161. エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事
コスチューム・プレイ(いやらしい方ではない)は何となく肌に合わないな、と常々思っていて、いつか好きなものに会えるかも…と期待しつつ毎回観るのだけれど、これも肌に合わなかった。ゴージャスなんだけれど、どうも私の心をスルーしちゃうんですよ。悪い作品とは決して思わないのだけれど、何か弱いんです。ピンと来ない。 5点(2004-04-02 14:00:53) |
162. 炎上
10代の時に原作の「金閣寺」を読み、その心情の全てを吐露し抉り出すような文章に圧倒され、日本語はこんなにも美しく深くグロテスクなのか、という畏怖に似た感情を抱いたのを憶えている。言葉は時には心を凌駕することもあるのかも知れない、そう思った小説の1つでした。しかしあまりにも観念的に過ぎ、しかも私の読解力が呆れるほど痛い為、主人公の内面世界の外の状況が客観的に分からなかった(記憶がある…私だけかな?)。そしてこの映画化作品を観た時にやっと理解した。こういう状況だったんですね。小説と映画の両方に接することをお勧めしたい作品です。どちらも強烈な美意識に溢れています。「滅して初めて完成される」、それは仏教観念の1つなのです。 8点(2004-04-02 13:53:14) |
163. 白いドレスの女(1981)
20代半ばのキャスリ~ン・タ~ナ~!セ~クシ~!「シリアル・ママ」なんか観た後でこの作品を観るとちょっとびっくり。若いし体は締まってるし。そうだよな…この人はもともとセクシー系で出て来た女優だもんな…。とにかく女は怖いのです。本当に怖いのです。女が本当に怖さを発揮したらとんでもないことになります。女の私が見て来て言うんだから間違いない。いや、ほんとに女は怖いんだ。常に予想の斜め上を行くんだ。 5点(2004-04-02 13:33:59) |
164. クルーシブル
《ネタバレ》 実話ですね。ぞっとします。映画作品として良く出来ているのかどうかは分からないけれど、テーマがテーマだけに嫌な感じに心にこびり付く印象的な作品であることは確か。閉鎖的な社会と凝り固まった概念の下で人間がどんなことをするのか、ということを目の当たりにしてショックを受けた経験のある私としては、あらゆる意味でへこんだ作品。逃げ場のあった私は幸い。逃げ場のない人間の末路はこの作品に。 4点(2004-04-02 13:18:52) |
165. メトロポリス(2001)
CG技術はここまで来たのか…とその映像世界には圧倒されるのだけれど、ありがちなことに映像に内容が付いて行っていないような気がする。テーマ自体にはいくらでも突っ込んで行ける深遠さがある。それはもう、怖いくらいに。しかしどこか逃げに走り、映像技術と選曲で誤魔化した感じがするのは否めない。壮大な氷山の一角をもっともらしく見せて、お茶を濁した感じ。提示したものが大き過ぎる為、消化しきれないであろうことを製作側も気付いていたはず。映像表現姿勢はポジティブだったけれど、他の全ての姿勢がどこかネガティブでした。 5点(2004-04-02 13:06:26) |
166. ボクシング・ヘレナ
出て来る人物全ての髪型と服装が許せない。もうみんな絶望的にファッションセンスが駄目なんだけれど、特にヘレナの恋人なんか普通のテンションで乳首の透けるシースルーの服を着てた。それがこの世界観の中ではクールなものとして扱われている。許せない。つまりは映画の世界観自体にセンスがないんです。ああいうのは個性ですらないです。演出にも違和感ばかり。何ですか、あの突然変なスローモーション入ったりするのは。残念です、テーマは悪くないと思うので。センスがあればもっと良い作品になったはずなのに。 3点(2004-04-02 00:14:56) |
167. ラスト・オブ・モヒカン
テーマがテーマだけに歴史大作的なものを期待したのだけれど、壮大というにはこじんまりとした作りで、何だかリアリティにも欠け、それほど印象にも残らなかった。当時のデイ・ルイスは妙にコアなファンに騒がれていた記憶があるけれど、イマイチその魅力は私には分からなかった。マデリン・ストーは本当に美しかった。 5点(2004-03-30 20:41:53) |
