1061. シラノ・ド・ベルジュラック(1990)
元が戯曲だけあってセリフ回しも演劇的で、やっぱり舞台のほうが合っている。 映像にすると舞台なら気にならないようなデフォルメされた部分が嘘っぽく感じられる。 シラノの心意気はフランスの寅さんのよう。 [DVD(字幕)] 7点(2013-11-14 20:06:58) |
1062. 刑事コロンボ/逆転の構図<TVM>
《ネタバレ》 犯人の特性をつかんだコロンボの推理が冴える。 ダシュラーが暖炉で捨てたとされる被害者の写真を、実際に写真を捨てたカメラマンの犯人に見せて反応をうかがう。 写真としては失敗作だと批評するガレスコに、「ダシュラーは先生並み」に写真がわかるから捨てたのだろうと感心してみせる。 ダシュラーを犯人に仕立てたことを見抜きながら、真犯人にこうしたジャブを打っていくコロンボがいい。 最後の決定打ももちろん大事だが、それまでのジャブの質が作品の成否を占う重要なファクターになる。 犯人との攻防以外でお気に入りなのは、コロンボのキャラを生かしたユーモラスなシーン。 教会で恵まれない人だと思われて施しを受けそうになる場面が笑える。 教習所教官とのやりとりもそうだが、こうしたシーンはメインディッシュに欠かせない付け合わせになっていて、これがないとコロンボじゃないような。 ラストのネガ裏焼きのトラップも決まってニンマリ。 [DVD(吹替)] 8点(2013-11-13 21:01:39) |
1063. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
1のほうがシンプルで話の流れに入りやすい。 名作の続編はどうしても見劣りしてしまうものが多い。 [DVD(吹替)] 6点(2013-11-13 21:00:27) |
1064. 別離(2011)
《ネタバレ》 誰も悪くないような、誰もが悪いような…。 描かれているのは善と悪というステレオタイプではない、どこにでもいるリアルな人間の不幸。 相手を責め、自分の責任逃れをするエゴイズムは、誰でもこうなる要素を内在しているのかも。 愛する者を守りたいがための嘘が絡み合って、どうにも解けなくなってしまった糸のような状態。 認知症の親の介護、事故による流産、リストラによる生活苦など他人事とは言い切れないことだし、一つ歯車が狂えばなかなか元には戻らない。 イランが舞台ということで、貧困と宗教が絡んだリアリティに圧倒される。 敬虔なイスラム教徒のコーランへ誓うことの重さは想像以上で、物語のキーにもなっている。 神に誓っても嘘がつけるところでは成り立たないストーリーで、イスラム社会の特性がうまく生かされている。 チャードルで妊婦がどうかわかりにくくなっているのもそう。 街並みも含めて異国情緒や文化が色を添える。 互いに傷つけあう裁判や夫婦の諍いは、醜さと痛みがびんびん伝わってくる。 夫婦ともに娘をとても大切に愛していながら、それでも夫婦間を修復できずにその大切な愛する者を傷つけてしまう。 一番の被害者は子どもで、なす術のない様が哀れを誘い、後味の悪さが尾を引く。 ラストシーンでは、娘の審判を待つ夫婦は廊下の両サイドに分かれて無言、開かれたドアの向こうにいる相手に目も合わせない。 そのドアを何人もの人々が通り過ぎていく。 ほんの少し歩み寄れば簡単に通れるのに、その距離は永遠に届くことのないほど離れて感じられるという見事な演出。 脚本も兼ねたファルハディ監督の才能がうかがえる。 娘が両親のどちらを選んだか明らかにされていないが、娘の涙は両親の修復をついに諦めた惜別の涙に思える。 父の元にいたのは母に戻ってもらいたかったからで、修復不可能だと悟ったなら母のところにいくのだろう。 父を守るために心ならずも偽証までした優しい娘だから、父を見放してしまった自分を責め続けることになるかも。 判断を観る人に委ねる曖昧な描き方はずるくて好きではないけれど、この作品の場合は描く必要がなくこうしたラストがふさわしい。 緻密に構成された完成度の高い作品だが、残念なのは娘が11歳の設定なのに全然そう見えないこと。 どうしてそんなキャスティングをしたのか不思議だったが、娘役が監督の実娘だったとは…。 [DVD(吹替)] 9点(2013-11-12 18:00:15)(良:2票) |
1065. 刑事コロンボ/自縛の紐<TVM>
