121. ピエロがお前を嘲笑う
《ネタバレ》 多くの皆さんのご意見のとおり、スタイリッシュな映像とテンポの良さ、そしてデジタル空間を可視化した地下鉄車内と乗客たち、といったところは良かったと思います。 が、これまた多くの皆さんのご意見のとおり、雑です、かなり雑です。ツギハギ感は半端ないですね。結局主人公たちは何をやりたかったの?目的は何?驚愕のラストを標榜する(してるのは配給サイドだけかも)結末が彼らの目指していたもの?そんなものに感情移入は出来かねます。 二段仕掛けのどんでん返しというスタイルは良いと思います。が、理詰めのどんでん返しとは思えないです。辻褄合わないですよ。むりやりちゃぶ台返ししたみたい。 演出的には見るべき点も多いだけに残念な作品でした。ヒロインの件も含めて。予備知識なしで何にも考えないで観たら良いかも知れないエンタメ特化作品でした。否定はしません。 ちなみに、タイトルは如何なものか?邦題の「お前」は観客としか思えないし、原題もミスリードが過ぎる感じ。これは減点要素です。 追記です。「殺し屋が通過電車見てて通過した後のトンネルは見ないのかよ!凄腕の捜査官がテーブルの下を見ないのかよ!ヒロイン?も一緒に逃げるのかよ!この際、捕まったラスボスはヒロインの自称彼氏でもいいんじゃね?」苦言並べてみました。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-12-19 09:52:18) |
122. 愛してるって言っておくね
《ネタバレ》 わずか12分の作品なのに何と濃いことか。深いことか。短い尺の中での構成が見事ですね。 夫婦の溝が埋められたかのようなカットの後に現実の悲劇を重ねて行き改めて悲しみと向き合い一歩前進する二人を描き直す。このループ感と言うか時系列の配列によって、よりいっそうの感涙へと誘われました。 大人であれ子どもであれ、元気にいつも通りに出掛けて行った愛する人が帰らない。お別れを言うこともないままに。考えるだけでも残酷です。その感情を柔らかく包み込むように描いた佳作。感動しました。 [インターネット(字幕)] 9点(2024-12-16 23:48:42) |
123. キラーコンドーム
《ネタバレ》 見れば15年近くもの間、どなたもレビューしていませんね。アマプラで配信されてたので(気にはなっていたものの未見だったので)恐いもの見たさで観てしまいました。アルバトロスさんが2023年にディレクターズカット版を配給していたのですね。流石はアルバトロスさん。なので本レビューは「ディレクターズカット版」のレビューとさせていただきます。 さて、いきなりビックリのドイツ語。え?ここはどこ?ニューヨークでしょ?え?でもドイツ語。そしてニューヨークの風景も1996年とは思えない雰囲気。もう10年ぐらいは古い感じ。言語と時代感のズレで冒頭から異世界間に包まれました。 ゲイの扱いとか外国人の扱いとか、ちょっと今ではヤバめのカットの応酬。そうかと思えばエロ教授の性暴力やら大統領候補のアメリカ・ファースト的演説とか、先取り感あるカットがあったり。何だか批判したいのに批判し難い作品のようでもあり。 チープで手作り感のあるコンドームは可愛いようでもあり恐ろしいようでもあり、その生い立ちとか生物?としての完成度?(イカレタ検視官?のオバさんの解説が楽しかったけど)が妙に真面目だったり。 総じて言えば社会風刺と宗教的倫理観をチラつかせた支離滅裂系硬派無理やり製作エロティックSFコメディといったところでしょうか。(総じてませんね) 決して嫌いではありません。流石、後にその名を馳せる俳優陣とスタッフが多数参加しているだけのことはあります。が、何せ長い。ディレクターズカット版は118分。長過ぎです。30分短縮しても十分ですね。最大の減点ポイントはそこということで限りなく6点に近い5点に留めます。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-12-16 23:26:46) |
124. Closing Dynasty(原題)
