161. ミス・マルクス
《ネタバレ》 カール・マルクスの末娘エリノアが、父の死後その志を継いで政治活動に邁進し業績を残すも、後に43歳の若さで非業の死を遂げた…なんてコトを知ってるハズもなくって、だから伝記映画としては(その時点で)そこそこ興味深く観るコトが出来たとも思いますし+シンプルに政治運動的にはごく非常に立派な女性だったのだな…とゆーのも全然しっかり伝わってくるトコロかとも思いました。しかし、またシンプルに映画としてはあまり面白く観れなかったとゆーか、ちょっと???となってしまう様な箇所も大いに散見されたとゆーか………何よりもまず、他でも散々に言い尽くされているコトだとは思いますが、オーラスのこの描き方(解釈)てのは、流石にちょっと無理があり過ぎる…という気が第一にはしてしまいますかね。彼女は社会主義的な政治活動家であると同時に、主に周りの男どもが(親父も含めて)ドクズだらけであったというコトが原因ともなって、本作ってたぶん政治ものとゆーよりはフェミニズム映画の方により近くなってると思うのですよね(⇒製作の根本的なモチベーションも、たぶんソッチの方に在ったのではねーかな~とさえ)。だから尚更、この非業の結末をこ~んな感じでポジティブなモノに唯々見せかけようとする…てのは、個人的にはやっぱ無理筋としか言えないかな~と。。 他、シンプルにあと説明が足りてるか足りてないか(=観てるダケで何が起こってるか全部分かるか)と問われたらソレも無理!と言うしか無い様な予習前提みたいな感じでもあり、んでその原因の一つだとも思えてるのが所ドコロにドエラくスローモーな無音無言の芝居のシーンがちょこちょこ入ってくる…コトに依る(部分的に)ちょっとマロ過ぎるテンポ、ですかね(⇒とゆーか、中々こんなん観たコト無かったカモ?とでも言いたくなる様な、ある種「異様な」リズム感を擁する映画だったかな…とすら思えてますね)。お決まりのインターナショナル高歌放吟!がやっぱチラホラ挿入されんのと、最初と最後はフツーに思い切りロックンロール絶唱!だったりだとかも含め、何やら演出の一つのキモとして「歌」を活用したったろう!て映画だったぽいのでソコの効果を狙ってのコト……だったのかどーかは、私にはやや確信持てないトコロではあります。 [DVD(字幕)] 4点(2024-01-20 16:18:08) |
162. 私はゴースト
《ネタバレ》 極めて低予算で製作された作品…とのコトで、ごく非常にコンパクトな尺+映像も使い回し・繰り返しなモノが散見されるなど、いくら低予算ホラーとは言えど(一本映画撮るってなったら)やっぱ苦労は多かった⇒ソコを工夫でナントカ乗り越えた、という涙ぐましい感じは第一に大いに感じ取れるのです。しかし、その工夫もろもろのクオリティ・オリジナリティといったトコロはまた、率直に意外なマデに高度で緻密なモノではなかったか…とも思われたのですね。舞台設定=ある種の世界観からして、コレは主人公(とゆーかほぼ唯一の登場人物)が「自分が死んだコトに気付いていない幽霊」…というやや飛び道具的な存在だからこそ、平凡な一軒家の中をひたすら行き来する同質的な映像(+一部はその上にシンプルな繰り返し)を用い、かつ大した説明もつくり込まないのに見事に成立すると言うべき空気感⇒否、ユニークな「異世界感」とすら言えるモノであったかな、と感心してしまいました。低予算だからある意味「こーするしかなかった」ハズなのに、ソレが(いつの間にか)弱みではなく強みになっていた=出来ていたという点で、まずはその部分については傑出した作品だったと言って好いかとも思うのですよね。 正直、ホラーとして恐怖シーンの手数は多くないし、だから(例え前述の優れた雰囲気が全編に行渡っていたとしても)尺をもう少し欲張ったら途端に成立しなくなる様な作品だったとも思います。重ねて、その面にしても選択を間違えなかったというコトに加え、私としては恐怖描写だってセンス自体は好かった・キレ味有ったとも思うのですね。音の使い方が好かったですね⇒まあ重ね重ね、あれだけ散々「フッた」んだったら、ビックリ箱的に驚かすにしてもそりゃ効果的にはなる…とも思えど、ソレでも大いにビクっとさせられちゃったとゆーかコレだってホラー的にそ~んなに簡単なコトではない…とだって思っては居るのでして。プラス、全体として無駄な説明を(やっぱり)しない+謎・伏線も100%回収し切ったりしない、という(コレもある種の低予算ゆえの)「不親切さ」⇒からの観終わって尚の不気味さ・不穏さとゆーのも、やはり個人的には超・好みだったりしました。もろもろと中々に素晴らしく「調和」した佳作だったなあと思います(こーいうのこそオススメしたいですよね)。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-01-20 09:50:19) |
163. エクスペンダブルズ ニューブラッド
《ネタバレ》 お久し振りのシリーズ4作目ですが、うーん………率直に、期待して観に行くとややガッカリみたいな感じかと思うのですが、B級アクションだと思って観てやればそんなに悪くもないかも…てのが一番しっくり来るって感じすかね。。 再度、4作目ですが、3作目までと比べてもまず確実に格落ち感は否めません。シリーズとしては本来、スタローンをメインにシュワちゃんだのブルース・ウィリスだの(最終的にはメル・ギブソンまで)大物が勢揃いしてたワケで、だからステイサムは(彼も1作目から出ては居ましたケド)あくまで若頭的なポジションだったと思うのです⇒その辺の大親分連中が流石に卒業しなさって(+スタローンも流石に一線を引いて)で替りに入ったのが結局トニー・ジャーとイコ・ウワイス…みたいなコトだとすると、ソコは流石に格落ちと言ってしまっても許されるだろう…と。