1761. 新選組(2000)
《ネタバレ》 原作既読。新選組を描いた作品はたくさんあるけれど、この黒鉄ヒロシの原作はかなり異色でしょう。相当熱心に資料を漁り、そこから読み取れる、あるいは類推できる小ネタを散りばめて、新選組のお馴染みの人物たちに新しい横顔を与えています。この人特有のブラックな着眼や解釈も大変面白い。その原作の映画化ですが、アニメではなく数ミリ厚のスチレンボードに原作漫画を貼り付け、人物の輪郭で切り抜いた板をカメラの前に立てた紙芝居風の映像です。まぁ、見え方は原作のまんまですね。見始めは違和感があったけどすぐに慣れた。慣れると、この手法も却って味が出てくるものだと感心。この数ミリの厚みをライティングの演出素材として活かしています。監督の手腕の見せ所ですね。ストーリーは新選組の王道エピソードを抜粋していますが、原作の面白さは小ネタにあります。新選組ファンは読んで損しないですよ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-02-24 03:39:36) |
1762. 潮騒(1975)
《ネタバレ》 先日「伊豆の踊子」も観たけど、山口百恵は今作の方が可愛かったです。公開当時「その火を飛び越して来い」のシーンが話題になった(というか、プロモーションに有効に使われていた)作品。自分は初見だったけど、想像していたよりも露出してましたね。あの時代の売り出し中のアイドルとしては頑張った方じゃないかな。家長制度や島の慣習が重たい意味をもっていた時代に、個として魅かれ合った百恵&友和が周囲に純愛を認めさせるという内容だけど、今となっては至って平板なストーリー。とって付けたような音楽にマイナス1点。山口百恵以外に見るところは無いかな。三浦友和のふんどしヌードもありました。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-02-24 03:31:14) |
1763. それでも生きる子供たちへ
《ネタバレ》 子供をテーマにしたオムニバス。記憶のあるうちに簡単に記しておく。ゲリラをやっている子供。虐待を受けていた少年院の子供。両親がエイズを発症している子供。廃品回収で自活している子供(兄妹?)。戦場で生きている子供たち。盗みを働く子供。両親が離婚しそうな富豪の子供と親に捨てられた子供。それぞれに点数を付けると、6・3・7・6・4・2・5。平均を四捨五入すると5点ですが、子供たちを苛む色々な環境をみせてくれた全体構成にプラス1点。問題提起くらいしかできない20分前後の尺で、かなりの密度の作品もあれば、平均点を下げている作品もある。よく分からないのもありましたが、それぞれのお国柄が出ていてバラエティに富んでいます。日本の監督が参加していたらどんなテーマを選んだことやら…。この邦題はかなり考えたと思うけど、自分はもう少しストレートに訳した方が良かったと思います。ほとんどの作品が言わんとしていることは、過酷な環境の裏側にいる「見えにくい子供たち」です。日常的に報道などで他国の様子は目にするけど、その向こう側にあんな子供たちがいることは自覚できない。頑張ってる子供たちを見せるための映画とは思わなかったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-02-24 03:22:45) |
1764. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 初見は公開後のテレビ放送で、もう30年以上前だと思う。この野暮ったいタイトルを馬鹿にしつつ見始めたらどんどんと引き込まれて行ったことを記憶している。後の「スピード」の設定ってこれのパクリですね。今回、久しぶりに観てとても気になったのが警察の捜査方針。犯人検挙に躍起になって用意した身代金が渡せずに人質を危険にさらす。今、こんなことをやったら袋叩きだけど、当時は今ほど違和感を感じる選択でもなかったと思います。でも宇津井健が毅然とした態度でそのあたりをしっかり指摘していて、救われる気分です。犯人側の描写に垣間見える体制対反体制という図式や、喫茶店の全焼といったストーリーの詰め方に時の流れを感じますが、クライムサスペンスとしては一級品だ思います。 [地上波(邦画)] 8点(2009-02-21 03:19:40)(良:1票) |
1765. 魂萌え!
