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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2452
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1461.  蜜の味 《ネタバレ》 
この映画のプロットは、反抗的な少女が背伸びをした恋をして思わぬ妊娠をしてしまうというところが、ベルイマンの『不良少女モニカ』を思い出させてくれます。でもリアリズムと暗い雰囲気の映画だった『モニカ』とは違い、家庭環境に恵まれない少女の転落物語という見方を吹き飛ばすような詩情と明るさに満ちてるんですよね。 英国映画史上に名を残すファニー・フェイス、R・トゥシンハムの瑞々しい演技がまたいいんです。彼女の表情を追うだけでもホント見飽きないです。またあのお母さんの恋する熟女ぶりも、やってることはけっこう滅茶苦茶だけどなんか憎めないんです。観てる方がびっくりするほどあっさり娘を見捨てて男に走るくせに、最後はお腹が大きくなったジョーのもとに帰ってくるところは、やっぱ親子なんですよ。 『長距離ランナーの孤独』とともに、最近とうとう本作がDVD化されたというのは喜ばしい限りです(遅いんだよ!時代はもうブルー・レイだぜ!)。これを機会に、T・リチャードソンの再評価の機運が高まってくれるといいんだが…
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-28 23:15:00)
1462.  恋人たちの曲/悲愴 《ネタバレ》 
この映画、「チャイコフスキーをホモ扱いした」と彼のファンからは忌み嫌われているそうです。日本のクラシック・ファンにはどうも音楽家を聖人君子視したがる傾向があるみたいですが、別にゲイでもいいじゃないですかね(その真偽は私には判りませんが)。 さて、音楽家の伝記になると異常にテンションが高くなるK・ラッセルですが、このチャイコフスキーと妻の愛と死を強烈なインパクトで見せてくれるこの作品、間違いなくケンちゃんの最高傑作だと断言しちゃいます。冒頭でチャイコフスキーがピアノ協奏曲第一番を初上演するシーンがありますがこれが凄い迫力で、同時にチャイコフスキーの幻想を見せる巧みな演出もあって唸らされました。R・チェンバレン、まるで本当に彼がピアノを弾いているみたいで熱演です。 彼の妻がG・ジャクソンで、これがもうほとんど色情狂と言っても構わないんじゃないでしょうか。列車の中でチャイコフスキーを誘惑して悶えまくるシーンなんか、ちっとも魅力的じゃないヌードに思わず引いてしまいます。ケンちゃんの醜女好きは有名ですが、そう言えばこの映画には普通の感覚で言うところの美女はひとりも出ていませんでした。 ラストは完全に狂ったG・ジャクソンが精神病院に幽閉されてしまうのですが、そこにいたるまでの彼女の狂おしい熱演は必見です。でもそこまで思う存分芝居をさせて、それでいて完全に映画をコントロールしているケンちゃんの手腕も大したものです。 「ホモでマザコンの男が色情狂の女と結婚するお話し」とケンちゃんは映画会社にこの映画のプロットを説明したそうですが、いやいやどうして、巨匠音楽家たちの生涯を鋭く抉ってきたケンちゃんでなきゃ撮れないチャイコフスキー像でした。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-26 21:08:38)
1463.  ニコライとアレクサンドラ 《ネタバレ》 
40年以上前の映画ながら、ロシア革命とロマノフ王朝の悲劇を通史で描いた映画はその後もほとんど皆無なので、その意味では貴重な作品です。物語は日露戦争まっさなかにアレクセイ皇太子が誕生するところから始まりますが、敗戦の混乱の中で勃発した第一革命で動乱にロシアは突入していきます。ニコライ2世は大津事件で日本との因縁もあったわけで、思えばロマノフ家の運命に日本は浅からぬ影響を与えていたわけです。 実在の人物に似た俳優たちがキャスティングされていますが、とくにケレンスキー役やラスプーチン役の俳優は本人と瓜二つです。出番は少なかったけど、ウィッテ蔵相を演じたL・オリビエの存在感はさすがでした。また時代考証と美術はかなりのレベルで、たとえばロマノフ一家が最期を迎えるイパチェフ館のセットは、外観や虐殺の間の造りは実物を忠実に再現しています。 ラスト、銃殺隊が部屋に入ってくるまでドアを映した数十秒の間があるのですが、結果が判っているだけに耐えがたい緊張感がみなぎったカットでした。 良くフランス革命とロシア革命を同列に論じる学者がいますが、このレーニンたちボリシェヴィキの残虐非道ぶりを見ればそれは間違いだと思います。子供たちを含めた皇帝一家を惨殺できたのだから、レーニンやスターリンが良心の呵責を感じずに一般庶民を何千万人も殺せたのでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-24 12:16:37)(良:1票)
