溢れていて好きです。その後人種差別という避けては通れぬ暗い影を主人公が堂々とあからさまに見せ付ける。妻の訴えで偏見が消えてしまうというような生易しいものではない空気をじゅうぶんに見せ続けたからこそ、ラストのレストラン騒動が心地よい。ただこの映画はそれだけの映画ではなく、妻に恋する一牧童のジェームス・ディーンのストーリーも描かれる。とくに中盤からはジェームス・ディーンがメインといってもいいくらいに画面を支配する。後半になってくるとまるで別の映画のようにテーマが拡散してゆく。ジョージ・スティーブンスのこの映画にかける情熱は称えたい。ホントにじゅうぶん伝わってくる。が、この作品は欲張りすぎてただ壮大さだけが残ってしまった感が拭えない。ジェームス・ディーンが名優であることを再認識させるものとはなっているが、この作品ではもっと脇に徹するべきだったと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-22 11:43:39)(良:1票) |
1045. アンネの日記(1959)
《ネタバレ》 150分のやや長尺の作品ながら、そしてそのほとんどが隠し部屋という限定された空間が占めるにもかかわらず、全く退屈感を抱かせずに見せきったのは、原作の持つ真摯なメッセージよりも脚本と演出の力によるところが大きいと思う。ユダヤ人迫害の悲惨さよりもあくまで多感な時期の少女の多感さゆえの不安や喜び、家族との確執や恋愛を映し続けることで、画面にはけして映らない悲惨な状況がよりズシンと響く。モノクロ映画なのに最後の屋根裏部屋での陽光を浴びた二人のせつないキスシーンはカラーで記憶されています。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-20 13:23:48) |
1046. 有頂天時代
アステアとロジャースのコンビで作られた作品ってのはそもそもダンスと歌を見せる作品なわけだから、当然超一流のダンスが拝めるのは当たり前で、それだけで満足できる方も当然おられるだろうし、おられるのも納得の華麗なダンスが満載なのですが、もともとダンスなり歌の鑑賞なら断然生(ナマ)でしょ!と思う私にとって、また特別にアステアとロジャースのファンでもない私にとってはイマイチ高揚感を得られなかったりする。それはこの作品に限らないのですが。とは言うもののコメディとしてのノリもよく、展開のテンポもよいので、ダンスシーン以外でけっこう楽しめました。ダンスシーンではなんといっても影とのダンス。あそこは魅せてくれます。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-19 19:06:05) |
1047. 不良少女モニカ
《ネタバレ》 「今日の映画界にあって『國民の創生』と同じ役割を果たしている」とゴダールに絶賛され、ヌーベルヴァーグの監督たちに多大な影響を及ぼしたという本作は『夏の遊び』同様に「若き日」を同じくあっという間に過ぎ去ってしまう「眩しい夏」にリンクさせて見せる。大人社会から脱出し北欧の夏を満喫する若い男女。そして当然やってくる終焉の日。若い男はすさんだ大人社会に適応しようと懸命に働く。愛する女と自分の子供のためにという目的があるから。しかし若い女は自分の子供ですら自らの自由を奪う社会の一部にしか見えない。女は自らを堕落させてゆく。それを象徴するシーンがレストランだかバーだかで昔の恋人と思われる男と会っているときの、画面を観る我々に向けた恐ろしいまでに冷たい眼差しである。もうこの後は見なくてもわかる、それほどまでに強烈にその後を暗示させるシーンであり、ついさっきまで画面にあった夏の陽気が嘘であるかのように観る者を凍りつかせる。そしてとんでもない映画を観ているのだと、この瞬間自覚するのである。 [映画館(字幕)] 8点(2007-03-16 19:03:39) |
1048. 夏の遊び
《ネタバレ》 「初めて何から何まで自分のもの、という感じの映画が撮れた」とベルイマンが言うところの本作は、神の不在だとか性の問題だとかという難しいテーマが一切無い、実に甘酸っぱい悲恋の物語である。回想で綴られるひと夏が瑞々しく描かれ、またその回想が作品の大半を占めるのですが、青春時代のキラキラ感というかその一瞬にしか出せない陽気さというものが見事なまでに再現されています。その中で『歓喜に向って』でも主演したマイ・ブリット・ニルソンが眩しいくらいに青春の陽気を発散する。ベルイマンの多くの作品に見られる鏡を使った演出も、本作が最も意味深く、最も印象深く効果を発揮している。鏡に映ったバレリーナは涙を拭いて新しい自分を見つける。そうやって大人へと成長する。 [映画館(字幕)] 8点(2007-03-15 17:13:04) |
