1341. プラトニック・セックス
阿部寛の「君の不幸は50点」という台詞を、私もこの映画に捧げます。原作は未読ですが、ここで描かれる不幸は不幸とも呼べない程ありふれてるもの。そこに特別な共鳴はありません。しかし、このラヴ・ストーリー自体は個人的に悪くないと思いました。全てを台無しにしてるのは女流演出家と主演女優の二人です。まず、この題材でこの演出はないでしょう。もっともっとハードでリアルな演出をしていれば少しはマシになった筈です。そして、どこから探してきたのか知りませんが、この加賀美早紀とかいうド下手。とにかく、どのシーンも演出と演技で白けちゃうんですよね、3点献上。 3点(2004-07-15 23:32:45) |
1342. 火垂
ドキュメンタリーの様な自然な演技や映像もこの監督らしいですけど、同時に開始40分位まで全くストーリーが把握できないのも特徴的。そして、そのストーリーが動き始めるのも更にそこから30分程してから。唯でさえ長い164分の映画で、この前半の70分が「永遠か一日」にも思える程、とにかく退屈。睡魔との熾烈な闘いを要求されるこの映画は、テオ・アンゲロプロスの作品にさえ匹敵する。それにしても、一切の説明を拒みつつ展開した物語に、終盤になってからモノローグを連発させたのはどういう訳なのか? だったら最初からもっと解り易く作ればいいじゃん。ということで、前半は評価ゼロ、中盤からは中々痛々しくも面白いラヴ・ストーリー、しかし、終盤の作り方の俗っぽさが再び私の評価を下げさせました、4点献上。 4点(2004-07-15 23:32:16) |
1343. アベックモンマリ
似た様な人物設定に見えつつも、大谷健太郎監督のデヴュー作は「とらばいゆ」とはテーマが違う。あちらが女性の視点による女性の映画だったのに対し、不可思議な二組の夫婦を描いた本作は、男性の視点による男性の映画になっている。男女平等参画社会に於いては男性による女性差別と同時に、女性による男性差別をも根絶させなければ真の平等とは言えない(ジェンダー・フリー思想が正しいか否かは、また別の話)。美都子とタモツの関係からは男女間の意識には大差が無いことが良く解る。最初はこのギスギスした女とナヨナヨした男に嫌悪感しか感じませんでしたけど、次第に物語の面白さに引き込まれ、ラスト・カット(二人の表情が完璧!)では二人が好きになってしまいました。これは中々の映画です、7点献上。 7点(2004-07-15 23:31:48) |
1344. スズメバチ
警官・泥棒・警備員が一丸となって、迫りくる敵を迎撃する篭城物の一本。ま、唯ドンパチやりたかっただけのB級映画ですけど、そーゆー映画に不可欠な爽快感みたいなものが欠けてる所為か、私はちっとも楽しめなかったなぁ(これがおフランスの限界なんでしょうか?)。アクションのパターンも最初から最後まで一本調子だし、黒幕も見たことのあるキャラクター。ラストだって起死回生の一発逆転があるわけじゃない。それにしては製作規模が大き目で、それが逆に映画に悪影響を与えている気もする。どうにもハリウッド的フランス映画は私に会わないものばっかりです、3点献上。 3点(2004-07-09 16:16:28) |
1345. バティニョールおじさん
迫害される側でも迫害する側でもなく、(たぶん大多数の人がそうだったと思われる)ただ社会の流れの中に身を置いただけの小市民の視点で描かれた第二次大戦中のユダヤ人迫害物。(特に多人種国家では)誰もが抱いている隣人に対するちょっとした差別意識や妬み。しかし、それは百八つの煩悩に取り憑かれている極普通の人間の感情であり、また、人間は善意をも併せ持っている複雑な存在なのです。個人的には、もう少し「おじさん」のコンプリケイトな内面やそこに至るまでの苦悩・決断を描いてくれてたら、物語的にもっと面白くなったと思います。ということで、6点献上。 6点(2004-07-09 16:15:43) |
1346. 青い夢の女
