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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1891
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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101.  西部戦線異状なし(2022) 《ネタバレ》 
凄惨を極めた第一次大戦下のヨーロッパを舞台に、愛国心から志願した若き一兵士の目を通して戦争の真実を見つめた反戦ドラマ。過去に何度も映画化されたドイツの作家レマルクの古典的反戦小説『西部戦線異状なし』を再び映像化したという本作、今年のアカデミー作品賞はじめ数々の部門でノミネートを果たしたということで今回鑑賞。いやはや、予想していたこととは言え、凄まじい内容でした。汚泥と硝煙に塗れた塹壕戦はこちらにまで血の臭いが漂ってきそうなほどリアルで、観ているだけで胃のあたりが重くなります。さっきまで和気藹々と話していた同僚の兵士が上官の命令とともに出撃し、呆気なく命を落とすシーンは戦争の不条理を否が応でも分からせてくれますね。そんなこと気にもしない国の上層部は、きれいな広い部屋で豪華な食事にありついている……。戦争の実態をこれ以上ないくらい皮肉たっぷりに描いている。そして最後。あと15分で停戦が成立するというのに、将軍の意地とプライドのために再び出撃させられる一兵士たち。まさに無駄死にとしか言いようのない絶望感漂うラストは、戦争の虚しさをこれでもかというほど訴えかけてきます。自分や自分の大事な人がもしこの場に居たらと思うと堪えられない……。今も同じようなことがウクライナで起こっているのだろう。ますます混迷の度を深めてゆく現代社会に於いて、真に観るべき映画の一つと言っていい。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-02-13 07:05:32)
102.  アイダよ、何処へ? 《ネタバレ》 
1995年、冷戦終結により勃発した民族紛争が泥沼化していたボスニア・ヘルツェゴビナ。ムスリム勢力の町スレブレニツァはセルビア側の激しい攻撃の末、とうとう陥落してしまう。2万5千人におよぶ町の住民たちはたちまち難民化、安全を求めて国連平和維持軍が駐留していた基地へと一斉に雪崩れ込んでくる。当初は住民たちを受け入れていた国連側も余りの数の多さに途中で受け入れを拒否。結果、基地の周りには行き場を失くした町の住民たちが大勢なす術もなく立ち尽くすことに――。国連の通訳として働く元高校教師アイダは、そんな難民の中に自分の家族も含まれていることを知るのだった。夫と2人の息子だけでも基地に入れてほしいと上官に懇願するアイダ。だが、更なる混乱を恐れた上官は彼女の要望を拒否する。到底納得できないアイダは、何とかして家族を安全な基地内に引き入れようと画策するのだが、さまざまな手続きの壁に阻まれどうにもうまくいかない。そんな折、セルビア側の司令官ムラディッチ将軍から住民を安全な場所に移動させるので速やかに引き渡せとの要請が国連側に届く。何か信用できないものを感じたアイダは、家族とともに逃げようとするのだが……。デビュー以来、一貫してボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を題材とした映画を撮り続けるヤスミラ・ジュバニッチ監督の最新作は、そんな過酷な運命に翻弄される一人の女性を通して戦争の不条理を冷徹に見つめたヒューマン・ドラマでした。この監督の作品は今回初めて観ましたが、全体を覆うひりひりするような緊張感がとにかく真に迫っておりました。この時代、この地で実際に撮られたドキュメンタリー映画なんじゃないかと思えるくらい。そんな中、ただ家族を救いたいがために奔走する主人公。国連にたまたま通訳として現地採用されたというだけで、軍人でも実力者でもない単なる一市民のエイダに出来ることなんてたかが知れている。それでも愛する子供たちをなんとしても救おうと駆けずり回る彼女には胸が締め付けられる思いでした。でも、そんな過酷な現実は彼女だけのものではなく、ここに押し寄せた2万5千人の全ての人々にそれぞれの事情がある。そう思うとやはりやり切れない思いにさせられます。みんな普通に生活していただけなのに。そして最後に辿り着く悲惨な現実――。戦争の愚かさをこれ以上ないくらい痛感させられてしまいます。過去を乗り越え、気丈に振る舞っていたエイダがそれでも最後に辿り着いた場で泣き崩れてしまった姿に自分も思わず涙してしまいました。最後に表示される、「スレブレニツァの女性たちと殺害された8372名の息子・父・夫・兄弟・いとこ・隣人に捧ぐ」というテロップが重い。ただただ最後、彼女が育てた教え子たちがいつまでも平和に過ごせることを祈るばかり。人間の愚かさと悲哀を鋭く捉えたなかなかの秀作と言っていい。
[DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 08:33:06)
103.  アンテベラム 《ネタバレ》 