《ネタバレ》 スポーツジム経営者が悪どい経営を暴かれそうになっての犯行。 コロンボが犯人に怒りを露にぶつけるのは珍しく『溶ける糸』以来か。 それほど嫌味で憎らしい奴として描かれているので、対決もそれだけ盛り上がる。 スタンフォードの電話は録音テープを利用して作ったものだったが、ジェシカに対して事務的なリアクションだったことから疑問を抱いたコロンボに見破られる。 その他にも革靴の跡、中華料理の出前、バーベルの重さ、スタッフォードの電話の内容など、細かい疑問や推理も見どころ。 このまとわりつくようなしつこさは、犯人が嫌な奴ほどおもしろい。 ユーモラスなシーンも散りばめられ、ビキニ美女にドギマギしたり、ランニングに付き合わされてヘロヘロになるコロンボが笑える。 ラストの決め手も論理的で、シリーズの特長がバランスよく味わえる佳作。 [DVD(吹替)] 8点(2013-11-11 21:28:49)(良:1票) |
1066. おもいでの夏
《ネタバレ》 ストーリーもキャラクターもなんてことない。 それだけに自身と重ねやすい部分はあるかも。 ホットドッグプレスでの予習や避妊具購入のドキドキなど、この年頃の男子の頭の中は世代も国境も関係ないのだろう。 憧れのキレイなお姉さんとひと夏の初体験なんて、男目線の理想を具現化したかのよう。 夫を失った時の妻としてはありえる行動なのかがちょっと気になる。 [DVD(字幕)] 5点(2013-11-10 23:54:00) |
1067. スカイハイ[劇場版](2003)
人気テレビドラマを映画化するとイマイチで終わることも多いが、本作もそんな印象。 原作の良さを理解しない者が作ると駄作になる典型か。 漫画やドラマよりアクションに重点を置いたのが間違いで、チープで見ていられない。 エロ妖術対決が売りのVシネ『くノ一忍法帖』シリーズからエロ要素を抜き取ったようなC級感。 ちゃんと名の通った役者も使っているだけに、なおさら違和感が強くなる。 [地上波(邦画)] 2点(2013-11-08 19:58:04) |
1068. 刑事コロンボ/権力の墓穴<TVM>
《ネタバレ》 コロンボと警察の上司との対決が見どころ。 交換殺人はサスペンスとして珍しい手口でもないが、コロンボのキャラがあるので楽しめる。 衣装戸棚に夫人の指紋がなく枕の下にガウンを入れる普段の習慣も見られない、電話に夫人の指紋がなく通話したという証言と食い違うなど疑問を次々とぶつけるコロンボ。 それに対して上司の権限を振りかざしてミスリードしようとする犯人。その攻防が魅せてくれる。 窃盗犯の協力を得て高圧的な上司をワナにはめるラストは実に痛快。 [DVD(吹替)] 8点(2013-11-08 19:56:52) |
1069. おいしい殺し方 -A Delicious Way to Kill-
《ネタバレ》 ケラリーノ・サンドロビッチの舞台は何度か観たが、ユニークなキャラクターとウィットに富んだセリフがおもしろい。 その特長が本作にも活かされている。 投身自殺と思われた料理教室の講師の死をめぐって真相を解明していくサスペンス形式だが、犯行トリックは無理筋で推理クイズ並みのこじつけレベル。 そういったことは実はどうでもよくて、あくまでケラ得意の軽妙な会話が肝になったライト・コメディに仕上がっている。 インタビュー形式のモノローグを時折り挿入したり、クライマックスで教材のナレーションが犯行の解説に移行したり、演出も巧み。 ラストは名探偵の子どもを買収して探偵ゴッゴの継続を表すオチで、しっかり計算された構成。 主演の奥菜恵はコミカルな役にハマって好演。 脇を固める犬山イヌコ、池谷のぶえのオバサンキャラも個性的で抜群の存在感。 ただ、ケラ作品は生の舞台のほうがインパクトがあって好き。 映像でもおもしろいんだけど、内容自体は頭に残らず、しばらくすると忘れてしまうような軽さがある。 テレビやDVDならいいけど、決して映画館で見たいとは思わない類の作品。 [DVD(邦画)] 7点(2013-11-07 23:09:14) |
1070. 刑事コロンボ/白鳥の歌<TVM>
《ネタバレ》 トミーに非があるとはいえあんな刺々しい妻なら殺意が沸くのもわかるような…。 大事なギターを別便で運んだこと、事故の一週間前にメリー・アン抜きの編曲を依頼していたことなど細かい質問責めで食い下がるコロンボ。 そこでの犯人との探り合いが作品の出来を左右するが、本作ではちゃんとシリーズの妙味が味わえる。 パラシュートのローブを作るおしゃべりなお婆さんがいいキャラで、コロンボとのやりとりが楽しい。 広い山の中から証拠品を発見するのに隠した本人から導き出すラストもスッキリ決まっている。 ストーリーの中で一番疑問に思ったのは、墜落した飛行機とその飛行機からパラシュートで降りた地点の距離。 犯人は足を骨折しながら歩いて墜落した飛行機のそばまで行っているが、着地地点をコントロールできるパラグライダーならともかく、それほどの近距離にあの規格外のパラシュートで落ちるのは不可能だと思うが。 [DVD(吹替)] 6点(2013-11-06 00:04:09) |