1464.  ザ・クラフト 《ネタバレ》 
学園ものホラーとしては、こじんまりとしているけど良くまとまった映画だと思います。魔法対決と言うから『ハリー・ポッター』シリーズみたいな派手な技が観れるかと期待しましたが、人体浮遊で盛り上がっている程度なのが可愛い。その分、他人に呪いをかけるとそれが凄いことになってしまうわけです。 蛇を持ってなんか言いたげにヒロインに近づく怪しい男や、オカルト書店の奥にある開かずの間など、思わせぶりなのにちっとも伏線になっていないなんて脚本書いた人は何をねらっていたのか首を捻ってしまいます。でも4人の女の子の個性がけっこう丁寧に描かれているから、まあ良しとしましょう。個性と言っても、F・バークのキャラと言うかメイクばかりが目立った気もしますけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-21 23:28:00)
1465.  怪談海女幽霊 《ネタバレ》 
熱い夏には納涼映画、やっぱ怪談でしょう。そして海を舞台にしたら涼しげでいいんじゃない、そうなりゃもう海女を主人公にするっきゃない! と言うわけで『怪談海女幽霊』といったタイトルに必然的に落ちつくわけで、実に単純で判りやすい(笑) クズ映画ばかり量産していた大蔵貢時代の新東宝にあっても、怪談ものだけは一定以上の水準を保っていたのは事実でしょう。もっともそれは中川信夫が撮った怪談時代劇にだけ当てはまるセオリーで、他の監督が撮っていたのはこういうZ級レベルのゲテモノが大半だったみたいです。 新東宝怪談映画には欠かせない若杉嘉津子が出ているのに、全然活躍しないし幽霊にもならないというのはいったい監督は何を考えていたんでしょうか。と言うか、そもそもこの映画は怪談と言うよりも殺人ミステリー&復讐劇なんです。真面目に語る様なストーリーの映画ではありませんが、一段と露出度がアップした海女の水中シーンと浜辺でのキャットファイトが楽しめるので一部のファンには堪えられないでしょう。 本年はNHKで放映されている『あまちゃん』が大ヒットしてますし、ここらで久しぶりに海女映画の新作を観てみたいものです。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2013-08-19 20:21:24)
1466.  ハロー・ドーリー! 《ネタバレ》 
かつてハリウッドの古き良き時代のミュージカル映画が世界を魅了しましたが、その時代に幕を下ろすには相応しい華やかな一品です。天才J・ケリーがメガホンをとった最後のミュージカルでもあります。振り付けはM・キッドなのでJ・ケリーの様なモダニズムを追求したダンスではありませんが、かえって昔の『ショウ・ボート』みたいな懐かしさに溢れている映画だと思います。それでもあのレストランでのウェイターのダンスには、J・ケリーらしいダイナミズムが感じられました。それにしてもレストラン“ハーモニア・ガーデン”や19世紀末のNYの街並み、美術にはもの凄いカネをかけているのが良く判ります。 W・マッソーはあの歌唱力ではミス・キャストなのでしょうが、B・ストライサンドはもう「さすが」としか言いようがありません。この映画のときは『ファニー・ガール』の翌年でまだ27歳ぐらいですから、すでにここまで完成された歌唱力を持っていたとはこの人怪物ですよ。サッチモ御大とからんでも全然貫禄で負けてないのもまた凄いところです。さすがにダンスは見せませんでしたが、これがS・マクレーンが主役なら踊りまくるところでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2013-08-18 21:12:19)(良:1票)
1467.  ケイン号の叛乱 《ネタバレ》 
