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161.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票)
162.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 
第一、冒頭の東京での戦闘場面。ヒロインのアリスとそのクローン達の襲撃により、悪の枢軸アンブレラ社の地下要塞は損壊を受け、機能不全に追い込まれる。非情なる議長ウェスカーは部下らを見棄て、ただ一人飛行機で脱出し、特殊爆弾による自爆装置を起動させ、部下もろとも地下要塞を爆発させる。だがアリスはいつの間にか飛行機に忍び込んでいた。アリスが銃を突きつけると、ウェスカーは振り向きざま、首に特殊遺伝子無効化ワクチンを注射する。飛行機が富士山に激突して爆発炎上するがアリスは奇跡的に助かる。 第二、アリスとウェスカーの最終対決場面。死闘の果て、アリスがウェスカーの口に銃弾を撃ち込み、勝利を収める。クリスとクレア兄妹がとどめを弾丸を撃ち込む。それでもウェスカーは復活し、またもや飛行機で脱出する。機上、アリスらの船の自爆装置を起動させるが爆弾は機内にあり、爆発する。アリスが予想して潜ませておいたのだ。上記2点に映画の制作方針が集約されている。安易な設定、強引な展開、御都合主義等の誹りはあえて甘受し、美女がゾンビや敵役をひたすら倒すアクション・シーンを魅力的に描くことに専念したのだ。もともとゾンビを倒すテレビゲームの映画化なので、堅いことは言いっこなしという暗黙の了解がある。ビジュアル重視なのでセクシー美女が多数登場し、ここぞという場面ではスーパー・スローモーションでじっくり鑑賞となる。ヒロインと敵役が超人的な能力を持つのに対し、ゾンビ共は弱弱しく、あっけなくなぎ倒される。テンポを速めるため、非主要人物の描写は記号的でしかなく、次々に消えてゆく。話題作りのためプリズン・ブレイクのパロディも取り入れる。ホラーや人間ドラマ要素を抑え、3Dアクションを気楽に楽しむ娯楽作品に徹したところに成功の要因があるだろう。印象的なアクション場面が2つ。飛行機が山に激突した瞬間にストップモーションとなり、そのままカメラが奥へパンする場面と、アリスが大勢のゾンビ共を引連れて屋上から飛び降り、縄伝いに垂直降下する場面。その適確な映像処理を讃えたい。難点は、スローモーション過多なこと。飽きさせては駄目。素早いカッティングとの併用で緩急をつけるのが肝要。大斧の巨大処刑人はギャグにしか見えず。「噴出する水」の演出のため、水道管の立並ぶ部屋が出てくるが、実際にあんな部屋があるか?必殺兵器の25セント硬貨弾は威力があるか?
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-19 11:35:34)(良:1票)
163.  天空の草原のナンサ 《ネタバレ》 
モンゴル高原は標高が1000mもあるのに広大な空間が広がる。大地は満目緑に覆われ、空は無辺に開き雲は自在に変化する。まさに癒しの空間だ。そこで自然と共に暮らしてきた人達はどんな人達だろうか、暮そのらしぶりはどうか、そこに住んでみたい、想像や想いが次々とふくらんでくる。あたかも画面から爽やかな風が流れてくるような映画だ。 物語は民話「黄色い犬の洞穴」になぞらえるように進む。民話曰く。『長者の娘が重い病気になる。父が賢者に相談すると飼い犬を追放せよとの託宣。犬を洞穴に閉じ込めると、娘は快復した。実は娘に通う青年がいたが、犬が妨げとなっていたのだ。やがて二人は結婚し、子を授かる。子は犬の生まれ変わりという』主人公は寄宿学校から帰省した”高原の少女”ナンサ。洞穴から犬を見つけて連れ来るが、父から捨てるように命じられる。野犬が狼を呼ぶのを恐れてのことだ。少女は犬を隠す。あるとき犬を追って道に迷い、よそのゲルに泊めてもらったが、そこの老婆から黄色い犬の民話と輪廻転生の話を聞く。帰った少女は妹に過去世の記憶があると信じる。季節が移り、一家は引越すが、犬は杭につないで置き去りにする。移動途中で長男がいないことに気付く。父親が慌てて戻ってみると、犬は長男をハゲワシから守ってくれていた。こうして犬は家族として迎えられた。ここで冒頭場面に戻る。犬を丘に埋葬する父と娘。来世で人間に生まれるように願い、尻尾を頭に置く。そこには悲しみは無く、脈々と続く命と魂の営みがある 民話と輪廻転生思想は、モンゴルの古き伝統の象徴で、それが21世紀の少女にも受け継がれてゆく様子を詩情豊かに描く。作為を感じさせない演出と、子供達の自然な演技は賞賛に値する。文明社会の象徴たる選挙カーと引越しの家族が交錯するラストが印象的だ。未来の伝統の衰退を暗示している。 遊牧民の暮らしぶりが興味深い。チベット仏教の信仰。五人家族で、牛6頭、馬2頭、羊250頭も飼う。羊の種類の多さ。牛糞での積木遊び。6歳児が乗馬して放牧の手伝い。丹精込めたチーズ作り。手回しミシン!器用でないと使えなさそう。風力発電。野菜のない食事。近くに水辺があるので野菜は作れると思うが、事情が許さないのだろう。鑑賞後、この緑濃き高原も冬には酷寒の大地に変貌することを想像した。厳しい自然に堪えてこそ、伝統が守れるのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-17 15:56:59)
164.  蝶の舌 《ネタバレ》 
