1601. マタンゴ
《ネタバレ》 “昭和の娯楽映画フェチ”な僕にとっては、ゾクゾクとする時代の空気感が秀逸だった。俳優たちのキザったらしい台詞まわしも聞きなれてくるとたまらなくなるものだ。“マタンゴ”という新感覚の怪物の発想と、漂流した男女の極限状態を見事に融合させた物語の骨格は素晴らしいと思う。ただ、もう少し丁寧に展開を描いてほしかった。それぞれのキャラクターに個性はあるが、その言動があまりに唐突に思える。そもそもマタンゴという生命体の性質自体が曖昧だった。ラストなんとか逃げ延びた主人公も結局はマタンゴに侵されているわけだが、「え、いつ食ったの?」という疑問が残る。しかしその顛末の描かれ方自体にはこの映画の締めとしての相応しさがあった。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-20 20:43:49) |
1602. タイガー&ドラゴン(単発ドラマ版)<TVM>
池袋、木更津、そして今度は浅草だあー!加えて落語だあー、と地域性を殊更に意識したクドカンらしい着眼点とストーリー展開が面白い☆もはやクドカンファミリーの長男坊と言っていい長瀬智也の息の合ったはしゃぎっぷりも良い☆これくらいのものを肩をはらずにサラっと創りだしてしまうクドカンの相変わらずの絶好調ぶりに安心しつつ、公開待機の初監督作“弥次喜多”に胸が高鳴る☆☆☆ [地上波(邦画)] 6点(2009-06-20 20:41:46) |
1603. キングコング(1976)
《ネタバレ》 キングコングが美女を抱えてビルに登るシーンはあまりに有名なもの。それだけでも映画としての価値は多聞にある。ラストのコングの心音が弱まっていくシーンなどは、怪物の死を描きながら人間自体の怪物性を物語っていて感慨深かった。 [ビデオ(吹替)] 6点(2009-06-20 20:38:55) |
1604. コラテラル
なにか描かれるストーリー以上のものを観客に伝える映画だったと思う。単純にストーリー展開だけを見たならば、なんだかクールというよりもあっさりし過ぎているように感じるかもしれない。しかし実際に生きている人間たちがみなそうであるように、“一夜の出来事”の終焉は決して夜明けともに来るわけではない。翌朝も、翌々朝もずっとその人間の中に残っていくものだ。それは映画の住人たちにとっても変わりなく、タクシー運転手の人生はその後も続いていくし、死んだ殺し屋の人生を一晩だけで完全に理解するのは無理だ。なんだか、上手く言えないけど、そういう彼らの“一夜の出来事”の前後の生き様を考えさせられる映画だった。そして、最後の最後まで続いた彼らの思想の対立が、心の中をぐるぐると駆け回って、苦しい。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 20:38:18) |
1605. 笑の大学
もちろん笑える。それは間違いない。そしてそれと同時にこの映画もとい脚本には、喜劇作家三谷幸喜のプライドと意志がダイレクトに表現されている。「笑い」とは何なのか?必要なのか?不必要なのか?自分自身がそれを描き続ける意味は何なのか?三谷幸喜が日々思い悩んだ答えが、そのままこの話であり、喜劇作家椿一のキャラクターなのだと思う。得意の“密室コメディ”の形式だったので、映画的にもっと徹底して密室のみで描くことができれば、さらに面白さは凝縮されたのではないかと思う。しかしそれでも、喜劇作家と検閲官の対話によってのみ紡ぎだされる“笑い”には見応えがあったし、映画化されることによって更に力量が問われる役柄を主演の二人は見事に表現してみせたと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 20:36:32) |
1606. ダークシティ
前述の評価にもあるが、「マトリックス」三部作を物語の核を電子から精神に変えて100分というコンパクトな枠にまとめ上げたという印象が残る。それをそのまま好評へとすることもできるが、悪く言えばやはり、これほどまでに奥行きのあるアイデアをこの枠で留めるには説明不足な感も拭えない(かと言って、大風呂敷を広げた「マトリックス」がストーリー的に完成していたとは言えないが…)。まあとにもかくにも、期待以上の世界観の壮大さには驚きがあったし、それを描ききった圧倒的なヴィジュアルセンスにも舌を巻くことは間違いない。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:36:11) |
1607. NARC ナーク
期待していたよりも、ストーリーとキャラクターの設定がありきたりだったという感は否めない。あまりにもストーレートな展開には、“隠された真相”を探る秀逸なサスペンスを期待していた者としては少々物足りなかったというのが正直なところ。しかし骨太な刑事ドラマを最初から想定していたのなら、その圧倒的な重量感には満足できたであろう。レイ・リオッタの好演者ぶりは予想できたが、驚かされたのはジェイソン・パトリックである。全米で最もセクシーな俳優として(ほんの一瞬だけ☆)騒がれ、あわよくばスターダムにのし上がろうとした瞬間に見事にその階段を踏み外し、転落していったこの俳優のこれほどまでの豹変ぶりを誰が予想しただろうか。もしかしたら、彼の俳優としての怒涛の反撃をこれから先、幾度となくあびることになるのかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:34:44) |