南北戦争真っただ中のアメリカ南部の田舎町。白人に誘拐され綿花農場で奴隷として働く女性エデンは、横柄な白人に日々虫けらのような酷い扱いを受けていた。日中はいつ倒れてもおかしくない過酷な労働を強いられ、夜は白人の主人に無理やり夜の相手をさせられる。少しでも抵抗しようものなら激しい制裁を受けることに。北軍が勝利しまがりなりにも奴隷が解放されるのは、まだ先の話。エデンは、生まれてくる時代を間違えたのだと自分を納得させるしかない。それでも彼女は希望を捨てず、残してきた大事なもののため密かに農場脱出を図るのだが――。一方、現代のニューヨークに生きる社会学者ヴェロニカは、黒人で女性という自身のアイデンティティ解放のために日々活動を続けている。優しい夫にも支えられ、愛する娘と充実した毎日を送るヴェロニカ。だが、そんな彼女を疎ましく思っている保守派のまなざしは、彼女が成功すればするほどより厳しさを増してゆく。ある日、仲の良い友人たちと久しぶりのディナーを楽しんでいたヴェロニカに怪しい影が忍び寄ってくる……。過酷な時代を生きたある無名の黒人奴隷と現代に華々しく生きる黒人社会学者、一見何の繋がりもない二つの物語はいつどこで交わることになるのか?実力派女優ジャネール・モネイがそんな異なる時代を生きる女性を演じたことでも話題となったサスペンス・スリラー。とにかくこの監督のセンスに尽きると思います!冒頭、不穏な音楽をバックにワンカットで撮られた農場のシーンで掴みはバッチリ。これから何かとてつもなく嫌なことが起こりそうな息詰まるようなこの空気感を、開始10分で作り出せるのは大したものだと思います。その後、主人公の黒人奴隷としての不条理極まりない現実を延々描いた後で、突如として現代の洗練されたニューヨークへと舞台が移るのも素晴らしい演出。正反対の立場にいる女性たちを同じ女優が演じることで、これまで黒人が受けてきた不当な差別の歴史を浮き彫りにさせることに成功している。彼女たちは違う時代に生を受けた生まれ変わりなのか――。そう思わせといてからのことの真相の明かし方ももはやセンスしか感じません(スマホの音!)。まぁ肝心の真相は荒唐無稽でリアリティ皆無のものだったのですが、ここまでセンス良く見せられると素直に受け入れられちゃいますね。社会派映画として充分良く出来ているのに、サスペンス映画としても普通に面白いのも大変グッド。主人公に徐々に迫ってくる危機の見せ方なんてぞくぞくする怖さがありました。特にタクシーの中で主人公が暴行を受けてるのに、隣を走る友人たちは知らずにはしゃいでるシーンは「あぁぁぁ!」と変な声が出ちゃいましたわ。この監督の知的で品のいいセンスはこれから要注目。次作が楽しみな才能にまた出会えてしまいました。
[DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 07:31:08)
104.  消えない罪 《ネタバレ》 
彼女の名は、ルース・スレイター。過去、保安官を射殺した罪で捕まり、20年も服役して今日出所してきたばかりの哀しい女性だ。当然仕事もなければ貯金もゼロ、両親はすでに亡くなり友人ももはや音信不通、頼るあてもない。そんなルースの唯一の心の拠り所は、彼女が捕まったときに離れ離れとなってしまった幼い妹の存在だった。当時5歳だった妹との生活は、これまで辛いことばかりだったルースの人生の中で一番光り輝いていた瞬間だった。だが、これまで獄中から何度も手紙を書いたが返信は一切なし、面会すら叶わず、知っていることは風の便りに何処かの裕福な家庭に養子に貰われたという情報だけ。生きていれば今頃25歳になっているはず。小さな水産加工会社に採用され働き始めた彼女は、独力で妹の行方を捜し始める。でも、警官殺しの過去は簡単には彼女を許してくれない。世間からの厳しい目に晒され、次第に孤立してゆくルース。さらには事件の遺族から嫌がらせの電話まで受けるように。どんどんと追い詰められてゆくルースだったが、相談を聞いた優しい弁護士から妹の居場所を突き止めたとの知らせが届き……。許されざる罪を犯してしまった孤独な女性の更生の日々を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。世間から孤立し、次第に行き場を失くしてゆくそんな元犯罪者を演じるのは実力派女優サンドラ・ブロック。観ればみるほど気が滅入るような陰鬱なお話なのですが、監督の丁寧な演出のおかげで最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。刑務所から出所してきたばかりの彼女の日常をひたすら追うのではなく、彼女と偶然知り合うことになった弁護士一家、彼女と生き別れ今は義理の家族と幸せに暮らしている妹、そして彼女に父親を殺された被害者遺族、それぞれのドラマに焦点をあてる演出は相当巧み。互いに信じる価値観や信念があり、それが相容れないためにどんどんとぶつかり合ってゆく様は、誰もの気持ちが分かるぶん切なさが半端ないです。ただ唯一の肉親に会いたい主人公、今やかけがえのない家族の一員である娘を守りたい義理の親たち、主人公に父親を殺され人生をめちゃくちゃにされた兄弟……。「きっとこれは誰も幸せにならない暗い結末を迎えるんだろうな」と正直、げんなりしながら観ていたのだけど、でも、最後のシーンで自分は救われたような気持ちになりました。確かに現状は何も変わっちゃいない、何なら事態はますます複雑で不幸になるかもしれない。それでも主人公は最後、生きる希望を取り戻した。不幸で理不尽な現実に微かな希望の光を当てる、慈しみに満ちた秀作。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-01-30 08:05:12)
105.  LOU/ルー 《ネタバレ》 