もちろん本作も単純なミステリー映画等ではなく、かといってコメディでもサイコ・サスペンスでもない(その全てでもある)。そして事の顛末を一切明かさないまま劇終を迎えてしまう(一体誰が彼女を殺したの?)。全てが夢の中の出来事の様な、何とも形容し難い不思議な映画。物語上ほとんど「女性」は描かれていないにも関わらず、オープニングとエンディングで思いっきりクローズ・アップされる絵画の女性器の意味も不明。だからと言って決して観念的映画でもなく、観ている間は美しい映像も相まって飽きることはない。でも観終わった後、今一つすっきりしませんでした、5点献上。 5点(2004-07-09 16:14:56) |
1347. 夜風の匂い
《ネタバレ》 いかにもフランス映画らしいフランス映画。本作を理解するにはフランス人の感性が必要だと思われ、従って日本人の私には今一つ良く解らない映画となってます。登場人物は三人のみ。金持ちの有閑マダム、彫刻家のアシスタントをしているその若い愛人、そして全共闘世代の建築家。最初は老齢に差し掛かった女の情念みたいなものの映画かと思ったら、愛人の方の生きることの悩みみたいなものにテーマが移り、最終的には寡黙な建築家の自殺で幕を閉じる。三者三様の物語を語り、そこに共通点は無い。一種のオムニバス映画の様な感じでした、4点献上。 4点(2004-07-09 16:14:06) |
1348. 華氏451
一昔前SF小説にハマったことがあり、レイ・ブラッドベリの小説も何冊か読んだことがあります。しかしブラッドベリの私の印象は少しファンタジーっぽ過ぎて、この原作も未読のまま今に至っております(因みにマイ・フェイバリットはジェームズ・パトリック・ホーガン)。で、本作ですが、活字離れが叫ばれて久しい現在では余りにもインパクトに欠ける内容となってしまっていたのは残念です。また、一人の人格を放棄し、一冊の本として生きる道を選ばなければならないユートピア(?)も同様に全体主義的で、決してハッピー・エンドには見えませんでした。一番驚いたのは主人公の家の居間の壁にかけられたワイド・テレビ。38年前の作品で、現在と寸分違わぬテレビには(その双方向性も含めて)先見の明を感じました、5点献上。 5点(2004-07-09 16:13:03) |
1349. DOG STAR/ドッグ・スター
IMAXシアターだったテアトルタイムズスクエアが一般映画上映館に変わった際の第一回上映作品(製作も東京テアトル)。普通の恋愛映画かと思ってたら、何か「クイール」の様な展開。そして何と、その盲導犬がトヨエツになってしまう。そして「元犬だった人間」という設定が全く活かされないまま物語は進み、やけに簡単に人が死んでいくのだけが印象に残りました。製作者はこの物語から一体何を伝えたかったんでしょうか? 発見は(元?)癒しクィーン・井川遥は角度によって非常に不細工にも見える、特別なオーラを持たない普通の女の子だということ。そういうことで、4点献上。 4点(2004-07-09 16:12:15) |
1350. 五条霊戦記//GOJOE
ありゃ~、意外に評判悪いんですね。伝統的な時代劇の殺陣を愛して止まない人がこんなに多いとは新鮮な驚きです。派手好きを公言している私には、この石井聰亙の演出は十分許容範囲でした(音響の迫力も満喫)。善悪を超越した鬼と鬼の対決をテーマに、三度目の正直で五条大橋の決闘に持っていく脚本も中々巧いと思いました。もう少し弁慶と遮那王の剣の個性にメリハリを持たせた演出をしていれば、更に面白くなったとは思います(もっと言えば、牛若丸が五条大橋の欄干をヒラリヒラリと飛び回る絵も見てみたかった)。そういうことで、少数派の擁護の点数、6点献上。 6点(2004-07-09 16:11:39) |
1351. タオの月
