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目隠シストさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2251
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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1161.  女優霊(1996) 《ネタバレ》 
古典怪談『牡丹灯篭』『番町皿屋敷』、あるいは同監督の『リング』にしてもそうですが、成仏出来ずに幽霊となること、ましてや他人を呪い殺すほどの怨念を溜め込むとなれば、それ相当の理由があるはずです。その説明を省略したのは、ホラー映画としてのハンディキャップと考えます。ストーリーで恐怖を訴えかけられない分、視覚に頼らざるを得ないから。もっとも本作の画づくりは冴えていました。フィルムに焼きついた霊、不自然に折れ曲がった転落者の脚。中でも一番ブルったのは、ロケバスの窓に映った人影でした。在るはずのないもの、理解不能なものに私たちは怯えます。そういう意味では、クライマックスの女優霊出現シーンはちょっと弱い。“顔色の悪い白衣装の女”と認識してしまえば、別段怖くありません。幽霊を怖く見せるのは至難の業で、なかなか満足のいく描写には出会えません。『リング』の貞子は、その奇妙な動きが恐怖に結びついた稀有な例です。(個人的には、黒沢清監督の『回路』の幽霊の描き方がベスト。『呪怨』の白色坊主などはギャグにみえます。)尺をもう20分か30分足して、女優霊の怨念の正体に迫れたら、もうワンランク上のホラー映画になったのではないかと。
[DVD(邦画)] 6点(2011-01-16 00:48:25)
1162.  その男は、静かな隣人 《ネタバレ》 
(ネタバレあります。ご注意ください。)  床に落ちた銃弾を拾う主人公を同僚が探す場面が2度ある事から、その間の出来事は主人公の妄想と見て取れます。つまり一躍ヒーローになった事件や出世、女副社長との恋愛等、物語の大部分は現実では起きていません。彼が撃ち殺した銃撃犯は、彼自身の願望が作り出した幻だと思います。ただ気になるのは、前述のシーンが全く同じではないこと。主人公の服装やクリスマスデコレーションに差異がある。これをどう捉えるか。病んだ心は、自分を殊更惨めに、そして他人を幸福に見せてしまうもの。彼の瞳には、有りもしないクリスマスの飾りが映っていたのではないか。“クズどもがクリスマス気分で浮かれやがって”。ここで重要なのは現実か否かではなく、彼に見えているかどうか。それは彼の“体験”にも言えることです。単なる妄想で片付けられない。恋愛の日々は彼の心を癒しました。たとえ空想の中であったとしても、彼を変えました。だから同じ場面でも、1度目と2度目は同じじゃありません。その結果、愛する彼女を含む5人に命中するはずの銃弾は、放たれずに済みました。これは避けられぬ悲劇における救いです。彼にとってのクリスマスキャロルだった気がします。彼女の笑顔が言わば精霊。でも、彼自身に向けた引き金までは止められませんでした。空想は薬になります。上手く使えば、自分を救う手助けをしてくれます。でも効果があるのは軽症のうち。すでに彼の心は瀕死の状態にあったのでしょう。心が流している血に本人は気付けないもの。  そのシャツの染み、本当にケチャップですか?