思春期にも満たない少年が主人公なのにエロス満載という不思議な映画。しかも反戦が主題。エロスと反戦はなじまないと思うが、文化の違いだろうか。終盤まで、「チップス先生さようなら」のエロス版と思っていたが、最後にどんでん返しが待っていた。全てはラストのための伏線だったのだ。 喘息持ちで、人見知りで、学校に馴染めない少年を優しく迎えてくれた先生。喘息の発作のとき、川の水で体を冷やして救ってくれた先生。蝶の舌やティロノリンコという鳥の生態を教え、自然への興味を開いてくれた先生。虫取網を買ってくれた先生。「蝶の舌を顕微鏡で観よう」と誘ってくれた先生。「本は心を豊かにする」といって「宝島」を貸してくれた先生。自由の大切さを説いて教壇を去った先生。少年と先生の心温まる交流が描かれる。少年の両親も先生を慕っていた。だが内戦が勃発し、共和派の先生が逮捕されると、保身に走った両親は思想転向し、広場で先生を面罵する。母は少年にも叫べと命じる。「不信心者!アカ!」意味もわからず叫ぶ少年。次の言葉は「ティロノリンコ、蝶の舌」だった。少年にとって両者は同格なのだ。 「あの世に地獄などない。憎しみと残酷さ、それが地獄のもととなる。人間が地獄と作るのだ」先生の語った通りの地獄が出現した瞬間、「空のベット、曇った鏡、虚ろな心」の世界が広がる。 少年はトラックの先生めがけて石を投げつける。残酷さを強調するための演出だが、やり過ぎだ。無垢な少年が命令されてもいないのに、昨日までの恩師に石を投げつけることはできないだろう。あえてやるなら石が当って血が出るくらい徹底した方がよい。それならキリストとユダに擬すこともできた。少年の親友ロケの父親も連行されてゆくが、前段階で少年とその父親の交流場面ばあればなおよかった。この場面、少年のガールフレンドのロケの妹の姿が一瞬しか見えないのは惜しいことだ。 愛と自由を教えてくれた恩師に対して裏切りと罵倒で応えなければ生きてゆけない残酷な現実。けれども少年の最後の言葉からは、裏切りや罵倒を超越した「希望」が感じられる。純粋さを失っていないのだ。 蝶の舌はゼンマイ状に巻かれ、普段は隠れている。ヒトも本心を隠すものだ。少年が蝶の舌を見ることはなかった。いつか大人になったとき、自由という甘い汁を吸うことができるのだろうか。先生の眼差しは暖かく少年を見守っているように見えた。 
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-16 23:51:22)
165.  バダック 《ネタバレ》 
イラン版「山椒大夫」といったところ。「バダック」とは国境沿いで密輸品を扱う運び屋のこと。 両親を亡くし、天涯孤独となった子供の兄妹が、人さらいに連れ去られ、人身売買の仲介者に売られる。兄はバダックとして密輸業者に買われ、学校にもいかず、苛酷な強制労働に従事させられる。妹は仲介者の所有となる。イスラム諸国では国内の売春が禁止されているため、異国の女性を連れてきて売春させることがあるという。妹はそれの予備軍で、いずれ海外に売られてゆくのだろう。やがて兄はバダック仲間の協力を得て、監禁所を脱走し、国境を越え、わずかな情報を手がかりに妹の行方を探す。そして最終的に妹が監禁されている船に潜伏することができた。しかしそれは勘違いで、皮肉なことに妹は密輸業者の元にいたのだった。全ては子供の朝知恵であったという残酷な結末。 子供の誘拐、人身売買、密輸、殺人、売春等、イランで子供の置かれている厳しい現実を知ってもらおうという企図がみえる。しかし成功しているとは思えない。あれこれと疑問の多い映画なのだ。 水の枯れた村で主人公の一家だけが井戸を掘ってまで村に留まろうとする理由は何か。陥没事故時、村人が一人もいなかったいのはどうしてか?さっきまであれほどいたのに。全員が一斉に引っ越したか。兄が最初の脱走をしたとき、監禁所に舞い戻って来ざるを得なかったのはどうしてか?大人達、警察、役所、宗教施設などに相談しても保護してもらえないのか。そんなことはあるまい。国境を越えるとき有刺鉄線にてこずっていたが、切断すれば簡単に越えられる。少女達が監禁されている施設に忍び込んだ兄とその友人だが、友人がトラックの中に妹がいると思い込んだのはどうしてか。声をかけさえすればよかったのに。トラックが走り去った次の場面で、兄と友人が港に停めてあるトラックを見張っている。どうやってトラックの後を追ったのか。全体として兄の冒険的行動に多くの比重がかけられているが、それよりも苛酷な環境を描いた方が企図に叶っていたのではないか。救いの見えないエンディングにしたも疑問だ。妹は終始泣くだけで、他に何もしない。他力本願では、観賞者の心は動かない。 
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-16 05:19:48)
166.  少女の髪どめ 《ネタバレ》 
会社の食糧買い出しの代金で自分のチョコも払う、拾った硬貨はネコババ、仲睦まじいカップルを見ると羨ましい。転落事故で、運ばれる老いた労務者ナジャフをみても同情せず、自殺でもしたかとジョークを飛ばす。世間知らずで、浅慮にして喧嘩早く、どこにでもいそうな青年が主人公。ナジャフの代わりに息子ラーマトが建築現場で働くことになるが、諸事情により、青年は自分の食事関係の楽な仕事をラーマに奪われてしまう。逆恨みした青年はラートマを殴打したり、子供じみたいやがらせをする。そんなある日、ラーマトの秘密を知る。ラーマトは女だったのだ。それからは手の平返しで、滑稽なほどラーマトに夢中になる。美少女でもないのに不思議だが、恋は盲目だ。ラーマトに関心を持つと自然と彼女の置かれた、違法アフガニスタン労働者問題にも関心が向くようになる。建築現場に難民調査が入って、アフガニスタン人は全員解雇になった。親子の身を案じた青年は様子を見に行くが、そこでアフガニスタンの労働者の実態を目撃することになる。冷たい冬の川に腰まで浸かりながら重い岩を運ぶ女性達、その中にいとしのラーマトの姿もあった。青年は居ても立ってもおられず、全貯金をナジャフに渡そうとするが、頼んだ人に持ち去られてしまう。その人も急迫した事情があったのだ。仕方なく大切なIDカードを売って金を作り、ナジャフに渡すが、翌朝アフガニスタンに戻ると告げられる。ショックの余り、お茶も断り、走りに走る青年の姿が痛々しい。これで永遠の別れとなるだろう。思いを断ち切るため、少女の髪どめを捨てる。