141. バニー・レークは行方不明
《ネタバレ》 狂気を孕んでいそうな登場人物達の中にあって、実はマトモな人物が一番狂っていた。露わになる際のアップの姿に身震いする。こんな者達を相手に常に冷静沈着で事件解決にあたる警視を演ずるローレンス・オリビエに作品の格調の高さを感じた。 [DVD(字幕)] 7点(2016-09-12 22:56:57) |
142. 人生劇場 飛車角
《ネタバレ》 初見。描かれる義理と人情。人情が三角関係のメロドラマであったが為に二つを秤にかける切なさがあまり感じられなかった。生き残る健さんしか見た事がなかったので人力車もろとも放り捨てられた最期に仰天。同様に放り捨てられるであろう鶴田浩二の最期を想像させるラストショットに加点。 [DVD(邦画)] 7点(2015-05-06 01:23:24)(良:1票) |
143. 銃殺(1964・英)
《ネタバレ》 家族への戦死通知。「戦死」の一部始終を観た者としては不条理な組織で果たす義務のやり切れなさに鬱々とさせられます。銃殺隊は義務を果たさなかったのか? あの演出は無理のあるやり過ぎなもので減点です。 [DVD(吹替)] 7点(2015-03-21 01:05:33) |
144. 博奕打ち 総長賭博
松田と音吉のあまりの浅はかさにイライラのし通し。こんな輩を相手に一人もがき苦しみながらも筋を貫き通した中井の生き様が「私怨」と呼ばれる事に、当然だと思いつつもうら悲しさも覚えた。鶴田浩二絶品の一作。惜しむらくは金子信雄のヒゲ。なんか、こう、子供相手の駄菓子屋さんのオッチャンに見えて高ぶった感情がその都度盛り下がってしまった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-10-07 21:01:30) |
145. 処女の泉
《ネタバレ》 信仰心厚いテーレは常々一家を悪の手よりお守りくださいと祈ります。最愛の娘が山羊飼い兄弟に受けた仕打ち。丹念に描かれていて思い出すと吐き気がします。厚顔無恥が災いしてテーレにばれてしまいます。このシーンも丹念に描かれていて母の絶望を思い出すと血圧計が振り切れます。テーレは悪に対する復讐を果しますが、無辜の幼い末っ子まで亡き者にしてしまいます。これもまた悪。神に縋っている姿とそれに応えたかのようなラストに少し違和感がありました。インゲリの存在価値が不明だったのが残念でした。 [映画館(字幕)] 7点(2013-08-23 22:53:57) |
146. 反撥
人間が壊れてゆく様子がネットリと描き上げられています。遠因すら語らないカトリーヌ・ドヌーヴの面持ち。妄想を示す映像。鐘・電話のベル・呼び鈴・微かな蠅の羽音といった音。これ等が渾然一体となりヒタヒタと纏わりついてくる恐ろしさに逃げ出したいのを堪えながらの鑑賞となりました。 思い返しても寒気がします。 [映画館(字幕)] 7点(2013-08-10 11:10:15) |
147. 昭和残侠伝 唐獅子牡丹
しっかりしたストーリーを、強欲ながら石工魂が垣間見られる親爺と知性の「ち」の字もないアホ息子ども(特に山本麟一がいい仕事をしています)の悪方陣が盛り上げています。善人役で特筆するのは三田良子。漂う気品に見惚れました。残念だったのは池部良の役どころで、何時もの厭世観が感じられなかった点です。 [DVD(邦画)] 7点(2013-01-28 02:23:56) |
148. 昭和残侠伝 血染の唐獅子
今作の風花コンビの絡みは道行きを始めとして今一つ趣きに欠けていました。しかし、 本シリーズが魅せてくれる滅びの美学を存分に堪能できました。今作では竹>染次>風間重吉でありました。個人的に苦手な津川雅彦が唖然とするほどの男振りで、文代の「あんたも行くの」に答えた台詞に涙腺決壊寸前となり、「三社祭の馬鹿踊りだいっ」に鳥肌が立ちました。 [DVD(邦画)] 7点(2011-12-23 03:55:09) |
149. しとやかな獣