最愛の一人娘を女手一つで育てるシングルマザー、ハンナ。夫である元海兵隊員は戦場の苦しい記憶から心を病んでしまい、2人に暴力を振るうようになったのだ。彼から逃れるため、人里離れた山の中に建つ一軒家を格安で借りた彼女は娘とともにひっそりと暮らしている。大家である初老の女性ルーは偏屈な気難し屋で、ここからそう遠くない家に愛犬と一緒に暮らしている。何かと嫌味を言うルーを疎ましく思っていたハンナだが、娘のヴィーは何故かそんなルーに懐いている。世間の目から逃れるように密やかに暮らしていたそんな親子をある日、悲劇が襲う。激しい嵐が島に上陸した夜、行方不明となっていた元夫が再び2人の前に現れたのだ――。家に忍び込み、やすやすと娘をさらってしまった彼。暴風のため電話は全て不通。なす術もない彼女は、藁をも縋る思いでルーの家へと走るのだった。彼女の話を全て聞いたルーは、さも当然のように銃を手に取ると、暴風が吹き荒れる森へと向かう。さらには様々なサバイバル術を駆使し、執拗に元夫の後を追い始めるのだった。動揺しつつも彼女の後に続くハンナ。果たしてルーは何者なのか?娘をさらった元夫を追って、謎めいた初老の女性とともに嵐が吹き荒れる森を彷徨う母親を描いたサバイバル・アクション。そんな最強おばあちゃんを演じるのは、実力派女優アリソン・ジャネイ。こーゆー設定の映画ってだいたい主人公を助けてくれるのは引退したじいさんというのがセオリー。メル・ギブソンやシルベスター・スタローン辺りがやっていそうな内容なのだけど、本作ではそれが本来弱い存在のはずのおばあちゃんなのがミソ。ジジイがめちゃめちゃ強かった!というのはこれまでさんざん観て来ましたが、ババアがめちゃめちゃ強かった!というのは新しいですね(笑)。屈強な男どもがいるところへとよぼよぼのフリしながら近づいてゆき、スキを突いてボコボコにするシーンはけっこう斬新でした。ただ後半、その設定が巧く活かされていなかったのが残念。もうちょっとこのお婆さんという設定を巧く使ってほしかった。クライマックスもなんか感動モノへと無理やり持っていった感が強く、いまいち盛り上がりに欠けたまま終わっちゃいました。ここは潔くエンタメに振り切ってほしかったところ。とは言え、アリソン・ジャネイの鬼気迫るような演技は凄まじく、嵐が吹き荒れる中を執拗に男の後を追う彼女は迫力満点!次第にそんな彼女へと心を許してゆくシングルマザーの心情も丁寧に描かれていたし、ぼちぼち面白かったです。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-01-30 07:38:33)
106.  アナザーラウンド 《ネタバレ》 
「血中のアルコール濃度を常に0.05%に保つと生活や仕事の効率が高まる」という説を実際に実行した4人の男たちの顛末をほろ苦いユーモアを交えて描いたヒューマンドラマ。この監督の前作『偽りなき者』が印象深かったのとアカデミー外国語映画賞に輝いたということで今回鑑賞してみました。確かに、こんな地味な登場人物たちが織りなす地味な物語でテーマだって地味なのに最後まで淡々と見せ切る演出は巧み。マッツ・ミケルセン演じる主人公が酒の力を借りて次第に生きる活力を取り戻してゆく姿はリアリティ抜群で、彼が調子に乗ってどんどんと酒の量を増やしてゆくところはアルコール中毒者の生成過程を見ているようでひやひやさせられちゃいますね。ただ、観終わってこの作品の描きたかったテーマが「お酒は楽しく適量を」くらいしか伝わってこず、自分はそこまで得るものはなかったです。
[DVD(字幕)] 6点(2023-01-27 11:07:43)
107.  グレイマン 《ネタバレ》 
常に死と隣り合わせの危険な任務ばかりを請け負う、CIAの極秘部隊、通称「グレイマン(見えない男)」。その正体はいつでも使い捨てに出来る凶悪な元犯罪者ばかりで構成された部隊だった。CIA高官にスカウトされて獄中生活から抜け出して以来、30年も人知れず活躍しているエージェント、シックスもその一人。今回彼にくだされた任務は裏社会で暗躍する武器商人の暗殺。簡単に終わるミッションのはずだった。だが、標的であるはずの犯罪者は殺される直前、彼にあるものを渡し、衝撃の告白をする。「俺もお前と同じグレイマンだ。CIAは俺たちをハメようとしている。頼む、このデータを公にして組織に復讐してくれ」――。すぐさまCIAの幹部によって、最重要ターゲットにされてしまったシックス。世界中の暗殺者に命を狙われながらも、陰謀を暴くために世界を駆け巡る彼だったが……。巨大な陰謀に巻き込まれた凄腕エージェントの活躍を世界的スケールで描いたエンタメ・アクション。監督はマーブルアベンジャーズシリーズを幾つも手掛け、現代エンタメ映画界を牽引するルッソ兄弟。自分は、アンチアベンジャーズの人間なんでこの監督の名はもちろん知っていたのですが、今回初めて鑑賞してみました。いやはやこれが素晴らしいエンタメ映画に仕上がっていて、めちゃくちゃ面白いじゃないですか!!冒頭から怒涛のように続くアクションシーンが終始キレッキレでサイコーに楽しかったです。「どうやって撮ってんだ、これ」という空間を自由自在に動くカメラワーク、誰がどこで何をしているかがちゃんと分かるように計算されつくした編集、とにかくお金を掛けたであろうゴージャス&スタイリッシュなアクション。もうどれもこれも完璧でした。特にプラハでのカーチェイスは最近観たアクション映画の中では出色の名シーン。世界を救うためとは言え、さすがに破壊しすぎちゃいまっかという突っ込みはナシですね(笑)。まぁストーリーは王道中の王道で驚きなど一切ないベタなものだけど、ライアン・ゴズリングをはじめとする登場人物がみんな魅力的なので最後までワクワクしながら観れちゃいます。あのクリス・エバンス演じる冷酷非道なのに何処かお間抜けな悪役もいい味出してましたね~。ただ、上司が2人も自己犠牲で死んじゃうのはやり過ぎかな。ここは1人で良かったように思う。あと、ペンチで爪を剝がすシーンは痛いから止めて!とは言え、自分は充分大満足。アベンジャーズシリーズも一段落したようだし?ルッソ兄弟、これからはこんな面白い映画をいっぱい撮ってね!
