141. ただいま
《ネタバレ》 ちょっとした過ちが、殺人につながり、そしてそれが一人の女性の人生を奪ってしまった。 何とも哀しい話だ。 哀しい話だけで終わってしまうところが、この作品の最大の難点。 悲劇があったとして、悔い改めてこれからの生活を前向きにいこうとか、何らかの希望や、温かい何かがあっていいはずなのに、それがまったく見えてこない。 単なる悲劇で終わっている。 ただ哀しい話で終わらせず、そこへのプラスアルファ、つまりは、何か観ていて得られるものが欲しかった。 テーマとしては、深くて重みがあっただけにもったいない。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-11-21 20:37:47) |
142. メイド・イン・ホンコン
《ネタバレ》 返還前の香港を舞台にした作品で、香港のカオス的な街並みが存分に使われている。 香港色が色濃く出たこういったジャンルの作品は好みだが、主演の青年が死んだ後がどうも蛇足で、しつこさが感じられた。 この終わらせ方からして、この監督はそんなに巧くない気がする。 映像のスタイリッシュさや音楽の使い方など、魅力もある作品だが、全体的にしまりがないのが惜しい。 ついでに、ヒロインの女性が外見的に好みではなかったのも、個人的にマイナス要因となってしまった。 やっぱり、金城武にケリー・チャンの方が好き。 もし本作を金城武とケリー・チャンが演じていたとしたら、それだけでもっと楽しめたかもしれない。 こういうムード重視の、バイオレンス青春映画な作品は、外見的好みによって人それぞれ評価が分かれそうだ。 [DVD(字幕)] 6点(2009-11-09 01:48:24) |
143. 病院で死ぬということ
ターミナルケア(終末期医療)の現場を淡々と描いた作品だが、あまりに無難というか、ステレオタイプな末期ガンの描かれ方に、何ら感動をおぼえなかった。 末期ガンの現実なんてのは、もっと凄まじく「過酷」であり、又、生命が最後の輝きを見せるという面において、これ以上なく「美しい」ものだ。 それがどうだろう、本作はその「過酷さ」と「美しさ」の両面とも描ききれていないではないか。 大体、あんな離れた位置に置かれたカメラでオブラートに包んだ様に撮って見せても、終末期医療の空気感なんて伝わって来ようはずがない。 これからガンに立ち向かうべき人達、これからガンと立ち向かうかもしれない人達がこの映画を観たとして、何のヒントが得られるというのだろうか。 こんな傍観したような映像からは、何の救いも得られないし、なんら魂も伝わってこない。 むしろ見ない方が良いと言えるかもしれない。 同じ末期ガンを描いた作品として、『ヨコハマメリー』が頭に浮かぶが、こちらの方が断然良かった。 『ヨコハマメリー』は、まさしく、末期ガンにおける生々しい残酷な現実や生命の神秘、そして人が死に直面した時、その人のそれまでの人生がどう噴出するかなどについて、ありのままを描いていた。 本作は、あらゆる面で手ぬるい。 人生最後の美しき輝きや、死に向う過酷な時間経過などを、表現しきれていない。 よって、ダメダメな作り物映画である。 いかにも小説である。 しかし、ただ一つだけ本作に共感をおぼえたことがある。 それは、「愛」というものが、人を死の恐怖から救うという結論である。 終末期医療においては、この「愛」というものが存するという事こそが、唯一の救いとなるのである。 [ビデオ(邦画)] 2点(2009-11-05 21:10:41) |
144. ニューヨーク デイドリーム
金城武の魅力満載! 一番魅力溢れた頃の金城武を堪能できること間違いなし。 序盤の飲食店における会話がとても良い。 後半はファンタジー色が強くなり、やや苦しい展開に。 だけど、やっぱりこの頃の金城武が出ているというだけで、魅力いっぱいの作品だ。 ニューヨークが舞台ではなく、香港だったら断然良かったかも。 それにしても、あの韓国美女、髪はおそろしく綺麗だし、グラマラスで魅力的だった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-10-04 23:38:33) |
145. 愛を乞うひと