H・ボガートは、ヒーローよりもクイーグ艦長の様な器が小さい小心者の悪党を演らせた方がはるかに存在感あります。不安感が強くなると眼が泳いできて、無意識に手の中ででかいパチンコ玉みたいな金属球をカチカチこすり合わせる演技、実に上手いですよね。あの音が彼の精神状態を象徴する演出でもあります。 映画化に際して原作をどこまで改変したかは判りませんが、海軍が協力してくれたってことは結末あたりをかなりいじったんじゃないでしょうか。でもF・マクマレイやH・ファーラーは彼らの個性にあった巧みな使い方だと思います。ラスト、H・ファーラーがおいしいところをみんな持って行ったと思ったら、実は意外な人が登場して締めてくれるところなんか一種のどんでん返しでした。 けっこう有名な映画の割には地味な印象でしたが、観てみるとなかなか楽しめる良作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-13 23:00:53)
1468.  戦場にかける橋 《ネタバレ》 
ニコルスンと斎藤、両大佐の意地を賭けた文明の衝突はなかなか見応えがあります。斎藤や日本軍を描く東洋趣味は、ちょっと変だがまあ許容範囲でしょう。ただ昔から自分が理解できないのは、「将校は何で労役させてはいけないの?兵士はOKなのに」というジュネーブ協定の捕虜規定なんです。もちろん十分な食料を与えずにこき使うなんてのは論外ですけどね。たぶんこれには階級社会だったヨーロッパのモラルが色濃く反映していると思います。だからあんなにボロボロになっても秩序正しい英国捕虜たちの姿は、鉄壁の階級社会である大英帝国の皮肉な隠喩でもあるわけです。 面白いことに、太平洋戦争では日本軍捕虜は収容所に入れられると、将校と兵士の絆が綺麗にバラバラになってしまったそうです。捕虜教育ということを全くしてなかった旧日本軍の体質も一因でしょうが、日本人の国民性を考えるには良い材料かもしれません。 だからラストでクリプトン軍医が呻く“Madness!”という言葉には、単純に戦争の狂気だけを指しているわけじゃないと私は感じます。
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-12 21:46:20)
1469.  ウーマン・ラブ・ウーマン 《ネタバレ》 
第一話「地味なレズビアン」 V・レッドグレーブとM・セルデスの老カップルが涙を流しながら観ている映画が『噂の二人』。このふたり、まるでO・ヘップバーンとS・マクレーンが演じていたキャラがそのまま30か40歳老けた様な感じです。セルデスの方はその晩にあっけなく死んでしまうのですが、そこからのヴァネッサの情感がこもった芝居が素晴らしい。恋人のパジャマに顔をうずめて号泣するシーンは、この人じゃなきゃできない演技でジーンときました。恋人役がJ・フォンダだったら『ジュリア』へのオマージュになって面白かったんですが。第一話を観るだけでもこの映画の価値があります。■第二話「カッコいいレズビアン」 11年後の1972年、地味なカップルが暮らしていた家には、革命を夢見る女子大生レズビアン4人組が住んでいた。この時代になるとレズであることを隠す意識はほとんどありません。ウーマンリブ全盛時代のせいか、男装したレズに対する同じレズからの反感が強かったことなんかが判って面白い。でもこの男装のC・セヴィニ―がめちゃめちゃカッコいいんです。この人、エロ系の仕事になると本領を発揮するんですよね。■第三話「能天気なレズビアン」 時代は一気に飛んで2000年、この家にはS・ストーンとE・デジェネレスのカップルが住んでいます。このE・デジェネレスという人とA・ヘッシュはハリウッドでも有名なレズ・カップルだったそうです。と言うわけで、A・ヘッシュと共演しちゃうとあまりに生臭いので彼女は監督にまわり、代わりにS・ストーンを引っ張ってきたという感じでしょうか。このカップルは満ち足りた生活を送っているみたいですが、二人の力ではどうしても手に入らないもの、妊娠と出産が願いです。その為にバンクから精子を買ってくるわけですが、その能天気な奮闘ぶりにはちょっと引いてしまいます。妊娠出来て幸せそうに踊るS・ストーンを観てるとハッピーな気分にはなりますけどね。
[ビデオ(字幕)] 7点(2013-08-09 00:55:53)
1470.  結婚記念日 《ネタバレ》 