翌朝そっと見守るつもりだったが、少女が籠の荷物をこぼすと、思わず走り寄ってしまう。ぬかるみで、少女の靴が脱げると履かせてやる。無言の二人。けれど少女の表情から青年の思いが伝わっていることが読み取れる。 ラーマトの本名がバランで、これが映画の原題で、ペルシャ語で雨の意味。乾燥地イランでは、雨は春を訪れを告げる天の恵み。少女の靴跡に雨が降り注ぐラストは寓意に満ちている。「離れた友の恋の炎で燃ゆるこの心」の詩も良かった。 青年の無垢で純朴な愛が、雨が乾いた大地を潤すように、心に潤いをもたらす、そんな秀作だ。映像で感情を表現するのに長けている。ただ文化の違いのせいか、馴染めないところもあった。少女が川で転んだり、籠をこぼしたりの演出はちとわざとらしい。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-14 21:53:53)
167.  ナイロビの蜂 《ネタバレ》 
アフリカを舞台に、製薬会社と国家による国際的陰謀を暴いた社会派作品で、不正を追及した外交官夫妻の愛と死を鮮烈に描く。妻テッサは、製薬会社の非人道的な治験を調査するうち、利権のためそれに加担する官僚社会の裏側を知る。そこには国家や企業が利権に群がり、アフリカを食い物にする構図が浮かび上がる。そのため闇社会により抹殺された。夫ジャスティンは何も知らなかったが、妻の死に疑問を持ち、やがて妻の追及していた陰謀を嗅ぎ付け、妻の死の真相と陰謀の解明をすることを決心する。夫の行動は分り易い。妻の真実と自分への深い愛を知り、一人蚊帳の外にいた自分を恥じ、贖罪のために妻の後を継ぐ。死に場所に選んだのは妻が死んだ場所。これが涙を誘う。残念なのは、不正に関する情報が不正者側方からもたらされること。わざわざ教えてきてくれるので、謎解きの妙がない。一方、妻の行動は分りづらい。そのバックグランドが描かれないからだ。どうして外交問題に興味を持つのか、どうしてスラム街の住民に同情的なのか、どうして死を賭してまで不正を追及するのか。それぞれが度を超えているのだ。二人の成り染めも不自然。外交官ジャスティンの講演会で、テッサが国の外交姿勢のを追及する。講演後ジャスティンが声をかけお茶に誘うが、何故かテッサの家に赴き、そのままベッドイン。ありえない。次にテッサが事務所に押しかけて、逆プロポーズ、即結婚、アフリカへ。端折りすぎ。不衛生な病院で出産しようとするのも理解しかねるし、流産した原因が問題の薬のせいなのかも曖昧なまま。夫を守るためとはいえ、国の不正を外交官たる夫に相談しないことがあるだろうか。性急すぎる行動と青い正義感が徒となった印象を招き、同情しにくい。彼女の殺害場面が描かれていれば違ったろうに。不正治験だが、副作用で死者や死産が頻出するようでは、先進国で認定されず、発売されたとしてもすぐに発売禁止になるだろう。製薬会社がそんな薬に固執するとは思えない。クライマックスで、アフリカ局長の不正への関与が暴かれる場面だが、劇場的効果を狙ったのはわかるが、一介の自殺した外交官の葬儀に大勢のマスコミが詰めかけているのに違和感をもった。時間軸を交錯させた前半部分は初見では混乱するので感心しない。黒人医者も殺されたが、あっさりとしか描かれず、テッサの扱いとの温度差が気になった。この主題でヌード・サービスは不要。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-14 15:15:02)
168.  老人と海(1958) 《ネタバレ》 
84日の不漁の後、漁に出た老人が数日間かけて獲得した大魚と、それを喪失する顛末を描いて、生きるとは何かを問いかける。戦争を描いた文豪らしい骨太な主題だ。 老人にとって巨大マカジキはどういう存在だろうか。魚を獲ることは、自分を生かすことだが、同時に自分をすり減らすことでもある。魚との戦いには勝たなければいけないが、魚が憎くてそうしているのではない。魚には深い同情を示す。だから巨大マカジキを義兄弟と呼んだ。老人と魚とで一種の共依存関係が成立しており、勝利のあとに得られるのは幸福感と虚無感だろう。人間は他の生物の命を奪い、自分を削って生きてゆくしかないという自然の摂理。それを受け入れるしかないのだ。獲物が鮫に食われた時、老人は我が身が食われたような苦痛を味わったに違いない。満身創痍の死闘の果てに得た獲物が、必死の抵抗にも関わらず、あらかた鮫に食われてしまう。敗北だろうか、ただ運が悪かったで済むことか。そうではないだろう。老人は魚との格闘の中で、生きる悦びの神秘的な迸りを体験した。神の恩寵、祝福ともいうべきものだ。自分の中に眠っていた若さを数刻ながらも取り戻したのだ。老人の勝利といってもよい。老人が時折夢に見るライオンは自身の若さの象徴だ。家に戻って見た夢のライオンはさぞ光り輝いていたに違いない。 旅行者は皮肉にもマカジキの骨をサメの骨と勘違いする。自然と対峙せずに生活する文明社会の人間にとってマカジキとサメの違いはない。だが文明生活からは、真の生きる悦びは得ることはできない。 もう一つの題目は老人と少年の深い絆。老人はマカジキとの死闘の最中、あまりの疲労に思う、あの子がいてくれれば。少年は老人の痛んだ手を見て涙した。コーヒーを取りに戻るときも泣き続けた。それほど二人は一心同体だった。少年にとって老人はあこがれ、尊敬の対象であり、老人にとって少年は救い、慰みそのものだ。老人はかつて少年だったし、少年はいつか老人になる。両者は裏表の関係だ。共に貧しく、命がけで漁に出る海の男だからこそ、世代を越えた絆で結ばれるのだ。二人は貧しいが、決して不幸ではない。相手を思いやる、豊かで暖かな心に包まれているのだから。少年は言う、「今度は連れてって」。希望と未来がそこにある。海はいつでも新しい。少年にとっても、老人にとっても。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-14 00:41:59)(良:1票)