1608. フォーン・ブース
個人的見解であるが、良質なサスペンス映画であるほど、舞台となる空間は限定され、洗練される。この映画はまさにその良質なサスペンス映画である要因を十二分に備えた作品だったと思う。電話BOXを利用した都会の狭間に隠れる恐怖感は、実に新鮮で巧みであった。「ヤラレタ!」と思ったのは、時間軸をそのままに描き出される映画世界、所々で画面分割を多用するその手法は、まさに今大流行のテレビドラマ「24」ではないか。「ああ、なんだか似てるなあ~」なんて観ていたら、ラストに出てくるのはあの男……。まさにまどろむ様な後味の悪さとブラックなユーモアが漂うこのラストは、この映画の締めとしてふさわしい。 [DVD(字幕)] 8点(2009-06-20 20:32:18) |
1609. ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎<TVM>
ルパンはもちろんだけど、次元と五右衛門のキャラクターが際立っていて嬉しかった。やはりルパン映画はルパンファミリーがそれぞれ活躍する展開が楽しい。テレビスペシャル版の中では特に良い出来栄えだと思う。 [ビデオ(邦画)] 6点(2009-06-20 20:29:45)(良:1票) |
1610. トロイ(2004)
《ネタバレ》 エンターテイメント映画としては、おそらくほとんど問題はないと思う。ただそこに史実的な男たちのドラマという要素を入れるとしたら、何だか物足りないというのは正直なところだ。登場人物たちの心情がいまひとつ描ききれていなかったように思う。どこか人物描写が希薄だから、アキレスの己の宿命に対する葛藤が単に優柔不断に見えたり、盲目的に愛を貫き通すパリスが軟弱なアホ王子に見えたりするのだと思う。「歴史に名を残す」という男たちの思いを群像的に描く上でこの人物描写の弱さは、痛いところだ。その影響が、明らかにスゴイはずの映像世界のパワーをも弱めているようで、益々残念である。 しかしながら、やはり圧倒的なビジュアルに裏づけされる娯楽性は大したもので、大スペクタクル映画としての要素は存分に備わった作品であることは確かだ。トロイの木馬、アキレスの唯一の弱点という史話的に非常に有名なエピソードをそつなく抑えたクライマックスは見事だと言える。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 20:25:32) |
1611. スカーフェイス
個人的にはあまり好きなストーリーではなかったので強く心に残るものはなかったが、若くエネルギーに満ちたアル・パチーノの存在感にはこの後の大俳優への可能性を感じるに充分のものがある。壮絶すぎるラストの死に様は圧巻。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:22:18) |
1612. クロッシング・ガード
思想的にかなり偏った描き方のようにも思うが、そこがショーン・ペンらしいといえばそうで、監督として彼の持ち味なのだと思う。ジャック・ニコルソンの存在感が高く、彼を尊敬してやまないペンだからこそ描き出せた悲哀に満ちたダンディズムがそこにある。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:21:35) |
1613. チェンジング・レーン
ベン・アフレックの大根役者ぶりは個人的には頂けないが、演技面ではサミュエル・L・ジャクソンが巧くカバーしていた。多少詰め込みすぎという感はあるが、誰にでも起こり得る日常のサスペンスを興味深く描き出すことに成功している。映像的な工夫がもう少しあれば、現代のヒッチコック映画とも言える雰囲気を持っていると思う。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:20:52) |
1614. マイノリティ・リポート
流石スピルバーグとうならずにはいられない映像世界には圧倒された。しかし、スピルバーグのテイストはフィリップ・K・ディックのオリジナルの持つクセを消してしまっているように思う。それくらい他のK・ディック原作映画と比べるとあまりにストーリー展開が凡庸である。物語の持つテーマ性に対して映画の結末はあまりに安易で、チープだった。スピルバーグでなければあの映画世界はなかったかもしれないが、やはり他の個性派監督が撮っていればもっと興味深い映画になっていたように思う。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 20:18:46) |
