121. 心臓を貫かれて<TVM>
《ネタバレ》 この極度に病人顔の男優さんは、「ヘブン」でケイト・ブランシェットの相手役をつとめたあの人だったんですね~。 ここまでして目の下のクマを強調する必要があったのかという疑問が。そりゃ病人顔が似合っているけどもさあ。ちょっと疲れるんだよなあ。 とても不思議な作品で、たぶんアメリカ史という目線で見れば重要な作品であることはまちがいないと思います。インディアンの呪い、ユタ州、モルモン教、家庭内暴力、不倫、犯罪、メディアと金、死刑と、アメリカならではの問題がてんこ盛りに詰まっているのだ。 けれど、賢明なのはそれをみんなの問題にすりかえて「社会が悪い」という方向に持っていかなかったことで、それが作品の質の低下を防いだ。あくまで「ギルモア家の問題」として語っていながらそれでいて、どうしても「ザ・アメリカ」というふうにしか思えないところ、すごいかもしれません。 ここの家族はよく考えればすっごくヘンですよ。「家族だから犯罪者でも死んでほしくない」と泣きながら、誰一人嘆願書に署名しないうえ死刑に立会いもしない。ヘンでしょう。 結局「兄の意向を尊重する」という言い訳で済ますわけなんですが、ここらへんがきっと、「とてもアメリカ的」な部分であり日本人にはなかなか理解しにくいところで、しかも「アメリカの本質」をすごく突いていると私は思います。 「どんな形の自由でも侵害するのはよくない」というのが、アメリカにあって日本にない理念で、驚くことに宗教を超えたところにソレは位置するらしい。「武装する自由」はもちろんのこと「死刑になる自由」というものまで尊重してしまうところが、「とってもアメリカ」なのです。私が思うアメリカ人の「クソ真面目、バカな真面目」さです(でも特定の自由は平気で侵害するところが矛盾しているよね)。 結局ゲイリーは一家の不幸を1人で背負って墓の下に持っていったようなことですね。家族はそれを知りながら黙って見送っているというのが、ブキミであり怖いのです。 それにしてもベッシーは義理の息子(前妻の子)と避妊なしでセックスしてバレずに不倫の子を生んで夫の子だと言い張って平気で一緒に育ててすごい女性です。フランクシニアは「孫」を「子」として育てたことになるのですねえ。ゲイリーよりも母親のほうに興味があります。エイミー・マディガンとサム・シェパードの迫真のバトルシーンは一見の価値あり。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-12 19:07:21) |
122. ユマ・サーマンの運命の人を探して<TVM>
《ネタバレ》 これ最近「ユマ・サーマンの運命の人を探して」というタイトルでCS放送されたHBO製のTVMですが、邦題をつけなおしたんでしょうかね。どっちにしてもひどい邦題ですからどうでもいいですけど。 TVMのわりには女優が豪華です。なんたって国宝級女優のジーナ・ローランズだし、ジュリエット・ルイスもいつものようなちょっとオツムが軽い役で出ている。そしてユマ・サーマンなのですが、私は彼女にとてもひっかかる。 「下流の女たちの生態」というテーマでつくられたらしいのですが、ユマ・サーマンが下流の女。 …しっくりこないのです。安い格好をして安い店や安いインテリアにいくら彼女を置いてみても、顔と身長が逆らっている。本人はどう思っているのか知らないが、サーマンについては「ガタカ」の謎の美女役が最もしっくりくると思います。かつ、あんまり映っている時間が長いとダメなタイプの女優さんだと思うのです。エグみが出すぎてしまうというか…。 ジュリエット・ルイスの自然な下流さとどうしても比べてしまうので、サーマンはほんとうに浮いています。とても不自然で奇異な感じです。 脚本もあんまりよくなくて、ありがちな「誰かの突然死」で大団円で〆るあたりとか、シンディ・ローパーでみんなで踊ってごまかすエンディングとか、適当につくっている感じが大です。 ジーナ・ローランズをウェイトレスにしてコーヒーのサービスを運ばせてしまうとはう~ん、友情出演だったのでしょうなあ。あの美しかった彼女が樽のようなプロポーションをさらしているのを見るのはつらいです。 全体的には豪華な女優陣で適当なものをつくったという感じで、TVMだからそれでいいのかもしれないけど「下流の女」の実態に迫っているとはとてもいえないです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-05-07 14:43:06) |
