101. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
《ネタバレ》 007の中では、愛する女性を失う悲しみを描いている点で出色な訳だけれど、これも「スパイダーマン」シリーズの成功にあやかったものだと思うと、すこし、ワンパターンにも思える。しかし、アクションは相変わらずパワフルで、てんこもりジェットコースタームービーとしてはよくできている。エヴァ・グリーンの化粧を落とした時の美しさがとても素晴らしい。 [映画館(字幕)] 8点(2007-01-14 13:48:33) |
102. パッチギ!
「うぉりゃー、いきおいじゃー。ヒロインかわいいんじゃー。根本がものがなしいんじゃー。なんか文句あるかー。」という監督の叫びが聞こえた。個人的には京都に住んでたことがあるので、八千代館とか哲学の道とか、思い出しながら激しく共感しながらみました。完全に観る前から敗北は決まっていたようなものだけど、やっぱ観たら完敗なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2007-01-14 13:39:24) |
103. ジャスト・マリッジ
特に目新しいことは一切ないが、こういうアメリカ映画にしかない味わいのラブコメ映画が作りつづけられる限り、なんか安心できるのも事実なのである。 [DVD(字幕)] 6点(2007-01-14 13:34:02) |
104. マンダレイ
《ネタバレ》 マンダレイは解放させる側にたったグレースを描いている。この映画の中で、「ママの法律」が結局黒人と白人が協力して作ったものであるという事実が明かされるけれど、結局の所、「人を見る目が大事」という価値観が指示を得ている世界は、マンダレイとその根本において何の変わりもないのだと気づかされる。会社、組織、あらゆる社会性があるところで「人を見る目」がものをいう。グレースの「人をパターン分けして管理するなんて人間の冒涜だ!」という主張が正しいなら、誇り高い黒人に惹かれるグレースは自己矛盾していないか? 「人を見る目」、「人をカテゴライズする目」これをなくさずに、なんらかの主張を「語る」ことなんてできはしないのだ。だとすれば、自分本位に「自分はこう思う」という形でしか他人に何かを伝えることはできない。その後に何が起きるのか。グレースのたどり着く「ワシントン」に期待する。 [DVD(字幕)] 6点(2007-01-14 13:30:07) |
105. スクラップ・ヘブン
この映画に出てくるやつはみんな、生きていくには困らない職業についている。警察官に薬剤師、トイレ掃除の人。でもこの世界はつまらないと思っている。それは、バスジャック事件の犯人が、一所懸命がんばってのし上がったのに、のし上がる必要のない奴らにいいように利用されて死を選ばなくてはならなくなったことに影響されているのかもしれない。がんばって、出世したり、金を稼ぐことが閉塞感を帯びる時代への深い絶望。絶望を乗り切るために彼らが選ぶのは想像力を駆使した「世界への復讐」。痛快だ。この部分だけで楽しい。でも他人の思いを想像できない奴らへの復讐は、人殺しを生むことになってしまう。殺人を引き起こすことも想像できなかったという柄本明の言葉が重い。これは想像力が権力に負けるという図式を示しているようにも見えるけど、僕はそう簡単に片付けたくない。僕は、「想像力」という幻想を生み出す機能が現実には勝てないんだ、そういうことをいっているように思える。架空の「想像力」ではなく、現実をもっとしっかりと「見る力」を磨くこと。現実を「見る力」を磨けば、くだらない世界のいいところももっと見えてきてもいいはずだ。 [DVD(字幕)] 7点(2007-01-14 02:37:56) |
106. 青い車