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-13 19:28:08)
1163.  ブレーキ(2009) 《ネタバレ》 
“ブレーキを踏んだら、捕らわれの恋人に毒が注入される死のドライブゲーム。あなたならプレイヤーにブレーキを踏ませるために、どんな仕掛けや障害を用意しますか?”大喜利でこんなお題が出たとしましょう。とりあえず小遊三あたりが「道路に穴を掘っちゃう」。続いて好楽が「バイクや車で邪魔するってのは」。まあ、前菜はこんなもの。この後の頭脳派円楽の理詰めのトラップ、木久扇の天然ボケがメインディッシュですから。ところがこの大喜利はいつまでたってもメインが出てこない。似たような前菜が何皿か出て終了。円楽や木久扇はおろか、昇太の未婚ネタ、たい平の嫁話さえなし。山田君いじりや歌丸のデスネタも観たかったのに。これでは大喜利として成立していない。本作はそんな映画でした。原作が『リアル鬼ごっこ』の作者と知っていたので、期待値のハードルは目一杯下げておいたのに、見事にコケました。これはちょっとナイなあと。一応どんでん返しはありますが、座布団十枚の賞品がボーナスだったのに、棒とナスが出てきたみたいな失笑レベル。そうそう、谷桃子のベッドシーンも酷かった。彼女が脱がないのは承知していましたが、まさかシーツでグルグル巻きとは。80年代のアイドル映画かと。そんな格好でセックスする奴を見たことあるのかと。こんな事なら、ちゃんと“お仕事”が出来る恵比寿マスカッツに発注してやってください。
[DVD(邦画)] 1点(2011-01-10 17:27:05)
1164.  バリア 《ネタバレ》 
4人に地図を渡したのがトラヴィスの仲間だとしたら、何故そんな回りくどい遣り方をしたのでしょうか。人を雇って送り込む方が手っ取り早い。城の出現と入城には、作中語られていないルールが存在すると推測されます。まず考えられるのが、城の秘密を知らない者が自発的に赴くという行為自体が城出現の条件になっていること。時間に余裕がある好奇心旺盛な若者なら、打ってつけと言うワケ。次に人数の問題。救出を考えるなら、送り込む人間は少ないほどいい。1人なら有無を言わさず代わればいいのだし、2人でも騙すのは容易。4人組を選んだ事にも意味があるのでは。この城はきっと“団体様のみ大歓迎”なのです。つまり男が単身で探し回っている限り、城には辿り着けないということ。親友が囚われてから早2年の月日が流れた。それが次元の狭間に存在する城で換算すると何年分に相当するのか。死にはしない(というか死ねない)のだろうけど、廃人になってしまう。早く同じ手順で罠を仕掛け、身代わりを送り込まないと。アンチエイジングに興味があるマゾ体質なら少しは良心が痛まない。自分ならエステティックサロンとSMクラブに潜入し、身代わりを探します。オマケでお肌キレイキレイになって、新たな世界に目覚めたりして。…とまあ、設定が面白いので不明部分を想像して楽しむ分にはイイのですが、純粋な物語としての出来はイマイチ。無駄に長く、作りこみが甘い。タレント本でもあるまいに、余白を取り過ぎです。『世にも奇妙な物語』の1篇で丁度いい感じ。あるいはリメイクで良くなりそうな映画です。
[DVD(字幕)] 5点(2011-01-07 19:29:35)
1165.  七人の侍 《ネタバレ》 
子どもの頃大好きだったTVアニメ『ガンバの冒険』と同じプロット。当然本作が元ネタです。導入部で早くも胸が熱くなりました。弱きを助ける好漢7人の英雄譚に期待を膨らませました。ところがどうも様子がおかしい。農民たちは野伏せりの襲撃に怯える無力な羊ではなかったからです。菊千代が言うように、狡猾で、強か者だった。野伏せりが狼なら、7人も狼。そして農民たちもまた狼でした。お上によって飼いならされているだけ。勧善懲悪の娯楽活劇ではなく、農民と野伏せりの生存権を賭けたリアルな戦争と捉えるのが正しい見方だと感じます。例えば何故侍たちが農民に加勢したのか。農民たちの必死さと勘兵衛の人柄にほだされたのは事実。でもそれだけじゃない。武士は戦いが本分。剣を振る機会があれば振るいたい。それが証拠に久蔵は益の無い立会いでも刀を抜いている。外科医が技術維持のためにオペを望むように。あるいはスポーツカーのオーナーが愛車を乗り回したいように。利害が一致したから侍たちは農民の話に乗ったのです。戦の有様にもリアリティを感じました。農民VS野伏せりの戦が、国同士の合戦と違うのは大将が居ないこと。野伏せりは1匹狼が徒党を組んでいる状態。いくら戦いの玄人でも、個々の力はタカが知れている。素人でも団結をすれば玄人を凌ぎます。