123. NINE -ナイン- (2005)
《ネタバレ》 デニス・ホッパーって安い作品にちょくちょく出る人なんです。たぶんお金に困っているのだと思います。私にとっては永遠に「地獄の黙示録」のジャーナリスト役なのですが。 それはともかく、これはしまりのない企画倒れでした。なんか安っぽい音楽をえんえんと流してスロモ映像をかぶせるとか、いいかげん飽きます。リアリティはないですけどこういう密室スリラーはリアリティを失ったら価値が激しく下がってしまいます。 「職業には配慮した」と声の主が意味深なことを言っていたわりにはそれがあんまり生かされていませんでした。ほめるところはダンサーの子がナイスバディだったくらいです。デニス・ホッパーはやっぱりお金に不自由しているのだと思います。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-05-07 14:09:22)(笑:2票) |
124. 過去のない男
《ネタバレ》 うう。 「お母さんはどうした」って、あのセリフが引っかかってしようがないのですが、そうすると花守湖さんのおっしゃるとおりなのでしょうか。なぜあそこで妻の母の話が出る。 そうすると根本的に違う話になってきます。私はうっすらと「過去がない人間がいったいどうだというのか」と考えながら見ていたのですが、素直に見ると「過去がなければ悪意ももたない」というふうに見ることができます。 この話でもっとも重要なのは「悪意と善意」です。ぜったい悪意がありそうな人が、実はそうでもなくて助けてくれるという、私たちが通常認識している「この世界」とは違う世界がここにある。 「過去がなければ悪意をもたない」のなら、「悪意は過去に原因がある」であり「過去の出来事が人に悪意をもたせる」でしょう。 けれどけれど、花守湖さんの説のとおり、そして「お母さんはどうした」を素直に受け止めるなら、カレは「過去があるけど意図的に悪意を捨てようとしていた」になります。そして作り手はカレに何も説明させないので、うっかりと見過ごしてしまいそうになります。 すると、溶接工なのに「オレは農民だから」とじゃがいもの処分方法についてしつこく説明するとかいう部分はなんだったのでしょうね。身元を隠したいなら港で突然溶接作業を手伝ったのはなぜなのか。 カレの行動は謎だらけで、カウリスマキの意図は解明できません私には。 とりあえずカレは「悪意を捨てる」ことに成功しました。意図的にか、図らずもかは不明ですが。 そして1人も魅力的な容姿の人物が出てこないこの作品を見て、うすぼんやり思いました。私たちは若くなくても、美しくなくても、お金がなくても、役に立たなくても、〝生きていてもいいのだ〟と。それどころか〝恋をしてもいい〟だし〝他人の善意に甘えてもいい〟でさえあるのです。 こういう感想を抱かせる映画はあんまりない。死にたい気分の人はぜひ見てほしい。 それから「なぜ電車の中で寿司を食う!ジャパニーズ・サケを飲む!クレイジーケンバンドのムード歌謡を流す!」!! この監督は馬づらの女性が好みみたいです。なかなかひねった趣味です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-02 12:59:26)(良:2票) |
125. 11:14
《ネタバレ》 ものすごくダメなわけではないです。 が、「あざとい」部分が目立ちすぎているので作品としてはあんまり評価されないしできなくなってしまう。 あざといというのはもちろん観客の生理的部分に訴えるようにショッキングなシーンを複数入れてきたことで。私はこういうのは基本的に認めない。そんなんナシで勝負してくんなきゃダメだわ。 だからチ○チ○の部分とエッチの最中に頭の上に石像が落ちてくる部分ナシでも記憶に残るかどうかで考えてみなきゃならない。だとするとたぶん、1ヶ月もしないうちに見たことを忘れているだろう。 こういうのってたぶんリドリー・スコットの悪影響なのかもしれません。駆け出しの新人映像作家たちが安易に飛びつきがちな方法ではあるでしょう。どうすれば観客の記憶に残るか。 しかしリドリー・スコットはもともと変態でして、目立ちたくてそういうことをやってきたわけではないのですたぶん。そういうシーンが無くても、というか無いほうがカレの作品は素晴らしい。そして本人は顰蹙を買っていることにあんまり気がついていないわけです、自分がどのくらい変なのかってよくわからないですから。 ですから新人が安易に真似をする傾向は苦々しいものです。そんなんで記憶に残してはあげませんので残念でした~。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-05-01 15:34:43)(笑:1票) (良:1票) |
