121. 男はつらいよ 奮闘篇
《ネタバレ》 単に美人に惚れてその後で振られるという王道パターンとは少し異なる、密かに奥の深い作品。この作品での寅さんのスタートは明確に「保護者愛」なんだけど(沼津駅の別れのシーンは名シーンだ)、相手が本当に自分の懐に飛び込んできて、いろいろとその世話を焼いているうちに、いわば行動の側が内心を形作るような感じで、いつの間にか結婚生活計画まで立てるようになってしまう。この自然な推移が味わい深い。あと、田中邦衛が最初から最後まで「爽やかないい人」というのも、意外と貴重だったりして。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-08-15 01:32:47) |
122. あゝ野麦峠
《ネタバレ》 いろんなところで、山本薩夫監督らしからぬ情緒過多な演出が目立っているのだが、それを救っているのは、冒頭の雪中行列の強烈なショットであるとか、工場の手作業を終始丁寧に撮り尽くす気遣いであるなど、大事なところで妥協を許していない真剣さなのです。盆踊りのシーンなんかも、つなぎのシークエンスにしては異様に気合が入っていて、見ていて気持ちが良いのです。 [DVD(邦画)] 6点(2016-03-04 01:40:04)(良:1票) |
123. 死刑台のメロディ
《ネタバレ》 この事件をきちんと記録化して後世に残したという功績だけで、低い点はつけられない。最後、ヴァンゼッティのサッコに対する「君が正しかった」という一言の重みなど、制作者の対象に対する真摯な姿勢も十分に伝わってくる。●ただし、どうしても気になるのが・・・まず、一審の弁護人が、いろいろ下手くそなこと。それと、最初は2被告人だけの事件だったのが、どうやって全米を巻き込む運動に伝わっていったのか、そのステップとプロセスにあまり踏み込まれていないこと。 [DVD(字幕)] 6点(2016-02-22 01:55:58) |
124. ダイナマイトどんどん
《ネタバレ》 ヤクザに野球で決着をつけさせるという無茶な設定を、大真面目に真剣に映像化している時点で、もう低い点はつけられません。脇役の多い宮下順子さんも、この作品ではいい感じに目立っていますね。終盤がやや間延びしたのが残念。全体として、120分くらいに収まる内容だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-12-05 01:32:00) |
125. 仁義なき戦い 頂上作戦
《ネタバレ》 ドンパチワーワーが再三繰り広げられる割に、作品全体に妙に陰鬱なやりきれない空気が漂っているという雰囲気は、さらに加速している。普通の作品だったら絶対にどこかで制裁が下るであろう山守も打本も、さしたる展開上のお咎めなし。主役のはずの広能は後半ほとんど出番なし。そして最後は吹きすさぶ寒風の中の2人の虚しい会話。前作で各登場人物がひりひりするつばぜり合いを展開した後の、本作は壮大な崩壊の物語ですね。 [DVD(邦画)] 6点(2015-12-04 02:22:09) |
126. ブラック・ライダー(1972)
《ネタバレ》 南北戦争を描いた映画は数あれど、「その後」の旧奴隷の西部移住を描いた作品は珍しいんじゃないのかな。で、主人公は道案内&仲介役なのですが、地主組からは、「奴隷使わないと経営やっていけねーんだよ、余計なことしやがって」と命をつけ狙われる。そのあたりのやりとりもなかなかスリリングなのですが、さらにネイティブ・アメリカンの勢力が絡んできて三つ巴の様相を呈するに至って、さらにスリルを増していくわけなのです。ただ、背景はいろいろ重いものの、アクションやストーリー展開にも気を配っていて、ところどころ笑わせる場面もあったりして、単純にエンターテインメントとして楽しめます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-11-25 01:14:35) |
127. 赤穂城断絶
《ネタバレ》 こういう王道話で、こういう豪華キャストなのですから、次から次へと登場する役者の皆様を眺めているだけで十分楽しめるわけなのです。ただ、深作監督はやっぱり好き放題に自由な人物造形をさせた方が本領を発揮するのであり、忠臣蔵のようなキャラクターもストーリーもかっちり固定している対象は、演出にもどかしさを感じますね。吉良邸の図面なんかの内偵パートでは、「潜入した浪士が吉良側の手に落ちて、さんざん拷問に遭わされるが、口を割ることなく絶命し、遺体は報復として衆目に晒され、それを目撃した赤穂浪士が憤激し、さらに復讐の意志を固める」みたいなことをやりたかったんじゃないでしょうか、本当は。それと、処分決定後の四十七士切腹のシークエンスを延々とつないでいるのは、忠臣蔵が単なる美談ではないという制作側の強い表現の意地を感じますね。 [DVD(邦画)] 6点(2015-10-07 01:49:35)(良:1票) |