ましてや潰し合いともなれば、頭数がモノを言う。地の利もある。あとは竹槍を突く勇気があるかどうか。この戦の性質を見抜いていた勘兵衛の作戦勝ちでした。農民たちは十分な勝算のもと、勝つべくして勝った。日常を取り戻し、農作業に勤しむ農民たちの生き生きとした姿を前に、勘兵衛の胸に去来したものは何だったか。飼いならされていたのは農民だけか。いや侍たちとて同じこと。生きる糧を得る術を奪われている彼らの方が、より事態は深刻かもしれない。勘兵衛の最後の台詞「今度もまた負け戦であったな」は、実の無い生き方を強いられている武士全てに向けられていると感じました。もし、自分があの村の百姓だったらどう決断したか。米と女を差し出し命乞いをしたか、土地を捨て逃げ出したか、はたまた彼らと同じように戦ったか。平和を望むなら刀を抜いてはいけない。そう私たちは教えられてきました。その考え方は間違ってはいないと思う。でも刀を捨てるのが正しいのだろうか。農民たちを観て何も感じなかったらウソだと思う。日本人は全員この映画を観るべきです。
[DVD(邦画)] 10点(2011-01-04 21:26:13)(良:2票)
1166.  秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 ~http://鷹の爪.jp は永遠に~
「俺たちは後世に残る名曲に興味はない。楽曲は使い捨てで結構」とは電気グルーヴの言葉(違ってたらゴメンナサイ)。自分はこの考えが好きです。鮨屋の心意気。この握り、今はご馳走だけど明日になったら生ごみよ。そんな潔さに痺れます。本来「笑い」(電気の場合は音楽だけど)の真髄は即時性にこそ在る。ですから、ギャグ漫画が短命なのも、お笑い芸人に一発屋が多いのも当たり前。時代は移ろうのだから。『鷹の爪』からは、廃れることを恐れない覚悟を感じる。徹底した話題づくり、劇中コマーシャルの浅ましさ。足の早い「もう中学生」ネタなんて、日持ちを考えたら使えない。刹那の笑いに全力を注ぐ姿は、愚地克巳VS花山薫、あるいはアイアン・マイケルVS柴千春を彷彿とさせます(byグラップラー刃牙)。凄まじくカッコイイ。たとえ数年後、本作が世間から忘れ去られたとしても、今この瞬間、心動かされた事実は決して消えません。それで十分なのです。本作は100%名作には成りえません。でも後世の人々を惑わす珍作にはなるかもしれない。生ゴミだって化石になればお宝です。ですから、遥か未来の人類に向けて、この映画を理解するためのヒントを残しておきたいと思います。★ジョン・ジョローリン…FOXドラマ『24』ジャック・バウワーのパロディ。★もう中学生…本当はもう大人。ダンボール業。★ばんどうえいじ…ゆで卵を主食とし、忘れた頃に野球の話をする。天敵はクロヤナギ。★ドウマリコ…堂真理子。テレ朝の女子アナ。8代目Mステ。右投げ右打ち。★スーザン・ボイル…歌の上手いおばさん。茹でられてはいない。★オババ大統領…オリジナルはオバマ。アメリカのジャイアン。アメリカは世界のジャイアン。
[DVD(邦画)] 8点(2011-01-01 00:00:02)(良:2票)
1167.  インスタント沼
監督の劇場作品の中では最も毒気が薄く、笑いも分かりやすいと感じました。起承転結もちゃんとしている方。映画として、こなれて来たというか。ただ、小ネタの乱発ぶりはいつも通りで、良くも悪くも三木映画という感じがします。多分映画通の方からしてみれば、相変わらず「何だこりゃ」なつくりだと思うのですが、これが監督の味。自分も含めて、この味を楽しみにしているファンにとっては、十分合格の出来かなと。三木映画入門編としてもオススメ出来ます。常連のふせ、岩松、松重の3人に直接の絡みが無かった点がやや物足りないものの、前作『転々』の三浦同様、風間杜夫や松坂慶子といった大御所の転がし方は滅法上手い。三木作品の“正ヒロイン”麻生久美子嬢もノリノリで、加瀬とのマッチングも抜群でした。三木のキャラクターはみんな心根の素敵な奴らばかり。今回も気持ちよく作品世界に入り込めました。点数的には7点ですが、これは満点で7点の映画。ちょっと心を軽くしたい時に、うってつけだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2010-12-31 17:24:39)(良:1票)
1168.  GONIN 《ネタバレ》 