169.  ロレンツォのオイル/命の詩 《ネタバレ》 
一つの命を支えるのにどれだけの犠牲と献身と努力が必要であることか。命の重さを噛みしめる映画だ。内容は重いが希望もある。子供が難病にかかったらどうするかが主題。普通の親なら不運を歎き悲しみ、周章狼狽し、治療は医者任せにするだろう。だがこの映画の両親は違った。医者が治せないのなら自分達で研究し、命を救おうと決意する。副腎白質ジストロフィー(ALD)は、X染色体の異常で、体内の脂肪酸の分解酵素が欠損している為に、脳に炭素数24と26の長鎖脂肪酸が蓄積し、これが白質のミエリン(髄鞘)を溶解してしまう病気だ。発症すると、徐々に脳の機能が低下し、体の機能が衰え、2年程で死を迎えるという。最初に長鎖脂肪酸を含む食べ物を制限する食餌療法を試みるが、検査値は却って悪化した。原因を調べると、食事から長鎖脂肪酸が得られないと、生合成による長鎖脂肪酸が増産されてしまうということが判明した。そこで一計を案じ、体に無害な長鎖脂肪酸を摂取することで、体に「今は十分な長鎖脂肪酸がある」と思い込ませ、長期脂肪酸の生合成を阻止するという案を思いつく。試行錯誤の結果、炭素数18(オイレン酸)と22(エルカ酸)の長鎖脂肪酸の4対1の混合液を摂取することで血中長鎖脂肪酸値が正常値に戻ることを突き止めた。この混合液がロレンツォのオイルだ。次に破壊されたミエリンの再生研究に取りかかるが、これは現在進行中ということで映画は終る。事実を元にしたドキュメンタリー風で、時系列に沿って事象が淡々と描かれるが、特筆すべきは、心理描写の巧みさと深みだ。演技も演出も秀逸で、海よりも深い子を思う親の気持ちは勿論、自己犠牲の葛藤、パートナーを思いやる気持ち、患者の親睦会や医者との軋轢、看護婦や親族との衝突、安楽死の示唆、絶望と希望など、両親の精神は混乱を極め、愛情と狂気がないまぜになって迫ってくる。両親の奮闘以外にも、善意からエルカ酸の抽出を買って出たイギリスの老科学者、自ら治験を買って出た妻の妹、同じ病気の子を持ち夫婦に理解を示す近所の主婦、そしてアフリカから看病にやってきてくれた幼馴染の青年など、周囲の温かい心にも支えられた。ロレンツォ君も苦痛に耐え、必死で病気と戦った。これらが感動を産むのだ。オイルは万能薬ではないが、多くの患者を助けたのは事実で、医療史としても画期的な出来事だったと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2013-06-13 08:30:01)(良:1票)
170.  大陸横断超特急 《ネタバレ》 
今までに観たことのないタイプの誠に稀有な映画。ミックス・ジャンルの傑作として特筆すべき作品。脚本の狙いは明らか。鉄道旅行、恋愛、ミステリー、コメディ、アクション、暴走パニックと、多種のジャンルを融合して、今までにない映画を作ろうという野心が見てとれる。音楽に巨匠ヘンリー・マンシーニを起用し、クライマックスの列車がシカゴ駅に激突する場面で、実物大のセットを使用していることからも映画作りに対するスタッフの熱意と意気込みは十分伝わる。 長距離列車の乗客が偶然死体を目撃したことで、国際的絵画偽造団の陰謀に巻き込まれるという筋書き。 列車紀行情緒から始まり、恋愛、殺人、ミステリー、コメディ、アクション、パニックと様々な要素が加わってくるのは見物である。 基本的に列車内ではシリアス、線路外ではコメディ路線となる。 旅行中の電車の窓に突如死体がぶら下がり、死んだと思われた教授が現れるミステリーな展開はヒッチコックを連想させる。 三度も列車から落っこちては舞い戻るという反復のおかしさは、キートンを連想させる。 美女?との恋愛を絡めたミステリーとアクションは007シリーズを連想させる。かといってパロディではなく、自家薬籠中の物にしているところが手柄だ。 惜しむらくは主人公二人が美男美女でないところ。全体を貫く大きなテーマである恋愛要素が弱くなってしまっているからだ。例えば、アラン・ドロンとイザベル・アジャーニーが主演していたとしたらどうだろうか。映画史に残る怪作になっていたに違いない。 脇役は文句なく素晴らしい。自家飛行機で羊の群れを追い回す中年農婦のぶっ飛びぶり、西部劇マニアの田舎保安官のまぬけぶり、相棒となる車泥棒の黒人の良き人ぶり、コメディ・パートが頑張っている。黒人乗客係やヒッピーたちもいい味を出している。ヒロインは最初こそ積極的だが、その後はずっと受け身で大した活躍もしないのが気になった。 一方、ミステリー・パートはアラが目立つ。陰謀の謎が明らかになり、悪党共の正体が割れるのが早すぎる。もっとサスペンスを持たせるべきだ。偽教授を用意する必要性は感じられない。仮に偽教授が講演をしてもすぐにばれてしまうだろう。列車内で連邦捜査官が殺されているのに捜査されないのが不審だし、肝腎の教授の死体の行方も不明のままだ。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-13 01:13:23)
171.  君よ憤怒の河を渉れ 《ネタバレ》 