《ネタバレ》 ニューヨークという大都会の片隅で、大人に混じって街中を闊歩し巧みに金儲けしようとする7歳のアジア系の少女。「?」と思わずにはいられない設定です。 大都会で働く大人たち。クイニーのことを案じ、助けようとする大人たち。見て見ぬふりの大人たち。しかし何かがズレている。クイニーの真っ直ぐな視線の先に見えているのは極めて現実的な不安と心配。大人たちは幼いアジア系の女の子が路頭に迷っているようにしか見ない。もしくは彼女のことを見ようとしない。 しかし、当のクイニーは見下ろされるような意識は持ち合わせていません。達観しているのか?或いは子どもとしての純粋無垢な強さなのか。彼女の不安は父や母に知られることなく彼女を突き動かす。 クイニー目線で綴られていく物語。学校にも行かずに小銭稼ぎに没頭する彼女に対する大人の目線と、彼女の透き通った純粋な目線が交わることはないのかも知れません。 何と言っても主演の少女の存在感。観る者を不安にさせ、かつ安心もさせ、かつ感動も呼び起こす。勿論、演出も脚本も秀逸です。謎めいているようでいて直球を投げ込んでくる。大いに気に入りました。8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-15 21:41:21) |
125. The Blue Drum(原題)
《ネタバレ》 出来映えは良いと思うのです。映像、演出、ショートフィルムというよりこのまま90分ぐらいの作品になっていくのかなという雰囲気。 しかしながら、肝心のストーリーが…。なんともありがちなオチなのです。タイトルがそのまんまですね。昔っからこういうオチってあるような。行方知れずの家族が実は身近な所に隠されていた、みたいな。つまりは意外性がなくて先読みが出来てしまう。ミステリー系ホラーとしてはこれは致命的のような。 そう考えると、そこに至るまでのいくつかの仕掛けもありがちに思えてしまい、何かもうひとひねり出来なかったのだろうかという感想です。雰囲気が良い感じだっただけに残念な作品でした。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-12-13 00:27:06) |
126. Mama Retreat(原題)
《ネタバレ》 「リトリート」というものには馴染みがないのですが(私が不見識なだけかも)、アメリカあたりではこういったプログラムは珍しくはないのでしょうね。映画を観ているとちょくちょく登場するように思えます。 主人公のメルセデスは最初っからメンバーの中で浮いているのですが、そもそもだからこそ選ばれたのかも。主治医もフィルタリングに関わっているのかな?はなっから生贄フラグが立ってる感じ。山奥のキャンプ場みたいなところで捕まっちゃってる訳だから逃げようにも逃げられない。 結局取り上げられた赤ちゃんはどうなっちゃうのでしょう?勿論、産婦のメルセデスもどうなることやら…。本邦にもありそうな都市伝説のようにも思えるし、現実にカルト集団もありそうでよくよく考えると怖いお話でした。意外性には欠けるかな? [インターネット(字幕)] 5点(2024-12-13 00:09:41) |
127. La Ciguapa Siempre(原題)
《ネタバレ》 スペイン語はよく分かりませんがタイトルは「彼女はいつもシグアパ」という意味なのでしょうか?「シグアパ」というのはドミニカの民話に登場する生き物?のようですが、本邦で言うならば差し詰め妖怪的なものなのでしょうね。足が後ろ向きで後ろ向き歩行をするのが特徴?なかなかの恐さがあります。 細かな設定は示されていませんが、主人公のミラグロはどうやら里親に育てられた少女のようで、自らの出自に疑問を感じながら生きているようですね。それを調べて行くうちにどうにもならない気持ちを抱えるようになった。恋人のデイビスも信用できない。デイビスはそんな彼女を慰めようとキャンプに連れて来るのですが、職場の女性上司とラインしたり、道に迷った女性ハイカーを道案内したりする彼の姿に、ミラグロは強烈な悪意を感じ本性に目覚めてしまうという流れ。実はその森こそが彼女の本来居るべき場所だったというオチですね。 短いながらも恐さがひしひしと迫って来る作品。ミラグロの雄叫び、否、女性だから雌叫び?が強烈な印象です。後ろ向き歩行も恐い恐い。見応えありました。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-12-12 23:53:37) |
128. ブラック・フライデー!