[インターネット(字幕)] 8点(2023-01-26 07:06:30)(良:1票)
108.  トロール 《ネタバレ》 
北欧の神話や民間伝承に登場する恐ろしき怪物、トロール。人間などひょいと摘まみ上げて食べてしまうそんなモンスターが、山地開発をきっかけに現代に蘇ってしまった!前例のない驚くべき事態に人々は右往左往するばかり。政府や軍幹部、そして怪物を調査する古生物学者は果たしてこの危機を乗り越えられるのか?という、極めてシンプルなモンスターパニック映画。まぁバカバカしいっちゃバカバカしいんですけど、それでもCGで描かれたトロールの造形はけっこうお金がかかっていて暇潰しで見る分にはそこそこ楽しめました。このトロール君の見た目が何処か間抜けで、こいつが都会を破壊しながら練り歩くシーンは大真面目に作ってある分、なんか笑けてきちゃうのが本作のミソ。ただ、お話の方ももっとおバカに振り切っても良かったんじゃないかな。ところどころクスリとさせられるものの、中盤からはいまいち盛り上がりに欠けたまま終わっちゃいました。同じくノルウェー&トロールで言えば、今やハリウッドの第一線で活躍するアンドレ・ウーヴレダル監督の知る人ぞ知るカルト作『トロールハンター』があるけど、笑いも物語もあちらの方が一枚上手でしたね。以下余談。いかつい軍幹部がオタクっぽい首相補佐官に軍歴を聞いたところ、「あるよ。コールオブデューティだ」って答えたところが個人的にツボでした。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-01-23 06:15:25)
109.  ほの蒼き瞳 《ネタバレ》 
19世紀アメリカを舞台に、士官学校で起こった猟奇的な殺人事件の謎に挑む若き日のエドガー・アラン・ポーを描いたミステリー。この監督の作品は何作か観て、世界観の作り込みや画の撮り方などは凄く拘りが感じられて大変良いとは思うんですけれど、毎回ストーリーがなんとも残念な印象。本作はそれが顕著に表れてる感じでした。大まかなストーリーは分かるものの細かい部分に「?」が多すぎていまいち入り込めなかったです。最後のオチも「なんじゃそりゃ」って感じで全く腑に落ちない。全体を覆う、おどろおどろしい雰囲気は嫌いじゃないだけに残念!!
[インターネット(字幕)] 5点(2023-01-23 05:45:07)
110.  ナイブズ・アウト:グラスオニオン 《ネタバレ》 
そこは数多くの謎が隠された、〝グラス・オニオン(ガラスの玉ねぎ)〟の島――。独創的なアイデアで巨万の富を築き上げたIT企業CEO、マイルズ・ブロン。稀代のミステリー好きでもある彼は、恒例となっているあるゲームを今年も開催するのだった。それは、風光明媚なギリシャにある孤島に参加者を集め、彼のシナリオに沿ったミステリーゲームを行い誰が先に真相を突き止めるか競うというもの。マイルズからの招待状を手に、さっそく意気揚々とその絶海の孤島へとやって来た古い友人たち。再選を狙うアメリカの州知事、天才の名をほしいままにする科学者、影響力絶大の人気ユーチューバーカップル、世界中に工場を持つアパレル会社社長とその秘書、そして彼とは長い裁判闘争を続けていたはずの共同創始者……。そこに何故か、招待していないはずの孤高の名探偵ブノワ・ブランまで顔を揃えている。不審に思いながらもいつも通りミステリーゲームの開催を宣言するマイルズ。だが、その直後マイルズが計画していたものとは違う、本物の殺人事件が発生するのだった。慌てふためく参加者たち。果たして誰が何の目的で事件を起こしたのか?誰もが疑心暗鬼に陥る中、やがて第二の殺人が起きてしまう……。風変りな名探偵ブノワ・ブランが再び難事件へと挑む人気ミステリーシリーズ第2弾。前作以上に豪華キャストを揃えて制作された本作、これが前作以上に面白い極上のエンタメ作品に仕上がっておりました!!様々な仕掛けが施された「招待状」を参加者たちが悪戦苦闘しながら開封する冒頭部で、もう掴みはバッチリ。そこからギリシャのグラス・オニオンへと舞台を移してからは最後まで怒涛の展開で、ホント息つく暇もありません。存分にお金をかけたであろうゴージャスな映像とそれぞれに思惑を抱えた癖の強いキャラクターたちが織りなす腹の探り合い、そして二転三転するテンポのいい脚本…。観客にとにかく楽しんでもらおうという監督の思いが伝わってきて大変グッド。全編に散りばめられた上質のユーモアも素晴らしい。主催者のエドワード・ノートンが自信満々に前口上を述べた後、ダニエル・グレイグ演じる名探偵がすんなり謎解きするシーンで思わずにんまり。エドワード・ノートンの苦々しい顔がもうサイコーでした。ジェレミー・レナーの激辛ソースとか普通に笑っちゃったし。肝心のミステリーも散りばめられた伏線が全て後半に回収されるという手際の良さでなかなか考えられてますなぁ。まさか途中でお話が事件前夜にまで戻るとは予想外でしたが、それも全然不自然には感じず。最後のモナ・リザの扱いなんてかなり不謹慎だけど、爽快感は抜群!いやー、潔いまでにエンタメに拘ったサイコーに楽しい作品でした。続編、期待して待ってます!!
[インターネット(字幕)] 8点(2023-01-09 06:20:06)
111.  バルド、偽りの記録と一握りの真実 《ネタバレ》 
政情不安に揺れるメキシコを舞台に、アイデンティティの危機に直面したある一人のジャーナリストをマジックリアリズム風に描いたシュルレアリスム劇。監督は、メキシコを代表する映画作家アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。アカデミー賞を受賞したものの、世評では賛否分かれる『バードマン』が自分はけっこう好きだったので今回鑑賞してみました。正直、あかん映画でしたよね、これ。とにかくずっと意味不明でしかも2時間40分もあったので、最後まで観るのがかなり苦痛でした。しかも映像が終始小汚いうえに全体的にいまいちセンスも感じられず、もう何を楽しんでいいのやら。監督はきっと、デビッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』のような作品を撮りたかったんでしょうけど、出来上がったものは比べるべくもない酷い代物でした。『バードマン』が好きだっただけに、残念!!