加えて、アクション(映像)もやや安っぽい=近年の中華娯楽映画みたいな「コマが少し足りてない」感じのCGシーンも結構目立ってましたし、何よりお話の方が「やりたいコトは分かるケド⇒そのやり方が全部雑で安っぽすぎる」みたいなごく残念な感じでもありました(コレ自体は前作までだってそーいう感じだったかとも思いますが、やはり確実により酷くなってる…みたいなコトではあります)。 重ねて、いちおうB級と言うホドに安上がりにつくった映画でもなさそうなのですケド、実際には諸々とB級として観た方が好い…という作品だと思います。ただ、その「B級として観る」分においては、個人的には十分に暇潰しには為ったかな…とも思うのですね。結局私、派手なアクションも好きですケド、同じ位にシンプルな肉弾格闘も大好きなのですよね⇒だからトニー&ウワイス&ステイサムの揃い踏みなんて、も~嫌いなワケないだろ!という実に単純な理屈ですよ。また個人的には、ステイサム自体だってこーいうB級映画で王様やってた時の方が(より一層)好きだったりもしますしね。皆様も、ごく気楽に観に行って頂ければ。 [映画館(字幕)] 5点(2024-01-14 19:05:59)(良:1票) |
164. アクアマン/失われた王国
《ネタバレ》 基本的には前作と似た様な評価に落ち着いたとゆーか、でも前作って個人的には(いわゆる昨今の量産型ヒーロー映画の一つとしては)かなり好みではあったのですケドね。端的には映像偏重+ストーリー軽視とゆーか、ソレでもソコでは舞台装置としての「水中」を活かしに活かした独特の浮遊感&スピード感がヒーローものとしても非常にユニークだったと思ってまして、でソレ自体は続編としての今作でもまた十分に感じられるトコロではありましたか。ただ、その「ストーリー軽視」の方は更に一段と合理化(=ある種の開き直り or 深刻化)が進んでて…とゆーか、前半~中盤くらいは正直「お話の内容なんて何も気にしちゃあ居ない」みたいにあらゆる全てがごく軽っい!&薄っい!って「最低限」の代物でしかなかった様にも見えてましたよね。プラス、今作はソコを映像のパワーのみでチャンとキチンと取り返せて居たか…とゆーと、また個人的には残念ながらそこまでの斬新さ・ユニークさ・パワー(の進歩)までは見て取れなかったかな…とも思いますね。ソレでも、また×2極・超・ご都合主義的に結成されたモモア&パトリック・ウィルソンのガチムチブラザーズがアクション的なバディ主人公としてかなり相性好かったと思えたコトも含め、もう一点足すか迷いつつのこの評価とさせて頂きます。単なる娯楽映画としては、そんなに悪くはなかったかと。 [映画館(字幕)] 6点(2024-01-14 10:04:36) |
165. 血と砂(1922)
《ネタバレ》 ルドルフ・ヴァレンティノのご尊顔を拝したく、満を持しての鑑賞。1941年のタイロン・パワー版は既に観ていたのですケドも、正直ソレが好かったのか悪かったのか…(話が入って来易いのは当然好かったとも思うモノの…)今作の方で個人的に目立ってたと思ったのはやはり、肝心の妖婦ドニア・ソルなのです、が…なんつーか、太々しいとゆーか太ましいとゆーか、寧ろもう図々しいとゆーか(ハッキリ)アクドい・悪辣だとゆーか、外面的にも内面的にも全く以て魅力的な=観て好かったと思わせる様なキャラには感じられませんでしたよね⇒1941年版ではコレが(お初のカラー作品登場ってゆう)リタ・ヘイワースだったのですから、もう…… んでそもそも、もっと肝心なるルドルフ・ヴァレンティノの方とても、正直コッチすら私にはその魅力がほぼ伝わらず終いって有様でして…結論、コレなら、シンプルな比較として1941年版の方を観ておけば全く事足りる、としか言い様がありませんですね(個人的にはね)。こーなるとまた、ヴァレンティノ&ナジモヴァ共演の『椿姫(1921)』の方も観たいのですケド、コッチは媒体が見つからない…… ※今作って、IMDbだと108分の作品ってなってて、本サイトでもソレに倣って登録されていると思われるのですが、私の観たのはどー見ても60分版のDVDなのですよ(ナニコレ?)。大幅にカットされてるってコトなのか、ちょっと調べても見当が付かず…(ソレも心残り…) [DVD(字幕)] 4点(2024-01-11 12:52:37) |
166. 茜色に焼かれる
《ネタバレ》 それこそ正に、オーラスで尾野真千子が演じるひとり芝居のタイトルの様に、私には今作、少し宗教の様な話だ、と思われたのですね。それも、私が思う本来の形の宗教の話に、とでも言いますか、大方の宗教って、結局はヒトに「正しく」在るコトを求めるモノだと思っていて、その為にナニが=どう生きるのが「正しい」のか、とゆーのを宗教は戒律という形で示すモノだと思っています。その一方で、この世界とゆーのはまた、ほぼほぼ全く「正しい」と言い切れる様なモノではないのも確かだとは思ってまして、時としてそんな宗教上の正しさとゆーのを完全に嘲笑うかの如くに不条理で不公平なモノである、とも(やはり)思っているのですね。私が考える宗教とゆーのは、そんな間違った世界の中に於いても、自分が自分の信じる何らかの「正しさ」に唯殉じる様にひたすら真っ直ぐ生きてゆくコトが出来たのなら、最期、死ぬ瞬間に自分だけは、自分が確かに正しかったと信じて死んでゆくコトが出来るのだと⇒そして、その瞬間に自分以外にもう一人、唯ひとりだけ神が、貴方の他に貴方の正しさを知って呉れていると、それこそが宗教だと思って居るのです。 だから、今作の尾野真千子とゆーのはその意味で、その彼女が信じているのが理屈とか合理主義とかではなくて、世界がコレだけ間違っているのだから私はもうそんな世界の所謂「正しさ」なんて屁とも思わない、という「意地=彼女だけの正義」であるという意味で、私にはやはり少し宗教に近い話だと思われたのです。ですし、その彼女が信じる彼女の「正しさ」それ自体の中身であるとか、或いは彼女がそんな「意地」を抱くに至った過程とかにだって、まず個人的には十二分に共感できるとも思ったのですよね。