126. THE SALTON SEA ソルトン・シー
《ネタバレ》 なかなかいいですねえ。このセンス私は好きです。 カルーソっていうと、「テイキング・ライブス」なんてどうにもならん駄作しか知らなかったが、いいじゃないですかこの感じ。これが本領ならなんで「テイキング…」なんて暗~い路線に走ったのだか。 この感じでいいんですからこの人はこれで押していったら固定客がつくはずです。道を間違ってはいけない。 アラを探せばいろいろあるだろうが、とりあえず妻の復讐という手垢のついた動機を持ってきたことはバツである。アメリカ人はなにかというとそれなのだ。よっぽど妻に先に死なれることが怖いらしい。 「復讐の話にしよう」「で、動機は」「そりゃ妻か子の殺害しかない」というノリで企画をするのはもうやめましょう。インディアンはもう襲ってきませんから。 それはそれとして、工夫に富んだ独特の見せ方は良いです。この作り手はボケと突っ込みが良くわかっていますね。ヴァル・キルマーがひたすら突っ込み役としてリアクションをし続けるので、ドノフリオをはじめとしたジャンキーたちがどんなに行き過ぎても観客を置いていってしまうことがないのです。これがなかったらかなりツラい映像になっています(ゴンドリーの「ヒューマンネイチャー」のようなことに)。 そしてまた、キャストの渋いことといったら、通好みの2番手スターがいっぱいです。 アクが強すぎて映っている時間を短くされがちなドノフリオ、言わずもがなのガスマン、ブレイク前のサースガード(といってもブレイクしたのかどうか微妙)、陰のある女といえばのデボラ・カーラ・アンガー、最近はTVドラマで活躍の遅咲きヒーローのアンソニー・ラパリアなど、「う~ん」と唸らずにはいられない俳優陣だ。 特にドノフリオをセーブさせず思い切りやらせたうえ使いこなしたところは見事。これもヴァル・キルマーのリアクション芸があってこそ。 ただしキルマーは減量に失敗したと思われ、どうにもこうにも健康的なガタイの良さが気分を下げてしまう。ドクロの指輪とかモヒカンとか、パンクが似合わないんだよなあキルマーは。 役柄に合わせてちゃんと体重管理しましょう。クリスチャン・ベールほどやれとは言わないけどさ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-04-30 21:04:38) |
127. シッコ
《ネタバレ》 私はアメリカに行ったことも住んだこともないが、アメリカ製の映像コンテンツはくさるほど見ているのでもしかすると実際に住んでいる日本人より部分的には詳しくなっているかもしれない、それはいばれることではもちろんない。 それでまあ最近、アメリカの貧乏人に同情する気持ちがどんどんなくなってきまして、もうほとんどゼロと言ってもいいでしょう。 その理由はアメリカが前提としている〝前借り借金文化〟に対するものです。 借金=前借りすることによって実際の身の丈より良い生活をするということを前提としている文化に感心しないし、それどころか〝自業自得〟と思ってしまう。 たかが90万円(9000ドル)の医療費自己負担が払えなくてホームレスになる中年夫婦とは、いったい今までどんな経済生活をしてきたのでしょうか。…そらまあ借金まみれの貯金なし、ですわなあ。 同情する気にはなれないのです。ウチの亡父などは60過ぎてから現金で自宅を購入し、生涯借金をせず死んでいったものですから。 マイケル・ムーアは貧乏人の味方ということになっていますから、彼の作品では登場人物は「被害者」という扱いになっています。けどなあ、そういう見せ方をされればされるほど、「貯金してなかったのかよ」とか「医療費は払えなくても肥満するだけの食料は買えるわけね」とか、意地の悪~い突っ込みが止められなくなるのであった。 なによりも、アメリカという社会が〝是〟としているものが「より大きなリスクを引き受けて成功したヤツを尊敬する」ということで建国以来この点は動いていないわけですから、その裏には「敗者」がいっぱいいることが当然なわけで、あそこの国民はそれでいいと思っているわけです、本心では。 よくないのは「自分のとこが敗者」であることに対してであって、基本的には上記の理念がみんなのコンセンサスでしょ。 …だからアメリカの貧乏人のグチって、まともに聞く気がしないんですよ。たまたま〝あなた〟の運が悪かっただけなのね、というレベルの話に聞こえる。 つまりは、「国を良くしていこう」というコンセンサスはまだ、あの若い国にはできてない、と私は思っているし、みな「勝ったもんがやり放題」でいいとホントは思っているみたいだし。自分が勝ってないことに対する文句は言うけども、という話でしょう。違うの?ムーアさん? [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-04-28 14:33:28)(良:2票) |