画面に食い入るようにして鑑賞しました。ただ、惹きつけられたというよりは、分からないモノを理解しようと必死になった感じ。作品にパワーが無ければこの作業自体が困難な訳で、ダメ映画だとは思いません。事実、多くの方から高く評価されている。しかし自分にとっては“どこをどう楽しめばいいのか分からない”映画でした。これはもう監督とセンスが合わないとしか言いようがない。脚本も演出も心に響かなかった。誰が死のうが生きようが感慨なし。キャラクターは悪くなかっただけに、勿体ないというか、不思議というか。目が離せなかったのは本木。どこまで演技指導があったのか知りませんが、自分なりの三屋をつくり上げていたと感じます。役者としてのポテンシャルが高い。竹中の狂人演技もお見事。ただ含み綿までして中年太りを演出する必要性があったかは疑問。もう一人のキチ、たけしの存在感は群を抜きます。でもこの味ならば北野映画の中の方が映えるとも思う。核となる佐藤がもう少し頑張ってくれたなら、印象も変わったかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2010-12-27 19:56:28)
1169.  映画 レイトン教授と永遠の歌姫 《ネタバレ》 
レイトン教授が納屋にあった道具で小型ヘリコプターを作ったところで不安になりました。それがOKなら、何でもアリになっちゃう。要するにヤッターマンと同じテクノロジーですから。爆発してもチリチリ頭の煙プシューで済んでしまう世界。ギャグコメディなら勿論アリですが、本作でソレをやって大丈夫ですかという話。クライマックスも同じです。一番弟子くんの空中ダイブ。普通の男の子があんな真似をして無事でいられるワケがない。レイトン教授の玉砕にしてもそう。“ファンタジーだから”あるいは“主要キャラだから”という言い訳でしか説明がつきません。これでは白けてしまう。手品のタネを明かすようなものだから。観客が手品に望むのは本物の魔法ではなく、見事な騙しのテクニック。映画においてもそれは変わらない。ルークを飛ばせるには観客を納得させる設定と理由付けが、レイトンにはせめてパラシュートが欲しかった。「未来の英国紳士ですから」なんて上辺を飾る台詞は要らない。宮崎アニメのアクションだけ真似てもダメ。同じアクションでもコナンやルパンに“許されて”、何故彼らには“許されない”のかを考えて欲しいです。どのキャラも基本的に薄口なのは、キャラにプレイヤーを投影させるゲームゆえの特性でしょうか。絵柄も含めて、心掴まれる何かが本作にはありませんでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2010-12-24 18:26:38)(良:1票)
1170.  空気人形 《ネタバレ》 
男は何故、のぞみにもう一度空気を抜いて欲しいとお願いしたのでしょう。空気が抜けることは、彼女にとっては死を意味します。彼は死に触れたかったのではないかと思うのです。「自分も君と同じようなものさ」空虚な心の内を見せる男。おそらくは、写真の中で微笑む女性が原因。彼女の死に際を彼が看取っていたとしたらどうか。写真の彼女にもう一度会うために、彼はのぞみを利用したと考えられます。のぞみはここでも代用品だった事になる。男の思惑など知らぬのぞみは、その息で恍惚の表情を浮かべます。それはそうでしょう。空気を吹き込まれるのは、命を注がれるのと同じなのだから。彼女にとっては、紛れも無い性交です。偽りの性器では得られぬ本物の悦びを感じる空気人形。自分と同じ幸せを相手に与えたいと思うのは当然のこと。それが愛です。男を“切った”のぞみは、何も悪くない。それにもし男が生きることを望んでいたのならば、助かることは容易だった。彼は自分の意思で死んだのです。何も知らぬ空気人形に多くのことを教えた男。潮の香り、ガラスのきらめき。美しいと感じる心、恋する楽しさと切なさ。限りある命の意味も伝えたのに、何故尊さを教えてやらなかったのか。あの男が憎いです。最後に男が教えたものは、愛する人を失う痛みでした。深い悲しみに耐える術を知らぬのぞみは、自ら男の後を追いました。方や燃えるゴミ、方や燃えないゴミ。2人の魂がこの先、交わることはあるのでしょうか。この作品はペ・ドュナに尽きます。外国人であるが故の“違和感”が良い方向に作用しました。役柄とは正反対、彼女の代わりになる役者は居ないと思わせます。本当に素晴らしかった。そのほかのキャストも概ね良好。ARATA、板尾、岩松、いいですね。ただ、星野真里の存在意義だけがイマイチ薄く、惜しいなあと。生と密接な関係にある“食”パートを担当した彼女が本筋にきっちり絡んできたら、より一層深みのある物語になった気がします。
[DVD(邦画)] 8点(2010-12-21 20:58:26)(良:2票)
1171.  わたし出すわ 《ネタバレ》 