とても勢いのある映画だ。謎あり、アクションありで、疾風、怒涛が駆け抜けていく感じ。二度も熊に襲われたり、猟銃で狙われたり、免許なして飛行機を運転したり、夜の新宿を馬で疾走したりと、意表を突く展開の連続で、映画の醍醐味をあじわうことができる。評価したい。ただ強引な展開に不審を抱きながらの鑑賞となるので、爽快感を得るまでには至らないが、最後まで見届けたい気持ちにさせられる。 無実の罪を着せられた者が、無実を証明するために逃走し、真犯人を突き止めるという主題は、とても感情移入しやすく、大衆好みだ。しかしミスキャストなのは残念。主人公杜丘役の役者は、脂ぎって日焼けした親父顔、ぎょろつく目玉、短髪、どすの利いた声で、謹厳実直な検察官には見えない。それに高年齢すぎて、若いヒロインが一瞬で恋に落ちるという設定に無理が生じている。実際に、中年で脂ぎった殺人逃走犯がいたとして、それを助けるホステスがいるとも思えない。常に演技がかった、やさぐれ刑事も鼻につかないではないが、叩き上げの刑事なら、いてもおかしくないと思わせるものがある。後半に杜丘との奇妙な「友情」を結ぶことを思えば、これぐらい個性があった方が適格だろう。 ほとんどが逃走場面だが、鑑賞しながら、どうして家族や親友に連絡しないのかという疑問にとらわれていた。緊急時に助けとなるのは、家族か親友で、真っ先に連絡するだろう。警察やマスコミだって家族や親友を追及するに違いない。それが一切姿を見せないという不自然さ。同僚の上司が登場するのみだ。逃走犯を一匹狼にしたいのはわかるが、孤児育ちであるなど、一定の説明が必要だろう。 事件の真相は、人格を喪失させる新薬を使っての犯罪という荒唐無稽なもの。犯人が杜丘に罪をなすりつける手法も稚拙で、あれではすぐに夫婦での共謀偽証と知れる。杜丘は逃げる必要などなかった。偽証の妻を殺したすぐあとに杜丘が来て指紋を残して、犯人にとって都合がよすぎる。刑事が偽証の夫の居場所を教えてくれて、杜丘にとって都合がよすぎる。精神病院の院長が自殺し、製薬会社の社長も自殺して、ラスボス政治家にとって都合がよすぎる。政治家を射殺しても正当防衛が成立して、刑事と杜丘にとって都合がよすぎる。少し荒を削り、整合性をもたせれば傑作になりえただろう。役者の熱演が光っただけに残念である。
[DVD(邦画)] 6点(2013-06-12 16:14:05)
172.  アルゴノーツ 伝説の冒険者たち(TVM) 《ネタバレ》 
ギリシア神話を基底とした旧作「アルゴ探検隊の大冒険」をリメイクしたTVミニシリーズを再編集したもの。ビデオ版は120分、DVD版は180分「完全版」。ビデオ版にて鑑賞。TV版ながらVFXの質は高めで、テンポもよく、有名俳優が目白押しなので観て損はない。 旧作では、人間は神々の恣意によって踊らされる存在であることが強調されていたが、本作では神々の登場は最小限に抑えられていて、人間による冒険譚として落ち着いて観れる。もっとも半神ヘラクレスが同道して大活躍するが、実に人間臭く描かれているので感興を削がれることはない。ただ短縮されているので、神が突如登場するなどの混乱はみられる。 神話では王道である貴種流離譚。高貴な血筋を引く者が、何らかの理由で両親や国から遠く離れた場所で暮らしていたが、やがて冒険や旅を通じて、本来の自分の地位、姿を取り戻すというもの。 本作品では弟の反乱により王が殺され、王の子のジェイソンは親衛隊長によって辛うじて城を脱出し、半獣人の国に住んでいたが、あるとき記憶を取り戻し、冒険の旅に出る。旅の目的は、何でも夢が叶うという黄金の羊毛を獲得すること。旅の仲間は、ヘラクレス、泥棒、驚異的な視力を持つ青年、元親衛隊長、野獣をも宥める音楽を奏でる楽士、ジェイソンを慕う幼馴染の女など多彩。クリーチャーは怪鳥ハービー、火を吐く巨牛、通る船を沈める島、骸骨剣士、羊毛を守るドラゴンなど、一部旧作と違っている。黄金の羊毛を守護する女魔術師がいるのだが、ジェイソンに恋をして味方につき、最後には結婚するところが目新しい。 ところで人間の夢を何でも叶えるという究極の宝であるはずの黄金の羊毛だが、最後になってどんでん返しがあった。ジェイソンが唐突に、「毛皮に魔力はない。みんながあると思い込んでいただけだ。そんなものに頼らず、運命は自分で切り拓け」などと言い出すのだ。肩透かしをくらうこと請け合いである。伏線が全くないのだから。無事王位に着き、結婚して、めでたし、めでたしの大団円で物語は終るが、中途半端な印象はぬぐえない。あえて黄金の羊毛の能力をちゃらにするのなら、何らかの事情で能力が失われたとすべきだろう。
[ビデオ(字幕)] 6点(2013-06-12 02:21:33)
173.  タイタンの戦い(1981) 《ネタバレ》 
「タイタン」とは何か?タイタンはオリンポスの神以前に世界を支配していた巨人族。クラーケン(北欧神話)はギリシア神話には登場せず、アンドロメダを襲うのはケートス(鯨系の怪物)だが、ゼウスはクラーケンを使ってタイタンを倒し、後にクラーケンを地下に封印したという異説もあるらしい。本作品では、ゼウスが「最後のタイタン、クラーケンを解き放て」と言っているので、クラーケンはタイタン族という設定のようだ。◆アルゴス国王アクリシウスは、罪を犯し国を辱めたとして、娘ダナエとその赤子ペルセウスを箱に閉じ込め、海に流した。ペルセウスはゼウス神の神子だったため、怒ったゼウス神は、大海獣クラーケンを放ち、アルゴス王国を民もろとも滅亡させた。これが物語の発端だが、「罪を犯し国を辱め」だけでは何のことか不明だ。ギリシア神話では「王は彼の孫によって殺される」という神託を得たため、娘と孫を川に流した。◆女神テティスの子、カリボスはヨッパ国の王女アンドロメダの婚約者だったが、「月の泉」を動物狩りに利用して、ペガサスを絶滅寸前に追いやったことでゼウスの怒りを買い、世にも醜い姿に変えられた。悲嘆にくれたテティスはゼウスへの意趣返しとして、アンドロメダに結婚できない呪いをかけ、ペルセウスをヨッパに瞬間移動させ、この世の辛酸をなめさせるよう謀り事を巡らす。テティスは、アンドロメダの母が娘と女神の美を較べる発言を聞きとがめ、アンドロメダを30日後にクラーケンの貢物にさせると宣告。これが冒険の前段階で、非情に凝ったものだが、複雑すぎて把握しにくい。◆要衝は、ペルセウスとカリボス、双頭の犬ディオスキロス、蛇女メデューサ、スコーピオン、クラーケンとの一連の戦闘場面だが、今となっては古い撮影技術で、まどろっこしい。クリーチャーの美的センスは素晴らしいものがある。ペルセウスは剣、兜、楯を労せず得るが、何らかの献身、奮闘によって獲得する展開の方が望ましい。困難が大きい程、見所があるし、感情移入も容易になるからだ。主人公の俳優の容姿が凡庸で、神の子には見えないのも減点だ。途中から金属フクロウが一行に加わり、思いのほか大活躍するのが嬉しい。フクロウはペットのような存在で、物語に彩りを添え、癒しを与え、格好のアクセントになっている。映画を退屈せさずに観せるためには、こういったものが必要だと認識させられた。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-11 18:28:23)