そしてその上で、こんな世界で彼女の様な人間がその「意地」を貫き通すのが如何に困難なコトであるのか⇒だからこそそれが如何に尊いコトなのか、というコトを私が理解している(積りである)コトも含めて、私自身はやはり、今作の彼女がナニかドコか間違っている、などとは決して思えなかったのですね。それこそ、ヒトの在り得る「正しい」在り方の一つだと、確実にそう感じては居るのですよ。 例えば私が思う今作と類似する映画として、古くは『西鶴一代女』の田中絹代とか、また『㊙色情めす市場』の芹明香だとか、或いは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークであるとかが、あくまで私個人の感覚の中では美しい上に何処か「神々しい」のは、彼女らがそーいった「理屈では無いモノ」を信じているからだ、とも思っているのですし、挙げた3作品はまた単純に、そーいった彼女らの美しさ・崇高さを描いてゆくのが主眼という作品だったとも思うのです。翻って、今作は重ねて、前の3作品に似た様な内容・テーマを擁する作品だと(一見には)思われたのですが、一方で最後まで観切ると実はそーいうコトでもなかったかな…とも思われていまして、それは端的にクライマックスに於いて尾野真千子(の意地)が「折れてしまう」から=彼女は天使ではなくて唯人間であったから=彼女の美しさとゆーのは唯「人間」の美しさであったのだから、と思うのですね。であるのならば、今作に描かれている筈の(他の)ナニか、とゆーのはまた、一つは私には確実に「この世界が(それでも)如何に素晴らしいか」というコトであったと思えています。がしかし、私は実は其処には=今作に描かれるその「世界の素晴らしさ」には、また正直あまり共感できなかったのですよね。これ程マデに・異常なマデに世界を極端に不条理なモノとして(最初から最後まで)描き抜いておきながら、ラストにほんの少し永瀬正敏がふたりを助けてくれたから(やはり)世界は美しい、と言うのには少し無理がある・ワリに合っていないと、そして何より、その美しさとゆーのはまた、もしかしたら更に不幸な片山友希を謂わば「生贄に捧げる」コトで得られた様なモノではないかと、そう見えてしまったのが理由だと思うのですね。 その意味では、私の今作の評点は本来、これより一点低いのでありますね。同じく「世界の素晴らしさ」を描いた作品であれば、直近ではそれこそ『すばらしき世界』の方が私には遥かに、その世界が素晴らしいというコトの「理由」に納得がゆくのですよ。でも同時に、今作にはもう一つ、実に素晴らしい「母と息子」が描かれて居る、ココにこそ、私は今作で最も共感が出来ると思ったのですよね。こんなに苛酷な境遇でも、否だからこそ、そして彼女が母親だからこそ、この息子がこんなにも立派な人間に育ちつつあるという、それがどんなに尊い事実で、また希望であるかと、そこには私は無限に納得して共感するコトが出来るのですね。確かに、観る大半の時間が極めて辛いという映画ではありますが、私はそれでも、耐えて観切って好かったとは思えました。 [DVD(邦画)] 7点(2024-01-10 21:11:19) |
167. バレンチノ
《ネタバレ》 ルドルフ・ヴァレンチノ。サイレント映画時代のスターにして、とにかく稀代のイケメン…という方なのですかね。映画スターとしては実働僅か五年で急死⇒葬儀には10万人が詰め掛けて後追い自殺も出た…とかってコトで。そして、かの有名なとあるファッションブランドの創業者の名前が彼に因んで付けられた…という事情から、我々もまた今だにこの名前(言葉)にも何となく親しみが有るとか無いとか。コレだけ聞く限りでも、確かにトンデモないレベルの超スターだったとゆーのは、間違い無いと言っても好さそーですかね(⇒今今に写真を見る限りでも、確かに超絶なるイケメンではありますし)。 監督がケン・ラッセルというごくトリッキーな要素を除いても、今作は比較的シンプルな彼の伝記映画には為ってるのでして、且つ(前述どおり)彼の人生が凡そ数年のスパンでそもそも描き切れる…という点からも、コレもシンプルに順繰りにソレを追っかけてゆけばソレだけで激動のドラマが出来上がる…というヤツなのだとは思うのですよ(+実際にそこそこそーいうヤツに為ってるとも思うのですよ)。ただね~私の結論的なトコロとしても、全体的にちょっと焦点が絞り切れていない=中途半端、という印象がどーにも拭い切れなくって、いつものケン・ラッセル風乱痴気騒ぎは置いておいたとしても⇒結局その主役の彼=ルディをどーいう人物として描こうとしていたのかがイマイチ見えてこないのですよね。だから、映画全体としてもやはりエログロという(監督一流の)芸術みたいなコトにしたかったのか・却って真摯な(愛の)ドラマをやりたかったのか・或いはも~ブラック・コメディにしちゃって(一切合財)笑い飛ばしたかったのか、その辺が正直全然分かんない…とでも言いましょーか。観てる最中は(ワリと)その彩りの好さ+女優の綺麗さ・キャラの面白さとかで全然退屈もせずに眺めて居られたのですケド、観終わってふと考え出したら、うーん……みたいな感じではありますかね⇒ちょっと惜しいっぽい様な作品、てコトかも知れません。 [レーザーディスク(字幕)] 6点(2024-01-09 23:20:32) |
168. TALK TO ME トーク・トゥ・ミー