この映画はある意味で救われない。すべての登場人物は、この映画の中ではっきりとは何も得ることはなく、ただひたすらはっきりと失い続けていく。原作漫画を読んだことはないが、漫画が原作であるにもかかわらず、非日常的な来事もなければ、キャラクターの濃い人間もでてこない。普通の人間が、普通に生きていて、普通にいろんなことを失っていく話だ。でも、ある意味でこの映画は救われている。生きるということが失い続けることとほとんど同義に等しいと知った人間は、ある意味で救われるしかない。それは、無言で抱き合うARATAと宮崎あおいを見つめるカメラの距離感や、恋人と妹の関係に気づいた麻生久美子の淡々とした態度が、一種の「愛」のように思えることと一緒かもしれない。すべてが淡々と流れていることを救われているとみなすなんてことはすこし悲しいことではあるけれど、曽我部恵一の音楽が放つ軽妙な「希望」というスパイスがこの映画の視界をすこし明るくしている。だからなんだかんだでバランスが取れている気にさせられるのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2007-01-14 01:57:26) |
107. 珈琲時光
《ネタバレ》 すごいのんびりした時間が流れる。せりふもあんまりなくて、緊張感のないやり取りがふとリアルに聞こえることがあって楽しい。横断歩道渡っているときにふと好きな女の子に「妊娠してるの」って言われるシーンの浅野忠信が妙に印象に残ったり、最後の電車内での再会が素敵だったり、なにより「どこにいるかと思って電話しました」っていう電話のかけ方が最高だったり。この映画はなんとなく切なさと暖かさを微妙なバランスの上で描いたすごい恋愛映画のように思える。ラストで、静けさを破って流れる「一思案」がこれまで見た映画の中でもっとも効果的に使われているエンディングテーマだと感じた。この映画は感じてばっかりだ。でも結構いいのではないかと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2007-01-03 15:39:46) |
108. 父と暮せば
この映画は「生き残ってしまったことに、罪の意識を感じながら生きている」人のための映画だ。「ちょっとしたことの違いで、誰かは死に、誰かは生き残る。」この状況は平和な現代では余り出会わないシチュエーションだけど、たまに阪神大震災とか地下鉄サリン事件があるとクローズアップされる。でも、歴史の大部分を戦争に費やしてきた人間にとって、この「ちょっとした違いが生死を分ける。死ぬのは自分だったのかもしれない」という経験は、かなり共通してもたれていたのではないか。生きるということが実は「生き残る」経験の積み重ねであること。その地点から出発すると、人生は生きているだけで、すでになにかを引き受けなくてはならないのだということが良くわかる。この作品は原爆という題材を通して、宮沢りえのすばらしい表現力によって、「生き残ったものが引き受けなければならない痛み」を存分に表現している。映像のリアルさとか、そういったところに突っ込む映画ではない。死んだ者にどう対したらよいかについて悩む「生き残った者たち」を見る映画だ。十分である。 [映画館(字幕)] 8点(2006-12-28 09:22:05)(良:1票) |
109. カミュなんて知らない
「不条理」と単なる「理由がない」のはちょっと違う。「不条理」には理由はある。でもその理由が理由となるのが何故か周りの人に理解されないだけなのだ。たとえば、誰かを好きになることに究極的な理由はなくても、「本をたくさん読んでるところが好き」みたいな一時的な理由はありえるし、その理由が理由として機能することは多くの人の賛同を得られる。でも、人を殺した理由が「太陽がまぶしいから」では多くの人は納得がいかない。後者を「不条理」というわけだ。ゆえに、人殺しの理由が「むしゃくしゃしてた」というものだったら、それは「不条理」ではない。だから、この映画に出てくるいろんなシチュエーションは、世界が「不条理」に満ちていることを表現し世としているみたいなのだけど、残念なことに、この映画が言う「不条理」は本当の「不条理」ではないのだ。というわけで、テンションはいいのに深みのない作品になっていると思う。おしい。 [映画館(字幕)] 6点(2006-12-24 02:43:49)(良:1票) |
110. 武士の一分