128. デジャヴ(2006)
《ネタバレ》 デンゼル・ワシントンを使いジェリー・ブラッカイマーが製作でトニー・スコットが監督するという、なんというかハリウッド的には渾身のオールスタースタッフで贈る一品というべきなのであろう。 そんなありがたい(?)一品なのだがまず、金がかかっとる!スタッフキャストに費やした金だけでもすごいのにあの港のシーンには湯水のようなドルが注ぎ込まれていると思われる。なんか非常にバブリーである。 しかし、内容は…イカんかった。 私はエネミー・オブ・アメリカを思い出しましたけど、あれとて面白くはなかったが、今回も負けず劣らず面白くはありません。私が脚本書くならダグがラボに呼ばれるシーンから「ビューティフルマインド」オチにもってきます。そっちのほうが面白かったと思うけどねえ。 トニー・スコットにはいわば「監視妄想」みたいなのがあると推測されるが、それが映画になるとちっともうまく生かされない。今回は有り得ない方向(SF)にまで行ってしまって、観客はとーてもついていく気になりません。やー、デンゼルはよくこんな脚本で出演する気になったものだー。 ラボでの気の抜けた論争で有り得ないSFをタラタラ説明させるあたりも非常にうまくない。 全体的に監督のやる気のなさが伝わるのは気のせいだろうか。 オールスターで贈ってこの程度では、「今の」オールスターはもう行き詰っているということの証明のようにもなってしまったと思う。特にブラッカイマーはいいかげん引退の潮時である。 そして、ブラッカイマーに取り込まれず逆に「使いこなした」という点で、スコット兄の偉大さがわかる。偉大さというか異形さで、やはり優れた作品を生む監督は異形の一匹狼でなければならず、弟は秀才かもしれないが凡才であって決して異形ではないのだということを再認識す。 [DVD(字幕)] 4点(2009-04-25 17:15:47) |
129. ブレードランナー/ファイナル・カット
《ネタバレ》 ファイナルカット版がCSに登場。 やたらな日本語の看板が前にも増して強烈。 「コルフ月品」はいつ見ても笑ってしまうけどCGでなんとかしないのだろうか。 以前ここのレビュワーさんが「銀シャリ映像」と表現していたのに感心したことがあるが、今回、その銀シャリ感は低下しているように感じた。 キレイな映像で見ているうちに、ある妄想がめばえた。神は自分に似せて人間を作ったというが、それが事実かどうかは置いて、もしかして神は人間よりショボくてダサかったりするのではないだろうか? そう、タイレルとロイのご対面シーンでまさにひらめいたのだった。タイレルはロイの20倍の寿命があるというだけで、見た目も頭脳(チェスに象徴されている)も己の創造物よりはるかにショボいのである。 神は人間を自分よりも上等に作ったのではないだろうか?けれども儚い寿命で。 キレイな映像はそんなことを思わせました。 また、俳優たちがいかに自由にやらせてもらっていなかったか、つまり細部にいたるまで監督の思い通りに動かされていたかもよくわかる。「何をしているかもわからず駒のように動かされていた」と怒っているハリソン・フォードや「暴力的で屈辱的なラブシーンだった」と憤懣やるかたないショーン・ヤングの言葉が実感として感じられる。 ガフがデッカードたちを黙認して逃がした理由は、デッカードの寿命がもう長くないためではないだろうかと思った。そうすると、レオンやロイが死の恐怖を繰り返しデッカードに迫ったシーンが生きてくる。 タイレルは「人間を超えるスーパーレプリ」を目指してレイチェルを作り、デッカードはたぶんそれより前に開発された「退治用レプリ」のはずで、それにしても弱っちくみえるけれど全体で考えるとデッカード型のレプリは「まず射撃能力(逃げるゾーラや回転するプリスを確実に撃つ)」「細部の認識能力と因果関係類推能力」などを優先して設計されているみたいだ。 鳩のシーンは何気なく見逃しがちだが、人造物たるロイに魂が宿っていたこと+魂が不滅であることを作り手が肯定していることになるから本当はもっと驚くべきなのだろう。 最後に、ロイとの対面シーンでタイレルがしゃべっている内容は、最近話題の「動的平衡」概念にかなり近いです。福岡伸一が本を書き出したのは最近ですから、ブレードランナーの場合はシェーンハイマーの影響によるものだと推測されます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-04-04 13:48:26)(良:2票) |