《ネタバレ》 未読ですが女性の自由や解放を扱った桐野夏生らしいストーリーですね。60歳前後で連れ合いを失うのは悲しいことですが、この映画を見る限り、主人公は結婚後初めて能動的にアクションしたように見えました。不幸にして、そんな境遇になった人への応援映画です。でも、一番いいのは、連れ合いが存命中でも自己の魂を燃やせる環境を自ら作ることだと思います。それを気付かせるための映画かもしれない。ラスト近くで「ひまわり」が映った時に感じたことですが、常盤貴子の顔の骨格ってソフィア・ローレンに似ていますね。だから何だって、なんでもないんですが。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-02-21 02:59:29) |
1766. 伝染歌
《ネタバレ》 歌によって自殺願望が伝染していくのかと思ったら、どうもそうでは無いみたい。ホラーと思って観始めたために肩透かしを食らった感じでした。映画のつくり自体はかなりしっかりしていますが、ストーリー的には見るものが無いし、大挙して出てくる女子高生たちのピン芸ということでもない。つまり全体的に中途半端ですね。この映画に限らず松田龍平がかなりイマイチだと思うのは私だけ…? [CS・衛星(邦画)] 2点(2009-02-21 02:36:46) |
1767. 8mm
《ネタバレ》 探偵が少しずつ殺人8ミリフィルムの出所をたどるくだりは悪く無かったです。どんな奴が何のために作っているのかには興味があったから。100万ドルには驚いたけど、そのネタが割れた後は何も無かったですね。いや、主人公は必殺仕事人やってたけど、殺して決着はダメでしょう。映画のテーマと言えるようなものが復讐のアクションで飛ばされた印象です。被害者に同情して、殺しに手を染める主人公像は無理があるんじゃないかな。まぁ、悪役がやられるシーンは溜飲が下がる気分ではありましたが…。映画としては、金持ちの道楽なのか、性的倒錯行為なのか、或いはもっと根本的にスナッフフィルムを見たがる人の性なのか、どこかに何らかの主張をぶつけて欲しかったです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-02-18 05:10:27)(良:1票) |
1768. コラテラル
《ネタバレ》 ヴィンセントとマックス。この二人には共通点と相違点がある。ヴィンセントは殺すことが好きで殺し屋をやっているようには見えなかった。本人の弁だが殺し屋を始めたのが6年前。それが本当なら転身したということだ。殺し屋稼業に就く前のことは語られない。一方のマックスはタクシーを転がして12年。リムジン会社を起業する夢を語る。タクシー運転手の自分は仮の姿だ、まだ途上だ…と。 ヴィンセントは自らの過去をマックスに重ねたのだと思う。自分も夢をストレートに語った時があった。だが、もう語れない。夢をまっすぐに語るマックスを青臭いと感じたのか、羨ましいと感じたのか。おそらくその両方だ。そして“仕事”が思うように運ばず苛立ったヴィンセントは指摘してしまう。確かこんな台詞。「お前はすでに夢が実現しないことが分かっている。なのに自分をごまかし続けている」。この言葉はヴィンセントが6年前に、自身にも浴びせた言葉ではなかったか。二人の共通点は夢が叶っていないこと。相違点は、夢を諦めたか否かではない。夢が叶わない現実を受け入れたか否か、である。 何度か機会があったはずなのに、ヴィンセントはマックスを殺さなかった。それは過去の自分を全否定したくなかったからだろう。 誰しも人生に夢を描く。ほんのひと握りがその夢を実現させる。では、実現できなかった者たちはどこへ行くのか? 大多数は殺し屋にはならずとも、ヴィンセントのように線を引いて人生を送るのである。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-02-18 04:44:59)(良:1票) |
1769. フレンチ・コネクション2
《ネタバレ》 犯人逮捕という意味では中途半端に終わった1作目の補完を目的にしたような2作目ですが、監禁~クスリ漬けの時間が長くて退屈。自分が観た字幕版はフランス語が一切訳されていなかったので、ちょっとイライラもした。1作目同様にジーン・ハックマンは頑張ってますが、どうも執念が空回りしている感が否めない。ポパイってニックネームに合わせようと無理しているような印象でした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2009-02-15 17:50:24) |
1770. フレンチ・コネクション
《ネタバレ》 40年前の作品なので、今となってはストーリー的には至って平板に思える。だけど、当時高い評価を得たことが頷ける力作でした。覚醒剤ルートを追及する刑事たちの執念が画面から強烈に放たれていました。特にジーン・ハックマンの泥臭いしつこさは特筆もので、車で電車を追いかけるシーンはかなり魅入ってしまった。それ以降の刑事モノに結構影響を与えているのではないかと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-02-15 17:41:23) |