128. 地獄の黙示録
《ネタバレ》 オープニングからいきなりドアーズの"The End"なわけじゃないですか。しかもそれと一体化したベトナムの炎上風景。ここで実はすべて完結しています。つまり、全体が一つの悪夢、地獄、あるいは走馬燈なのです。一人称ナレーション(しかも呟くような)がやたら多いのも、派手な映像や音響とは裏腹に、この作品の本質は単なる個人の物語、というのを暗示していますね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-08-24 01:27:18) |
129. 春琴抄(1976)
《ネタバレ》 いきなりヒステリックで高飛車な百恵ちゃんというのもびっくりしたが、その百恵ちゃんと、それにひたすら忠実に仕える友和さんという図式で最後まで一貫して押し通したのには、もっとびっくりした。こういうのができるところからも、やっぱりこの二人、単なるアイドルカップルではなかったんですね。何と百恵ちゃんは、作中で笑顔の一つすら見せない。結構演技の難易度が高い役柄だと思います。妊娠の背景説明ゼロで謎を残したまま平然と先に行っちゃうというような作り方も、今日でも参考になると思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-07-15 03:00:08) |
130. 昭和残侠伝 死んで貰います
《ネタバレ》 賭場のさりげない1シーンだけで、制作側の気合と集中力が見えてくるのだが、そこから出てくるすべてが、ひたすらに主人公を格好良く見せるためにあるという一本の筋が、作品を引き締めている。分けても、健さん以上の強烈な存在感を示しながら、あくまでも健さんを引き立たせる芝居に徹している池部良の役者根性は凄い。●討ち入り直前、長門裕之が健さんに対して、「あっしも詳しいことは聞いてませんが」と言いながら、その直後に、端的に簡潔に事態の推移を一言で説明してしまうところは、やはり笑うべきところだったんだろうか。そういう勢い余りぶりも、この作品に相応しい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-02-25 22:44:29) |
131. 必殺仕掛人 春雪仕掛針
《ネタバレ》 悪党トリオが夏八木勲・竜崎勝・地井武男という素晴らしすぎるキャスティングですでにOK。仕掛人側の見せ場のシェアの巧さもなかなか。ただし、梅安と千代の過去の経緯が云々というのは、全部いらなかったと思う。せっかく岩下志麻という存在感ありすぎ役者を引っ張ってきたんだから、ラスボスにふさわしい冷酷大悪党でいてくれた方がどれほどよかったことか。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2014-10-28 01:53:57) |
132. グライド・イン・ブルー
《ネタバレ》 反権力側にとってだけでなく、権力側にとっても虚しい時代。そんな空気を的確に切り取った、まさに裏「イージー・ライダー」。繰り返されるアリゾナの不毛な大平原の風景も、このテーマに合致している。それと、ボブ・ゼムコを演じていたのがあのシカゴのピーター・セテラというのは、もう、どびっくり。 [DVD(字幕)] 6点(2014-08-24 20:23:33) |
133. 仁義なき戦い 広島死闘篇
このシリーズは個人ではない「組」こそが主役なので、それと無関係に成り立っている北大路欣也の出番が増えるほど勢いが止まってしまい、逆に組織内の立ち位置を踏まえてこそ格好良さが増す成田三樹夫の存在感がじわじわと染みてくるのです。 [DVD(邦画)] 6点(2014-04-26 01:11:58) |
134. ソルジャー・ボーイ