あそこまで母親から散々なDVを受けて、それでも母親が好きだという原田美枝子に感情移入するのが難しかった。 耐え難いトラウマとして、必死に忘れようとするのが普通ではないか? 少なくとも私ならそうする。 まして、母親なんかに会いたいとすら思わないだろう。 原田美枝子にどこまで感情移入できるかが、評価の分かれ目になる作品だと思う。 [ビデオ(邦画)] 6点(2009-09-28 01:01:20) |
146. トト・ザ・ヒーロー
《ネタバレ》 最後死ぬ時にようやく本人に成り代わることができた。 そういうオチが全ての映画で、それまでが大したストーリーがないだけに、時間軸をずらしたり、妄想部分を見せてみたりと、演出方法に工夫をせざるを得ない内容。 時間軸をずらさずに、普通に時系列的にストーリーを見せて、しかも内容が深くて重厚な話で、更にしかもあのオチなら傑作になり得たと思う。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-09-23 02:33:06)(良:1票) |
147. 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(188分版)
全く面白くない。 しかも異常なくらいに長い。 長いだけでなく、それ以上に長く感じた。 ホウ・シャオシェンの作品と比べると、感情豊かでないというか、親しみのわく、あの柔らかな光線がない。 ただ、台湾映画として、ホウ・シャオシェン作品と共通する部分はあった。 日常にふってわく暴力描写。 どうして台湾映画って、こんなにも地味な暴力描写が多いんだろう。 この頃の台湾は、実際に暴力にあふれていたんだろうか。 だとすれば、台湾のこの時代の荒んだ世相を、画面にストレートに焼き付けていたともとれるが、しかしながらそれ以上につまらないのが事実であって、映画として感銘するにはいたらなかった。 [ビデオ(字幕)] 2点(2009-09-15 21:38:20) |
148. ポストマン・ブルース
《ネタバレ》 郵便屋の仕事の単調さを描いた前半は、これからの展開に期待をさせて良かったものの、コミカルな刑事達が登場した辺りから、段々、この映画そのものが鬱陶しくなってきた。 刑事達の登場は端役なら何とか辛抱できたかもしれないが、後半に行くに従ってどんどん物語の中心に出てくるもんだから、いよいよもってストレスが爆発。 しかも、中途半端に長い。 刑事達が悪ノリする後半が、とにかく長く感じた。 全体的に安っぽい邦画という印象。 そして、自分には到底合わないシニカルな笑い。 「邦画は安っぽい」というイメージを増長する、A級戦犯的な作品。 [ビデオ(邦画)] 0点(2009-09-14 02:40:12)(良:1票) |
149. 變臉~この櫂に手をそえて~
《ネタバレ》 こりゃ、いかん、安っぽいヒューマニズム臭が漂い過ぎだ。 大体、あの老人は気色が悪い。 老人と少女との心温まるヒューマンドラマといったところだろうが、陳腐な作りで感動に至らない。 大体、少女が落下して、タイミング良く受け取るシーンなんて、まさに臭すぎ。 都合良すぎる。 全てにおいて胡散臭く、そしてあざとい演出が癇に障った。 [ビデオ(字幕)] 2点(2009-09-07 02:08:39) |
150. 暗戦/デッドエンド
《ネタバレ》 音楽がどうも気に入らなかったのと、アンディ・ラウがそれほど好きな俳優ではないこともあって、完全には乗りきれなかったものの、小道具の使い方や意外な展開、そしてスピーディで飽きさせない内容は、なかなか楽しめた。 特に気に入ったのは、最後に宝石をニセモノと称して、バスで何度か居合わせた女性にプレゼントしてしまうところ。 ここにちょっとしたロマンスのスパイスが効いており、じんわりと心に残った。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-09-06 00:07:19)(良:1票) |
151. 死の棘