1049. 歓喜に向かって
《ネタバレ》 ベルイマンの作品群の中ではあまり評価されていないようなのですが、私はおもいっきり泣きましたよ、これ。『歓喜に向かって』の「歓喜」はラストに演奏されるベートーヴェンの第九「歓喜の歌」のことなのですが、そこにはもうひとつの意味が露にされます。物語は妻の事故を知らせる電話から始まり妻の死を知らされるところから回想に入ってゆきます。そしてラストで現実に帰り、その死を受け入れて前を向こうと懸命に演奏する男と、その姿を見つめる幼い息子、そしてその息子を見つめ返す父の中にまさに「歓喜」が宿るのです。音楽という芸術を通して芸術家であることの困難さが描かれる一方で、「歓喜」へと導く芸術の力を見せつける。感動作というベルイマンらしからぬ作品でありながらも、映画も演劇もまた大衆の歓喜の源であるべきというベルイマンの声が聞こえてきそうな作品でもあります。スウェーデン・サイレント映画の巨匠であり、ベルイマンの師でもあるヴィクトル・シューストレムのまさに主人公の師としての演技がポイントポイントで和やかさと笑いをもたらし、作品全体を軽やかにしている。 [映画館(字幕)] 8点(2007-03-14 13:10:16) |
1050. 処女の泉
《ネタバレ》 娘を殺され、自らも人を殺めた男が教会を建てると誓う。このシーンがあるせいで泉があたかも神のお告げのような印象を与えているが、どうやらこのラストシーンは脚本家がどうしても入れたかったシーンであり、一方ベルイマンは入れたくなかったシーンだそうです。ということであれば解かる。ベルイマンが他の作品の多くに取り入れたように、この作品もまた神の不在が語られる。古代の宗教とキリスト教。貧しい者と裕福な者で神が異なるという矛盾。人を信じる者の理不尽な顚末(スウェーデン映画史上初めての繊細な強姦シーンがことさらに理不尽さを強調する)。復讐のための人殺し。そして罪から救われるための祈り。全ての人が祈るが自分のための祈りでしかないことは画面が伝えている。けして光が仰がれるわけでもなく、空が映されるわけでもなく、ただひたすら祈る人々だけが画面に映される。そして湧き出る泉がむなしく映される。 [映画館(字幕)] 7点(2007-03-13 15:38:05) |
1051. 魔笛(1974)
ベルイマンが「オペラ」で認める2作品のうちの1つがこの「魔笛」なのだそうです。この作品を観た際にオペラを専門とする方のトークショーがあったのですが、第二幕がモーツァルトのスコアよりも構成がうまくわかりやすいと絶賛されていました。難解にとられがちなベルイマンですが、彼は映画はエンターテイメントだと言い切っています。そしてそのエンターテイメントは観客のためにあると。それが顕著に表れているのがこの作品だと思う。上記の第二幕の脚色もそうですが、本来のドイツ語ではなくスウェーデンの子供たちにもわかるように(そもそもテレビ放映用に作られている)スウェーデン語が使われており、さらに歌のシーンで字幕板まで登場します。それでもちゃんとオペラ歌手を使って作ってあります。一部の富裕層だけに楽しまれる「オペラ」を大衆にまだ引き下げ、いやこの場合“引き上げた”と言う方が的確でしょうか、つまり芸術は全ての人が楽しむ権利を持っているということがベルイマン思想の根底にあることがじゅうぶんに伺われます。クローズアップの多用はオペラグラスで観た視点ということかもしれませんが、映画だけが持つ視点でもあり、真上から、あるいは真後ろからの視点という劇中劇でありながらも演劇には不可能で映画では可能な視点の提供は「これは映画である」という主張のような気がしました。とにかく「映画」と「オペラ」を楽しみました。 [映画館(字幕)] 7点(2007-03-12 16:24:48) |
1052. リオ・ブラボー