130. 愛しのジェニファー
《ネタバレ》 登場人物たちは決して笑わないけれど、見ているほうはゲラゲラ笑ってしまうタイプのエログロコメディ。 そうですコメディと呼ばせてもらいたい。冒頭のシーンで、すでに主人公のラストシーンが想像できてしまうというオチ割れ甚だしい話であるのだが、それでも見せてしまう、途中で笑えるから、アルジェントってばすごいやつ。 しかしまあ、ジェニファー役の女優さんはよく引き受けたものだと思いまスだって、どんなに演技をがんばっても誰にも顔を覚えてもらえないじゃないですか。出るだけ損だと思いますけど、あのピンと張ったバストだけはみんなの記憶に残るでしょう。 1時間もらってホラーを作るとして、これくらい面白いものを作ってくれたら私は満足です。アルジェントはもっとコメディに精を出してもらいたいです。素晴らしいです。満点にしたいけど短時間ということで。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-04-01 16:43:20) |
131. 13/ザメッティ
《ネタバレ》 モノクロ映像にしてやられた感じがします。 今の時代に白黒で撮るには理由がちゃんとあるはずで、この作品の場合はものの見事にそれがはまっています。しかし。 しかし私は白黒問題にはこだわりたい。というのはここではスタッフや役者の経験不足による「嘘っぽさ」を隠すためと、「話の荒唐無稽さ」による「嘘っぽさ」を隠すためという二重の理由で白黒が選択されているからだ。 結局のところは「ボロ隠し」ではないか。 「白黒だから見たくないよん」という観客を切り捨ててでも、白黒を選択しただけの効果が充分に上がっていると思います。だから、やっぱりズルいと思うんだよね。 これがカラーだったら、と思いながら見てみますと、かなり作り物っぽくなっていたことは間違いないですね。だが。 60年代じゃないんだから、カラーで勝負しろよと私は言いたい。キューブリックは「2001」を白黒で撮ったか?あんな荒唐無稽な話を? う~んやっぱり単に私が白黒を嫌いなだけかもしれない。しかし、コレは「荒唐無稽な話を白黒で撮った」という点を売りにしているのだ。内容に深遠なものは何もなく、「ゼニゲバな人びと」という題名がぴったりくるのだ。やはり今回はズルだと思いまス。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-04-01 16:26:38) |
132. デスゲート 11:11
《ネタバレ》 とても妙な感じのする一品で。 見ていて大きく減点したいところは特に出てこないし、死んだ人間がガバッと起き上がって我に返るところなんて一人目のときは結構イケていると思ったのだが、そのワザ(?)を繰り返し使うあたりはちょっとどうかなだし、例の本を読み出したあたりであまりに話が拡大しすぎて「それじゃ1時間半で終わらんだろ」とげんなりし、おまけに「ビューティフルマインド」のパクリで進めていた怪しい幼なじみの正体がいきなり奇天烈なものになっていて急激にやる気が失せます。 ヒロインの女優が微妙にブスなあたりなどは、かえってリアリティをかもしだすのだが(そういえば美人が1人も出てこない)、心理サスペンスのように見せながら最低限のリアリティを保ちつつ進めていたわりに後半でいきなりドドッと壊した感じがします。まあいずれにせよ昔のB級ホラーに比べたらずいぶん良くなったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-04-01 16:13:46) |
133. REC【レック】(2000)