ホラーであり、コメディ。 この絶妙な味わい。 いやぁ、楽しかった。 しかし、岸部一徳が演じた夫は凄い。 ここまで妻に食いつかれて、最後まで立っている。 いや、途中何度か倒れかけはしたが、それでも持ちこたえた。 この映画の何が凄いって、この夫でしょう。 この映画は、私のような妻帯者に“浮気”というものの怖さを強烈にうったえてくる。 こんな映画を観た後は、とてもじゃないが、浮気なんてさらさらする気も起ってきません。 それにしても、この当時の精神病院って、怖いのねぇ・・・ 電気ショック療法に、持続睡眠療法?! 風景描写も含め、そんな時代背景を垣間見れるところも、本作の見所の一つだ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-08-30 22:39:55) |
152. 三月のライオン
矢崎仁司監督の作品は『ストロベリーショートケイクス』から観たクチだが、本作はその作品とはかなり趣きを異にする内容だった。 インディーズっぽさというか、陰鬱さが画面の暗さに直結していて、少々苦手な部類の作品。 『ストロベリーショートケイクス』は映像が洗練されていて、女性の解放感と閉塞感が微妙に、そして絶妙にバランスをとっていて優れた作品だと感じたが、本作はそれに比べ、まだ未成熟というか、荒削りというか、一方的な陰鬱感のみが発散されている。 こういう暗さを持った作品は、ある監督の生涯においても、初期から中期にかけてしか現れてこない貴重なものだとは思うが、後年からさかのぼって鑑賞してしまうと、それほど良いとは思えなかった。 リアルタイム且つ青春時代にこの作品を観ていたら、感銘の受け方も大きく違ってくるだろう。 [ビデオ(邦画)] 5点(2009-08-30 18:39:48) |
153. バウンス ko GALS
《ネタバレ》 コギャルという生態を色物的に描いた前半から、まともな青春モノとなる後半まで、実にアンバランスな一品。 はっきり言って、賞味期限切れな作品なのだが、今となってみると一つの時代を描いた作品として貴重とも言える内容となっている。 残念なのは、作品としての全体的な印象が、どこにでもありそうな適当な邦画のように感じられるところだ。 こういう軽いノリの作品なら、最後はあそこまでマトモにしめることなく、最初から最後まで軽いノリでいってほしかった。 もしくは、最初から最後まで社会派的な作風にして、重厚にまとめ上げるとか。 ただし、この作品の素晴らしいところは、コギャルや援助交際といった、当時社会的問題となったネタを、余すところ無くストレートに映像に残しているところだろう。 そういう点では、その時代を映した他にはない貴重な作品として、後世に残る可能性も秘めた作品である。 [DVD(邦画)] 4点(2009-08-29 02:54:31) |
154. 白い手
田舎の少年たちの、活き活きとした様を描いた平和的物語。 決して傑作とかではないし、強い感動が押し寄せるわけではないが、ゆっくりと平和な気分で観られる佳作。 それと、哀川翔がいい味を出していた。 やっぱり田舎のヤンキー上がりみたいな男を演じさせると、絶妙な味わいを発揮する俳優だ。 [レーザーディスク(邦画)] 6点(2009-08-17 15:36:11) |
155. マイ・ネーム・イズ・ジョー
冒頭の5分から既にまったく肌に合わなかった。 これは相性が悪いというほかない。 音楽も好きになれないし、映像も凡庸、ストーリーも全く興味が湧かず・・・ [ビデオ(字幕)] 1点(2009-08-10 02:05:29) |
156. カノン
《ネタバレ》 “デブババア”と“臭いバアサン”の二人との同居生活が語られる冒頭から、かなり引き込まれた。 流れる様なダークストーリー。 いや、ダーティストーリー。 どんどん落ちぶれ、精神的に崩壊し、閉塞していく様がリアルに、そして流れる様なリズムで語られる。 これは面白い! と思っていたのも束の間、後半はかなりグロテスクな映像を交えての、陰鬱なモードへと突入する。 ネガティブでしつこいモノローグには閉口した。 そして、首から血がドクドク流れ出たり、脳が飛び出るシーンを繰り返ししつこく流す。 これは観る者を不快にさせるのが目的なんじゃないだろうか。 前半の流れがとてもリズム良く、そして映画的な楽しさに満ちていたのに対し、後半はネガティブ一色、それも表現がしつこくて悪意に満ちていた。 気に入った部分と不快に感じた部分との振れ幅が非常に大きく、評価するのがとても難しい。 ラストはなかなかうまくまとまっていた様な気がする。 理にかなっているというか。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-03 02:31:43) |