人間は「けじめ」をつけてやっと次の段階に進めるということがある。この「けじめ」が「一分」に近い言葉なのではないかと思う。僕は自分の気持ちなんて、いくらでもコントロールできると考えてきた。どんな状況だって見方を変えればどんな風にも価値判断することができる。これこそが精神の自由だなんて。でも、この「武士の一分」という作品を見て、人が生きるということはもっと「こだわり」に左右されているとわかった。「こだわり」が「けじめ」として機能するわけだけど、そういう生き方も悪くない。そういう生き方とは何か。自分の自然な気持ちに正直に生きるということだ。 キムタクの効果的な軽口が、閉塞感のある世界をユーモアで生き抜くという現代にも通じる知恵を象徴していて、まじめな妻役の壇さんと合わせ、すばらしいキャスティングだと感じた。小林念持があまりにも小うるさいので1点減点。すぐ出番終わっちゃうけど。 [映画館(字幕)] 9点(2006-12-24 02:32:05) |
111. サハラ 死の砂漠を脱出せよ
普通。余りにも普通すぎ。予想以上に普通。ある意味拍手。 [DVD(字幕)] 5点(2006-11-18 17:16:25) |
112. 浮草
《ネタバレ》 この映画は相変わらず小津印に満ちている。熱燗を親方に運ぶ杉村春子は同じアングルでおそらく3回は繰り返される。その3回がいずれも異なった意味を持っているところが秀逸。ラストの親分と京マチ子が駅でタバコの火についてとりかわされるやり取りのシーンが非常にすばらしい。相変わらずの淡々とした物語だが、決して純粋でもないし、全てが美しくはない「汚れた」浮世で、きらりと光る「美しいもの」を見せる小津監督の視線には、依然として畏敬の念を覚える。小津作品としてはMUSTの一本ではないと思うものの、若尾文子の美しさに惑わされて7点。 [DVD(字幕)] 7点(2006-11-16 09:00:25)(良:1票) |
113. 七人の愚連隊
むむ。ふつうにつまらない。ミュージカルとしては踊りが中途半端だし、ストーリーも中途半端だし、最後のオチまで中途半端。あえて魅力を探すならば、緊迫感が全く無い新しいタイプのギャング映画というところか? ビング・クロスビーがまだやせていて、そこだけはみてもよかったと思うが、2時間だらだらは正直もったいない。残念! [DVD(字幕)] 5点(2006-11-15 13:31:51) |
114. 絹の靴下
アステアとシド・チャリシーの共演は、「バンドワゴン」でも観られる。本作は「バンドワゴン」から4年後に作られた作品だが、シド・チャリシーの存在感が断然アップしている。「バンドワゴン」のときにには、アステアの相手役という感じだが、今作ではソロダンスの数もアステアより多いし、なにより、バレエを基調としたエレガントな身のこなしが素晴らしい。本当に美しい踊り手さんだと思う。アステアもがんばってはいるが、年齢による衰えはさすがにしょうがない。アステアファンとしては残念な思いもあるけれど、それを補って余りあるシド・チャリシーの魅力を堪能できる1本。 [DVD(字幕)] 8点(2006-11-15 13:25:21)(良:1票) |
115. 日本のいちばん長い日(1967)
日本人が戦争を語るということは、実はかなり難しい。この映画だけでも、いろんな考え方の人が出てくることからも明らかなように、何を大事に考えるかによって、行動に大きな差が出てくる。しかし、それぞれの相反する主張が、理屈としては、ちゃんと筋が通っている。そこがとても難しい。個人的には、この映画をみてはじめて知った事実もあり、とても勉強になった。また、笠智衆と三船敏郎という対照的な雰囲気の2人が心通じ合う場面は、映画的にすばらしい。武士道を感じさせる名シーンだと思う。生まれた時点で、戦後を生きねばならない日本人として、一度は見ておきたい作品である。 [DVD(字幕)] 8点(2006-11-15 01:59:16)(良:2票) |
116. アメリカ,家族のいる風景