《ネタバレ》 事態の重大性に気付かないまま、恰もロメロ監督の「ゾンビ」の如く大型店の店内に立て籠もる「主人公たち」。そのシチュエーションにしても件の怪物のビジュアルにしても、過去作品への熱烈なオマージュを感じます。ブラックフライデーにブラックコメディを観る贅沢。いいですね~♪細かなツッコミどころは多々あるものの、これでもかとばかりの展開に大いに笑わせていただきました。 ゾンビばりの感染力で客たちに取り憑いていく?エイリアン。食うのか合体するのかの判断基準は全く示されませんが、実は本作、最近話題のカスハラがモチーフになっているとも思え、無理難題を吹っかけて来る客vs店員のバトル。それに加えて、同じく何かと話題の職場でのパワハラやモラハラ要素も盛り込まれていて、さながら現代社会に対しての皮肉を込めた作りにもなっています。(と思えます) ま、そんなことを考えずとも、多少のグロ耐性は求められるものの何にも考えずに楽しめる作品であり、たまたま鑑賞しての思わぬ出逢いに6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-12-12 23:27:06) |
129. オールドマン
《ネタバレ》 一見するとスティーヴンスさん、またもやドントブリーズですか?と言いたくなるようなシチュエーション。ところが大分異なる世界ですね。そして、この場合はネタバレ禁止かも。冒頭の「ラスカル!」の意味するところが本作品のひとつのキモです。 最後まで観てオープニングを見直すと解るというか、黙っててもラストにはオープニングが反芻されるので誰もが理解しやすい作り。なるほど、そうでしたか。やっぱりそうでしたか。という感じ。テーマは「狂気」あるいは「歪んだ愛」と言ったところでしょうか。 スティーヴンさんの熱演が光ります。少し前まではこんな雰囲気じゃなかったような役者さん。でも。前作、前々作あたりから「危険な独居老人」が板に付いてますね。その演技を楽しむだけでも価値ある1本でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-12 21:23:56) |
130. ロックド・イン/囚われ
《ネタバレ》 ひとことで言えばドロドロ。いかにも本邦の2時間TVドラマにありそうな愛憎劇。 本心がイマイチ解りにくい女主。その女主を幼少期から慕い続ける養女。その養女に依存し続け、今や夫婦となった女主の亡夫の連れ子。ヤブなのか野心家なのか単なるエロオヤジなのかいずれにしても只管怪しい医者。そして、瀕死の重傷を負った女主から事の真相を聞き出すべく私立探偵ばりに活躍する看護師。登場人物が多彩です。 そんな登場人物が織りなす物語がシンプルな訳がない。けれども、意外と解りやすく物語は展開します。つまりは観ている最中は結構楽しめる。そこそこツッコミどころもありますし。されど、観終わった傍からあっさり忘れ去ってしまうような薄い物語。 特に深いテーマ性があるとは思えません。典型的な?エンタメ作品です。深く考える必要はなく感情移入も不要。決してツマラナイ訳ではありませんが、重苦しい雰囲気の割には印象の薄い作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-12-12 21:05:04) |
131. イノセンツ
《ネタバレ》 先にご指摘のあるとおり、確かにこれは「童夢」ですね。公式には「童夢」からインスピレーションを得た作品とされていますが、シチュエーションといい展開といい、まさに「童夢実写版」的な作品という印象です。 ただ、こちらはあくまでも北欧ホラー。容赦なくやって来る悲劇をジトっとさせることなく弱々しいながらも明るい陽光の下で展開させていくという北欧ホラーあるある的雰囲気は好みです。出演者、特に子どもたちの素直な演技も功を奏し、飽きることなく鑑賞することは出来ました。 よくよく考えれば、イーダとアナの家族は、少なからず子どもたちがトラウマに苦しむにしても事件前以上に充実した生活を送れるのかも知れません。がしかし、アイシャとベンとその家族にとっては紛れもない突然の、それも立ち直れないほどの悲報。事件の背景の根本的な解決には程遠いエンディングでもあり、鑑賞後の後味は何とも気持ち悪いの一言に尽きます。 アナは何をボードに描こうとしていたのでしょう?果たしてこれからイーダとアナにはどんな未来が待っているのでしょうか?団地の窓から覗き込み最終決戦に助力した子どもたちの将来は?超能力決戦には昂ぶりましたが、総じて見ればただただダークな物語でした。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-12-11 00:01:55) |