《ネタバレ》 いや、シンプルだケド、コレは中々…滑り込みで2023年のベスト5が一個入れ替わったな…(私が観たのは年明け後だケド) 大筋としては比較的オーソドックスな憑依もののホラーで、かつ変に凝り過ぎるコトも無いコンパクトな尺+テンポも悪くないのがまずは観易くて好いですよね。ソコで多少、憑依ものとしてはその主体が(平時の悪魔ではなく)悪霊=怨霊であるコトとか、ごくネガティブなラストの感じとかも含めてややフツーの欧米ホラーとは趣きが違うっぽい箇所も見て取れはしますが(⇒今作ってよく見たらオーストラリア産なんですね)、どちらかとゆーとソッチよりも端的な映像の力強さに第一には引き込まれましたですね。中々、大胆だな~と言って好い様な構図で禍々しいモノを思い切りバーン!と+結構ネットリと映して来るって感覚が在ったのですが、それでいてキレも十二分に感じられるとゆーか、その辺には(逆に)かなりこだわって準備してた様に思えるのですよね(⇒私もちょっと近いうちにソコだけ再確認の為に観直そうかな…と思ってる位で)。あと、そーいうカメラワークで映してるトコロの若い役者さん達の(異形のモノとしての)演技自体が、コレまた皆(チャンと若いワリにも)頑張ってたかな~とも思いますね(意外なマデの高クオリティ)。 加えて、ココに関してはホラーファンとしての個人的な好みに類する観点かとは思いますが、中盤以降また中々に「ナニが起こってるか定かにならない」という、その不可解さが至極に個人的にドンピシャだったのですね。結局、ミアの母親の死が自死なのか事故なのかも完全に明らかにもならないですし(⇒ごく強力に自死であったコトが示唆されてはいるものの)、クライマックスを踏まえても主人公を除く主要人物達の生死もまた判然としないママ終わってゆくのですし、だからラストなんかだって未だ「コレはナニかの(覚めない)悪夢?」とだって思える様な⇒チャンと終わった様でまだ悪夢の続きが残ってる様な、も~極上の不穏さを湛えて居た…と思うのですよね⇒重ねてコレって、個人的には超々好み!てゆうヤツだったのです。なので、少しだけオマケしてこの点数としておきます⇒映画館でやってるうちに是非々々。 ※以下余談:もう一点、コレは(前述どおりの)オーソドックスな前半を、私がよりホラー的に観てゆくコトが出来たコトの(結構重大な)理由なのかも知れませんが、私にはこの「降霊ごっこ」がもたらした悲劇とゆーのが、ソレこそ「薬物ラリパッパパーティ」が引き起こしたソレ(のメタファー)にしか見えてなくって、結果としてより一層暗澹たる気持ちで痛ましく眺めていた…というコトなのかも知れませんです。件のコロナ禍+例のオピオイド危機を経て、今や米国内の薬物事故による死者は年間10万人のスケール…ってゆーんだからも~トンデモ無い!すよね。そう、薬物って、正に今作で描かれるコトと同じ様に、人に依って or タイミング・体調に依っても諸々の「効き目」が違うから、だから大丈夫そうに見えてても⇒一発で即死するコトだって全然あり得るのだと思ってるのですよね。やっぱ、どの種類だろうが絶対に手を出さないに越したコトはねーです(ソレがホントにそのクスリである保証すらねーのだから)。 [映画館(字幕)] 8点(2024-01-05 23:17:11)(良:1票) |
169. LOVE LIFE
《ネタバレ》 いや~~~コレまた、極めて高度に辛い主題(+しかもそーいうのが最初から最後まで結構テンコ盛り)とゆーか、少なくとも娯楽映画的なナニかでは全く・完全に・微塵も無い…としか言い様がありませんよね。んで同時に、私が監督の過去作を観て来た印象のワリとそのまんまに、今作もまた相当に「行間を読ませる」作風だとゆーか確実に意図的に説明を省いている箇所がそこら中に在って、でソレがこのネガティブな空気感の中でともすれば全て「逆側」に倒れてったりなんかしちゃうと⇒モ~「奈落」にまで堕ちてゆくしかない…という様な映画ですら在るかも知れませんね。参考に他の場所をちょっと覗いてみる限りでも、鑑賞者個々に依って極めて評価が割れているという、その手の作品のよーです⇒ソコには(評価が分れる様な作品であるというコト自体には)私も100%同意できるってトコロではありますね。 でもそーは言っても、テーマ自体はシンプルかつ普遍的な「コミュニケーション・愛するコトの難しさ」というトコロではあるでしょーかね⇒だから、根本的に共感が難しいという様な作品では決してない…とも思うのです。好きな人にだからこそ、言うべきコトを言えない⇔言わなくても好いコトを言ってしまう(・言い方を間違えてしまう)とか、愛しているからこそ踏み込めない⇔却って立ち入り過ぎてしまう、とか或いは、唯々優しく接するコトが(真の)優しさだとは限らない、とか、そーいう類の話なのではねーかな…と。でも、やはり例えば端的に、登場する二組の男女のその「恋やら愛やらの感情」の部分なんかには、特に極めて曖昧・どっちつかずな描かれ方のモノが含まれてるとも思うのですし、個人的にはもう1シーン、ラス前のあの豪雨の結婚式でフラフラ踊ってる木村文乃が一体どーいう表情をしてたのか…なんて、私なんかモ~気になっちゃって日も暮れやしませんよね(「コレもやっぱ映さないんだ!」と+「行き届いてんな~」と、正直流石に感心したとゆーか呆れたとゆーか…)。 結論、私は全然面白い・興味深い映画だと思いましたし、観て好かったとも思います、がソレでも他方で相っ当に観る側の「歩み寄り」が必要な方の作品であるコトも間違い無い…とも思います。寧ろ、その傾向が益々強くなって来ている…とさえ(⇒率直に、この解釈で好いんだよな?と私もやや不安になってまうとゆーか)。ちょっと、若干ながら本当に少しダケは、監督の今後が心配になっちゃう様な気もしてたりなんかもして…(⇒ゆーてまあ、大丈夫だと信じては居ますケド、万一にもラース・フォン・トリアーみたいにダケは為らないでね、と本当にほんの少しバカリは…) [DVD(邦画)] 7点(2024-01-05 14:53:22) |
170. アラビアンナイト 三千年の願い