『真昼の決闘』を西部劇ではない!と断じたホークスとウェインの正真正銘の西部劇。たしかに『真昼の決闘』は社会派映画としての隠喩が色濃く、西部劇が娯楽の王道であるならば、かなり逸脱していると言えよう。それはそれで面白いと思うのだが、強い保安官(もちろん女には弱い)に強い絆で結ばれた助っ人たちが手強い状況に屈することなく、そして観客にもこいつらならやってのけるという期待をどんな窮地にも抱かせながら、その期待にちゃんと応えてくれるこの映画は王道の中の王道としていつまでも色あせることなく楽しめるのだ。『真昼の決闘』のプロットを使うのはちょっとずるい気もするが、何かを伝えるために映画を作るのではなく、ただ観客に愛される映画を作るという気概だけで、こんなにも楽しい映画が出来てしまう。どんな映画にもこれが根底にあればちゃんと誰かが認めてくれる。またそういうのは画面に透けて見えてくる。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-09 18:38:01)(良:1票) |
1053. モンキー・ビジネス
中年夫婦のラブラブぶりがなんとも微笑ましく、とくにジンジャー・ロジャースの良妻ぶりに羨ましさを感じる。そんな良妻の壊れっぷり弾けっぷりの凄いこと!若返ってるというよりもおバカになっちゃってるのですが、あまりの弾けっぷりにそんなことどうでもよくなって大いに笑わせてもらった。マリリン・モンローはさして重要な役でもなく、出番も少ないわりにその存在感だけが妙に突出していてかえって浮いていたような気もしますが、モンローの美貌がおまけで付いてくるコメディだと思えば得した気分。だからといってけしてモンロー目当てで見る作品ではないのでご注意を。いやーそれにしても「気持ちは若くありたい」なんてよく聞くけど、中身だけ若返るってのは、はっきり言って気持ち悪いってのがわかった。年とともに得るものってけっこう素敵なものなんだ。 [DVD(字幕)] 7点(2007-03-08 13:45:55) |
1054. 三つ数えろ
《ネタバレ》 ストーリーが複雑だとは全く思わずに観たのだが、みなさんのレビューを読んでなるほど、たしかに運転手は誰が殺したんだ?いやはや私は何を観ていたんでしょう。ただ、この作品はずっと主人公の探偵がわからないことは観客もわからないという基本線を貫いていたので、主人公が知りたいこと興味があること、そして依頼を遂行するのに知るべきことを主人公とともに模索し、主人公にとってどうでもよいことはこちらもどうでもよいという感じで観ていたのだと思う。だから調べれば調べるほど謎が出てくる展開に素直に楽しめた。主人公がわからないことは観客もわからない、この徹底が想像力を膨らませる。その格好のシーンがラストの「三つ数えろ」。ドアを開け出て行く男と銃声。見ていないものは映されない。渋い演出だ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2007-03-07 12:07:39)(良:1票) |
1055. ハタリ!
『赤ちゃん教育』の豹といい『モンキービジネス』のチンパンジーといい、本物へのこだわりもココまでくるとスタッフも大変だなぁと思う。その成果として、捕獲シーンの緊張感と臨場感は並々ならぬもの。ただ、個人的には様々な動物の捕獲シーンは、最初と最後のサイ以外は、リストにチェックを入れる様と捕獲シーンのダイジェストをかぶせてさらっと見せてくれたほうが良かった。そりゃ、命懸けだったろうことを思うとなんちゅうことを言うとるんや!と怒られそうですが。だって見せ場は捕獲シーンじゃなくて無骨な男とその男を唯一オタオタさせることができる女とのコミカルな恋愛模様であり、相棒たちのこれまたおかしい4角関係であるのだから。小象たちを筆頭としたラストのドタバタに、そしてそのドタバタにジョン・ウェインがいることに映画の楽しさを満喫する。 [DVD(字幕)] 6点(2007-03-06 14:20:47) |
1056. 赤ちゃん教育
キャサリン・ヘプバーンといえば、タカピーで傲慢なイメージを勝手に持ってたのですが、たまたまこの作品の前年作品であるジョージ・スティーブンスの『偽装の女』を最近観て、その可愛らしさに驚いたわけです。でも彼女の魅力はこの傲慢さにあるのだということを再認識し、そしてその魅力を最大限に見出したハワード・ホークスの女優を輝かせる手腕にあらためて感服しました。とにかく今観てもかなりのハイスピード、ハイテンションで機関銃のごとくしゃべり続けるヒロインに圧倒されっぱなし。ケイリー・グラントは圧倒される間も与えてもらえずにただひたすら彼女に翻弄される。その滑稽極まるコメディアンぶりがおかしくてしょうがない。いや、ケイリー・グラントだけでなく、警察官も庭番も豹の鳴きまねをするおじさんも実にのんきでお間抜けで、ヒロインのハチャメチャさとの差異の大きさが見事なテンポを作っている。大好きな作品。 [DVD(字幕)] 8点(2007-03-05 17:01:40) |
1057. パッチギ!