走れないランナーに再び走る足を与えもすれば、慎ましく生きてきた夫婦の歩む力を奪うことも出来る。僅かなお金でツキを呼び込む男もいれば、大金で不幸を引き寄せてしまう女もいる。お金にまつわるエトセトラ。本作のエピソードは基本的に明暗・正負が対になる形で綴られています。お金の魔力に慄くのが小池だとすれば、その威力に気づいていないのが小雪です。彼女はランナー母に株価の値上がり情報を教えました。素人に株の快楽を覚えさせてしまう事がどれほど危険か、彼女は気づいていない。それは、小雪がこれまで負けてこなかった事を意味します。天賦の才なのかもしれない。大金を所有する小雪は、強大な力を有しているとも言える。そんな彼女でもままならぬのは、母のこと。どんなに金があっても、最先端の医療を持ってしても、母親の健康は取り戻せない。資産を全て手放したとき、母の身の上に神の奇跡が舞い降りるというエピソードは、お金至上主義に対するアンチテーゼと見て取れます。カネという人が作り出した価値観の中で生きる虚しさを描きたかったのでしょうか。ただ、そうだとするならば本作の踏み込みは甘いと感じます。男に狂った路面電車奥は、単純に彼女がバカだっただけ。殺された女も金を得たから命を落とした訳ではない。負のサンプルとして提示されるエピソードは、どれも筋違いでピンと来ません。それ以上に、ランナーが再び表舞台に立てるようになった事や、引越し屋に起業のキッカケを与えた事実の方が大きい。小池の判断や最後の奇跡が霞みます。本作を観た人は「小雪みたいなお友達が欲しいわ~」としか思わないのではないかと。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-12-18 19:24:38)(良:2票)
1172.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 
青柳にとっては、アイドルを助けたことが運のツキでした。いや遡れば、宅配のバイト、大外刈り、ファーストフード同好会、全てが間違いだったのかも。こんなネガティブな運命論が頭を過ぎるほど、主人公が追い込まれた状況は絶望的でした。でも彼のピンチを救ったのも、これらの経験。オセロのコマが裏返るように、個々のマイナスがプラスに転じていきます。胸を熱くしました。晴子の「だと思った」。父親の「ちゃちゃっと逃げろ」。その一言で救われる。青柳と晴子はリアルタイムで言葉を交わす事はありません。でも友情という絆で繋がっていました。このことが数々の奇跡を生みます。しかしご都合主義だとは思いません。そう観客を納得させる仕掛けが施されていると感じます。以心伝心のカローラの件は、「自分も思い出していれば向こうも思い出してる」という轟の言葉で補足されているし、打ち上げ花火も初キスのエピソードが無ければ出なかったアイデア。そもそも轟さんをロッキーと呼べる信頼関係を築いていた事に意味があります。礎のある奇跡は大歓迎。では、キルオはどうでしょう。彼は助っ人として、突如青柳の前に現れました。その後の動きも神出鬼没。何故こんな芸当が出来たのか。ショットガン男と因縁があること、劇中一般人を殺めていないことから、「通り魔」という肩書きの信憑性が疑われます。彼もまた別件のオズワルドではなかったか。キルオも当局と戦っていたのなら、その立ち回りに説明がつきます。世間に顔が売れていた青柳が生贄に選ばれた妥当性も含め、全編を通して“説得力”を感じさせる脚本でした。エンターテイメントでは、リアリティより価値があると考えます。結末も秀逸です。青柳は手足を失う大事故に遭遇したようなもの。以前と変わらぬ生活を望むのは無理な話。この結末で最善です。彼と仲間の勝負手が、未来を手繰り寄せたのです。「長引かせると厄介だ」そう思わせたことが値千金。当局にとっての安全策、“代替による早期幕引き”を引き出せたのだから。人生は思い通りには行きません。打ちのめされる事もある。そんなとき、どう振舞うかでその人の値打ちが決まります。満点じゃなくても花マルは貰える。「たいへんよくできました」。青柳にはこの人生を誇って欲しい。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2010-12-15 17:50:50)(良:2票)
1173.  秒速5センチメートル