《ネタバレ》 そおですね、突っ込めないところを探すほうが大変だと思うのでそういう楽しみ方もあるのかも。私はやりませんが。 それよりも、中身の滅茶苦茶加減に比べて、意外とハード方面がまともなように思うのですが。話は滅茶苦茶でも、映像としては見ていてストレスを感じないというか。音声とか映像とか照明とか編集とか、わりとまともにやっているような気がしてならないのデス。 話が壊れているために、ハード面の努力は一切評価されないのかと思うと、なんか職人が可哀相な気がしてきますがそれは仕方がないのでしょう。が、こういう滅茶苦茶な話のために技術面の仕事をちゃんとやってしまうというのはなんなのかなあという疑問も。や、話が滅茶苦茶だから技術で手を抜いてもいいというワケはないではないか、えっそういうものかなあ、なんかわけがわからなくなったのでこれでおわります。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2009-03-26 19:39:43)(笑:2票) |
134. プラダを着た悪魔
《ネタバレ》 アメリカといえばドリーム、ドリームといえばアメリカ。 地方から出てきた野暮ったい女の子が、「アメリカンドリーム」の「尻尾」を掴むための条件はどんなものなのか、そこからアメリカ人の「成功」に対する意識が覗けると思います。 アンドレアはランナウェイ社を去ることによって「他人を押しのけて勝ち取るアメリカンドリームの輪」から抜け出たのではなくて、逆にニューヨーカー誌に採用されることによって「やっと成功の入り口に立った」のですが、ここらへんは「職業的成功こそが人生の成功」というこの作品の基本姿勢をよくあらわしています。「郊外の平屋建てに住んで子供を抱いているアンドレア」で終わるのが誰もが予想する結末だったからです。 彼女に必要とされたのは「運」と、「ボスの理不尽さに耐える」という「自己犠牲を伴う修行」だったということになっている。 ミランダの要求には、プロとして当然の内容もありますけど、そうじゃないものもかなり含まれています。そして、その線引きを決して考えずに、頭をカラッポにして、ひたすらボスの要求に応じるつまり「ロイヤリティを示す」ことが、「アメリカ的な成功の輪に迎え入れられる」ための条件ということになっていて、こういう話が抵抗なく受け入れられる土壌があるということだと思います。アンドレアはそれと引き換えにミランダの推薦を手に入れ、ニューヨーカー誌の敷居をまたぐことができたのです。 私はこの作品にあまり女性問題を絡めて考えないほうがいいように思います。たぶん、作品の根底にあるのは「アメリカンドリーム」だと思うからです。 アメリカンドリームを目指して集まってくる有象無象の中から、「成功の尻尾」を掴むプロセスは、「絶対にムリだ」と思うことをやることから始まるのだと、そのことを言っているのだと思いました。 個人的にどう思うかというと…階層化が進みすぎた現在のアメリカにとってはすでに理想にすぎないのかもしれないが、いかにもアメリカ的だということ。 日本でいうなら秀吉が信長に仕えた時と良く似ていますね。パイの分配が完全に終わって、目ぼしい分野ではコネや世襲化が定着してしまっているような今の日本ではピンとこないです。アメリカはやはり〝精神的にも〟若い国なのだと実感します。 アン・ハザウェイを見ているうちにとても可愛く見えてきました。女性の嫉妬を誘わないタイプの、可愛い女優さんですね。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-18 18:20:28) |
135. カタコンベ
《ネタバレ》 迷路の洞窟ですか。そんなものは慣れています。私はFFⅧの名もなき王の墓を思い出してしまいました。ブラザーズを取ったり、魔法を集めたりします。 これはとてもゲームぽい作品だと思いました。簡単にゲーム化できそうな作品ではないですか。 ヴィクトリア役の女の子はわりと可愛いし、姉役もなかなかいいのですが、あのオチはガマンするとしてもラストが…すごくゲームぽいですね。 あれだけの悪ふざけをするための動機づけが足りないので、単に「フランス人は尋常でなく意地悪」というふうになってしまいますね。 暗い中でどれだけ映していくかという点では工夫していると思いました。ちょっと叫びすぎな気がします。最初からゲームにしたら良かったと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2009-03-18 17:53:30) |
136. バンテージ・ポイント