仏教美術に傾倒していた雨宮慶太が案の定行き着いたアクション特撮時代劇。雰囲気はほとんど「ゼイラム」シリーズと変わりませんし(お馴染みの森山ゆうこも登場してますが、今回の美少女は当時15歳の吉野紗香。いや~、ちっちゃくって可愛い)、ストーリーも特に新しくありません。殺陣の演出にはスピード感が欠けてるし、マカラガと呼ばれる最終生物もホントにショボい。しかし、永島敏行と榎本孝明の気による一騎打ちの映像表現や「ペンは剣よりも強し」ならぬ「筆は刀よりも強し」を地で行く武器設定等、センスの光るシーンで楽しませてもくれました。という訳で、6点献上。 6点(2004-07-09 16:10:55) |
1352. BLOOD THE LAST VAMPIRE
背景を一切語らないままハンターと吸血鬼の死闘を描いていく、通産省(当時)からの補助金まで出ているのに、やけに血生臭いデジタル・アニメーション。もしかしたら全ての設定に意味があるのかもしれませんが、私にはことごとく意味不明。この物語と反戦的メッセージは全く繋がらないにも関わらず、時代背景が何故ベトナム戦争当時で、何故横田基地のアメリカン・スクールが舞台なの?(こういう所に潔さが感じられないんだよなぁ) しかし映像的にはその表現方法や構図のカッコ良さ等、デジタルの威力を遺憾なく発揮していました。デジタルの実験という意義に対し、5点献上。 5点(2004-07-09 16:10:07) |
1353. 老人Z
映画版「アキラ」では描かれなかった鉄雄の機械との融合。その欲求不満が爆発したのか、大友克洋の脚本は後半の際限なく周りの機械を取り込んでいく完全介護ベッドの描写に、原作「アキラ」のクライマックスのイメージを投影している様に感じました。アンナミラーズの制服と白衣の描写には、スタッフの並々ならぬ思い入れを感じました(それでわざわざ江口寿史にキャラクター・デザインを発注したの? あと、本作繋がりで「PERFECT BLUE」が出来たのかな?)。映画的には全くメッセージ性とは無縁のノンストップSFギャグアニメ。こういう疾走感は結構好みです、6点献上。 6点(2004-07-09 16:09:17) |
1354. スチームボーイ STEAM BOY
観る人は誰もが過度の期待を抱いて鑑賞に臨むものと思われる大友克洋16年振り(!)の新作長編アニメが、蓋を開ければ「天空の城ラピュタ」と「ロケッティア」を足しただけの様な全く新味の無い仕上がりでは、以後、落胆のレヴューが並ぶであろうことは想像に難くありません。一番の失敗は、19世紀イギリスという舞台設定が足枷になったのか、折角の少年の冒険物語から勧善懲悪的な要素を排除してしまったことでしょう。一応は主人公の父が悪役になってますが、彼も科学の発展を望む科学者であって悪人ではない。綺麗事をほざく祖父にしたって善人ではない。一番悪役っぽいオハラ財団の会長なんか登場せず仕舞い。白鳥麗子の様なヒロインも良い子なんだか悪い子なんだか良く判らないまま終了。「製作期間9年」というのが謳い文句ですけど、その9年の間に作品の鮮度はとっくに落ちてしまっていたようです。残念、4点献上。 4点(2004-07-03 22:43:55)(良:1票) |
1355. ほしのこえ
新海誠というクリエーターが(音楽・音響効果・女性の声以外を)たった一人で作り上げた、知る人ぞ知る中篇フル・デジタル・アニメーション。現在では一人で作ったデジタル・アニメはさして珍しくもないと思うのに、何故本作が「知る人ぞ知る」位に有名になったのか解らない(他のデジタル・ムービーがアートの方面に流れているのに対し、セル・アニメ方面を意識したことが奏功したのでしょうか)。中身も「ガンダム」や、特に「エヴァ」の模倣の範囲から一歩も抜け出せていない珍しくもないもの。本作からは「マーケットを気にせず一人で作った」というメリットや斬新さが何も感じられず、好きな作品をパロった同人誌的匂いしかしない。労力や技術のことは良く分かりませんが、人を感動させるのは労力や技術ではありません、3点献上。 3点(2004-07-03 22:43:31) |
1356. ブリスター!