音楽は物語を際立たせるためのアイテム。料理で言えばお皿です。良いお皿は料理を美味しくします。でも『秒速5センチ』では、山崎まさよしの楽曲が主役でした。『One More Time~』を愛でるために物語が盛られているような。本作がプロモーションビデオといわれる所以です。コース料理の1品目、2品目と料理の味を吟味していたところ、メインの3品目で皿が主役の料理が出てきたらどう感じるか。そりゃ戸惑います。あるいは皿に負けぬ料理だったら気にならなかったかもしれない。『One More Time~』が本作のために書き下ろされた楽曲ならば監督の手柄だったのですが…。新海監督の描く世界はポエムなので、好き嫌いが分かれてしまうのは仕方がないところです。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-12-12 19:29:00)(良:2票)
1174.  罪とか罰とか 《ネタバレ》 
ケラといえば『有頂天』世代の自分。氏の笑いの感性に初めて触れたのが日テレ系深夜バラエティ『ギグギャグゲリラ』でした。確か総合演出か何かをしていたと思う。今なお大ファンの伊集院光のテレビ初レギュラーだったので、随分熱心に観た覚えがあるのですが、正直まったく面白くなかった。高校生の自分にはハイブロー過ぎました。時は流れて20年。『グミ・チョコ~』と本作を鑑賞してみて、やっと氏のセンスを理解出来るようになった事に気づきました。面白かった。ばっちりハマったって訳じゃないけど、シンクロ率は69%。Ohエロい。初号機の舌でさくらんぼの茎が結べちゃうレベル。十分でしょう。それにテーマも明確に伝わってきました。罪と罰。いや、責任と覚悟。元カレ、グラビアアイドル、コンビニ強盗、雑誌編集者、警察署員全員(!)。主人公は元より、みんな見事に責任を放棄しています。当然、ペナルティを受ける覚悟もない。確かに面倒なことは誰かに「お任せ」できれば楽でしょう。でも、それじゃ人生の醍醐味は味わえない。だって、やりたいことがやれないんだから。意趣返しでムカつく奴らをブタ箱に放り込んだアヤメ署長。自分の行動に責任を持つ覚悟があれば、世界は変えられる。私のページ以外が全部逆さまだと言い切れる。気分爽快です。これからは大変な事も多いだろうけど、辛さの中にこそ本当の喜びがあるって、団鬼六先生も言ってましたよ(嘘。知らない)。アヤメは“笑わされている”ポスターの世界から飛び出しました。これからは、自分が笑いたい時に笑えばいい。それが“正しく”がんばった成果と言えるかどうかは別ですが。一方トラック男も結婚という罰を受ける覚悟を決めた様子。ひき逃げの罪を贖うくらいの盛大な罰を、どうぞ受けてください。
[DVD(邦画)] 8点(2010-12-09 18:27:30)
1175.  エスター 《ネタバレ》 
怖い・気持ち悪い・腹立たしい、の3拍子揃ったA級ホラー。なんといってもエスター役のイザベル・ファーマンが素晴らしい。あの目つき、表情、口ぶりの忌々しいこと。そして恐ろしいこと。反社会性人格障害は、人格障害の中でも殊更タチが悪い。一般人が対処できるものではありません。でもそれ以上に悩ましいのは、彼女への攻撃が許されぬこと。子供は弱者です。社会的にも肉体的にも。どんなに憎くても、大人が手を出したら負け。悪者にされる。実際、母親はエスターに手を上げたことで貴重な時間を奪われ、大切なものを失った。この制約は大きなストレス。ですからエスターの正体には驚いたものの、同時に安堵もしました。心置きなく戦えるから。反撃の許されぬ自衛など無意味です。交戦力を持たぬ者は逃げるしかありません。でもエスターがこれほどのタマとは思いも寄らない訳で、逃げ遅れたことを責めるのも酷かなと。ただし、多分に自業自得な側面はあります。まるで猫の子でも貰ってくるような気軽さで、エスターを家族に招き入れてしまった。これは軽率を通り越して罪です。おそらくはエスターが指摘したように、今いる2人の子からは得られぬ喜びを彼女に求めたのでしょう。子を持つことは、その子の全てを受け入れること。利発さと芸術の才だけ望むことはかないません。人の親なら重々承知のはずなのに。この両親は、養子をもらう覚悟を理解していなかった。ですから、仮にエスターが良い子だったとしても上手く行かなかった気がします。それにしてもイザベル・ファーマン。本作では某デ○夫人みたいに見えますが、素の彼女は普通にチャーミングなんですよね。この化けっぷりには舌を巻きます。本物の女優でした。これからが楽しみ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-12-06 19:55:48)(良:2票)
1176.  フローズン 《ネタバレ》 