[インターネット(字幕)] 4点(2023-01-05 09:35:39)
112.  ロスト・ドーター 《ネタバレ》 
風光明媚な海辺のリゾート地へとバカンスにやって来た、中年女性レダ。たった一人、レンタカーに質素な荷物だけを手にやって来た彼女は、さっそく浜辺に建つホテルへとチェックインする。昼は見渡す限りの海岸線を臨みながら海水浴を楽しみ、夜は現地のグルメとお酒に舌鼓を打つ。最高のバカンスになるはずだった。ところが彼女の表情は何処か浮かない。それは、同じ日にやって来た家族連れの旅行客のうちの一人、幼い娘を育てる若い母親を目にしてからますます酷くなってゆく。何故ならレダは過去、深刻な育児ノイローゼに陥り、2人の幼い娘に取り返しのつかない哀しい想いをさせてしまったから――。物語は、そんな哀愁漂う中年女性の現代の旅行風景と彼女が若いころ、辛い子育てに追い詰められてゆく回想シーンを交互に描いてゆきます。そんな自責の念に苦しむ母親役には、『女王陛下のお気に入り』での怪演が記憶に新しいオリビア・コールマン。正直、ものすごく辛気臭いお話でしたね、これ。別に僕はそーゆー辛気臭いお話が嫌いと言う訳ではないのですが、この作品のそれはちょっと僕の好みとは合わなかったです。とにかくこの主人公の過去のことをいつまでも引きずり、ひたすらウジウジクヨクヨしている余りに後ろ向きな態度が全く好きになれません。いや、気持ちは分かるんだけど、もうちょっと前向きになろうとか新しい世界に踏み出そうとか今は疎遠になっている娘と真剣に向き合ってみようとか、そういう応援したくなる要素がこれっぽっちもないんですよね、彼女。ひたすら嫌味なおばはん。そのわりには、現地の若い男と食事に行ったり、エド・ハリス演じるホテルの管理人に気のあるそぶりを見せたりする。正直、自分はかなりお近づきになりたくないタイプの人でした。2人の幼い娘を捨てて違う男の元へ逃げたという過去の罪悪感に苦しむのも、「そりゃそーなるわ!!」って感じで全く同情できません。そう言うわけで自分はさっぱり嵌まれませんでした。オリビア・コールマンの哀愁漂う演技に+1点。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-01-01 07:06:53)
113.  ハリガン氏の電話 《ネタバレ》 
アメリカ、メイン州のとある寂れた地方都市。母を失くし、父親と慎ましく暮らす少年クレイグはある日、近所の豪邸で独りで暮らす今は引退した大富豪ジョン・ハリガン氏からあるアルバイトを持ちかけられる。それは週3日、彼の豪邸で目が悪い氏に代わって本を読み聞かせること。少しでも生活の足しにしようと、クレイグはすぐにその提案を受け入れるのだった。『チャタレイ夫人の恋人』『闇の奥』『罪と罰』。世界の様々な名作を読み聞かせる時給5ドルのバイトはそれから何年も続き、これまで休んだのはたった1回だけ。クレイグは、偏屈で傲慢、現役時代は商売敵や部下を徹底的にやり込んだというハリガン氏のことを嫌いではなく、本を読むことも楽しみの一つとなっていた。そして高校生となった彼は、これまでの恩を返そうと一台のアイフォンを買い、彼にプレゼントする。情報は新聞で充分と言い張っていたハリガン氏に、クレイグは丁寧に使い方を教えてあげるのだった。だが、それからすぐハリガン氏は急な病でこの世を去ってしまう――。突然のことに、哀しみに打ちひしがれるクレイグ。最後のお別れの日、クレイグは彼にプレゼントしたアイフォンを密かに棺桶へとしのばせるのだった。そのまま埋葬されるハリガン氏。ところが数日後、彼の携帯に有り得ないメッセージが表示される。なんとハリガン氏からメールが届けられたというのだ。いったいこれはどういうことなのか?不審に思いながらも、クレイグは彼とのメールのやり取りを重ね……。スティーブン・キングの短編小説を元にしたという本作、監督がヒューマン・ドラマの佳品を多く手掛けてきたジョン・リー・ハンコックということで今回鑑賞してみました。冒頭から丁寧に描かれる、この孤独な老人と素直で純朴な少年とのドラマにすぐ惹き込まれました。冷酷に厳しく当たるのでもなく、過度に干渉するでもない、この2人の友情がなんとも心地良いですね。朗読に選ばれる本のチョイスもいいセンスしてるし、前半は一人の少年の成長物語として非常に良く出来ている。ただ、問題は後半部分。ハリガン氏が亡くなってから、急にミステリー的な要素が増え、さらには死者からのメッセージというホラー要素まで加わります。この唐突な急展開はかなり問題で、明らかに物語のバランスが崩れてしまってます。挙句、ここまで引っ張っておきながら、最後のオチがかなり投げっぱなしのまま終わるのはいかがなものか。てっきり僕は、主人公が最後に棺桶に入れた携帯をあの怪しい庭師が盗っていて、メールのやり取りも殺人もきっとあいつが陰でやっていたんだと踏んでました。でもそれだと遺言書の文言や墓の中から聞こえてきた着信音だとかの説明がつかないから、きっとラストで驚きの種明かしが待ってるんだろうなと思っていたのに、これではとんだ肩透かし。前半はすこぶる良かっただけに、なんとも勿体ない作品でありました。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-12-27 05:55:56)
114.  ギレルモ・デル・トロのピノッキオ 《ネタバレ》 
命を宿した木彫りの人形の大冒険を描いたイタリア児童文学の名作『ピノッキオ』。アニメや実写などこれまで何度も映像化されてきたこの名作を今回クレイアニメという手法で映画化。しかも監督はなんとギレルモ・デル・トロ!これは観ないわけにはいきますまい。早速インターネットで鑑賞してみました。そんな僕の期待を裏切らない、素晴らしい出来の作品でした!とにかく圧倒的に手間暇かけたであろう映像が凄い。見た目はちゃんと手作りの人形なのにここまですべらかに動くんですから、いったいどれだけの時間をかけたのやらと気が遠くなりますなぁ。ゼペット爺さんに造られたという主人公の造形も思いっ切り木彫り感が残っているリアルな質感で、可愛すぎず気持ち悪すぎずという絶妙の匙加減でした。嘘をついたときに伸びるハナも思いっ切り普通の樹木なのも拘りが感じられて良い。当時のムッソリーニ政権がもたらしたファシズムの暗い影をテーマとした物語も深みがあって非常に良かったです。声優陣も豪華で、特にコオロギのクリケット氏を演じたユアン・マクレガーが声だけなのに彼と分かるほどの存在感が凄い。最後の歌声なんて聞き惚れてしまいました。ウサギたちが働く死者の国もユーモラスで大変グッド。僕の大好きな『パンズ・ラビリンス』を髣髴させる、この何処か暗い世界観がとにかくツボでした。うん、なかなか面白かったです。8点!!