1771. チーム・バチスタの栄光
《ネタバレ》 原作既読でTV未見。原作との最も大きな相違点は田口の性別だけど、この田口くらいほんわかした方が白鳥との差がハッキリして、映えていたんじゃないかと思います。バチスタチームの内面を追って行く面白さが田口と白鳥の掛け合いの面白さにすりかわった感じかな。映画なりのアレンジですね。結局、田口は何をしたのかという疑問は残るけど、ソフトボールのシーンなんかは微笑ましくて、まぁいいんじゃないって気分です。今作はそれくらいのお気楽さを目指したと思いますね。原作にあったような、犯人の麻酔医の動機に深く踏み込むのであればこのトーンじゃ持たなかったと思うけど、それを外したのも計算内のように感じました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-02-15 17:36:29) |
1772. AVP2 エイリアンズVS. プレデター
《ネタバレ》 劇場で「エイリアン」の初作を観てから、あの生物が市街地に降りたらどういうことが起こるのかと30年近く思い巡らしていただけに、やりきれない内容だった。何のことやら分からない画面ばかりで相当ストレスが溜まる。リドリー・スコットの「エイリアン」はその姿かたちの露出を最小限に抑えることで怖さや緊迫感を見事に演出したけれど、その真似でもしようと思ったのだろうか。だとしたら、ホントの猿真似だ。ストーリーの本流に絡まない登場人物をたくさん出して、人的背景をろくに説明せずに必然なく殺して行くのは、完全に三流モンスタームービーの手口。確かに30年前の骨董品的素材かも知れないけど、こんなクソ映画で消費されるのは耐え難い。映画に怒りを覚えたのは久しぶり。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2009-02-15 13:52:34) |
1773. NOTHING ナッシング
《ネタバレ》 あの白い世界は二人の願望が形になった世界だけど、その時点で現実からの逃避ですね。そして、意味の無いことを喚いている感じです。物質も記憶も消してしまえるなら、確かにその世界では王様かもしれない。それを何らかの方向への向かう契機として展開するならまだ分かるけど、まったく進歩せずに悪ふざけとガキのケンカだけで終わった。かなり不快。映画の意味がNOTHING。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2009-02-15 13:49:00) |
1774. アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎作品は何作か読んだけど、このタイトルは未読。でも映画の随所に伊坂作品らしい会話のテンポや言い回しが見受けられ、この監督は良くエッセンスが分かってるのではないか、と思いました。それと瑛太という役者を見直しました。いや、別に見下したり見損なったりしていた訳じゃないけど、この映画の肝になる人物の演じ分けがしっかり出来てました。入国間もないブータン人のおどおどした様子とか、上手でしたね。虫も殺さないブータン人も友情のためなら例外もあるようで、自分は好感を持って見ました。ブータンの知識はほとんどなかったのでちょっと調べたら、国民総生産ではなく国民総幸福量を指標に世界一幸せな国を目指す、というユニークなお国でした。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-15 13:36:58)(良:1票) |
1775. となり町戦争
なるほど。この映画は反戦などというお題目を論じているのでは無い。国家間の戦争が起こった際に、身の回りに起こることを、スケールダウンしてシミュレートしているようだ。日本が当事国になった最後の戦争である対米戦争は、自分が知る限りかなり広範に被害が及んだが、近年の報道に見聞きする戦争(というより紛争)は随分と様子が違う。当事国でも直接的に関わっているのは一部の政府関係者と戦闘員と戦場付近に住んでいた不運な人たちだけで、国民のほとんどは蚊帳の外。そして、関わっている一部の人の周囲だけで、不幸も含めて利害関係が発生し、決着する。そのシミュレーションという意味で、となり町と戦争をする着想は面白い。実際に日本が紛争の当時国になっても、市井の空気はあんな感じじゃないかな。さて、この映画のストーリーに関してだけど、宣戦布告に至る利害の衝突などを明確にしないと、見ていてイライラする。徴用された江口の戸惑いは、戦争をやる意味が分からなかったことに尽きる。不条理さを狙ったのか、そんなところでモタモタしているからテーマがぼやける。着眼を活かすなら、もっと実際の紛争をなぞったうえで、シナリオを練って欲しかった。勿体ない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-02-12 21:53:25) |
1776. 伊豆の踊子(1974)