印象としては、雪山版『オープン・ウォーター』。また、最近流行のソリッド・シチュエーション・スリラーにも該当すると思われます。プロデューサーも当ジャンルの代表格『ソウ』と同じ。この手の作品はある意味“出オチ”のようなものだと考えます。極限状態という設定は観客の興味を引くには打ってつけですが、極限がゆえにその後の展開に幅が無い。観客の期待値を上回るのは難しいと考えます。本作もやはり出オチの感は否めませんが、善戦している方だと感じました。まず伏線の張り方が丁寧でした。事前の会話に出てきた「パウダースノー」という単語は観客に“雪面は安全なもの”という先入観を植え付けましたし、ナンパ男がボーダーではなくスキーヤーであったことにも意味がありました。そして何より、彼らの行動に不自然さを感じなかったのが良かった。そう、自分も彼らと同じように考え、同じようにチャレンジしたと思います。ですから、真っ先に自分も死んでいる訳ですが(苦笑)。着衣を繋ぎ合わせて紐にするとか、火をおこすとか(最初タバコは持っていた!)、アイデアはいろいろありますが、所詮は結果論。あの状況では思いつかないだろうなと。彼らはしかるべき手順を踏んで、死ぬべくして死んだ。助かった人はラッキーといったところでしょう。そもそも、窮地に追い込まれた時点でアウトということ。納得の結末でした。東京では夏に封切られたようですが、うちの地域では11月下旬から上映開始。寒さが身にしみてきた時期ゆえ、身につまされました。コレを見てスキー場が怖くなるというよりは、マナーはきちんと守ろうと思う人の方が多いと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2010-12-03 20:11:32)(良:2票)
1177.  ザ・ロード(2009) 《ネタバレ》 
終末世界の構築が見事でした。立ち枯れする木々。荒廃した街並み。人々は人肉を食らう。近作では『ドゥームズデイ』でも同様の描写がありますが、やけっぱちで喰らうのと、生きるために食すのとでは意味合いが違います。後者は、よりシリアスです。食料だから飼育する。衝撃でした。直接的な食肉シーンなど無くても、このリアリティは胸に刺さりました。明らかに私たちが知る道理が通じない。どう息子を育てたらいいのか。「人を食べたらいけないの?」そう子に問われたら、自分なら答えに窮したと思う。しかし、この父親は違いました。生きることが全てではなく、人として生きることに価値があると知っていた。尊厳の意味を忘れなかった。だから彼は息子に生きる術ではなく、死に方を教えたのです。普通では考えられない。でも世界がひっくり返ったのなら常識も覆る。その腹の括り方が、親の覚悟なのだと思います。戦うことはままならず、逃げることさえ容易ではない。子連れのストレスは尋常ではありません。こんなに苦しいのなら、最初から何も無いほうがマシ。そう考えるのも無理はないほど、子の命はかけがえが無いのです。自分の命より大切なものを得る代償に、それを失うかもしれない恐怖と不安を引き受ける。重圧に耐えられなかった母親は、自らの命を絶ちました。絶望しかない世界の歩き方。それは希望を見つけること。いや希望が無いなら作り出すこと。ウソでもクソでも構わなかった。南に進み、海を目指すこと。それがこの父親が“決めた”希望でした。立ち止まったら倒れてしまう。だから足を前に出す。自らの気力を奮い立たせるため、そして息子を生かすために。勝算など無い足掻きでした。でも足掻いたからこそ、本物の希望に出会えた。この父親は賭けに勝った。
[映画館(字幕)] 8点(2010-11-30 18:15:02)(良:1票)
1178.  ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 《ネタバレ》 
主役に小池徹平を配したところがミソ。これがリアルに冴えないニート面ならば、痛々しくて笑えなかったでしょう。イケメンが持つある種の余裕が、物語から程よくリアリティを殺ぐ役割を果たしていました。かといって同じジュノンボーイでも溝端淳平あたりだと整い過ぎていてダメ。小池の低身長は、観客の感情移入を助ける親しみ易さでもあります。リーダー役の品川はハマリ役。お笑い芸人の中でノンスタ井上に次ぐと言われるムカツキ度を遺憾なく発揮していました。でもそれって褒めたことにならないかな。ブラック会社とは法に抵触するほど劣悪な労働条件の企業のこと。生活のため仕方なく勤めているだけだから、向上心など無く、良好な人間関係など望めはしない。そういういう意味では、曲りなりにも達成感を味わえるこの会社は、マシな方なのだと思う。高度経済成長期の会社員物語が植木等の無責任男シリーズとするならば、本作は格差社会を象徴する物語とも言える。寂しいことだけれど、嘆いてばかりもいられない。まずは自分が変わること。自分が変われば、周りも変わる。それがこの会社に芽生えたチームワークという芽。それを育てられるかどうかは彼ら次第です。これはどんな組織にも当てはまること。今風の題材ながら、テーマそのものはオーソドックスなものだったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-11-27 21:28:48)(良:3票)