[インターネット(字幕)] 8点(2022-12-27 04:52:38)(良:1票)
115.  ビッグバグ 《ネタバレ》 
時は2045年。人類は、高度に発達した科学技術とAIにより自ら思考し行動するロボットに頼り切った生活を送っていた。全ての家事をこなすお手伝いロボと豪華な一軒家で暮らす中年女性アリスもそんな一人。ある日、彼女の家に偶然6人の人々がやってくる。アリスと親密なお付き合いをしているテレビプロデューサー、彼に無理やり連れてこられた息子、今は新しい妻と新婚ほやほやなアリスのかつての夫、その妻、彼らが新婚旅行に行く間この家で過ごすことになっているアリスの娘、そして迷い込んだ飼い犬を捜しにたまたまやって来たお隣のおばさん――。表面上は和気藹々と過ごしていた彼らに、突然悲劇が訪れる。なんと急に家のロックが掛かり、開かなくなってしまったのだ。どうにかしてドアを開けようとするも、AIに全てコントロールされたセキュリティは住民にはどうにも出来ない。しばらくすると彼らは衝撃の事実を知ることになるのだった。量産型人型ロボット「ヨニクス」が反旗を翻し、なんと人類を奴隷にしようと言うのだ。果たして、家の中に閉じ込められたそんな7人とロボットたちの運命は?近未来を舞台に、ある一軒家に閉じ込められた人々の右往左往をスラップスティックに描いたブラック・コメディ。監督は、『アメリ』や『天才スピヴェット』で有名なジャン・ピエール・ジュネ。僕の大好きな監督の最新作ということで、今回期待して鑑賞してみました。そんな僕の期待を全く裏切らない、素晴らしい出来の作品でしたね、これ。正直、この映画に中身などこれっぽっちもありません。ただひたすら監督の悪ふざけ一歩手前のドタバタを延々見せられるだけ。なのに、最後までワクワクしながら観ていられたのは、ひとえにこの監督の遊び心溢れるセンスのなせる技なんでしょう。とにかくオシャレ!お手伝いロボをはじめとするアンドロイドたちのキュートさなんて、もう最高でした。このお手伝いロボが人間の見栄や嫉妬や愛情をいちいち数値化して驚くところとか最高に皮肉が効いていて大変グッド。他にもアインシュタイン型ロボやレトロなお掃除ロボもみな魅力的で、自分もこんな家に住みたいなんて思っちゃいました(たぶん3日で限界迎えそうだけど笑)。対する人間たちも全く負けておりません。性欲持て余し気味の奥様カップルに意識高い系の元夫夫婦、そして思春期拗らせティーンエイジャー。特に死んだ犬のクローンを何匹も飼ってる隣の家のヒステリー気味マダムとか、鬱陶しいのに妙に憎めないところなんてまさにジュネって感じですね。後半のヨニクスがやってきてからのドタバタも終始センス爆発で最高に面白かったです。最後のオチはいかにもB級SF映画って感じのキレの良さで思わず拍手。ポップなセンスと底意地の悪さだけでこんな愛すべき佳品を撮れちゃうジュネ監督はやっぱり凄い!うん、何処までもついていきます~~。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-12-22 08:37:50)
116.  MINAMATA ミナマタ 《ネタバレ》 
水俣病。それは1970年代、高度成長に邁進する日本を震撼させた公害事件。地元経済を牛耳る大企業チッソが長年、水俣の海に垂れ流し続けた水銀が原因だった。発病すると手足の痙攣や言語障害を引き起こし、酷いものになると全身麻痺に陥り、一生介護なしでは生きられなくなる。だが、チッソはこの事実を隠蔽し、被害者に僅かばかりの慰謝料を払い幕引きを図ろうとしていた。そのことを偶然知った、もはや酒浸りで世間から忘れられた写真家ユージン・スミス。家賃を滞納するまでに追い込まれた彼は日本へと取材に訪れる。当初は金のために引き受けた仕事だったが、被害に苦しむ当事者たちの声に耳を傾けるうち彼の心情にもいつしか変化が訪れて……。実際にあった公害事件をテーマに、一人のアメリカ人写真家の目を通して地方都市で苦難の日々を過ごす社会的弱者たちを描いたヒューマン・ドラマ。主人公である酒浸りの落ちぶれた写真家を演じ、制作も務めたのはハリウッドの人気俳優ジョニー・デップ。とにかく彼の嵌まりっぷりが凄い。もはやハリウッドスターとは到底思えないほどの華のなさ!何もかもを諦めたアル中の偏屈男をリアルに演じていて、彼のそのナチュラルな演技?にまず惹き込まれる。そんな彼が金のために訪れた熊本の水俣市。辺境の漁村を覆う重苦しい鬱屈とした空気、夢も希望もなくただ障害を抱えた身内を介護することに追われる人々。スミスがカメラを向けても皆、すぐに顔を隠したがる。まるで自分たちが社会の恥ずべき部分だと言わんばかりに……。対して大企業チッソのお偉方はビルの広い部屋の高級ソファでふんぞり返っている――。水俣病と言えば、かつて読んだ石牟礼道子の『苦海浄土』でその悲惨な現状に衝撃を受けたのだが、ここにはそれが映像として極めて忠実に再現されている。素晴らしいとしか言いようがない。それだけでも今回の映画化には意義があった。のちにアメリカのタイム誌の表紙を飾り世界に衝撃を与えた、一枚の親子の写真には胸が切り裂かれそうになる。それに対するチッソ社の非人道的振る舞い。もはや怒りを通り越して無力感さえ抱いてしまいそうだ。こんなことは二度と起こしてはいけない。ただ、事実を基にしているために仕方ない部分もあると思うのだが、ストーリーに若干分かりづらい部分がチラホラ。事実とは言え、主人公と女性通訳との恋愛も取ってつけたような印象が否めない。ここら辺をもっと丁寧に描いて欲しかった。とは言え、社会の片隅で声にならない悲鳴をあげている人々の想いに耳を澄ませようというこの監督の姿勢。素直に称賛に値する。日本人としては、間違いなく観るべき作品の一つと言っていい。