《ネタバレ》 オーバーととられがちな喧嘩のシーンですが、私にとっては実に懐かしかった。「なにメンチきっとんじゃー!」のセリフにうんうんと懐かしみ、急所蹴りにケツの穴が縮こまる思いをし、朝鮮学校とのいざこざという恐怖体験を思いおこしながら楽しく鑑賞。中学生くらいの頃は私も平気で差別用語を連呼してました。でも差別という概念はなく、それが当たり前の言葉として存在していた。この映画も公共のメディアとしては実に乱暴だけど、あきらかな「在日VS日本人」という普通なら話の隅っこに描かれてきた、でも実際はちゃうやん!という図式を堂々と見せつける。私たちがそうであったように、この映画の子供たちは政治から全く切り離された世界で戦っている。そこに実は差別は無いと思いながら。だから青臭くて楽しくてどこか悲しい。しかしそのことを全肯定していない。子供たちの、そして私の無知を非難するシーンがある。葬式のシーンです。ここは応えた。それでも新しい世代の子供たちは自分たち流にケリをつけようとする。加茂川の戦い。無意味な戦争。そこに命の誕生を告げる飛び蹴り。戦争を終わらせる方法としてこれ以上ない感動の飛び蹴り。政治の話はいまだによくわかっとらんのですが、この映画が楽しいというのはよくわかります。 [映画館(邦画)] 7点(2007-03-02 14:36:43)(良:3票) |
1058. ゲロッパ!
一般受けを狙ったせいで監督の持ち味が出てない。ジェームス・ブラウンでしょ!だったら「JB=ファンキー=大阪」で絶対大阪ローカルな空気で充満させるべき。JBのキラキラ衣装って大阪のおばはんが着てそうやし。メジャーな俳優の起用も裏目に出てるんじゃないだろうか。公開当時のラジオ番組で監督が撮影時のエピソードを語ってましたが、トータス松本が常盤貴子とのカラミのシーンで「胸、触っちゃってもいいっすかね」と聞いてきたので「いってまえいってまえー」と煽ったとか。でもそのシーンを見てみると触ろうとするトータスの手からさりげなく回避しているように見える。それがいいと思うんならちゃんと触るまで撮らんかい!けっきょくみんなプロだからもちろん演技はうまいんだけどそこには女優・常盤貴子がいるだけでしかなく、俳優・西田敏行がいるだけでしかなく、寺島しのぶも当然女優・寺島しのぶでしかない。岡村なんか『岸和田少年愚連隊』では「小鉄」だったのにここではナイナイの岡村でしかない。関西人以外の微妙な表現方法がわからんからなのか、職業俳優に遠慮してるのか、その両方か知らんけど、とりあえずこの作品には私の知る井筒和幸の良さはほとんど無い。 [DVD(邦画)] 4点(2007-03-01 15:33:53)(良:1票) |
1059. 岸和田少年愚連隊
井筒監督が学生時代に初めて撮ったフィルムの一部を以前深夜のバラエティ番組で観たことがあるのですが、映されたのはやっぱり学生の喧嘩。関西を舞台に中高生が暴れまくる、これが彼のルーツであり彼の本領なのです。『ガキ帝国』では後半のハードボイルドタッチが臭かったのですが、この作品は「喜劇」という基本線からけして逸れないので最初から最後まで実に楽しく鑑賞できる。なぜか必ず見ていた「野生の王国」、551の豚まん、息子の彼女に当たり前のように料理させる家族、会話のテンポ、お好み焼き屋、、細部が実に生々しく懐かしい。井筒監督が知り尽くしたいわば「庭」で素人俳優たちが輝きまくってる。 [DVD(邦画)] 7点(2007-02-28 12:00:21)(良:1票) |
1060. 突然炎のごとく(1994)
《ネタバレ》 坂上香織のお尻のアップが映される。それも二度。3度目のお尻はアップではなく公衆電話での後姿。これが完璧なお尻。これを見せるために二度のアップがある。私はお尻にはうるさい。ジーンズを履いたお尻の描写としてはパーフェクトです。これだけで10点つけちゃいそうなくらい。そんな可愛くて色っぽいお尻を見られることからひとつの出会いが生まれる。その出会いを待っていたからお尻は可愛くて色っぽいのだ。しかし出会いの先にあるものは女が待ち焦がれていたものとは違った。そのオチがイージー。劇中に誰かが死ぬことによって簡単に得られるカタルシスに逃げている。井筒監督としてはこれこそが映画的なのだというところなのだろうし、たしかに過去のアメリカ映画的あるいはフランス映画的ではあるかもしれないが、私が好む井筒ワールドには馴染んでいない。 [DVD(邦画)] 6点(2007-02-27 14:09:53) |