1179.  サマーウォーズ 《ネタバレ》 
おばあちゃんは電話を使って関係機関に働きかけ、被害拡大を食い止めました。夏希のピンチにはネットを通じ全世界から救いの手が差し伸べられた。通信手段こそ違えど、人と人との繋がりが力を生むことに変わりはありません。一人では不可能な事でも、大勢が集まれは成し遂げられる。瞬時に全世界と情報を共有できる現代は、それだけ莫大な力を生む環境が整っていると言えます。しかし“情報”そのものが力を持っている訳ではありません。情報はただの記号。「助けて欲しい」という記号も、相手の心に届かなければ意味がありません。記号に意味を与えるのも、実行力を伴わせるのも人間です。おばあちゃんの「あんたなら出来るよ」という励ましの言葉に、夏希たちの必死な姿に、人々が動かされたのは何故か。其処には人の心を動かす“確かなもの”が在ったのだと思います。人脈であり、人柄であり、熱意であり、花札の強さであり。「夏希が美人だからだよ」という軽口も、あながち間違ってはいません。全てひっくるめて人間力。祈るだけではダメ。想いをかたちに変える力が必要なのです。おばあちゃんの人脈は、おばあちゃん一人の手柄ではなく陣内家が膨大な労力を費やして培ってきたもの。夏希が勝負の舞台に立てたのも親族の総力の結晶。大きな事を成し遂げるには多くの助力が必要で、多くの助力を得るためには、それ相当の実力が要るということ。時代や場所が変わっても、その原理原則は変わらない。このテーマは全ての人に通じます。胸を打たれました。ちなみに一番気に入ったシーンは、夏希の吉祥天でも、キング・カズマのバトルでもありません。おばあちゃんが主人公と花札をして笑った場面でした。あの素敵な笑顔。おばあちゃんが慕われている理由がすっと理解できました。実は細田アニメの凄いところはココじゃないかと思うのです。物語に命を吹き込むのはキャラクター。線が細くクセの無い作画は、一見すると迫力に欠ける印象を受けますが、とんでもない。デフォルメされた崩れた顔、ただじっと見つめる瞳、どの表情からもその人物の気持ちが伝わってきました。このセンスと技術は高く評価されて然るべきと考えます。『時をかける少女』の次ですから相当なプレッシャーがあったことでしょう。にもかかわらずこんな素晴らしい作品を創り出すとは。心から敬意を表します。次作は劇場まで足を運ぶことを約束します。次も傑作よ「こいこい!」
[DVD(邦画)] 10点(2010-11-24 18:12:05)(良:1票)
1180.  鬼畜 《ネタバレ》 
他人を殺すのは何故いけないのでしょう。それは、自分が殺されたくないからです。殺人を認めると、自分が殺されても文句が言えない。では、どうして親が子を殺すのはいけないのでしょう。それは不利益だからです。遺伝子を残す事を宿命付けられた生物にとって、その逆ベクトルの行為など論外です。他人を殺すのと、子を殺すのとでは、同じ殺人でも意味が違うと考えます。子を傷つけるのは、自らを傷つけるのと変わらない。親が子を愛するのは、自分自身を愛することと同じとも言える。ですから、血の繋がった息子を手にかけたとき、宗吉は自分自身を殺したのだと受け取りました。一命を取り留めた息子を前にして、土下座して詫びる父。その胸中に渦巻いたものは何か。泣いて詫びたとき、宗吉は初めて人の親になれた気がします。もっとも、もし本当に子供を殺す気ならば、あの状況で仕損じは在り得ない。やっぱり彼は息子を殺したくなかったのだと思います。いや、そう思いたい。先に述べたように、生き物は自らの遺伝子を残す事に貪欲です。その為になら何だってする。あまりに合理的。清々しささえ感じる厳格な規律。しかし人間だけはこのルールに縛られません。他人を殺さないのは、殺したくないから。血の繋がらぬ子だって我が子のように愛おしい。動物と人間に差があるとすれば、この部分だと思う。ほんの僅かの差です。善人だって皮を一枚剥けば鬼か畜生が隠れているのではないか。自分の中に宗吉やお梅は居ないか。この映画を観て自問します。わたしは人間だろうか。わたしは人間だろうか。自らを疑っていられるうちは、自分は人の皮を脱がないでいられる気がします。
[DVD(邦画)] 8点(2010-11-21 20:46:05)
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