132. ドロステのはてで僕ら
《ネタバレ》 タイムパラドクスの一つの解釈を映像化したコメディ、とでも言いましょうか、コメディ仕立てにすることで原理原則的な部分をすっ飛ばして見事な力業で纏め上げた作品ですね。出演者のキャラクターもある意味魅力的ですし、演出・編集の妙で飽きさせない、というか細かな疑問を挟ませない出来映え。一気に楽しめました。 人それぞれに望む未来は様々。大きく望めば現実に失望するし、小さく望めばさり気ない出来事でも大きな幸福感を得られる。なんていうのは勝手な自己解釈かも知れませんが、タイムパラドクスものの一つのお手本的作品と思います。納得いかない部分についてツベコベ言いたい自分を黙らせ8点献上します。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-12-06 00:25:30)(良:1票) |
133. レベル・リッジ
《ネタバレ》 悪徳警官が町を牛耳り、逆らうものは全て破滅させる。そこに超絶ヒーローが現れて人々を救い悪を滅ぼす。そんなストーリーは定番のひとつのように思えます。本作の基本的プロットもそれです。けれども本作が一味違う理由は、主人公が只管沈着冷静に振る舞い行動することによるのかも。 主人公のテリーはとんでもない潜在能力(軍歴に裏打ちされた)を有するもののなかなか真価を見せてくれない。愛すべきいとこの保釈こそが目的ゆえに徹底的に我慢する。言動を慎み行動を慎む。心に秘めた怒りや憎しみは封印する。その一方、悪役側の警察は容赦なく無法ぶりを発揮。観ている側はイラつきます。 そして、スイッチオンでテリーは本領発揮。ただし、沈着冷静で法令順守。命令されているだけの警察官たちには最小限の攻撃のみ。観ている方はちょびっと不完全燃焼だけれどある意味安心して観ていられる感じ。そして、頼みの綱のサマーを難局から救い出すことも忘れない。観客は当然テリーを応援します。 「ランボー」の優等生版といった感じですね。容赦なく能力発揮する暴走型と只管冷静で人情優先型。こちらはこちらで異種の爽快感を味わえました。複雑に思える物語も丁寧に進んで行くので理解しやすかったです。多少のお約束感は否めないまでも大いに楽しめたので7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-12-05 00:53:40) |
134. 彼女のいない部屋
《ネタバレ》 レビュー冒頭からネタバレします! これは感想を述べるのが簡単なようでいて難しい作品。簡単というのは、結構アッサリ纏められてしまうから。要は、幸せな生活の中に、否、幸せな生活だからこそ抱いてしまった不満によって家出的な外出をしてしまったものの、一緒に旅行に出発しなかったばかりに家族と死に別れてしまうという物語。そして彼女はその悲しみを断ち切り、家族との思い出の家を出て新たな人生を歩むのだった。そんな感じです。 難しいというのは、現在と過去、それも複数の過去という時系列が複雑に行き来し、更に主人公の空想というか妄想というか脳内イメージが重なり合っていて、それを書こうとするとレビューというより説明になってしまいそうなこと。構成の妙です。 愛娘と主人公を繋ぐピアノが一つのキーになっていますね。冒頭のシーンで主人公がクルマのキーを鍵盤に落として鳴ってしまう音。この音階が全編通じて登場します。それぞれのシーンを繋いでいる音ですね。短音のみならず楽曲も効果的に登場します。演出の妙です。 二回観ました。物語の全容を知ってから観直すとより味わい深い作品でした。8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-03 18:43:36) |
135. ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!