団地の一室二間を舞台としたホームドラマ。工夫を凝らしたカメラワークは飽きさせないもののそれ以上の意味を感じません。「獣」と言うよりは飼育ケースの中の食虫植物のよう。気味が悪くて薄汚いと見るか、種の保存の為の堂々とした営みと見るか、結論が出ません。始終交わされる会話の、お上品ぶって取り澄ましてのご丁寧な言葉遣いであっても、中身は恥知らずの下劣である様子から、監督の軽蔑が「しとやかな」に込められているように思えました。本作に限っては若尾文子は山岡久乃の軍門に下っていました。上には上がいるものです。恐るべし。 [DVD(邦画)] 7点(2011-06-19 15:48:15) |
150. 荒野の1ドル銀貨
マカロニウエスタンといえば思い浮かぶ本作。よ~く練られた脚本、哀愁に満ちたジュリアーノ・ジェンマ。子供時分の記憶が鮮明に残っている作品です。 [地上波(吹替)] 7点(2010-04-10 04:10:02) |
151. ロリータ(1962)
小悪魔さと理性の仮面の下で見え隠れする欲望。共にリメイク版の生々しさには遠く及ばず期待外れです。一方でロリータの母が注ぐ愛情はハンバート同様、籠の鳥を愛でるような歪さで、その痛々しさを体現しているシェリー・ウインタースの好演はリメイク版に優っていました。 【2018.5.8追記】 「ジョージー・ガール」鑑賞で本作が思い浮かび早速再見。 9年前にはジェームズ・メイソンのベルベットボイスを感じ取れず、キャストの中で記憶に残らぬ人だった(あ~不覚!) 母の死を知り「独りにしないで」と泣くロリータを抱っこするシーンが当時の映倫(?)上の限界だったと思われる事を差し引いても、欲望の生々しさでは今回もジェレミー・アイアンズには及ばない。しかし、泣きながらお金を渡すシーンに象徴される情けなさ、憐れさは、どのような人物でも生真面目に全力を尽くして表現するジェームズ・メイソンが断然上回る。 裏切れば裏切られる、どれだけ愛されても愛せない、どれだけ愛しても愛されない。この世の摂理を改めて実感させられた次第。 前回より2点上積み。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-05 23:59:13) |
152. お吟さま(1962)
妻を持つキリシタン大名の高山右近と千利休の娘(実の娘ではない)吟。双方が思慕と倫理観の狭間で錐揉みする姿のみ描かれていれば辟易したことでしょう。しかし、秀吉・三成と千利休の確執が盛り込まれている事で奥行きの深い物語になっています。とりわけ千利休が示した娘に対する慈愛の深さ、宗匠としての巌の如き威厳。それぞれの神々しさは神の領域でした。結末の理不尽さ・非情さを際立たせる音楽、桃山文化(ですか?)の凛とした気品が漂う衣装も心に残る、一級の作品です。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-09-18 14:57:19) |
153. アラバマ物語
《ネタバレ》 あのような判決がまかり通る事に、文明国家の秩序は法によって守られ、法は正義に基づくものであり、正義は万民に共通するものであるはずが、人間の持つ弱者への偏見、損得勘定、不正直によって正しくない結論が導かれるのだと思い知らされます。狂犬以下の父親の死に対して、誰も裁かれないという結末は、自業自得であるという感情が湧き上がると共に、神が下す天罰を人間が下すこと、法に妥協しても目には目を、やられたらやり返すアメリカという国の考え方が見え、すっきりしない後味が残りました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-12 01:08:18) |
154. シャレード(1963)
予備知識はヘップバーン出演と音楽。初鑑賞。25万ドルの行方は、犯人は、2日間で3回名前が変わるグラントの正体は?全貌が明らかになるまでの展開は見応えがあり、マッソー・コバーン・ケネディの一癖も二癖もあるキャラクターの味わい深さも併せて、サスペンスものとして見事な出来映え。一方、作品の最大の魅力であろう主役二人のロマンス部分は、小粋な会話が上滑りしているように感じ、いまひとつ。その部分を差し引いても作品全体としては満足のいくものでした。センスの良いオープニングとエンディングが印象に残ります。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-03 15:57:08) |
155. 昭和残侠伝