[DVD(字幕)] 7点(2022-12-22 07:05:17)
117.  ウェンデルとワイルド 《ネタバレ》 
両親を事故で亡くした13歳の不良少女カットと、地獄界の落ちこぼれ悪魔ウェンデルとワイルドの死者の国を巡る大冒険を独創的なタッチで描いたクレイ・アニメーション。僕のこよなく愛する『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『コララインとボタンの魔女』のヘンリー・セリック監督の最新作ということで今回期待して鑑賞。冒頭、けっこうグロテスクな世界なのに何故かコミカルな地獄シーンで掴みはバッチリ。悪の親玉が作った叫びの遊園地でひたすらいたぶられる死者たち。電気ウナギにビリビリさせられたりジェットコースターで吹っ飛ばされたりと、地獄だから仕方ないんですけどひたすら死者たちがいたぶられ続けます。いやー、良いですねぇ、この唯一無二の世界観。子供向け?のアニメなのに、現実世界でバンバン人が死にまくるのもこの監督ならでは。中にはゴルフクラブで殴り殺された挙句、池に放り込まれる人もいます。それを温かみのあるクレイアニメで描く、というこの違和感が今回も心地良かったです。緑の髪に破れた制服、厚底ブーツを穿いて常に目玉ラジカセでガンガンにパンクを響かせて歩くという主人公カットもすこぶる魅力的。トラブルメイカーで自分のことしか考えていない2人組悪魔ウェンデルとワイルドも何処か憎めない魅力があるとこもナイス!彼らが織りなす大冒険には最後までワクワクが止まらなかったです。虫をぐちゃっと潰したり蘇った死者たちの腕が取れたりウジ虫が這いまわっていたりと細かな描写がグロいとこも個人的にツボでした。もちろんクレイアニメとしてのクオリティがすこぶる高いのも高評価。ストーリーが若干ごちゃごちゃしてていまいち分かりにくいところもありましたが、自分は最後まで楽しめました。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-19 08:38:19)
118.  家をめぐる3つの物語 《ネタバレ》 
人が生きていくうえで絶対に欠かせないもの、それは「家」。今住んでいる家はもちろん、過去に住んだ家もこれから住むことになるだろう家も必ず人々の記憶に深く刻まれることになるだろう。もちろん、その家に一緒に住んでいた家族や友人の思い出とともに――。これはそんな「家」にまつわる、ある三つの物語。第一話『内側で聞こえて紡がれるウソ』。家族の反対を押し切り、駆け落ち同然でで一緒になったとある夫婦。2人の可愛い子供には恵まれたものの、現実は厳しく、もはや潰れかけの古い家で貧しい暮らしを余儀なくされていた。そんな折、ある怪しい男が訪ねてくる。彼曰く、「裕福な建築家があなた方に無償で家を差し上げると申しております」。不審に思いながらも提案を受け入れた家族。早速引っ越してみると、そこはにわかには信じがたいほどの豪邸だった。当初の懸念も忘れて何不自由ない生活を満喫する家族だったが、次第に言いようのない違和感を抱き始め……。恐らくフェルトで作ったであろうキャラクターの造形が見事。子供の頃に遊んだ人形のようにぬくもりを感じさせるそんなキャラクターと反対に、紡がれる物語が恐ろしく不気味なのが良かった。このなんとも言えない違和感が最後まで良い意味で気持ち悪い。ただお話としてはありがちなもので、もう一捻りあればなお良かったと思う。第二話『敗北の心理にたどり着けない』。自らの持ち家をイノベーションして高値で売り払おうとしているとあるオーナー。銀行から多額の資金を借り入れ、家具や内装も一級品を揃えあと少しで完成するところまで辿り着く。ところが脈ありな客たちを招いて内覧会を開こうとしていた矢先、様々なトラブルに見舞われるようになる。謎の虫が大量発生したり、家電が正常に動かなかったり。さらには内覧会に招いた怪しい客が様々な理由をつけて居座ってしまい……。スマホやDIYと言った現代的で洗練されたアイテムを駆使しながら、演じているキャラクターがどれもリアルなネズミだというのが皮肉が効いていて大変グッド。人間なんて、どれだけ見た目を着飾っても一皮剝けばみな動物なんだよというシニカルなテーマがユーモラスに描かれる。特に最後、ネズミに戻ってしまった人々が小奇麗だった家をどんどん汚してゆくところが最高にグロテスクでとても良かった。リアルな虫が一斉に踊るダンスシーンは、虫嫌いな人はトラウマになるかも。お話としては、こちらもごく普通。第三話『もう一度耳を傾けて太陽を目指して』。大地がほとんど水没してしまった未来。数少ない残された土地でアパートを経営する大家の女性が、様々な訳アリ住民に悩まされる姿をコミカルに描く。最後は何処か希望を持たせる物語で締めたかったのだろうが、いまいちパンチに欠ける印象。猫というキャラクター造形も別段新鮮味を感じなかった。ただヒステリー気味な主人公と何処かイカレタ住民との嚙み合わない会話劇はシュールで良かった。それぞれに独創的なセンスを感じさせるそんなストップモーション・アニメ。お話としてはありがちなものばかりだったが、三者三様のこの唯一無二の世界観はどれも好みで普通に楽しめました。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-12 07:23:44)
119.  クライ・マッチョ 《ネタバレ》 