《ネタバレ》 本当にTV映画ではないのかなあ、と怪しむほど最近のFOX製ドラマのそのまんま、な感じがしました。よりによって、アラブ系のテロリストに狙われるアメリカ、というどうしようもない「24」なテーマを「LOST」の主人公とかフォレスト・ウィテカーとかTVでよく見かけるアラブ系俳優を出して撮っていることだし…。 けれどけれども、映画であるならばお金のかけかたがまるで違うであろう。のはずである。 きっとロケでの交通規制とか爆破シーンとか群集のエキストラとか車のスタントとかでいっぱいお金を使ったのであろう。映画なのだからー。 だのに、どうにもこうにも私の脳内はFOXドラマを見ているときと同じ波長になってしまう。 シーンを切り替えるときのリワインド映像は、「トゥルー・コーリング」と同じだしなあ。LOSTの人は相変わらず濃い顔だしなあ。 違いといえばデニス・クエイドが出ていることくらいだ(ウィリアム・ハートはすでによくTVに出ている)。私はカレの顔がだんだんハリソン・フォードに見えてきたのだった。そう、「不利な状況にめげず、最後には必ず真実に辿り着く不器用で愛想のないヒーロー」というハリソン・フォードが長らくモノにしてきたこのポジションは、次はデニス・クエイドが座るところだったのだ。「そんならクリント・イーストウッドと同じじゃないの」と思われるかもしれないが、そこは微妙に違うので、同じようにあこがれの対象でも大衆はハリソン・フォードにならがんばればどうにか成れるかもしれないが、イーストウッドに成るのは絶対にムリなのであって、両者のポジションはやっぱり別である。 顔も似ているうえ、セックス・アピールに欠けるという点で共通しているクエイドがハリソン・フォードの後釜を狙ったのは自然なことかもしれぬ。だがなあ…狙うほどのポジションとは私には思えないのだが。 さて私はLOSTの人が1人で犯人を探しに行ったところでわかってしまいましたけど、こんなユルいオチで驚かそうとはよもや思っていないはず。そんなTV以下の脚本なんて書かないはず。 結局残るオチは替え玉編だけですが、これはヒントが無いも同然だから驚いて当然ですよね。アラブのテロリストが任務遂行中なら躊躇なく少女を跳ね飛ばすに決まっているし、「市井のアメリカ人」が間一髪で救うなんてのも単なる「願望」で強引な終わり方です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-16 18:27:31)(良:1票) |
137. リトル・チルドレン
《ネタバレ》 すごく疑問に思いますが、ボイスオーバーで丁寧に登場人物の気持ちを説明する必要があったのでしょうか。どうなんだろうこれ。なにか観客をバカにしているような気もする。 ボイスオーバーを全部やめてみたら、もっとミステリアスな感じになって質が上がったのではないかしら。 なかなか良く出来ていますし、俳優陣も女優は有名どころが2名出ています。が、男優はほぼ全員無名。 私は思うのですが、ケイト・ウィンスレットが出ると彼女の迫力にノックアウトされて逆効果になりやすいのではないでしょうか。あんまりにも存在感がありすぎるのです。 ジェニファー・コネリーだってじゅうぶん印象的な女優なのに、ウィンスレットと一緒に出てしまうとすっかり霞んでしまうというこのていたらく。バランス的には、ウィンスレットを出すのなら「アイリス」のように回想場面とかに短時間程度にしておかないと、こういうふうに全部食われてしまって「ウィンスレット以外何も残らない」という悲惨な状況に。 内容は…不倫を実行するまでの物語配分が短いので「非日常」というふうに捉えにくいかなと思います。それになんたってウィンスレットですから…何をやっても不思議ではない気がしてしまう。 不平不満を解消するために違う生き方を求めても、結局は新しい人生でまた不平不満にまみれた生活をすることになるのだよ、という話だと思います。サラだって、あの大きな家に越してくる時は、ブラッドと駆け落ちを決めた時のように幸せいっぱいだったはずですから、駆け落ちしたらしたでまた不平不満に満ちるのです。現状を変える努力をしないで新しい人生に乗り換えるのは単なる無駄といいたいのでしょうたぶん。 サラが求めるような絶対的な幸せなんてものはないのかもしれません。そこで思い出すのは変態ロニーのママのことです。息子は変態で治りません。彼女はそのことをわかっていますが、変態有りのまま息子が今より幸せになれる方法はないものかと、あきらめないで探します。絶望はしないのです。 息子の変態をどうにかしようとじたばたしたり、泣きわめいたりすることよりも、「それ込み」でより良い状況にならないものか、と行動にうつすのです。とてもとてもすごいことかもしれません。 さて変態夫を持つサラは今後、このママの生き方を学ぶのが良いでしょう。不平不満が他人を動かすことは決してないということなのですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-03-15 18:00:37) |