《ネタバレ》 随分と昔に読んだ原作なので曖昧になっているが、テーマはもっと主人公の内面に寄ったところにあったような気がする。それがこの映画ではことさら階級差別が強調されていました。紋々をしょった酔客に抱きつかれた山口百恵のストップモーションで終わることが象徴的だが、どうもいただけない。旅芸人は虐げられていた、というだけの映画に見えてしまうこともあるが、それまでの百恵・友和の純情トーンとの違和感かな。彼女の映画デビューをアイドル映画ではなく文芸作品らしくまとめて、箔をつけたかったのだろうか? あのラストカットのおかげでバランスの悪い映画になった気がします。山口百恵ばかりが注目される作品だけど、三浦友和も実はこれがデビュー作。相当の人数からオーディションで選ばれただけあって、初めての演技とは思えないくらいにしっかりしてました。今作ですでに感じられることだけど、彼の不幸は二枚目過ぎるということですね。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-02-12 21:45:18) |
1777. ハチミツとクローバー
ほとんど全員が片想いなのね。片想いの状態が進展せずに時間だけが経過すると不健康・不健全になって行くようです。いわゆる、恋の病って奴ですか。この映画は人を好きになる動機の部分をほとんどぶっ飛ばして、その病の中身を描いていましたが、どうも中途半端でどこにも行き着いていない感が強かった。消化不良だと思います。そういう原作なのかな? [CS・衛星(邦画)] 3点(2009-02-11 21:38:04)(良:1票) |
1778. 河童のクゥと夏休み
《ネタバレ》 クゥが吹っ飛ばしたものはカメラのレンズやカラスではなく、人の頭でもおかしくない状況だったと思う。ただ、それをやったら違う映画になってしまったのでしょうね。クゥの言動はよく考えられていたと思います。全く虚飾が無く正直にしかしゃべれない。嘘なんて言葉は知らないのでしょう。ラストで少し涙が出たのはクゥの純粋さに打たれたからだと思います。そのクゥと暮らし始めた家族の描写も上手でした。サラリーマン家庭に妖怪がやってきた状態が無理なく描かれていて、その構成力に感心しました。クゥの純粋さと対極に描かれたのがワイドショーメディアの醜悪さでしょう。この映画を観た大多数の人が同様に感じたと思うけど、ワイドショーは今日も逞しくどうでも良いネタを追い続ける。現代人が抱える業にげんなりしてしまう。少し考えると、クゥの受難は時代こそ違え彼の親父が被った災難と同じ種類のものと気付く。元凶は我々、ということになる。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-02-11 18:46:50) |
1779. 単騎、千里を走る。
《ネタバレ》 映画のストーリーにはさほど感銘を受けなかったけど、旅の意義みたいなものを考えてしまった。人は普段の生活の場から離れると、自分のことが客観的に見えるようだ。離れる距離によって視点は変化する。外国へ行ったら、日本にいる自分が見える。認識域が拡大すると言っても良く、それは時に閉塞状況を打開する契機になる。息子に代わって仮面劇を撮影するために中国を訪れた健さんは、期せずしてそんな状態になったのだと思う。この父子の諍いの原因は詳しく描写されていないが、肉親がゆえの甘えと逃げで反目し合ったのだろう。もともと、死期が近い息子に何かしてやれることは…という想いがきっかけになった中国行だったが、その行程は息子との心の距離を縮める旅路となった。自らの意固地を融かし狭量を悔恨させたのは、生活エリアを離れた効果だと思う。旅先で触れた中国の人たちの人情と雄大な風景が助力したことは言うまでもない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-02-11 18:33:50) |
1780. ナビィの恋
《ネタバレ》 西田尚美のワイルドな魅力とおじい役の登川誠仁のすっとぼけた魅力が両輪でストーリーを引っ張りますが、沖縄という舞台でこそ映えるキャラクター設定ですね。80歳近い年齢で駆け落ちするサンラーとナビィにしても、あの土地柄だから許せるということじゃないでしょうか。画面からはアスファルトやコンクリートで固められた都会には無いおおらかさを感じます。この映画は、そんな風土にマッチしたキャラとストーリーだからこそ、強く心に沁みたのだと思います。西田尚美が魚をくわえて走っても、幼なじみの尻をけっ飛ばしても、どうしようもなく歌が下手でも、おまけに寝相が悪くても、とっても魅力的に見えるのは、やはり風土にマッチしているからだと思います。さて、ひとり残されたおじいですが、私は大丈夫だと思います。島の占い師の預言で強引に引き裂かれた二人の過去をおじいは知っていて、そのおかげで自分は憧れのナビィと60年近く一緒に暮らせた。おじいはその60年で納得していたと思います。勿論、ナビィが残ってくれるに越したことはないけれど、乗り越えられますよ。かわいい孫も帰ってきたことだし。「おじいはどうするの~?」「若いからだいじょ~ぶ~」。その通り。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-01-30 02:42:13) |