《ネタバレ》 冒頭、4人の若者が除隊するところから始まるんですけど、みんな何も考えてなさそうで、言動ははらはらさせるほど危なっかしくて、もうこれはまともには帰還生活はできないという雰囲気が立ちこめまくっているのです。はたして、あれこれトラブルをまき散らしながら道行きが進行し、リーダー格の家に無事戻れたと思いきや、何か居心地が悪くてすぐ飛び出してしまう。結果、最後は悲劇が待ち受けているんですが、この行程ならば、うまくいくはずのことがうまくいかないという「追いつめられ感」をもっと出してほしかったと思います。ただし、この時期には「ベトナム帰り」を正面からテーマにした映画というのはほとんどなかったはずで(もしかしたら初めて?)、その先鋭性と予見性については心から讃えたい。 [DVD(字幕)] 6点(2013-12-16 02:26:58) |
135. 男はつらいよ 純情篇
《ネタバレ》 最初に見たときは、若尾文子のマドンナの存在がどうも浅くて物足りなかったのですが、再見してもそれは変わりませんでした(笑)。よって、寅さんの恋の病というのも、あまり説得力はありません。ただ、若尾さんが問題というよりも、この作品はサブエピソード部分の出来が良すぎて、マドンナの出る幕が狭められてるのですよね。冒頭の宮本&森繁の強力なドラマとか、博の退職騒動の盛り上がりとか(もしかして、「寅さん相手に服を脱ごうとした女性」というのは、シリーズ中絹代が唯一なのでは?そして、宮本さんの驚きの視線を受けた切り返しの寅さんの「険しい悲しみ」の表情も凄い)。●シリーズの歴史という観点から見ると、(1)源ちゃんが本作から帝釈天に居着いている、(2)柴又駅での見送りシーンが初登場、という点でも重要な作品です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-07-27 13:01:22) |
136. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草
《ネタバレ》 そんなに恋愛方面にのめり込んだ作りにはなっていなくて、むしろ放浪者同士の心のふれ合いや交錯というのがテーマだったんですね。だから、あっさりリリーが消えてしまう展開の切れ味が光っています。もっとも、だからこそ、鮨屋での再会のシーンはいらなかったんですが。●内容的には、この時点では「異形のキャラ」とさえいえるリリーを、制作側がまだ使いこなせていない印象も受けますが、だからこそ、後の寅のある意味生涯の支えとすらなるリリーを発掘した意義は大きいといえますし、この作品があったからこそさらにシリーズの長期化が決定づけられたともいえます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-06-16 00:47:43)(良:1票) |
137. 遊び
《ネタバレ》 大門正明の台詞はいちいち説明的でわざとらしいし、2人のそれぞれの過去を逐一回想で説明してしまうのも野暮ったいのだが、あの強引極まりないラストによって全部が奇跡的なほど爽やかにまとまってしまっているから不思議である。16歳にしてこの存在感と躍動感を発散しまくっている関根恵子を収め切るためには、これくらいしないといけなかったのだろう。 [DVD(邦画)] 6点(2012-08-01 00:37:19) |
138. 不連続殺人事件
《ネタバレ》 ひたすら変な人たちが変な会話を交わしていって、その中でいつの間にか事件が積み重なって、そして解決していくという展開なのだが、もともとそういう原作なのだから仕方がない。それよりも、この異形の原作を何とか映像化しようと挑戦したその心意気の方を買いたいと思う。ただし、謎解きの部分に迫力が皆無なのは大きなマイナス。音楽がコスモス・ファクトリーっていうのは凄い。 [DVD(邦画)] 6点(2012-05-27 02:29:40) |
139. ローズランド
アイヴォリー/ジャヴバーラにも、こんなさらっとしたタッチの作品があったんですねー。クリストファー・ウォーケンのナヨナヨ系ツバメっぷりにも驚きですが、ジェラルディン・チャップリンの地味な気品が作品を堅実に支えています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-05-22 02:27:54) |
140. 高校生ブルース
《ネタバレ》 最初の方こそ、いかにも昭和40年代なほのぼの青春ドラマという趣で始まるのですが、中盤以降のドロドロ具合というか暗黒度合が何とも・・・。単純明快なだけに、描写に原始的な破壊力があります。しかしそんな中でも常に凛とした存在感を貫き通している関根恵子はやはり凄い。 [DVD(邦画)] 6点(2012-03-15 00:52:04) |