《ネタバレ》 これは楽しい!全編に流れるメタル、メタル、メタル!思わず体が前後に揺れる。 北欧のメタルに特に詳しい訳ではありませんが、デスメタル系のシャウトに超速ギターというイメージを持っていまして、本作の登場する楽曲はイメージにピッタリ!最初っから最後までMV感覚で楽しめました。 コメディ作品としても、ドタバタコメディ的なテイストあり、ヒューマンドラマ的テイストあり、ラブコメやミリタリーコメディのテイストまであるという欲張り感のある作り。そして、それらの全てが北欧映画独特の空気間で包み込まれていて非常に居心地の良い1時間半でした。 ドラマー・ユンキの突然の事故死とその葬儀のシーンや、ノルウェーのフェス主催者がバンドメンバーをステージに迎え入れる口上にはウルっと来ましたし、主人公トゥロ(角度によってチャーリー・シーンまたはジョニー・デップ似のイケメン)の野太いボーカルと汚さより爽快さが勝るゲロ噴射は最高、亡きユンキの棺桶の扱い(一緒に警察の追跡から逃げ、崖からダイブ、ステージからもダイブ)には大笑い。 北欧コメディはあまり縁がないのですが、ヘビメタを入り口に入ったこの世界、大いに楽しめました。ここに来て続編公開ということなので是非劇場で楽しみたいと思います。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-03 18:10:44) |
136. アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング
《ネタバレ》 ヒロインが頭を打ったら鏡の中の自分が別人の如き超イケてる女の子に変ってた。って言ってしまうと何だか既視感のあるありがちな設定に感じてしまうのですが、本作の面白いところは一切そこに通じる映像が登場しないところですね。ヒロインに見えているヒロイン自身が登場しない。 あくまでもヒロインの主観の世界。VRですか?って言うぐらいにヒロインの脳内に限定されたイメージ。傍から見たら何一つ変わっていないのに激変を自覚するヒロイン。そりゃ友人・同僚を始めとして周囲は動揺しますよね。動揺しないのは今までの彼女を知らない人ばかり。CEO、そして彼氏などなど。ところがその人たちは(全員じゃないけど)レニーを高く評価する。彼女の本質を評価?そこが本作のポイントに思えました。 新しい?彼女(外見の変化によって超ポジティブ)を高く評価する人々、今までの彼女(外見に自信がなくて超ネガティブ)を知り尽くしていて愛おしく思う人々。どちらの人々もそれぞれに彼女を認め、受け入れています。問題はレニー自身ですよね。ビフォアもアフターも彼女の本質は同じなのに、当の本人はそれに気付かず容姿・外見と言うフィルター越しにしか自分を見つめられない。 結局、妄想の世界から戻ったことで再び彼女は自らの本質を封印してしまうのですが、最後の最後に目から鱗で真実に気付く。そしてハッピーエンドな訳ですが、肝心要のその部分がイマイチしっくり来ませんでした。プレゼンのスクリーンに映し出されたビフォア&アフター。自ら発した言葉で観衆を惹き付けるだけではなく自らの変革にも成功する?う~ん、あんなにも拗れた性格があの程度のきっかけで変わるかなぁ? 思えば最初っから最後まで殆ど感情移入出来なかったキャラ。だから素直にハッピーエンドを受け入れられない私なのかも知れませんが、なんだか不完全燃焼でした。CEOとか彼氏とか親友たちとか同僚とか、他の登場人物はそれぞれにキャラが立ってて面白かったんだけどな~。ちょっと残念感が残って6点献上に留めます。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-12-03 16:52:09) |
137. ザ・クレイジーズ(1972)
《ネタバレ》 コロナ禍を機にずっと観たかった本作ですが、サブスクでやっと鑑賞出来ました。 流石のロメロ監督としか言いようのない出来映えですね。アクションや特撮などには多少の不満がないことはありませんが、70年代の作品ということを考えれば納得出来るレベルですし、何より優れたテーマ性と脚本や演出を考えればそんな不満も消え去ると言うもの。 およそ50年前も昔に、感染症の恐怖とそれが人心と社会に及ぼす影響を描いたということの先見性、政府や軍が混乱の極みにある中で無謀な凶行に走る様への強烈な批判、現代においても、否、現代においてこそ強烈なメッセージ性を発揮していると言えるでしょう。 パニック状況下における兵士たちの非人間性、父娘の異常行動(これはパニック関係なしかも)など、ひとつひとつの細かなエピソードも見逃せないものばかり。誰が狂っていて誰が狂っていないのか?最後の最後まで緊張感が続き、混乱のまま幕を閉じるという展開も魅力ですね。 冒頭の主人公と恋人によるサービスカットというお約束的遊び心も忘れないところも流石。敢えて注文を付けたいとすれば、主人公と親友(悪友?)が良く見れば似てないのですが、ちょっと見が似ていて時々区別がつかなかったことでしょうか。 観れて良かった1本に9点献上します。 [インターネット(字幕)] 9点(2024-12-01 00:31:53) |