彼の名は、マイク・マイロ。かつて超一流のロデオ・スターとして一世を風靡したものの、落馬事故をきっかけに引退を余儀なくされた哀しい男だ。以来、酒に溺れて生活は荒廃、家族も次々と離れていき、今や一人切りの孤独な老後を過ごしている。そんな侘しい生活を送っていた彼の元にある日、かつて自分の雇い主だった牧場主が訪ねてくる。「今からメキシコに向かい、元妻のところで暮らしている俺の息子を連れ戻してくれないか?」――。藪から棒にそう告げる牧場主。詳しく話を聞いてみると、13歳の息子は実の母親から虐待を受けていて今すぐにでも連れ戻しに行きたいが、自分がメキシコへと入国すれば逮捕されるらしい。かつてどん底だった自分を救ってくれた恩もあり、マイクは仕方なく依頼を引き受けることに。使い込んだオンボロ車でメキシコ国境を越えたマイク。教えてもらった地で、彼はすぐにスラムで違法な闘鶏賭博に入れ込む息子ラフォと出会う。突然の提案に当初は反発していたラフォだったが、元カウボーイだというマイクの人柄にほだされ、新天地アメリカへと向かうことを決意するのだった。たった一人の相棒である鶏のマッチョとともに……。落ちぶれたロデオスターと孤独な少年、そして一匹の鶏との逃避行を終始淡々と見つめたロードムービー。齢90になる、もはやハリウッドの生ける伝説クリント・イーストウッドの最新作ということで今回鑑賞。これまでの長いキャリアに裏打ちされたであろう熟達の演出はもはや世界遺産クラス。無駄を削ぎ落したシンプルな脚本、ちょっとした登場人物に至るまでちゃんと個性豊かに描き分ける巧みな演出、警察やギャングに追われながら国境を目指す2人の緊迫感溢れる逃走劇。どれもこれも安定の面白さで、最後まで楽しんで観ることが出来ました。メキシコの雄大な大自然の映像も終始美しく、のどかなメキシコの田舎町という雰囲気も渋い。ただ、最大の問題はキャスティング。やはり90歳を過ぎたイーストウッドが主演というのは無理があったのでは。もう歩くのがやっと、話すだけで息が乱れているのが丸わかりで、さすがに見ていて痛々しい。彼がギャングと喧嘩しようとしたり暴れ馬に乗ろうとしたり人妻と一戦交えようとしたりと現役バリバリなことをしようとするところは、違う意味でハラハラさせられちゃいました。特に近年、高齢ドライバーの事故が社会問題となっている日本の感覚で観ると、やはり彼が一人で運転するシーンは普通に観れませんね。とは言え、映画というファンタジーとして観れば、人生の深い哀歓を感じさせる渋味に満ちた本作、長年育ててきたヌカ床で作った漬物をじっくり味わうような気持ちで鑑賞してみるのも良いだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2022-12-05 07:46:36)
120.  グッド・ナース 《ネタバレ》 
彼は本当にいい看護師だった――。ニュージャージーの総合病院で働き始めたエイミーは、女手一つで幼い子供を育てるシングルマザー。自身も心臓の疾患を抱え、経済的な余裕もない彼女は無理をして勤務を続けていた。そんなある日、新たに採用された看護師チャーリーが彼女の同僚として配属される。患者のことを最優先にした勤務態度と真面目な性格、何よりきめ細やかなサポートにエイミーはすぐに彼に親近感を抱くようになるのだった。休日には自宅に招き、娘も含めた家族ぐるみでチャーリーと親しくなってゆくエイミー。自身の病気のことや彼が離婚し子供と離れ離れに暮らしていること、2人はそんなプライベートのことまで話せる間柄になってゆく。そんな折、2人が働く部署である患者が突然死する。容態が安定している中での不意の出来事。病院が調査した結果、ある不穏な事実が明らかとなるのだった。亡くなった患者には大量のインスリンが投与されていた――。いったい誰が患者を故意に死なせたのか。警察の殺人課刑事が捜査に乗り出す中、エイミーはチャーリーのある不審な行動を目にしてしまう……。病院を転々とするある看護士が、行く先々で患者に劇薬を投与し何十人も殺害していたという衝撃的な実話を元に描いたサスペンス・ドラマ。そんなにわかには信じがたい事実を元にしているだけあって、この全体に漲る緊張感はなかなかのものでした。何処かデビッド・フィンチャーを髣髴とさせるしっとりとした映像がこの陰鬱とした物語をより重厚なものへと昇華させている。生活に追われるシングルマザーを演じたジェシカ・チャスティンの抑制の効いた演技もリアリティ抜群。信じていた友人の本当の姿を知って徐々に追い詰められてゆく主人公を淡々と演じていて、観ているこちらまで息苦しくさせるほどでした。対する、殺人容疑を掛けられる同僚看護師役のエディ・レッドメイン。得体のしれない彼の存在感もなんとも不気味で、この二人の静かな腹の探り合いは最後まで気が抜けません。特に娘たちが彼に懐いてしまっているのが観ていて辛い。果たして彼はなぜにこんな冷酷無比な犯行を起こしてしまったのか――。最後まではっきりとした答えを提示しないのも人間心理の深淵を垣間見るようで、なんとも言えない後味を残してくれます。ただ、作品として全体的に冗長な面も否めません。事実を元にしている分、結論は分かっているのでさすがにこのお話で2時間超えは長い。明らかに無駄なシーンや長すぎる場面がちらほら。もう少しコンパクトに纏めてくれたらより完成度の高い作品になっていたであろうに。惜しい。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-11-24 07:02:00)(良:1票)
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