《ネタバレ》 いや~~、、まさか恋愛映画だったとは…ちょっと流石に予想外……… 確かに(タイトルどおり)ファンタジック要素自体はゴツ盛りなのですが、ソレを全部差っ引いたらモ~その辺のB級恋愛娯楽作品!としか言えませんですよコレ。とは言え、冒頭から三分の二…位はファンタジックなエピソードを羅列してゆくのであって、加えてそこそこ気合の入った映画にも見えていて(ソコで)映像は終始結構凝ってる感じなので、羅列とは言え全然退屈もせずに観てゆくコト自体は可能かとも(⇒でも、単純にファンタジックで美しい…とも言い切れない美醜を重ね持つ様な「クセ」強めな映像だらけだとも思いましたケド)。しかし、そっから先の恋愛映画のナマ本番の方は、劇中の台詞「理性から愛は生まれない」かの如くにちょっと凡人の頭では理解が到底追い付かないって代物で御座いましたので、結果的には「分らなくはないケド・納得までには至らない」+「詰まらなくはないケド・メチャ面白くはない≒ちょい微妙」+「(見た目その他としても)醜いとも美しいともナンとも言い切れない」みたいな、諸々とかな~りもどかしい…てな感覚の内に観終わってってしまいましたよね。それでも兎に角、相当にユニークな作品だとは(確実に)思われるので、暇なら観ても好いかな…位には全然思えますケドも。 前述どおり、結局主人公のティルダ姐さんは今回も(色々と)ブッ飛んでる美魔女役…なので、またハマってるコトはハマってるのではねーかとも思いましたケドね(⇒年甲斐が有るのか無いのかって判断は個々の鑑賞者に任せるしかねーとして)。イドリス・エルバの方だって、ティルダ姐さんが(ナンと)恋愛映画やるって言い出して⇒その相手役に選ばれた…テンなら、コッチも別に如何なる異存も無いのではねーかな、とは。まあ重ねて、オーラスなんてそんな二人でまたもう至極にエキセントリック!な恋愛映画的ショットで終わってってくれやがって、重ね重ね私はちょっと付いて行けない…てな感じで笑ってしまってましたケドね。 [DVD(字幕)] 6点(2024-01-04 23:56:31) |
171. PERFECT DAYS
《ネタバレ》 凄く、凄く好い映画だとは思うのですよ。非常に淡々と流れてゆく(ダケの)物語ではあるのですが、ほぼほぼ終始それがまたとても心地好く流れてゆくのだなあとも思いましたし、それで居て随所でホッコリ笑えたり・トコロに依ってはグッと急に泣けそうな箇所も在ったりして、また我々日本人であればそれをごく親しみ易い身近なモノとして観てゆけるとも思いましたし・一方で外国の方なら逆に大いに物珍しいユニークなモノとして観てゆけるだろう、というその意味ではある種「多様な・多面的な」価値を擁する映画にも成っている…と思ったりしてですね(そーいう映画って、それだけでもナンか好い映画だよな…とは絶対思いますよね)。 ただ、唯々但し、この映画ってとにかく、私にはモ~ひたすらにあの『パターソン』でしかなかった⇒だから、観終わっても結局全く同じとある一つの感想しか出て来なかったのですよ(根本的なモノとしては)。勿論、まず世の中にはこーいう映画ってこの2つの他にも幾らでも在るとだって思いますし、その中で偶々私がこの2作をこの順番で観ていた+その上に私自身が『パターソン』の方をごく非常に気に入っていた、というごく個人的な事情が在ったダケのハナシだとは重々承知しても居るモノの、だとしても今作、率直に私は(逆にちょっとギョッとする位に)何故にこんなにパターソンなの?と少しモヤっとしてしまったのが本音なのですよね。なので結論、評点は(『パターソン』との前後関係を鑑みて)この位にしておきます⇒もし『パターソン』を私が観てなかったのであれば、コレは絶対にもう少し高くなっていたとは思いますかね。 [映画館(邦画)] 7点(2024-01-03 17:59:59) |
172. 乱
《ネタバレ》 それこそ、30年くらい前に初めて観て(僭越ながら)こんなの今まで観たコト無いな…と思った記憶がありますね。それは特に「時代劇としては」という意味だったのですが、今だに強烈に印象に残ってるのは(中で)とにかく「血の表現」だったと思います⇒最高レベルってのはココまでやるのか…と。でも、今今に観直すとコレって、別に全然「リアルな血」ではないよな…とも思うのですね⇒あんなに河みたいにドロドロ流れないだろ…と。で、そもそもこの映画、よく観ると何処も彼処も全然「リアル」ではないとも思うのですよ。狂い果てた幽鬼の如き仲代達矢の有様(or メイク)と言い、諸々の地形もチャンと観るとなんか変なトコばっかですし、異様に煌びやかな衣装や具足・それも含めて全体的にも隅々まで「画が綺麗すぎる」とだって思ったりします(単にリアルな時代劇だってなら尚更に)。 何より、今回観たらコレ、時代劇は疎かドラマにだって皆目成ってないな…て思っちゃったとゆーか、登場人物も総じて全然リアルな人間には描かれてないのですよね⇒前述の仲代達矢や狂阿彌は勿論、息子三人だって一人として血の通ったキャラには全く見えて来ない。ある種、私原田美枝子さんって大好きなんですケド、今作にのみ関して言うなら寧ろ彼女ダケがひとり「間違えている」という風にすら見えます⇒「人間」過ぎる・「人間」としての感情をリアルに+ハッキリと表し過ぎている…と。結局、私が思うトコロの一番に来るコトとしては、見た目の印象やごく重々しい・重苦しい特大の見応えとは全く裏腹に、実に抽象的な表現で抽象的なモノを描こうとしている映画だ、と⇒だからやっぱり(私が他に観たコトあるモノの中では)何より「能」に一番近い…と思わずには居られないと言いますかね(ココまで表現が「ある意味で」抽象的だと、コジツケぽく思われるのは(私も)重々承知ですがモ~致し方無いかな…と)。 とは言え、そりゃ映画なんだから当然、本来の能よりは全然(全っ然)分かり易いとは思うのですよ。でも、逆にコレくらいはしてあげないと現代人には(最早)伝わらないんだよ!てコトにだって思えたりするのですよね⇒ソレはもう、現代人が「想像力」を致命的なまでに喪失してしまって居るからだ…と。今作で言えば、鶴丸が笛を唯々奏でる(というテイで笛の音が唯々流れる)中盤とオーラスの2シーンとゆーのが、私にとってはその「抽象的なモノを抽象的に伝える」シーンとして極致に到っていた…と感じられたのですね。小林正樹監督の『怪談』で、平家琵琶のシーンを観た時にもその様に感じられたコトではありますが、重ねて、嘗ての人々にとっては音曲・舞踊ダケでも伝わっていたソレとゆーのが、今や即物的に為り過ぎ&心の瞳を失い&退化し切った現代人にはこの程度の映画(映像)表現でアシストしてやらないと伝わらないのだろう…と(率直に)思われるのです。そして、今作もまたその意味では、そーいう古のテーマを古の技法に(部分的にも)則って垣間見るコトが出来るという点で、実に日本的で、そして優れた映画だったと思うのですね。傑作だと思います。 [ブルーレイ(邦画)] 9点(2023-12-31 23:26:20) |