1071. ボーン・スプレマシー
《ネタバレ》 三部作の1と3を見たので、せっかくだから残った2も見ることに。 雰囲気は好きなんだけど、ストーリーにハッとするようなものがない。 登場人物の関係が1より少し複雑で、頭の中で整理しておかないとストーリーに乗り遅れる。 カーチェイスはド迫力だったが、全編通してのハンディカメラの多用は映画館で観たら酔って気持ち悪くなりそう。 両親を殺されたロシア娘の可憐さに、一生かけて贖罪してもまだ足りないとボーンを責める思いへと一気に転化。 真実の告白だけで済まされることじゃなく、カッコつけて去ってるんじゃないよと。 ---------- 久しぶりに三部作を時系列通りに見直してみると、以前より単純にアクションを楽しめた。 恋人を殺されて復讐に燃えるボーンと、ボーン抹殺に動くCIAの中で真実を求めるうちに次第にボーンに理解を示し始めるパメラ。 この二人のやりとりはなかなか良かった。 が、やっぱり両親を殺された娘への同情で主人公に引っかかってしまう。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-06 00:02:28) |
1072. エクソシスト
大きな話題になった映画で、テレビで放映されても怖くてなかなか見れなかったほど。 でも、場面場面は怖いんだけど見終わってみるとあまり後に残らないというか…。 同時代のオカルトものでは『オーメン』のほうがストーリー性があって鮮明に頭に残っている。 [地上波(吹替)] 5点(2013-11-05 00:31:38) |
1073. 刑事コロンボ/愛情の計算<TVM>
《ネタバレ》 今回の犯人は息子の論文盗用を隠蔽しようとした人工頭脳学研究所所長。 その息子への愛情を利用して息子逮捕の猿芝居で所長の自白を引き出すが、なんともスッキリしないラストでしらけてしまう。 本線からは外れるが、天才少年やロボットとコロンボのやりとりがいい。 名無しの愛犬のなまけぐせエピソードもニヤリとさせられる。 ミステリーとしてはグダグダだが、感情のしがらみはわかりやすく無理なくストーリーに入っていけるし、個性的なキャラの楽しさで救われている。 [DVD(吹替)] 5点(2013-11-05 00:30:19) |
1074. ボーン・アイデンティティー
《ネタバレ》 記憶喪失になった男の謎でストーリーに引きこまれるが、目新しい展開はなくありがちな結末。 アクションは迫力があるし、演出はスタイリッシュでいいんだけど。 彼女に危害が及ばないように別れたのに、彼女を探して会いにいくラストはそれでいいの?と引っかかってしまう。 久しぶりにボーンシリーズ三部作を見直してみたら、アクションはカッコイイ。 「アイデンティティー」ではまだ謎に包まれたままの部分が多いが、そのスーパーエージェントぶりは爽快。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-05 00:29:01) |
1075. 刑事コロンボ/第三の終章<TVM>
《ネタバレ》 人気作家マロリーに契約を切られた出版社のグリーンリーフ社長の逆恨み。 老夫婦相手に事故を起こしてアリバイ作りをしたのに、うっかり「彼ら」と複数で呼んでしまう。 酔って記憶がないはずなのに、こうした小さな矛盾がコロンボの大好物。 ただ、メインストーリーが少し複雑になっていて、これがコロンボシリーズには合わないような…。 グリーンリーフは誰かに殺人の濡れ衣を着せれそうになっているように偽装し、共犯として利用した爆弾マニアのエディを用が済めば殺害、そのエディをマロニーの遺作の作者としてでっち上げ、出版権を自分のものにしようと謀んだ。 つまりはエディが自分の書いた作品をマロリーとグリーンリーフに横取りされての復讐というのが犯人の筋書き。 2時間の本格推理ものならふさわしい内容だけど、1時間15分程度の短い枠の上にキャラが魅力のシリーズなので、こうしたこみいったストーリーより適度にシンプルなほうが向いていると思う。 [DVD(吹替)] 6点(2013-11-04 00:18:11)(良:1票) |
1076. オーメン(1976)