174.  橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) 《ネタバレ》 
少年兵の悲劇を扱った反戦映画の佳作。 戦争となれば、子供達もいや応なしに巻き込まれてゆくのが現実だ。出征するまでの少年七人の人物描写を丁寧に行っているのが成功の第一の要因だろう。戦場での迫真の激闘場面と、少年兵が恐怖と錯乱に陥ってゆく生々しい様子も見所のひとつ。前半の少年たちの明るくて活気ある、そしてどこか鬱積した思春期の日常生活の描写と、後半の荒々しくも凄惨な戦場描写の対比が実に見事に描かれている。戦争に対して無邪気なまでの憧憬を持ち、軍隊に志願する少年達と、我が子の将来をひたすら憂慮する母親達の対比も心に残る。母親の愛は世界共通。軍人の子供を立派な軍人に育てるのも母親の愛の一種なのだろうか。打算的にみえる父親に対する反抗や嫌悪の露呈が物語に重みと深みを与えている。少年達が、想像していた勇猛果敢で英雄的な戦争と、実際のむごたらしく血で血を洗う戦争の違いを身をもって知ることになるのが主題だが、軍隊に入る前の描写に十分時間をかけているので、容易に感情移入できる。 生徒達の先生が、生徒の前途を案じて、軍舎に出向き、所属隊長に庇護を懇請する。そのような依願は拒否するのが建前だが、隊長は戦闘で子息を失ったばかり。遺族の気持ちは痛いほどわかる。特別に配慮すて、安全な後方の橋の守備につけることにした。しかし、これが徒とあるのが運命の皮肉。来ない筈の米軍戦車部隊が襲来してきたのだ。運悪く、その時彼らの上官は勘違いで味方に射殺されており、少年兵だけで対応しなければならなくなる状況。このあたりの流れは秀逸だ。さらに彼らの死守した橋は、実は軍事上何の価値もなく爆破されるという。そして最後に少年兵の銃が向けられるのは味方に対して。脚本は、戦争の悲惨さと虚しさを余す所なく描いており、精彩を放っている。実話を元にした小説が原作らしいが、首を傾げたくなる事柄もある。昨日軍隊に入ったばかりの兵隊では、小銃の扱いはおろか、敬礼さえ覚束ないはずなのに、重機関銃や対戦車擲弾筒「パンツァーファウスト」を扱い、最後には戦車隊撃退に成功するという摩訶不思議さ。これは見過ごせない瑕瑾である。 もう一つ、生徒の一人と妖艶な女教師とに肉体関係があるような描写があるが、不要だろう。思春期の青い性を垣間見せるくらいならよいが、先生と関係をもたすのはやりすぎだ。集中力が削がれてしまう。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-08 14:40:33)
175.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 
ルワンダの虐殺は根の深い問題だ。虐殺の背景として、長年に渡る民族対立、政治対立(フツ+フランスVSツチ+ウガンダ)があるが、ラジオでの憎悪を掻き立てる民族主義プロパガンダの影響が非情に大きかったと言われている。貧困で、教育水準、民度が低ければ、偏狭なプロパガンダにも洗脳されやすく、安易に暴力に荷担してしまう。教育がいかに重要かが実感させられる。ルワンダにとって悲劇だったのは先にソマリア紛争があったこと。内戦が勃発すると、邪魔な国連軍が最初に狙われる。十人も殺せば撤退することを知っているからだ。国連はソマリアの轍を踏み、内政不干渉、軍の撤退を早々に決定した。実際にベルギー兵十人が殺された。国連軍の指令官は最低限の兵のみ治安を維持すべく駐留するが、精神を病んで辞任、帰国する。後にPTSDにより自殺未遂を起こしている。それほど過酷な任務であったということだ。死者80万人と大量の難民が発生し、一時は人口の3/4が女性だったという。その所為で女性の社会進出が実現されたとルワンダ人から聞いた。ちなみに戦後最大の紛争は、1971年のバングラデシュ独立紛争で死者300万人。どの紛争も複雑で、真実は立場によって変わる。被害者意識、家族愛、隣人愛、勇気で綴るこの映画や原作も鵜呑みにはできない。一度全てを疑ってみる必要があるだろう。何が真実かを見極める目を持ちたいと願う。映画から恐怖は伝わってこなかった。所詮は作り物だからだ。実際の虐殺場面を描いたら観客を失うことになっただろう。昨日までの隣人同士が殺しあったり、家族を殺されたりする恐怖は、経験した人にしかわからない。わからないことが幸運だ。その幸運を噛みしめながら、中断したディナーを続けるしかない。虐殺は現実だが、それを遠くから傍観視するのも又現実。立場が違えば、受け止め方が違う。対岸の火事をみて、きれいだと感じてしまうこともあるだろう。当初司令官が具申した通り、国連軍がツチ民兵の武器庫制圧を行っていれば悲劇は防げたかも知れないが、それが更なる悲劇を産むこともありえただろう。運命は気まぐれで、人間一人の力はいかにも弱い。主人公は彼にできる限りの精一杯のことをした。そして多くの人命を救うことができた。そのことに対して、いまは素直に、惜しみない賞賛を送りたい。 
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-07 06:31:32)(良:1票)
176.  探偵物語(1951) 《ネタバレ》 