1615. 水の女
独創的なUAの風貌と存在感は映画的に映え、印象的だった。彼女と浅野忠信の絡みは外面的にも内面的にも濃厚で、異様なまでの空気感に引き込まれる。ストーリー的には抽象的で説得力に欠けるが、映画の雰囲気としては秀逸なものが見れる。個人的にはYUKIにもっと出て欲しかった。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 20:17:41) |
1616. アモーレス・ペロス
緻密な人物描写とドラマとしての緊迫感の高い構成力、そしてメキシコという国独特であろう暑苦しい空気感に引き込まれた。しかし中盤以降やや失速した感もある。濃密な人間ドラマはあったが、やや尺が長すぎたかもしれない。2時間半という尺にたえるだけのスピード感がなかったかことが惜しい。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:14:39) |
1617. コラテラル・ダメージ
いち消防士があれほどまでテロリスト相手に大立ち回りしてしまうリアリティの無さは、普通は認められないものだけど、それがシュワルツェネッガーであれば何の問題もなく、むしろフツーのこととも思える。肯定的な意味で非常にシュワちゃんらしい今作は、近年の彼の低迷振りを払拭するエンターテイメントを提供できていると思う。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-06-20 20:12:53) |
1618. ターミネーター4
《ネタバレ》 この映画は、「ターミネーター」という映画シリーズのSF性をどういう風に捉えているかによって、その是非は大いに変わってくるのだと思う。 まず理解しなくてはならないことは、この映画シリーズの各作品は必ずしも一連の時間軸上で連なってはいないということだ。 今作はそうしたシリーズのSF性を、根底に据えた上で、過去の名作に依存しないオリジナリティーをもって描き出されていると思う。 コンピューターに「自我」が芽生えたことに端を発した終末戦争のおいて、人類としての「自我」を忘れまいと戦いに臨むジョン・コナーの姿は、過去の作品において「未来からの情報」として語られつつも、決して描かれることのなかった抵抗軍指導者の圧倒的なカリスマ性を見事に表現し切っている。 そして、過去と未来、更に未来と過去を繋ぐためのキャラクターとして登場するマーカス・ライトの存在性は、まさにキーパーソン。その役割は本作のみにおけるものだけでなく、シリーズ全体をある意味において繋ぎ止める重要なキャラクター性を秘めている。 そして、崩壊し乾き切った空気の中で繰り広げられる圧倒的にメカニカルな迫力性は、明らかに独自の世界観を構築している。 シリーズの各作品それぞれで描かれる「未来を変えるための戦い」とその顛末は、結果的に幾つもの”パラレルワールド”を生じさせたのだと思う。 第一作目の「ターミネーター」で、ボディビルダー上がりのアクション俳優が、文字通りの「殺人マシーン」として過去に送られた時点で、未来のパターンは無数に枝分かれした。 美少年のエドワード・ファーロングがジョン・コナーである「T2」も、醜男のニック・スタールがジョン・コナーである「T3」も、それぞれが枝分かれした時間軸での“別世界”だと考えれば、途端に納得しやすくなる。 今作の最大の価値は、そういった一連の時間軸上に存在する様に見えて、実はバラバラの世界観を描いていた映画シリーズを、更に全く違う時間軸と、世界観を描き出した上で、繋ぎ止めてみせたことに他ならない。 密かに期待していたT-800(=?)の絶妙な登場シーンも含め、色々な意味で楽しみがいのある秀逸なエンターテイメントだ。 [映画館(字幕)] 8点(2009-06-20 18:16:37)(良:2票) |
1619. インソムニア
大ヒットした「メメント」に続くクリストファー・ノーラン監督の作品だったので、分からなくもないが、プロモーションにおいてあまりに濃密なサスペンスを強調したことは失敗だったと思う。確かにサスペンス映画には違いないかもしれないが、今作の場合重点的に描かれるものは主人公の因果と良心についてのドラマであり、サスペンス要素は極めて薄い。なので作品的には良く出来た映画だと思うのだけれど、当初の印象とは異なる展開に違和感を覚えてしまった。この映画に限らず、監督や俳優の前作の印象による安易な宣伝は多いので何とかしてほしい。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 17:48:00) |
1620. KT
ラストシーンで個人的には面白さが半減したのだけれど、映画全体の男臭い骨太さは見応えがあり、佐藤浩市、キム・ガプスの主演俳優陣の存在感はほれぼれするほどの濃密さがあった。事件当時の空気感がリアリティに溢れ見事だったと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-20 17:47:13) |