「みせもんじゃねぇぞ。」スペンサーはスターだから、どこへ行っても匿名の存在になることはできない。だれからも「ハワード・スペンサー」として見られる。それはかつて彼自身が望んだことだったし、家を飛び出した理由でもあった。でも、他人がおもっているスペンサー像は、本人とは違う。だからスペンサーは自分を「ハワード・スペンサー」として以前に、「息子」や「父」として端的に付き合ってくれる人たちを訪ねていったのだとおもう。ウェンダースの映画らしく、ユーモアに溢れ、美しい山々に溢れ、優しさに溢れた映画だった。サラ・ポーリーもウェンダース映画の天使の系統をしっかり継承していて素晴らしい。ジェシカ・ラングも内に秘めた苦しみをものすごく暖かく表現していて見直した。それに、本当の自分を捕まえたスペンサーがまた元の世界に戻っていくところがとてもいいシーンだった思う。原題もステキだ。 [DVD(字幕)] 9点(2006-10-17 02:36:58) |
117. もしも昨日が選べたら
仕事が忙しいことを理由に、周りの人に冷たく接してしまうことのある僕にとっては、身につまされる映画だった。「今を大切に生きる」という言葉は、よくいわれるけど、単に目の前のことに一生懸命に取り組むだけでは体が持たない。ほんとうは、「後から考えて後悔しないように、大事なことを決めて、今を生きる」ことが重要なのかもしれない。仕事、家族、いろんな価値観があるけど、やっぱり人のぬくもりに優るものはないということを、この映画は言っている。アメリカはもとより、こういう映画がグサッとくるのはあとは日本ぐらいなのかな? だとしたら、少し考えものだけど。それにしても、ケイト・ベッキンセールは本当にきれいな人だ。それだけを観にいってもいいぐらい。 [映画館(字幕)] 7点(2006-10-09 23:56:45) |
118. エリザベスタウン
佳作と言い切っておこう。でも但し書きが必要。この映画は人を選ぶ。世界にそっぽを向かれた経験をもつものであれば、この映画をよく引き受けられるものだろう。だれも声をかけてくれないとき、誰か話しかけてくれるというのはとても素晴らしいことだ。それは経験者のみがわかる辛いよろこび。この映画を理解しない人は、そのことを喜べばよい。その人が今まで幸せだったということだから。僕は残念ながら前者であるから、キルティン・ダンストを素直にいい奴だと思う。こんな突拍子もない子が周りにいてくれたらと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2006-10-03 01:38:51) |
119. ゆれる
《ネタバレ》 本当の事実は、タケルがカメラの望遠レンズでしっかりと見ていた。そのことを示唆するシーンで、僕は兜を脱ぎます。それと音楽がいい。 ミノルの恐ろしさは、人当たりのいい人格者という側面が徹頭徹尾仮面であったことにある。人から受け入れられたり、評価されたりする部分が全てウソで塗り固められた表層であることを知ったタケルは、耐えられなかったのだと思う。弟が兄を断罪したのは、チエコを殺害したかどうかの罪ではなく、兄の表層を形成するのが、「ウソ」であったことの罪であった。自分の思いを正直に出す性格のタケルにとって、正直さと純粋さは同義語だった。そのため、タケルからみてミノルの「優しさ」が作り物、純粋さのカケラもないものだと感じられたのだろう。純粋さと作為的な「ウソ」と、どちらが人間らしいのかについては様々な意見がありうると思う。とても難しい問題だ。「人間らしさ」なんかにこだわらなければ、そんなこと別にどうでもいいのだが。 [映画館(字幕)] 9点(2006-10-01 19:02:33)(良:2票) |
120. 丹下左膳 百万両の壺
《ネタバレ》 大傑作とはいえないにしろ、面白く出来てますよ。僕もオリジナルをみてから本作をみましたが、会話の妙、間は踏襲しつつ、アクションの面では新しい魅力も加わっているし、また麻生久美子も見れたし、満足な一本でした。オリジナルと比べるとカメラの感覚というか、人物との距離感が本作の方が遠かった気がします。それがどういう効果を生んでいるのかは知りませんが、すくなくとも、オリジナルのような近さで人間を撮ることに感覚として抵抗があるのだなぁと思いました。時代でしょうか。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-10-01 18:39:50) |