オカルトブームの代表作のような映画だけに、よくできているし独特の雰囲気がある。 666やラストのダミアンの笑みなど、心に刻みつけられたシーンが幾つも。 [地上波(吹替)] 7点(2013-11-04 00:16:19) |
1077. 刑事コロンボ/意識の下の映像<TVM>
《ネタバレ》 サブリミナル効果が一時期結構話題になったが、これはそのテーマを扱った先駆け的作品かも。 フィルムのサブリミナル効果に加え、塩辛いキャビアと高い室温の合わせ技で説得力を増している。 ただ、密室ではないので目撃者が一人でもいれば失敗するかなりリスクの高い犯行ではある。 コロンボ得意の細かい推理はこのシリーズの楽しみのひとつ。 犯人の名で料金先払いの電話をかけて相手が受けたことから親しい関係であることを見抜くあたりはいかにもコロンボらしい。 映写技師のコインを使う習慣を根拠に、犯人のアリバイ工作を見抜いたのもそうだ。 犯行手口を逆に利用して逮捕につなげるのもオシャレでキレイに決まった印象。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-03 20:38:31) |
1078. 刑事コロンボ/野望の果て<TVM>
《ネタバレ》 上院議員補欠選挙を控えて、スキャンダルにならないよう愛人の秘書と別れるように迫る選挙参謀。 言ってることは妥当なので、殺すほどの理由にはとても思えなかった。 ヘイワードが上着を十日前にオーダーしたのは、あらかじめ上着がダメになることがわかっていたのではという疑惑。 例によってコロンボがしつこく疑問をぶつけていくので、ヘイワードがジワジワ追い詰められていく様が面白い。 人違い殺人ではなく最初から参謀を狙って待ち伏せていたと推論するコロンボに、ムキになって反論するヘイワード。 「自分が狙われたのではないとわかれば安心するだろうと思ったのに」 コロンボの言葉に一瞬フリーズするヘイワード、こういうコロンボの術中に嵌っていく描写が素晴らしい。 窮地を挽回しようとして打った手がやぶ蛇で、コロンボに見透かされてトドメを刺される。 役者の違いを見せつけて痛快なラスト。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-03 20:37:25) |
1079. ボーン・アルティメイタム
3部作のラストとは知らずに見始めたが、途中でやめるのもなんなので最後まで見てしまう。 案の定、ストーリーに乗り損ねて全体像を把握するのに手間取った。 テンポのいい展開とアクションは印象に残るが、やっぱり1・2作目を見ていないとピンと来ず。 この後1と2も見たが、シリーズものは順番に見るべきだと当たり前のことながら再認識。 久しぶりにこの三作を順番通りに見直してみたら、なかなか面白かった。 アクション映画のカッコ良さに徹していて、ボーンの超人的な仕事ぶりに惚れる。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-11-02 23:00:16) |
1080. 刑事コロンボ/別れのワイン<TVM>
《ネタバレ》 シリーズの中でも名作と誉れの高いだけのことはある。 コロンボが共感を覚える犯人の登場はこの作品からで、それまでの犯人像は冷血で利己的な憎むべき対象として描かれることが多かった。 殺された異母弟よりも純粋にワインを愛した兄のエイドリアンに同情してしまう。 ワインの専門知識がストーリーにうまく生かされている。 ワインはボトルからデカンターへ移しかえることで息づかせる。 ここでミスがあるとワインが台無しになるので、高価なワインは誰にも任せず自分でやる。 ところが、一度だけ(義弟の殺害直後)他人にこの過程を任せている。 エイドリアンは吉報へのお礼だと説明するが、「手は震えませんからね」とチクリと核心を突くコロンボの言葉に、水面下での攻防を見るようでおもしろい。 逮捕の決め手になったのもワインの性質に関わることだった。 犯行時、ワイン庫の空調を止めたために40度を越えた猛暑でワインが酸化してしまった。 このワインがダメになったことを識別できる舌を持つのはエイドリアンを含めてもごくわずか。 皮肉な話だが、いさぎよく自供を承諾する犯人に好感が持てる。 その伏線として、何よりも大切なワインがダメになったことと、秘書に秘密を握られ迫られていたことが効いている。 もともと善人なので、重荷を下ろして楽になりたい気持ちもあったのだろう。 ラストで乾杯する二人には互いへのリスペクトを感じる名シーン。 [DVD(吹替)] 8点(2013-11-01 21:45:06)(良:1票) |