昭和残侠伝シリーズは小学生の頃、テレビで父と一緒によく観ました。登場人物とストーリーの細部は忘れましたが「親にもらった大事な肌を・・・」の歌をバックに健さんが単身敵地に向う道すがら池部良と合流し並んで歩くシーンは歌詞共々覚えており、毎度毎度池部良のカッコよさにメロメロになったものです。何十年か振りかの鑑賞でしたが、前奏が流れただけで鳥肌が立ちました。本作ではお馴染みの二人以上に江原真二郎に魅了されました。優男が見せる滅びの美学に、不覚にも涙ぐみそうになってしまった私は、いい歳になってもシビアに物事を考えられない甘ちゃんなのだと感じました。 [DVD(邦画)] 7点(2006-12-02 12:52:00) |
156. 氷点
『汝の敵を愛せよ』は人を責めない事に通じる事で、その困難さと尊さを辻口一家から感じます。川べりの陽子の姿に「そんなに何回も飲んだらあかん、死んでしもたらあかんがな」という思いと、太陽の如き彼女の心を凍てつかせた、啓造の偽善者振りと「女は子宮で物を考える」という妄言も止む無しの夏江の浅はかさに、沸点の低い自分は腸が煮え繰り返りました。葛藤の末彼女を兄として愛した徹のためにも死なないで欲しいと祈り続けました。本作のテーマである『原罪』という考え方には納得出来ません。罪は犯した時に責任を取り背負うものであって、生まれた事が罪ではないと考えます。原作を読んでみることにします。 [DVD(邦画)] 7点(2006-11-26 00:53:59) |
157. 暗くなるまで待って
《ネタバレ》 恋愛物だと思っていたのにサスペンス物であった事に驚き、鑑賞後「面白かった、観てよかった」と満足の出来た作品でした。限られた舞台設定での巧妙に伏線が張られた脚本と、スージーの抱いた疑念が確信に変わって圧倒的不利の状況から活路を開いてゆく、めりはりの効いた展開に知らぬ間に物語にぐいぐい引き込まれていきます。また、淡い感情を抱きながらスージーと対決する甘ちゃんな悪党マイクと、あとに続く、スージーと観る者に「お楽しみはこれからなんだよ」とばかりにサディスティックに迫る正真正銘の悪党ロートの二人は刺身と刺身のツマの様でうまいキャラクター設定です。このクライマックスは見応え十二分の一進一退の攻防でしたが、惜しむらくはロートが致命傷を負うシーンです。もう一捻り効かせて欲しかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-06-17 01:36:48)(良:2票) |
158. 座頭市の歌が聞える
絶対勝つ。今の暮らしを抜け出し、再び、二人で幸せを掴むために。市との対決での気迫、叶わなかった空しさを感じますが、前回の涙しかけた天知茂の心模様に比べ、今ひとつ自分には響いてきませんでした。代わって、市と琵琶法師、市と少年の絡みが印象に残ります。強さに憧れる少年。欲望のため弱い者を痛めつけて屈服させる強さと、無やみに力を示さず、ここ一番の時に弱い者を、我が身を守る強さ。どちらの道に少年を導くかはお前次第と法師に説かれた市が少年に違いを言葉ではなく身をもって教えます。子供は親のする事を見て育つ事を端的に示してくれた作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2005-03-30 15:18:24) |
159. 恐怖の岬
リメイク版は何度か観ていますが、こちらは初めて観ました。弁護士一家は上品でリメイク版の濃い三人に比べてずっと良かったです。デ・ニーロが見せるあからさまな狂気より、ロバート・ミッチャムのふてぶてしい面構えの中に見える狂気の方に怖さを感じました。川の中での肉弾戦は観ていて物凄く力が入りました。 7点(2004-09-17 00:37:07)(良:1票) |
160. 夜霧の恋人たち
アントワーヌの危なっかしいのだけど飄々としている所が微笑ましかったです。若い時はこういう試行錯誤があっていいと思います。鏡に向かって「ファビエンヌ・タバール、クリスティーヌ・ダルボン、アントワーヌ・ドワネル」と延々と連呼しているシーンに、会いたいのに会えなくて、家で何気なく鏡を見た時に、思わず相手と自分の名を連呼していた事を懐かしく思い出しました。 7点(2004-02-20 21:11:29) |