173. サンクスギビング
《ネタバレ》 まあ、80年代のあの頃のスプラッタって、それこそ『ハロウィン』に始まって『血のバレンタイン』やら『悪魔のサンタクロース』やら、その意味では感謝祭ってまだ取り上げてなかったからつくったらどう?となるのも当然だとは思いますよね。プラス、その頃のってまた思えば確かに「犯人捜し」を軸の一つに据えたヤツもワリと多かったな…と思い出したりもしました。その辺の感じからすると、個人的にはどっちかちゅーたら『ラストサマー』の方にまんまだな…とまた×2思ったりもしたんですケド(⇒つい最近『スクリーム』も何やら復活しかけてたし)一切合財踏まえると、完全に見た目どおりに、古くて好くて(そして)在り来りなアメリカン・エンタメ・スプラッタ…てヤツだとは思うのですね⇒且つは、その意味では全然フツーにまた期待どおりに高水準にまとまった作品だったとも思うのですよ。 ただね~~~ナンちゅーかちょっとダケ(個人的に)違和感が在ったとゆーのが一方で、も~グロ過ぎるって位にメッチャグロいんですよね本作…(当然の如くにR-18だし…)別に「グロいぜ!文句あんのか!」てトチ狂い果てた連中がナンボほどグロくっても私自身は一向に構わん!のではありますケドも、それでもこの手のコテコテな方のヤツがココまでグロいと、前述どおり個人的には違和感になっちゃうトコロが確実に在るのですわ(⇒今作だと、キャスリーンをオーブンでこんがり焼いて⇒んでお待ち兼ねの食卓で切り分けて…辺りは流石にちょっと引いてしまいましたよ)。80年代の本チャンのヤツって、ゆーてココまではグロくなかったと思ってまして、むしろちょっと笑えるとゆーか(それこそ)本来のこーいうイベントの節に皆で観て楽しめる…て質感だったかとは思ってるのですよね(モチロン、今にして思えば…と=技術の進歩や観る側の意識の変化を踏まえずに…とゆーコトではあるのですケドも)。どだい、私自身はそれが在ろうが無かろうが普段はあまり気にしてやしないのではありますケドも、今作は確実に所謂「ロマン」が無い方のスプラッタだ…とは断言してしまえるってヤツでもありますかね(=ひたすら悪趣味、とゆーか)。 要はですね、重ねて、全体の構成とかって部分には(40年前から)ナンの工夫も向上も無いワケで、じゃあその中でスプラッタのみをやれるダケ+やりたいダケひたすらレベルアップしてやったからさァ喜べ変態共!てのはイクらナンでも安直なんじゃねーの?というコトですわね。それこそ、スプラッタに限らず80年代ホラーの総体における「ロマン」への真摯な探求が見て取れない…とでも言いますか。個人的にもう一つ、ちょっとかなり危惧してるのが、なんか来年・再来年くらいってこーいうの=クラシックホラーを唯々現代的にマッチョ化したよーなヤツ、がまたゾロ流行って来そーだよな……でも正直な~んか嬉しくはねーよな……てコトなんすわ(⇒今作観終わって一番強力に感じられたのがそこの感覚・胸騒ぎですよ⇒マジダルいな~と)。今年だと私『死霊のはらわた ライジング』をそこそこ褒めちゃったのでオマエなんやねんソレ!と言われても仕方が無いトコロなのは重々自覚もしてますケド、この2つの精妙な違いこそが私にとっての「ホラーにおけるロマン」なのだろう…とは、再び確実にそう思うトコロなのでして、ですね(その感覚の言語化とゆーは、また極めて困難なコトではありますケドも)。 [映画館(字幕)] 6点(2023-12-31 14:00:41) |
174. 首(1968)
《ネタバレ》 戦中の所謂「首なし事件」で、権力の横暴と闘った弁護士・正木ひろし氏を描く社会派サスペンス。正木氏を(実名のままに)演じるのは名優・小林桂樹。事件の内容としては戦時下、取調べ中の警官の暴行により被疑者が殺されたが、隠蔽工作によって死因は脳溢血と偽装されてしまい、それを覆すために証拠の「首」を…という話である。実際、外傷と脳溢血では明らかに解剖所見が異なるだろうから、本件の裁判は(裁判自体は終戦を挟んで長期に渡ったが)最終的に正木氏の勝利に終わっている、が今作はそのポイントとなった「首の確保」にフォーカスすることで、ごく重厚なサスペンスとして娯楽映画的にも十分にスリリングに観てゆける作品に仕上がっていると思う。 逆に、娯楽映画として観るならば(ポイントをその首の確保に絞っているから)随所で暗躍する悪役がその後どうなったか、或いは主人公側に居る準主役・南風洋子がその後どうなったのか、等は描かれず、結果的にカタルシスとしてはやや弱いのが少しダケ玉に瑕かも知れない。しかし、肝心な正木氏を演じる小林桂樹の演技自体は鬼気迫る超・迫力を備えていてその見応えダケにでも十二分に観る価値が在るだろうし、そして取り扱う題材の観点からも当然の如くに価値在る作品だと思う。興味のある方は是非。 ※長年ソフト化されなかったとのコトだが、急に今般DVDが出たのは件の『首(北野監督作)』の影響なのですかね…尤も、正木氏は後に名誉毀損で告訴されてその裁判中に亡くなっており、だから実名で登場する今作に関してはソフト化にも少し時間を要した…というコトかも知れません。 [DVD(邦画)] 6点(2023-12-24 22:41:56) |