138. モーテル
《ネタバレ》 すごく低予算なのではないでしょうか。2大スターも、あんまりギャラをもらっているとは思えません。そしてそのわりには、意気込みが感じられる、まじめな一作です。 夫婦の不仲も、迫り来る危機のためにわざと用意されたようではなく、うまく撮られています。この状態でスリラーにならずに延々と進んでも面白そうなくらいです。 妻の最後の戦いの驚異的さはともかく、途中はあくまで地味に、というかルーク・ウィルソンがスーパーマン並みの働きを決してすることなく進むのが良いです。 ただ残念なのは…やっぱり復縁してしまうのね、です。 危機が迫れば協力しあうのは当然ですからいいんです。でも、離婚届を出そうとまでしていたのに、愛してるわブチュって、それじゃー、ありがちなパターンだし男に都合が良すぎる…。 この危機を乗り越えても、夫婦の関係がうまく行かない、という根本的な問題が解決されたわけでは全然なくて、夫の性格が劇的に変わるということは無いのです。 できれば妻に「それはそれ。これはこれ。」と言って欲しかった。まじめな作品ですがツメが甘いような気がします。 [DVD(字幕)] 7点(2009-03-14 22:25:14)(良:1票) |
139. AVP2 エイリアンズVS. プレデター
《ネタバレ》 まずもう暗すぎて見えない。 韓国ドラマみたいに明るくしろと言っているのではなくて、映画として認識できない状態ではしょうがないでしょうと。私は本当は暗いほうが好きなんだ。 まてよ、暗いことにはメリットがあって…。ボロかくしにはなる。金が無くてちゃんとできてないとことか、ウソっぽいとことか。 とにかく「暗くする」と「見えなくする」のは違います。下手すぎる。 それから、人間のドラマパートが全然要らないうえに陳腐。最初のほうで見る気が激しく下がります やー、本当にひどい作品ですが、ひとつ気になったのは「お約束」をあえて破ろうとしているところです。「子供」も「妊婦」も、アメリカではタブーだったはずですよね。殺すのは。 なにか「テロリスト」の匂いがする。そう「やつらは子供も妊婦も関係なく襲ってくるぞ」と言いたいのではないでしょうか?「とんでもねーひでーやつらだ」と強調したいみたいですね。 そらーそうでしょうね。子供だって妊婦だって殺されることはあるでしょうね。それは逆なので、今までタブーにしてきたということのほうが特殊なだけなんじゃないでしょうか。あなたの国が。 エイリアンとプレデターが戦ってくれる話のはずなのに、どうも私の脳には「アラブのテロリストこえーよ!前よりこえー!」というむやみな叫びが聞こえてならない。私はもっとプレデターを見たかったのにさ。 [DVD(字幕)] 3点(2009-03-14 22:08:26) |
140. インベージョン
《ネタバレ》 脚本もあんまり良くないですが、それに輪をかけて演出が下手なのではないでしょうか。 いっぺんに現れる異変ではなくて、少しずつランダムに起こる変化によって「この世の中が自明のものではなくなるかもしれないという恐怖」を感じさせなくてはならない映画ですが、そこの描き方がうまくない。もう、感染者は怪物みたいに撮っちゃってるしすぐわかる。それダメ。雰囲気だけなら「アンビリーバブル」のほうがまだマシだった。 母性愛偏重路線にちゃんと乗っかっているうえ、「免疫少年」を連れてヘリで脱出という「28週後」で見たシーンも入ってるし、まったく独創性のない脚本で、こんなんが金になるのなら私だってできそうだ。 しかしまあ、主役がキッドマンという時点でもう、コケているし…彼女の役者生命はもう終わったのではないでしょうか。あまりに出すぎたため、もはや何をやっても「ニコール・キッドマンが何かしている」としか脳が認識しません。大幅に老けて美貌を失いでもしない限り、もう使えない女優です。 豪華なキャストを集めて凡作を作るのはハリウッドの常になってしまいました。悲しいです。ジェレミー・ノーザムは前髪を下ろしてはいけないし、金欲しさにこんなものにまで出て名前を落としてほしくないですね。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-14 21:50:37) |