いかにもW・アレン映画と言う雰囲気の題材なんですが、監督は『ハリーとトント』のP・マザースキーです。LAのショッピング・モールが舞台でアレンの職業は弁護士と、彼が嫌っているものをみんな盛り込んだ様なキャラ設定が皮肉たっぷりで可笑しい。サーフ・ボードを抱えて歩きまわるW・アレンなんて、けっこうレアな映像も観れます。 これで女房がB・ミドラーとくれば、後はもう想像通りの展開です。生粋のアレン映画とは違ってこの夫婦がまたけっこう生臭く、もちろん直接描写は無いですが劇中二回もセックスするんですよ。その内一回はガラすきの映画館の座席をベッドにしてやるんです、上映中の映画が『サラーム・ボンベイ!』と言うところがまた微妙でしたが。 マザースキーの脚本はまあ可もなく不可もなくといった感じですが、やはりアレンが書く脚本とは落差がありますね。B・ミドラーもいつもよりはテンション低い演技だったのもマイナス。夫婦の後を白塗りのパントマイム芸人がついて回るというのはいかにもアレン映画っぽくていいんだけど、狂言まわし的な役割をもっと生かした演出にして欲しかったところです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-08-06 21:09:28)
1471.  激動の昭和史 軍閥 《ネタバレ》 
「軍閥」なんて大上段に構えたタイトルだけど、実質的には東條英機ひとりにスポットを当てた脚本構成になっています。「陸軍および東条悪役・海軍善玉」という当時の常識からはほとんど飛躍していない史観ではあるが、及川や嶋田といった海軍高官たちの無気力・無責任ぶりはしっかり描いています。山村聡の米内光政をはじめ、一部の配役が『日本のいちばん長い日』と同じであるところは面白い。 どうせ東條英機をメインにするなら、その器量は単なる木っ端役人に過ぎなかった東條が独裁的な権力者に変貌していった謎に迫って欲しかったところです。そして大新聞の戦争責任についても、これはいまだにマスコミのタブーとされていますが、もっと突っ込んで欲しかったね。 通史としては薄い内容ですが、本作の後に小林正樹の『東京裁判』を続けて観たらいいかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-08-04 19:48:51)
1472.  妻は告白する 《ネタバレ》 
「なぜ妻は夫がぶら下がっているザイルを切ったのか?」という視点の法廷ミステリーとして観ると、この映画は凡庸です。だいいち、この事件は刑事裁判になるでしょうかね。どう考えても緊急避難が成立するのが当然だと思うんですけど。だからというわけで、検事は「妻たる者は夫を見捨てて生き残ってはいけない」という昭和30年代でもさすがに通用しそうもない道徳感を主張することになるわけです。 若尾文子が邦画史に鮮烈なイメージを刻む演技を見せるのは無罪になってからで、愛人の川口浩恋しさにドンドン狂おしい女に変貌してゆくところは息をのみます。高級アパートに引っ越して勝手に新居を構えようとするあたりは、そう、現在の用語で言うともうサイコパスと言う感じです。当時は「犯罪の影に女あり」というもはや死語になってしまった言い回しがまだ大手をふるっていた時代ですから、「殺意を持ってザイルを切った」と川口浩に告白してからの行動に彼女の主体性が感じられない増村保造の演出には時代を感じさせられます。今ならS・ストーンやK・ターナーが演じた様な男を喰い尽くすカマキリ女というキャラになるところでしょう。 でもあのびしょ濡れになって川口浩の会社に現れるシーン、もうこれは黙って観てください皆さん、としか言いようがないです。私は鳥肌がたちました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2013-08-01 22:03:49)(良:1票)
1473.  危険がいっぱい 《ネタバレ》 
まず、L・シフリンのテーマ曲がメチャメチャカッコいい。名手A・ドカエのシャープな映像がとてもビューティフル。そして若きJ・フォンダが見惚れてしまうほどチャーミング。A・ドロンも全盛期なので男の眼から見ても色気たっぷり、そして監督はR・クレマン。 ん、それなのに何でこんなにマイナーなんでしょうか、この映画は。当時のポスターを見ても驚くほど安っぽいデザインで、当時からみんなこの映画に期待してなかったことが伺えます。 途中で若干中だるみはしますが、脚本もテンポが良くて、特に冒頭でドロンがギャングに追われて教会の施設に逃げ込むまではスピィーディーでキレが良く感心しました。ラストのオチが“Love Cage”となるわけで、いかにもフランス的なエスプリがあって良かったんですけど。 期待しないで観ましたが、予想をいい意味で裏切ってくれた佳作です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-07-31 20:55:57)