175. スリ・アシィ
《ネタバレ》 「ブンミラゲット・シネマティック・ユニバース(BCU)」の待望?の二作目でして、鑑賞順はテレコになりましたがコッチは劇場で鑑賞しました。その劇場鑑賞の甲斐もあってか+明らかにアクション的な物量&CGの使用量&製作陣の気合が激しく増量されてたってコトもあってか、かなりシンプルに娯楽作として楽しんで観てゆけたと思いますね(完全に『ワンダーウーマン』ではありますケドね)。『グンダラ』の方でも書いたとおり、このスリ・アシィちゃんもまたヒーローとしての覚醒=自分が何者かを悟るマデには結構時間が掛かるのと、ソコまではまたワリと地味めなクライム・アクション的質感…であるのはまた確かなのです。がしかし、一作目と比較しても(ヒーローものとしては)かなり壮大なストーリー&背景設定を擁する本格的なお話に為ってたとは思いますし、終盤のスーパーヒーロー!な超常アクションの感じも(『クンダラ』と比べても)だいぶ高度なクオリティに纏まってたとも思えてまして、それこそインドネシア産であるコト由来のユニークさ・物珍しさも相まって重ね重ねかなり楽しく観終われました。全体的にややテンポが重めな感じもありますが、主演女優さんも相当な美人で見映えも抜群でしたし、興味のある方は是非々々(俄然オススメできますね)。 [映画館(字幕)] 6点(2023-12-24 17:51:59) |
176. グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー
《ネタバレ》 先に『スリ・アシィ』から観てしまいましたが、要は「ブンミラゲット・シネマティック・ユニバース(BCU)」というインドネシアのヒーロー映画シリーズが遂に爆誕した!てコトなのでして、その記念すべき第一作の方がコチラなのですね(前述の二作目も含めて、やっぱコミック原作ってコトらしーです)。全体的なつくりとしてはかなり隅々までMCUを踏襲してるって感じでもあるのですケド、この一作目の作品単体としての雰囲気・空気感はむしろたぶん『ダークナイト』の系列…は疎かドンピシャで同年同時期公開の例の『ジョーカー』をも彷彿とさせる様な陰鬱で暗~いヒーローものになってますかね。シンプルに、社会の不条理・不公平から生まれる闇(を象徴する様な敵役)に対抗するヒーローを描いてゆくのですが、気付きとしてはまずヒーローが覚醒するまでに尺が思ったより掛かる(小一時間)のと+あとは(コレも『ダークナイト』ぽいと言えばそーなのですが)特に前半はスーパーヒーローアクションとゆーよりは若干地味めなクライム・アクション的な質感になっていて⇒スーパーパワーの応酬!とゆーよりは筋肉質な肉弾格闘アクションの方が延々続いてゆくのですね(この辺は、実は『スリ・アシィ』も同じ様な感じでした⇒たぶん何らか例のイコ・ウワイスさんが関わってるのが要因なのかも知れませんかね)。 とは言えコレって要は、やっぱMCUのレベルでスペクタクルなシーンを入れ捲るのが簡単に可能って訳でもない大人の事情を汲んでの工夫・調整…だとは感じられてしまいますね。でオーラスは流石にスーパーパワー!な(CGエフェクトの効いた)シーンも入って来るのですが、全体的にもその辺のクオリティ・物量からしてまんまMCUと比べちゃったらチョイ可哀そ過ぎる…という感じなのも確かにそーです。個人的には、この一作目は(ソコを考慮に入れた上でも)如何せんチョイ暗すぎる+地味すぎる…ので『スリ・アシィ』と比べるとハッキリイマイチだったかなと思います。今後大いに注目してゆきたいシリーズではありますケド。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-12-24 17:47:23) |
177. ヒトラーのための虐殺会議〈TVM〉
《ネタバレ》 シンプルに、かなり強烈な作品ですね。映画としても、楽しめたとは全く言えないですが完全に引き込まれて観ては居ました。同時に、ホロコーストの実際の様々な事柄・要素に関して非常に明快に分り易い・勉強になるという作品に思えます⇒ナチス側が何をどう考慮し、その結果どのように具体的にホロコーストを進めたのかが好く分かる。その観点からすると、今作は(ほぼドキュメンタリと言っていい程に)会議とその前後の時間のみを描くものであるので、その外側にある状況については(端的にはナチスの組織構造や戦況、特に東部におけるアインザッツグルッペンの活動について、等)事前に少し頭に入れておいた方がより理解を深めるコトが出来るかも知れません⇒ただしその意味でも、そういったモノを学べる映画としてそのジャンルの中で確実に中核を占める様な作品だとは思われます(その意味でも、また価値ある作品だと)。 [DVD(字幕)] 7点(2023-12-24 17:36:40) |
178. グリーン・ナイト
《ネタバレ》 中世イングランドの物語詩『ガウェイン卿と緑の騎士』を映像化した作品です。そもそもソレ何?てハナシをするなら「アーサー王伝説」のスピンオフみたいな感じでしょうか、主人公の騎士ガウェインはアーサー王の甥、という設定ですかね。そのお話の内容自体は、かなり高度に寓話的な…とゆーか随所に教訓めいたモノが散りばめられた物語にはなってまして、全体の構造自体はそれでもシンプルですが⇒細かいトコロは(現代的な感覚からは)ちょっと辻褄が分り難い…みたいな感じでもありますね。でも正直、そのお話の内容そのものとゆーよりは、どっちかちゅーと映像や音楽の方にこだわり抜いてるごく本格的な方の雰囲気映画…てのが表現としてはよりしっくり来る感じです(たぶんもう、アート系に片足突っ込んでる…と言っても全然好い方のヤツかと)。それでも、テンポはまたワリとまったりしてるのですがソレも相まって描き出される荘厳で重厚な空気感(世界観)とゆーのは、率直に中々のモノだったと思いますね(ある種、非常にA24ぽい…とも)。なのでそーいうのがお好みな方になら是非、という感じです⇒私自身は、かなり好きな方のヤツでした。 [DVD(字幕)] 7点(2023-12-24 17:34:41) |
179. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
《ネタバレ》 個人的には、冒頭からワリとシンプルに(=メタファーでシニカルな部分とか・現実と虚構が入り混じるコトとか、をあまり気にせずに単なる)コメディとして観ていってしまったのですが、まずはその意味にしてもワリと結構面白かった・笑えたと思うのですよね。その「虚構=非現実が混ざり込む」という観点からは、少なくとも近年の欧米の主流な方のコメディと比較してもだいぶエキセントリックな方のヤツだったとは思うのですが、ソッチの方がむしろ日本の現在の大衆的なお笑いの質感には近いかな~とも思いましたし、そもそもその欧米のコメディの「現実と地続きでシニカルでなければならない」みたいなのって本当に必須?とだって(個人的には)常々考えているトコロなのでしてね。でもまあ、中盤までは確かにそーいう「如何にも実在してそーな=真実味を帯びた方の」クセの強い業界人⇒主人公リーガンはモチのロン、親友だァ何だって結局カネのコトしか頭に無いパートナーにせよ、コレもやっぱ観る前からナニ書くか決めてる(何千回地獄に落としても事足りない様な)クソ評論家だとか、後は何より(誰とは言わず全員)劇中劇の肝心の芝居の中では総じてカスみたいな演技をしてるのに・翻って舞台裏でトチ狂って感情迸らせる様子自体は(逆に)実に見事な演技になってたり、とか、そーいう在りそーなトコロが(前述どおり)コメディとしてかなり面白かったなって感覚でしたケドね。 しかし、最後まで観終わるとある種、その隅々まで行き渡って「多面的な見方」が出来るコトとゆーのがそもそも、中々に含蓄深くってかつ真に(コメディとして)面白いポイントだったな…とも思うのですよね。件の撮り方にしても、コレが結構意味的に多面的で面白くって、それはつまりコメディってやっぱ比較的舞台劇的・固定視点的に「つくりもの」の映像として観るコトが多いんじゃねーか…と思ってるトコに、このハンディカムのドキュメンタリチック・POV的な撮り方ってのは(どーしたって必然的に真実性を帯びるコトになるって意味では)コメディとして異質・風変わりだったとも思うのです、が一方で、今作ではそれを妙なワンカット風に全部繋げてるってのはまた(前者に大いに反して)実に虚構的だ…とも思ったのですよね。他にもあとは結論の部分にしたって(結局は)そーいうコトにも見えていて、例えばとどのつまり今作でリーガンが成し遂げたコトって実は彼が目指した「芸術」でもナンでもなくって⇒所謂単なる(ネットを利用しての)「バズり=彼が理解すらしてないコト」でしかなかった様にも見えますし、それに依ってエマ・ストーンとの関係性が(最後には確かに)変わったのだとしても⇒それがあるべき姿のモノに為ったとは到底思えなかったりもしちゃったり、とかですかね。 前述どおり重ねて、そーいった多面的な視点で観れるコト自体をポイントに据えた&実際に内容的に実に多面的で含蓄深い作品、だったとは思うのですが、個人的には結局、その中で「コメディとゆーのが如何に虚構であるか」というトコロこそが、今作から最大に存分に思い知らされたモノだったって感覚がありますね。あくまで個人的には、人生の本質=人生で唯一つ確実に自分にとって真実だと言えるモノは、自身の認識するトコロの苦悩・苦痛以外のナニモノでもない、と思ってますからね。何故なら、人間の感じるコトのできるトコロの微笑ましさ(或いは幸福)とゆーのは、本質的には全て自分ではない他者におけるその感情(或いは他者のその感情を共有するという意味での自分のその感情)でしかない、と思ってるからですね。だからして、それこそそーいったモノが(事も有ろうに)映画に描かれている…なんてのは、本来のその必然的構成要素たる自分&他者の間に、もっともっとナニモノかを媒介に媒介しまくってやっと伝わって来てるモノ、でしかなくって、だから当然「虚構」でしかないんだ、と思ってるってコトでありますかね。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-12-24 17:28:23) |
180. バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
《ネタバレ》 こないだのフランス製実写版『シティハンター』はまだ観てないのですが(実は『シティハンター』自体に疎くって)、アレの監督の次作品!というコトのよーですね(+その監督含む今作の主演4名は、元々コメディグループを組んでるお仲間さん達ってコトらしくて)。フレンチ・コメディってヤツの個人的印象としては、ラテン系よろしくとにかくお気楽!+特に男がチョ~軽薄!て感じなのです…が今作もご多聞に漏れず完全なるそーいうヤツ!+コテコテな近年のヒーロー映画のパロディコメディ!ではありましたかね。ごく短尺で、好みはありましょーが(個人的には)諸々のギャグも結構質が高かったと思えてまして、暇潰し用の笑えるヤツとしてなら十二分に有用(+私は実際に大いに楽しめた)という感じですかね⇒クライマックスのアベンジャーズ・ピタゴラスイッチ・大惨事!なんてかなりの爆笑!でしたですよ。 ひとつ、多少懸念点があるとしたら、思った以上にワリかしおバカ下ネタ&不謹慎ネタが多いってコトぐらいですかね(⇒全くの部外者にも関わらず文字通り「被弾」するトム・クルーズとか、パロディとしてもライミ版スパイダーマンのあの名シーンをこ~んな下品な茶化し方は好いのかな?と思ったりもしますが…)。でも、コレもコレこそがおフランスの風情…と思うのがまた正直なトコロではあります。 [DVD(字幕)] 7点(2023-12-17 21:53:26) |