出だしの雰囲気は大変よい。大都会ニューヨークの警察署を舞台に、多種多様な犯罪者とそれを取り締まる刑事たちの折衝、談判、駆け引きを実録風に描く。社会派的内容、手堅い演技、的確なカメラワーク、リズミカルな展開で佳作を印象づける出だしだ。 主人公マクラウド刑事は、非情なほど正義感が強く、犯罪に対して一切の妥協を許さない。それは悪党であった父親に対する近親憎悪に由来する。犯罪者を見ると父を思い出し、父を思い出すと憎悪が湧くという構図だ。その性癖が犯罪者に向けられているうちは問題がないが、妻に向けられたとき、心の仮面に裂け目が生じ、暗黒面が顔を覗かせる。純粋と信じ切っていた妻に過去の男がおり、子供を堕胎させていたという衝撃。しかも堕ろしたのはマクラウドがいま最も熱情を注いで追及しているシュナイダー医師だった。マクラウドは妻を心の奥底では愛しながらも責め立てずにはいられない。容赦ない言葉での面罵と問責。妻は懸命に哀願し、許しを請うが、遂に「あなたは自分が正義と思っているが、一片の思いやりもない。残酷で嫉妬深いだけ。父親と同じよ」と決定的な言葉を残し去ってゆく。暗い家庭で育った人間は、明るい家庭を築くのを夢みる。その夢が潰えたとき、自殺願望が頭をよぎる。拳銃を持った強盗犯に素手で向かったマクラウドの行動には明らかに自殺願望がみえる。血まみれで倒れ、死の間際に神の許しを乞う姿が痛々しい。 ちょっと待て。タフな刑事による硬質な犯罪捜査劇を期待していたのに、クライマックスが男女の愁嘆場とはこれいかに。前半が終わって、鑑賞者の最大の関心事はシュナイダー医師の連続殺人事件のはず。これが放りっぱなしである。事件の詳細も不明のまま終了でえは、鑑賞後感はよくない。期待外れである。途中から、万引き女の行動が鼻に付くようになり、見る気が失せるのを覚えた。初犯で引っ張って来られたのなら、打ちひしがれているはずなのに、周囲を子細に観察し、刑事の気を引こうとしたり、窃盗男に付き添う女に慰めの言葉をかけたり、場違いな別れの挨拶をしたりと、ありえない行動ばかり。シリアル劇に夾雑物が迷い込んだようで、違和感を覚えた。強盗犯の最後の行動も唐突で、現実味に欠けるきらいがある。どこか白々しい幕引きにみえた。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-05 16:09:12)
177.  河内山宗俊 《ネタバレ》 
「思いやり、やさしさ」が主題だと思う。 お浪は、やくざ社会に足を踏み入れかけている弟、広太郎のことを案じてやまない。 将棋詐欺の場面で、広太郎が宗俊に思いやりの言葉をかけたことで、二人は親密になる。 お浪が怪我をしたとき、宗俊と浪人金子は、共にお浪を思いやっていることに気づき、急速に昵懇となる。 宗俊も金子も聖人、君主の類ではなく、好きなように生きてきて、時には悪事も働き、清濁あわせ持つ人物で、可哀相な小娘、お浪のために命を張ることも厭わないやさしさを持っている。よき死に場所を得たことで、却って本望だろう。 宗俊の女房は悋気を起こし、我知らずお浪を窮地に追いやってしまうが、宗俊の危機には身を挺しても守ろうとする。 宗俊もそれに応える。夫婦愛の完成である。 監督は美的感覚が優れている。お浪が身売りを決心する場面の構図は見事に決まっており、雪の中を出ていく場面は美しい。 監督の特徴である無駄のないショットの繋ぎは、そのような美的感覚があればこそだろう。圧巻は、掘割での対決場面だ。奥行きを見せる縦の構図から疾走感を見せる横の構図へと繋ぎ、最後は地平線へ駈ける縦の構図で終る。水の使い方もうまい。乱闘の水飛沫、迸る落ち水、躍動感を盛り上げている。入水場面での月影を映す水、月影の砕ける波紋も印象的だ。 難点は、弟広太郎の人物像が描かれていないことだ。優しい姉がいるのに、どうしてグレたのか。幼馴染の遊女と心中を決心する場面で、「どうせ生きてたってしょうのねえおれだ」と吐き捨てるが、その心情が伝わってこない。同年代の少年は丁稚奉公などで働いている筈である。普通は、遊女に売られることが不幸なのであって、身請けされるのは喜ばしいことだが、この遊女はどうして死を賭して、脱走までしたのか。そこに至る過程が描かれていないので唐突感が残る。省略の美はよしとしても、省略し過ぎでは、余韻に浸ることはできない。よしや、広太郎が無事お浪を助け出したとして、広太郎は親分殺しの御尋ね者である。二人でまともに暮らすことはできないだろう。蛇足だが、遊女の身売り金は多くて五十両くらいであり、三百両はべらぼうに高い。身売り金と身請け金が引き合うわけはないのである。
[DVD(邦画)] 7点(2013-06-04 23:28:47)
178.  人情紙風船 《ネタバレ》 
江戸時代の長屋と庶民の暮らしぶりが写実的に再現されていて興味深かった。三人の人物が主人公。浪人の海野は仕官が叶うのを夢みて、亡父の知人である家老に嘆願を繰り返す。相手にされていないのは薄々気づいているが、仕官を疑わない妻の手前もあり、希望があるように振る舞う。言葉巧みに大家から通夜の御酒や肴を引き出すなど、才知に富み、度胸も据わっている新三は、慎ましく日銭を稼ぐ髪結い業に倦み、闇賭場をひらき、濡れ手に粟の生活を目論む。それが地元やくざの縄張りを荒らすことになり、付け狙われている。質屋の娘お駒は番頭と恋仲になっているが、番頭に結婚の意志はなく、親の勧める武家との縁談がとんとん拍子に進んでいる状況。三人とも不幸が共通点。その三人の運命の糸が質屋を舞台にひとつに絡まりあってゆく。その展開は見事だ。後半になるほど進度がよくなる。予定調和的な大団円を期待していたが裏切られた。浪人は仕官叶わず無理心中、新三はヤクザとの決闘で討死、お駒は家に連れ戻される。見せない美学がある。海野の女房お滝が、実家でどのような冷たい視線にさらされ、屈辱的な気分を味わったか。帰宅した長屋で立ち尽くす背中で語るのみである。無理心中は白刃のきらめで暗示される。新三が決闘で負けるのは相手との刀の長さの比較で暗示される。長屋に戻って来ないことでその死が知れる。お駒の運命は迎えにきた番頭の態度で知れる。余韻の残る演出だ。紙風船は子供を楽しませる夢のあるものだが、それを作っているのは世間の底辺でうごめいている人たちだ。 仕官という夢で膨らんだ紙風船だが、あまりに儚く軽く、遂には世間の風に飛ばされて、どぶに落ちてしまった。ごみ溜めのような長屋での暮らしだが、人々は明るく活気がある。隣人の自殺を冗談ごとのように済ませ、死を悼まないのは薄情だからではない。生きてゆくには、自殺も笑い飛ばす程の図太さが求められるのだ。毎日汗水たらして働かねば生きてゆけない。活気があるのは当然である。金魚売の科白「こうして朝から金魚、金魚で言っているとね、金魚が何だか、俺が何だか、わらなくなってくるよ」は、実感が籠っている。ここでは夢や強すぎる矜持は生きる妨げとなる。自殺で始まり、自殺で終る、循環形式の物語。膨らんでは萎むのが紙風船。又誰かがどこかで膨らませることだろう。その一つ一つにささやかな庶民の物語がある。 