1474.  メンフィス・ベル(1990) 《ネタバレ》 
ぶっちゃけたところ、「第二次世界大戦でアメリカは精密な照準でドイツの軍事目標だけを爆撃した」というお話は、西部開拓神話と同様の神聖なメルヘンに過ぎないのです。たしかに当時としてはハイテクなノルデン爆撃照準器は一定の効果があったが、爆撃目標が砂漠の真ん中にあるわけではないので、周囲の市街にも爆弾は落ちて民間人も多数が犠牲になっています。爆撃機の搭乗員に責任が問われることはありませんでしたが、たぶん当時の搭乗員たちは地上で何が起こっているかは考えないようにしてたでしょう。 だからM・モディーンの機長が「目標の周囲には学校や病院がある」と言って爆撃進入をやり直させる偽善的なシーンが私は反吐が出るほど嫌いです。こんなことは実際には起こり得なかっただろうと確信しますし、かような幼稚な描写など使わなくてももっと違う観点で爆撃作戦の苛酷さをいくらでも表現出来たでしょうに。 この映画は製作時期からして、湾岸戦争の戦意高揚プロパガンダ映画だったと思います。M・C=ジョーンズ監督の作品にはスプラッターじみた描写が多いのが特徴ですが、機首がちぎれて乗員がこぼれ落ちたり空中衝突して真っ二つになったり、本作では人ではなくてB17爆撃機自体をその残酷趣味の対象にしているみたいです。実話をモチーフにし当時の若手俳優を集めて青春映画っぽくしたかったみたいですが、あまりに幼稚な脚本には呆れるばかりでした。 クレジットを良く見ると、なんとフジサンケイ・グループがこの映画に出資していたことに気がつきます。これもあの当時叫ばれていた“対外貢献”のひとつだったんですかね。
[映画館(字幕)] 3点(2013-07-28 22:12:06)
1475.  歌う大捜査線
それにしてもあのR・ダウニーJrのおぞましい肌、観ててこっちの身体までムズムズしてしょうがなかったです。今までこれほどリアルな皮膚病患者を初めて映画で観た気がします。 もとはM・ガンボンが主演のBBCのミニシリーズだったそうですね。しかも主人公はF・マーロウ! でもこの映画化ではかなりの改変と圧縮があったみたいですが、もうどちらかと言うとD・リンチと『マルホランド・ドライブ』の世界に近い様な気がしました。と言うわけで、『マルホランド・ドライブ』好きな私としては、そんなに悪い点をつける気は起きませんでした。 M・ギブソンのバーコード頭と言う貴重な映像も観れたしね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-07-27 21:53:26)
1476.  マルタの鷹(1941) 《ネタバレ》 
S・スペードを取り巻く男も女も誰もがウソをついているのかホントのことを言っているのか、超高速のストーリー展開もあってさっぱり判らんと言うのがこの映画の持ち味なんです。フィルム・ノアールはこの映画から始まったと言われるだけあって、その後のハード・ボイルド映画に多大な影響を与えたことも確かなんです。でもストーリーや判りにくいプロットなんてどうでもいい、始めから終りまでH・ボガートを堪能するのがお奨めの鑑賞法です。とにかくこの映画のボギーは喋る喋る、セリフを覚えるのが大変だったろうなと感心します。登場人物の喋りでストーリーを展開させるというフィルム・ノアールに特有の作劇法は、たぶんこの作品が後の映画に与えた悪影響だったんじゃないかと思います。 ラスト、M・アスターの乗ったエレベーターの格子扉が刑務所暮らしのメタファーになっていたりして、セリフだけでなく映像面でもJ・ヒューストンの才気を感じさせられるところが随所にありました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-25 23:25:04)
1477.  パリより愛をこめて 《ネタバレ》 
L・ベッソン&P・モレルという安心ブランドのアクション映画なので、細かいこと考えずに観れば十分楽しめます。これはもうスキンヘッドのトラボルタ様の功績で、もしこの役をJ・ステイサムやL・二―ソンといったベッソン映画の常連に演らせていたら、絶対こんなに愉しめなかったでしょう。 ラストの展開を見てて思ったのは、最近の邦画だと絶対「最後に愛が勝つ」というオチに行っちゃうんですよね。そこを「テロリスト・マスト・ダイ」ときっちり締めてくるところが私は好きです。出来ればJ・R・マイヤーズには最後まであの壺を守り抜いて欲しかったところです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-24 22:07:01)(笑:1票)