168. マルコヴィッチの穴
《ネタバレ》 発想は素晴らしいと思う。異才ジョン・マルコヴィッチという人物の起用、7階と8階の間の奇妙な階、すっぴんのキャメロン・ディアス。全てがシュールで人を食ったようで奇想天外。観る前はその前評判から、「自分はこの作品は好きだろうな」と予想を付けていた。だけれど駄目でした。何が駄目だったって、マルコヴィッチ本人がマルコヴィッチの穴に入った時のオチですよ。何だちきしょう、ネタを考えるの放棄しやがったな、あんなんありかい、と思いました。でもあれも監督なりの狙いだったのかな…と観てから何年経っても考えたりはする。そういう意味では確かにかなり印象的な作品ではあります。 4点(2004-03-30 20:21:49) |
169. サウンド・オブ・ミュージック
良質な歌が堪能出来る健全極まりない作品。不健康な作品が大好きな私でも、この作品には素直に感動する。1mmの害悪もない、教科書的な善意に溢れた世界観。本当ならそんなのは薄っぺらく嘘臭くなるはずなのに、この作品にはそんな破綻も欺瞞も見えないのが凄い。映画史の善意であり良識であり良心。今ではこんな作品はどうやったって作れない。 10点(2004-03-30 20:06:09)(良:2票) |
170. 風と共に去りぬ
スカーレットはこんなに嫌な女だったのか、と驚いた。イライラした。高慢で傲慢で我儘で自己第一主義。地球は自分の為に動いていて全ては自分の為にある。何て嫌な女だろう。……でも、その全てのベクトルが常に前を向いている。彼女は惨禍の中でも前しか見ない。後ろだけじゃない、横すら見ない。負傷した兵士たちの間をずんずん歩いて行くシーン。あの見事な俯瞰は全て彼女の為だ。中心は彼女だ。嫉妬した。そしてその嫉妬はいつしか羨望になった。あの時代にあそこまで我を貫いた女性。これは参った。お見事。「この作品を好きか?」と問われると言葉に詰まるけれど、色々考えるに、どうしたって私はこの作品を否定出来ない。どう考えても名作だと思うからです。 9点(2004-03-28 15:38:17) |
171. ラスト サムライ
あらゆる視点からの見解がすでに書き尽くされていて、何を言っても二番煎じか蛇足になってしまうので、色々考えた挙句シンプルに、「何はともあれ、まあ、良かったよ」と。謙さんの強烈な色気のある眼差しと立ち振る舞いには完全ノックア~ウト。いや、もう、本当に素敵でしたよ。美しかったですよ。 7点(2004-03-28 15:17:08) |
172. ブロウ
珍しいことに、個人的に全くこれっぽっちも共感する部分がなかった作品だった。私の人生と全く被る部分がないということもあるのだけれど、単純に多分、この映画と私の相性があまり合わなかったのだろうと思う。それでもやっぱりジョニー・デップは素敵だったし、レイ・リオッタも地味に良かった。彼らに4点献上しよう。 4点(2004-03-28 15:01:42) |
173. クルーエル・インテンションズ
少女漫画的青春サスペンス。いかにも作られた感じの話で、チープな劇映画っぽい雰囲気なのだけれど、一定のテンポとテンションがあって分かりやすく観やすい作品。やっぱり若くて小綺麗な俳優女優を観ているのは楽しいですよ。ライアン・フィリップのリース・ウィザースプーンへのラブラブ視線が見ているこっちが照れ臭くなる位に直球です。私念入りまくりです。 6点(2004-03-28 14:51:20) |
174. ロミオ&ジュリエット
ディカプリオが無条件でかっこいい、素敵、と思えた唯一の映画。主演2人の若さと可愛らしさが良かった。当時友人と観に行って2人でうっとりしていたのを思い出す。ああ、あの頃私は10代だった…。バズ・ラーマンの人工的で現代的に過ぎる画面作りは好みの分かれるところだろうけれど、私は素直に綺麗で美しいと思った。青味が印象的。ちょっとした実験作なので、トータルで見てシェイクスピア劇としてどうか、と聞かれると確かに違和感はあるのだけれど、1つの“ソフトで嫌味のない大衆的な前衛映画”と思えばなかなか良いと思います。 7点(2004-03-28 14:38:25) |