138. ジェクシー!スマホを変えただけなのに
《ネタバレ》 超ダサい男が超可愛い女の子に何故か好かれてハッピーエンド♪みたいなラブコメは数多ありますが、これはスマホのAIとの変則三角関係みたいなシチュエーションで面白い。コンピュータと人間との戦いみたいな構図なんですが、ターミネータみたく人類の存亡をかけるような壮大なバトル系SFでもなく、より哲学的なテイストを加えたHAL9000の反乱みたいな難しさもない。超個人的な世界で結構ミニマムに展開される近未来SFサスペンス的な味わいのあるラブコメ。気に入りました。 まぁ、やってることはなんとも罪がないというか(クライマックスの街中破壊シーンはともかく)、微笑ましい限りのハッピーエンドお約束ムービー。安心して観てられます。てか尺の都合もあるのでしょうが上手く行き過ぎの感は否めませんが。細かな疑問は敢えて口にせず、純粋にラブコメとして観るのが正解ですね。 道行く人もオフィスの人もカフェの客も、誰も彼もがスマホスマホの社会。しかし人間愛に目覚めたフィルは、スマホは道具と割り切って「ながら歩き」を卒業。それもジェクシーのおかげで。そんなシニカルな社会派作品としての側面も見せてくれる佳作に甘めの7点献上します。 ちなみに邦題はちょっと遊び過ぎたかも。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-28 17:45:04)(良:1票) |
139. インキーパーズ
《ネタバレ》 冒頭から中盤まではホラーと言ってもコメディ・ホラー?というライトなテイスト。今や霊媒師の往年の有名女優が登場したあたりから少々方向性が変わり始め、どう見ても死亡フラグの立ってる老人の登場でリアル・ホラーに進路決定、そして終盤のまさかの展開へ。 ユニークな作りと言えるでしょうね。サラ・パクストンさんのキュートさと突然の悲報が作品全体の流れを作ってるという感じ。このままコメディ・ホラー?とある意味安心してサラのキュートさを楽しんでいたら思いっきり蹴っ飛ばされて終わる感じです。作り手の狙いはそこなんでしょうね。決して遊び半分に幽霊探しや心霊スポットに行ってはいけません!というユーチューバーとかに向けた警鐘ではないようです。 評価は難しいですね。純粋にホラーとして観れば、ありふれたストーリー&事の真偽は放りっぱなしという決して褒められない作品。コメディ・ホラーとして観れば、まさにヒロイン然としたクレアをあっさり殺し過ぎ。その後のルークの沈痛な表情も興覚め感しか呼び起こさない。冒頭から中盤までのダラダラ感もよろしくないです。 サラ・パクストンさんの魅力に+1点としても限りなく5点の6点献上かな?という感じでした。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-26 23:54:55) |
140. ザ・ハント(2020)
《ネタバレ》 それほど多くのレビュー数とも思えませんが、良くも悪くも既に皆さんに書き尽くされている感がありますね。社会風刺エッセンス付きブラックコメディテイストのホラー作品とでも言いましょうか、私は大いに気に入りました。 何となく最近メジャーなヒット作で見かけたような冒頭の主人公らしき人物の連続頓死模様。(どっちの作品が先だったかよく分かりませんが)これで一気に惹き付けられました。グロさもある程度デフォルメされていてキモさはなし。(個人的耐性があるだけかも)鉄条網を越えて逃げ込んだGSの善良そうな老夫婦も予想通り追う側。そしてまたもや主人公かもの一行は頓死。突如登場するヒロイン感イマイチなヒロイン。何故か無敵、何故かハイスキル。云々。書き続けると長々としたネタバレあらすじになりそうなので後は自粛します。 兎にも角にも切れ味鋭いぶっ飛んだと言うか吹っ切れたサバイバルアクションは最高ですね。ヒロインらしからぬヒロインの無敵さ加減も良好。表情がいい!躊躇も後悔も感じさせられない見事な顔芸。勿論この状況を楽しんでもいない。恐るべき自己客体視。気に入りました。ラスボスのヒラリーさんが霞むぐらいの存在感ですね。プロフィールがアフガン従軍経験ありのレンタカー店員としか明かされないあたりも潔し! 勿論、これがありがちなハント&サバイバルホラーだったらここまで面白くはなかったでしょう。中途半端感は否めないながらも米国内の二極化の縮図みたいな時事ネタを無造作にふりかけたからこその変則的な感情移入性。どっちにも肩入れしたくなりそうな展開。中途半端にふりかけているからこその味わいがあります。丸投げではない程度に観る者に投げつけて来る感じ。これもいいです。 さり気なく回収しているシャンパンネタやキャビアネタもお茶目なレベルで好印象。願わくば、個人的にはキャビアを口にしたCAが苦しんだりして実はキャビアには毒が入っていて、毒を入れたのは主催者側の反乱分子だったりとかもうひとひねりラストに加えたらとか思ったりもしましたがやっぱ蛇足かな? [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-25 10:30:44) |