[DVD(邦画)] 7点(2013-06-04 03:44:23)
179.  アズールとアスマール 《ネタバレ》 
特筆すべきは、水際立った美術だ。イスラムの様式美を至妙に取り入れた功がある。緻密なアラベスクとカリグラフィーの連続する壁、敷き詰められたタイルアート、ムカルナスで装飾された円天井、中庭を取り巻く列柱、庭園の水…、なるでアルハンブラ宮殿を歩いているようだ。樹木や岩などの自然も幾何学的に表現しているのも面白い。独自の神話的世界観を創り出すのに成功しており、精神の優雅さを感じる。時に陶酔さえ覚える出来栄えだ。2Dの背景に3Dの人物をあしらう手法は清新で、神秘的雰囲気を醸し出すのに一役買っている。影絵を思わせる動きの少なさと相まり、想像力をかきたてられる。異国情緒漂うイスラム的楽曲も好い。物語は、妖精伝説、育ての母、母恋の冒険者、奇妙な相棒、賢者、やんちゃ姫、山賊、奴隷商人、真紅のライオン、鳳凰もどき、謎の二つの門と、ファンタジー冒険活劇の要素が一杯詰まっている。が、冒険や謎の解決が、あっさりというか、ありきたりなところが玉に疵。物語にしても人物の感情にしても、総じて起伏に欠ける。生命が危機な場面でも危機感が伝わらない。顔の表情や動きの少なさに基因するが、監督は静的で詩的な表現が得意で、ダイナミックで躍動感のある表現は苦手なのだろう。ユーモアに欠けるのも監督の気質だろう。異色なのは異民族間の宗教・文化の偏見、差別という難しい問題を扱っているところ。アズールは、仏国では貴族の御曹子だが、他国では青い眼が徒となり酷遇される。アスマールとその母ジェナスは、仏国では貧しかったが、母国では成功者となる。立場、価値観の逆転がある。難しい要素を含むので、童話につきものの予定調和な大団円的結末とは一線を画す。主要人物が鳩首凝議して、打開策、解決策を話し合うのだ。ある意味斬新だが、意外性はなく、限界を感じる。ファンタジーと現実問題を融合させるのは至難の業だ。 結局妖精ジンの正体は何か、囚われの呪いとは何だったのかは、不明のまま。憎しみや相剋を乗り越えた崇高な魂を持つ者だけが、勝者として妖精ジンを救い、永遠の愛を得ることができたということだけはわかった。 開始早々、小人妖精が眠った二人をあやす場面があるが、これは省くべき。本当に妖精の国があるかというサスペンスを観客に持続させたい。アズールに母、アスマールに父がいない、アズールの父がどうして傲慢か、などの伏線も回収して欲しかった。
[DVD(字幕)] 8点(2013-05-26 19:23:15)
180.  シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム 《ネタバレ》 
笑いあり、アクションあり、スローモーション推理ありの新感覚ホームズ第二弾。製作者や役者がノリノリで作っている様子が窺えるとても勢いのある作品。19世紀の時代セットは素晴らしく、どこからCGかわからないほど上手に作り込んである。アクション映画の制作費に100億円以上かけれる環境が羨ましい。推理も”それなりに”というか、”かなり”あって、伏線が丁寧に回収されてゆく爽快さがある。推理ものとしても合格点。ただ展開のテンポが良いというか、早すぎて未消化のまま進んでゆく懸念がある。従いてゆくのがやっとで、娯楽映画特有の「心地好い緊張感の持続」は得られない。今回の相手は、最大の宿敵モリアーティで、世界大戦の阻止という犯罪史上最大級の目的がある。ホームズの恋人アドラーが殺されたり、革命家の男が妻子を人質に取られているので自殺を強要させられたりと、基本的にシリアス路線なのに、ホームズは終始おちゃらけているし、モリアーティも小物のワトソン夫婦を狙うなど意味不明な行動が多い。真面目一筋のハドソン夫人が料理用の蓋付皿に鼠を容れて持って来たりと、どうも目線が定まらない。ホームズの女装やマイクロフトの裸など、原作に対するリスペクトが無いのも気になるところ。ご都合主義で、ラインバッハの滝の上に和平会議の会場となる建物を造ってしまっているが、場所が危険すぎてありえない。推理で面白かったのは、植物の本と枯れた植物から、暗号を読み解くところ。驚いたのは、酸素吸入器の伏線。あんな小さいもので滝から脱出できるとは。迷彩服は安直すぎて不可。単にワトソンを驚かすためだけにしか使われていない。笑ったのは、両手両足を踏ん張って天井に潜んでいたコサックの暗殺者。隠れる必要などなく、普通に客を装って、占いの女を刺殺すればよいのに。最も疑問だったのは、和平会議での暗殺場面。政府高官を暗殺するのに、わざわざ政府高官の一人を気絶させ、あらかじめその顔に整形した人物が政府高官に成りすますような手の込んだことをする必要はないだろう。政府高官であれば誰を殺してもよいのだから。ただこれらの難点は、勢いがあるので、鑑賞中は気にならない。それだけ魅力に富んだ作品ということ。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-21 16:24:07)(良:1票)
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