アクション・フィギュア・マニアやSF映画マニア等、サブ・カルチャーに命をかける登場人物達の青春群像をポップでクールな映像表現で描く、実はSF映画。従って映画自体も非常にマニアックな作りとなっており、特に「ヘルバンカー(地獄の銀行員)」の設定や世界観は驚くほど完成されている。この「ブリスター!」とはフィギュアのパッケージのことで、マニアにとってはそれを開けないことに価値がある。しかしブリスターこそが自らの殻であり、それを開けなければ新しい自分にはなれない。このタイトルは「殻を破れ!」というメッセージでもあるのです。これは面白かったです、7点献上。 7点(2004-07-03 22:43:09) |
1357. 大怪獣ガメラ
ま、本作のストーリーはほとんど「ゴジラ」のパクリと言っていいでしょう。しかしガメラ自体の設定はオリジナリティがあり、既に本作から完成されていました。火や熱をエネルギー源とし、従って人類の持つ火器は無力。体内に動力源を持ち、火を吐いたり噴射したりすることが出来る。空を飛べる。そして何故か子供には優しい(内向的で迷惑な行動しかとらないこのガキは、是非ガメラに踏み潰されて欲しいと思いましたが…)。当時としては本作のZ計画も中々ダイナミックな設定だし、それによってガメラは死なず宇宙怪獣になる訳ですから、これは中々のアイディアでした、5点献上。 5点(2004-07-03 22:42:42) |
1358. 地獄(1960)
≪地獄の地獄シリーズ第四弾≫ 場末のホステスの様な人達の緩んだセミ・ヌードをバックにした、力の入り過ぎた行書体のオープニング・クレジットから観る者を威圧してくる(そのBGMがまた凄い)。映画の中身は不条理、この一言に尽きる。開始一時間で登場人物全員が憤死、現世に於いてさして悪行を重ねていなかった様に見える人まで含めて、その全員が地獄に堕ちる(これじゃあ死んだら誰でも地獄行きだゾ)。そして地獄に堕ちた天知茂には、地獄の様な現世と同じ現世の様な地獄が繰り返される地獄が待っている(正に生きるも地獄、死ぬも地獄。それにしても他の刑はショボい映像しかないのに、皮剥の刑だけ何で特殊メイクなんだろ?)。あんまり面白い映画とは言えないですけど、何とも評価しにくいので5点献上。 5点(2004-07-03 22:42:20) |
1359. スパイダーマン2
(ちょっと長文) 前作をコミック化したタイトル・バックからパワー全開。サム・ライミも超大作に慣れた所為か、彼独特のダイナミックさを残しつつも前作のB級的演出は少し影を潜め、より堂々とした風格を作品に与えています。今作で特筆すべきは脚本だと思う。大義と愛情、欲望と自己犠牲、そして現実と理想の間に苦しむ極普通の青年の物語を基本に、ストーリーはピーターとMJ、そしてハリーの三人の間だけで進んでいく(Dr.オクトパスは完全に物語の外)。この暗く小さな青春映画は、しかし「CASSHERN」の様にはならない。シリアスなシーンをダラダラ見せる愚は犯さず、絶妙なタイミングでアクションやユーモア溢れるシーンに切り替え、よりテーマを浮かび上がらせることに成功している見事な脚本です(と同時に、物語が完結していないにも関わらず、ちゃんと一本のヒーロー映画になっている!)。本作で一気に核心へと迫った三人の関係に、次作ではいよいよ決着がつきそうな予感。その期待値も含めて、8点献上。 8点(2004-07-03 22:41:51)(良:3票) |
1360. ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
「秘密の部屋」にほぼ最低評価を下した身としては、かなり勇気のいる鑑賞でしたが、いや、驚いた。これまで単なる動く挿絵でしかなかったのに、本作は無駄なエピソードやキャラクターを極力排した、「アズカバンの囚人」を巡る一本のちゃんとした映画になっている。原作からこういう話だと思ってたら、(↓)やっぱ相当脚色されてるんですね。原作ファンには賛否両論ありそうですが、「映画ファン」にとってはこの作り方こそ正解。世界観と映像、そして大人の階段を上るハリーの心が一気にダーク・サイドへ方向転換したのも奏功したのでしょう(ただ、子供向けとしてはダーク過ぎる様な気も…。それにホグワーツの地形まで変わってしまったのもどうかと…)。自身にとってこの方向転換は結構衝撃的だったので、驚きの7点献上。 7点(2004-07-03 22:40:22)(良:1票) |