175. マイ・プライベート・アイダホ
実際のところは違うにしても、マイクとリバー・フェニックス本人の姿が重なる。本当に消え入ってしまいそうだった。ここにいても、どこにもいない。どこに行っても、どこにも辿り着けていない。そんな感じだった。 5点(2004-03-28 14:27:16) |
176. オテサーネク 妄想の子供
子役の顔が邪悪で素敵。9、10歳であの邪悪さはなかなか出せない。目の上のでっぱりが凄い。「HUNTER×HUNTER」のフィンクスですか。たまにラース・フォン・トリアー監督にも見える。何かもう、逸材だ。ヤンの長編はコマ撮りが激減する上にちょっと中だるみするのは否めないけれど、ヤン自体が私の激・憧れ人なので、作品を撮ってくれればそれでいいです。それにしてもヤン夫妻、夫婦揃ってここまで感性と趣向と方向性が同じベクトルを向いているというのは凄い。奥さんの絵もキてますよ。ほんまもんのおしどり夫婦です。次の作品も期待しまくってます。140歳位まで生きて下さい。そして139歳位までは仕事して下さい。 9点(2004-03-26 23:51:12)(良:1票) |
177. プロスペローの本
《ネタバレ》 まず映像美だけで8点献上。シェイクスピアの「テンペスト」をグリーナウェイ流に味付けした圧巻の映像絵巻。そのグロテスクな描写、そのイマジネーションの奔流には圧倒された。しかしストーリーは非常に難解で、はっきり言って訳が分からない。意味が分からない。何だコリャヒャ~。おお、おいらはとんでもない映画に手を出しちまったぞぅあ、と頭を抱えた。1回寝た。2回寝た。結局観終わるのに3日かかった。分かったようなレビューなんて書けない。いや、ほんと1mmも意味が分かりませんってばよ。それでもこのグロテスクで完全に1つのテーマの下に閉じている世界観にはプチ惚れした。特にエンドロールが一切なく、本当に1つの「劇」のようにぱっきりと終わったのには感動した。それで1点追加。ところで、「ザ・セル」ってこの映像世界をパクっ…参考にしているような気がするのだけれど、どうでしょうか。でもあっちがCGで表現したものをこっちはアナログでやってますからね、その点はやっぱ凄いですよ。一見の価値ありです。でも勧めません、こんな訳分からん気取った芸術映画(どっちだよ)。 9点(2004-03-26 23:32:05) |
178. チョコレート(2001)
綾戸智絵がこの作品に対して、「ベッドシーンを見て泣いたのは初めてだ」というコメントを寄せていた。もし、「ベッドシーンが印象的な映画は?」と聞かれたら私もこの作品を挙げる。2人が一線を越えようとした途端、部屋の密度が急に重く濃密になった。まるでその場に居合わせたような息苦しさ。そっと目を伏せて、退出しなければならないような、そんな居たたまれないような気持ちになった。 7点(2004-03-26 23:07:50) |
179. ぼくの神さま
《ネタバレ》 トロの眼差しになぜか「ブリキの太鼓」のモラトリアム少年を思い出した。ダイレクトに本質を突いて来る、子供の特権たる無垢な残酷性。強烈に語る目。雄弁より物語る沈黙。キリスト教に根差したこの作品を私がどれだけ理解出来たかは謎だし、正直深く探求し分析しようとも思わないけれど、あのラストシーンのトロの目には何かを射抜かれたような気がした。キリストでないことに挫折出来なかった1つの魂の壮絶な選択。トロは最後までキリストでありたかった。キリストであろうとした。ゴルゴダに向かうキリストのように、あの列車に乗って行ってしまった。あの眼差しを残して。 6点(2004-03-26 22:54:47) |
180. リトル・ダンサー
《ネタバレ》 スト破りをした親父の涙。イギリスの閉鎖的な階級社会の中でのああいう選択はおそらく、私たちが考える以上に凄まじい勇気を要する難しく辛い決断なのだろうと思う。あの時点で親父は1回自分を殺した。信念もプライドも仲間の信頼も全部捨てた。あのシーンでこの映画が昇華された。この作品は少年の映画であり、親父の映画でもある。 7点(2004-03-26 22:13:44)(良:2票) |