157. パンと植木鉢
《ネタバレ》 イラン映画で評判が良い作品と聞き鑑賞してみた。 今までに観たことのない独創的な演出と展開。 しかし、同時に解りづらい部分もあり、のめりこめるようなのめりこめないような複雑な心境のままラストカットへ。 パンと植木鉢が唐突に差し出されるラストカットは、理屈抜きの素晴らしさ。 だけど、なんだかモヤモヤすっきりしないものがあるのも事実。 理屈っぽいけど、理屈で観ようとすると楽しめない不思議なテイストの作品。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-07-28 23:29:33) |
158. カルネ
《ネタバレ》 ツタヤ新宿の棚に書いてあった本作の説明文が、 「観たら後悔する映画。責任持てません。」 だったので、ややビビリつつ鑑賞。 しかし、冒頭の馬を殺すシーン以外は特別にトラウマになる様なシーンはなし。 一人娘を溺愛する父親を軸に描いているが、40分という短編にしては、実によく出来ている。 無駄に長い映画が多い中、これは賞賛に値するのではなかろうか。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-07-27 00:23:28) |
159. 初恋のきた道
チャン・ツィイーが可憐で美しく映っていることは勿論だが、中国の農村風景がとにかく美しくカメラに収められている。 ほんと、ため息が出るほどの美しさ。 それと、やはりチャン・イーモウ監督は赤系の色の撮り方が徹底的に巧い。 チャン・ツィイーが身に纏っていた服の色も印象的だ。 チャン・ツィイーの恋人役の男優がいい味を出しており、いいスパイスになっていた気がする(笑)。 ただし、チャン・ツィイー自体は非常に美しいが、少々ミスキャストではないだろうか。 農村に住む純朴な少女にしては、表情が女優すぎる。 自然な美しさというより、職人芸的な美しさなのだ。 それとチャン・イーモウ監督の必死さが伝わってこないのもマイナス点。 元々綺麗なチャン・ツィイーを、持ち前の慣れた監督手腕で撮りあげ、器用に作品として仕上げた感があって、どうも物足りないのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-07-26 03:20:39) |
160. つきせぬ想い
《ネタバレ》 香港恋愛映画の傑作。 飾り気のないシンプルなストーリーに、ベタな展開。 だけど、ツボはしっかりおさえている。 イー・トンシン監督の確かな手腕を感じ取れる素晴らしいラブ・ストーリーだ。 ラストは悲劇として幕を閉じる。 が、しかし、それは決して後味の悪いものではない。 愛する者同士は、いくら愛し合っても、いつかは死によって別離せざるを得ない。 そんな二人にとって一番大事なことは、どれだけ純粋に、そして真剣に相手を愛することができたか?ではないだろうか。 その点において、本作の二人は互いを真剣に愛していた。 別れるには早過ぎたかもしれないが、一瞬一瞬がとても輝き、幸せに満ち溢れていた。 あの無邪気にはしゃぐ二人の笑顔が忘れられない。 短い時間でも二人が一緒に居られ、互いを真剣に愛することができたならば、二人の心の中にはきっと美しい思い出が残るに違いない。 それよりむしろ、この取り残された男からすれば、彼女が死ぬ前に彼女と出会えたことが幸せだったと考えることもできるのではないだろうか。 そして、この女性は、独りで死ぬことなく、死ぬ前に自分を本当に愛してくれる彼と出会えて良かったんじゃないだろうか。 そういう風に別の角度から二人の人生を考えてみると、単純に悲劇なだけのお話だとは言えないんじゃないだろうか。 男と女にとって何が本当に幸せか? それを観る者に鋭く訴えてくる含蓄のあるラブストーリー。 香港恋愛映画の奥深さを垣間見ることができた作品であった。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-07-12 17:13:50) |