1478.  ニューヨーカーの青い鳥 《ネタバレ》 
割と渋い俳優を揃えて映画化された舞台劇というジャンルは、むかし『キャスティング・ディレクター』という映画で自分は痛い目にあっているのに、またやられてしまいました。もうこれはR・アルトマンの責任とは言い難く、元ネタの舞台劇が私には合わないというかつまらないのだからどうしようもないでしょう。 日本人にはアメリカ人の精神分析・セラピー好きはどうも理解できないし、それをネタにしたコメディなんか笑えるわけはないでしょ。G・ジャクソンとT・コンティがセラピストなわけですが、患者と寝たりもの凄いゲイ差別主義者だったりというところが、まあこの映画のミソと言えなくもないです。 ラストシーンなんですが、J・ゴールドブラムとJ・ハガティがレストランから出てくるとカメラがどんどん引いていって遠景になり、そこにエッフェル塔が小さく見えるんです。「えっ、ここはパリだったの、NYのお話しだったはずなのに?」とびっくりしましたが、この映画でここが唯一アルトマンらしさが出てたところでした(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2013-07-23 23:31:59)
1479.  リチャード三世(1995) 《ネタバレ》 
“1930年代の英国に舞台を替えたシェイクスピア劇”として良くこの映画は紹介されますが、でも違うんだよなー。たしかに流れる音楽や衣装や車は30年代風ですけど、この映画が描く英国は、決して50年前はヴィクトリア女王が統治していた英国ではないわけです。ましてヨーロッパや世界の情勢はまったく物語には関わってないし、いわば“脳内イングランド”とでも言いましょうか、それこそ西暦何年なんてことはなんの意味も持たない実に不思議な世界だと言えます。そんな“脳内イングランド”で繰り広げられる王族たちの死闘は、セリフ回しからしてもシェイクスピアの世界そのものでしょう。 E・ホークの『ハムレット』もそうでしたが、せっかく舞台を現代風にアレンジしたのなら、セリフやプロットももっと弄って欲しかったところです。 I・マッケランのリチャード三世は、もう心底キャラになりきるという才能の素晴らしい見本の様なものです。特に目を瞠ったのは、倒れたリチャードが振り向くと牙を生やしたイノシシの様な怪物顔に変わってしまうカットで、I・マッケランはこれがやりたくてこの映画を創ったんじゃないかと思うほどです。リチャードの最期は、『ダイハード』でのH・グル―バーの死にざまと同じ様な映像なので苦笑してしまいました。そしてリチャードの顔を見てるとどうも誰かに似てると気になってしょうがなかったのですが、観終わって気がつきました、東野英治郎でした(笑)。
[ビデオ(字幕)] 6点(2013-07-19 22:42:38)
1480.  追想(1975) 《ネタバレ》 
このストーリーは、武装SSが700人近くの民間人を虐殺した悪名高いオラドゥール村の事件がモデルとなっていることは察しがつきます。妻と娘を殺された医師が城に閉じ込めたSS兵士たちを一人ずつなぶり殺しにして復讐してゆくわけですが、指揮官がノルマンディー戦線で戦死したためにオラドゥール事件の裁判では誰も死刑にはならずほとんどが無罪放免された史実にうっ憤を晴らした様な感じもします。 実はこの当時フランスでは、『ルシアンの青春』の様な「ドイツ占領時代にはフランス国民はみな団結して抵抗した」というメルヘンを打ち砕く様なシニカルな視点の映画が何本も製作されて議論を呼んでいました。そういうわけで、この映画はある意味「観客の観たいと思っているものを見せた」ことになり、フランスでは大ヒットしたそうです。 西部劇でも良くある様な復讐劇としては、過去の幸せだった時代の回想を並行して描く手堅いストーリー・テリングです。当初はL・ヴァンチュラが主演の構想だったそうですが、虫も殺さぬ様な風貌のF・ノワレを引っ張ってきて大正解でした。 でもなんてったってR・シュナイダーでしょう、この映画の見どころは。こんなに輝いているR・シュナイダーは観たことがない、と言うのが正直な感想です。彼女、この映画の後たった7年しか生きられなかったというのは実に悲しいことです。
[DVD(字幕)] 6点(2013-07-18 20:52:58)
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