1801. 未知との遭遇
すでに30年前の映画になりました。いまさらレビューを書くとなると、なかなか難しいものです。公開時に劇場で観たとき、自分はまだ中学生でした。不思議な映画でした。以降、今日まで自分の中で特異なポジションを維持している映画です。この作品は、数あるスピルバーグ作品の中でも、というか、他の全ての映画を含めても異色だと思います。何が、というと恐らく手法とテーマのミスマッチ。一応、主人公はリチャード・ドレイファスなのでしょうが、複数の登場人物のまわりで起きる事象が誰に感情移入させるでもなく、ドキュメンタリー的なタッチで描かれて行きます。ドキュメンタリー風の映画って、通常は社会問題を扱ったものや個人の伝記などが多いけど、そこに宇宙人とのコンタクトを持ってきた。あくまで架空であるものを、ドキュメンタリー的に描くってどーいうこと…、というのがこの作品特有の匂いになっていると思います。宇宙船に乗るリチャード・ドレイファスを羨ましくも感じるけど、家族のことがあるので共感までは行かず、観客は一歩引いたところから事の成り行きを見守る観察者になる。いや、第三種接近遭遇を体験することになる、と言った方が良いのでしょう。観せる、というよりは、ちょっと距離を置いて体験させる。それがこの映画から匂ってくる特別な魅力だと思います。感動に涙するようなストーリーではありませんが、地球外生命体との接触を叙事的に描いた力作であるというのが自分の評価です。当時、まさしく日の出の勢いがあったスピルバーグ監督ですが、演出力は傑出していたと思いますね。冒頭、メキシコの砂漠に新品同様で現れた戦闘機が二次大戦中に失踪した機体だと知った瞬間の通訳のお兄さんの???の感じとか、航空管制センターで会話とレーダー画面だけで未知の飛行物体が現出した違和感を表現する手腕は凄いと思います。公開当時はまだ民放で「UFOを見た!」的な特番が年に何本か放送されて視聴率を稼いでいた時代だから、この映画は随分と先を行っていたとも思います。 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-20 00:23:09)(良:2票) |
1802. 地球外生命体捕獲
《ネタバレ》 なかなかハードな作りで、宇宙人モノとしては異色の作品でしょう。宇宙人を捕まえるために四苦八苦するのではなく、いきなり捕まえてしまいます。それからが、さぁ大変という内容になってます。おもしろいですよ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-20 00:15:57) |
1803. ターミネーター
《ネタバレ》 大学生の時に観賞。実は全く期待せずに観に行った。帰ってきた私はパンフレットを開き「あーのるど・しゅわるつぇねっがー」って名前を10回くらい繰り返し発音して暗記し、友達にコイツが凄いと吹聴しまくったのだった。今でこそシュワちゃんは誰でも知っている人だけど、その当時は「コナン」に出ていたくらいで大した知名度じゃなかった。悪役を凄いと思ったのはキングギドラに次いで二人(?)目だったかな。中味の感想は述べるまでもないけど、自分が感心したのは、徹底的にやるという監督の姿勢でした。これでもかってくらいに銃弾を浴びせるカイル。骨格だけになっても殺意を持ち続けるサイバーダイン。最後にプレス機で潰されて目の光点が消える前に、何度これで終わりと思ったことだろう。もうお腹いっぱい、ってところまで見せる。不満なんて残らない。ジェームズ・キャメロンの名前も、あーのるど…と一緒に覚えたけど、徹底的にやる人という自分の見立てが正しかったことは次作「エイリアン2」で明らかになった。ともあれ、映画全体の“つくり”はB級なんだけど、突き抜けてA級になった珍しい作品でしょう。 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-20 00:10:41) |
1804. スペースバンパイア
《ネタバレ》 これを初めて観たのは大学生のとき。ああ、こういうのをB級映画って言うんだろうなと思いました。まぁ、B級の定義は評論家の方々が議論されているでしょうが、私の定義は「決して高尚にならない中味で、観客を楽しませようと真剣に努力している映画」です。なので、私のB級映画はクソ映画ではありません。おそらく、スタッフ全員で何人もの女優の乳をオーディションしたんだと思います。由緒正しいB級の姿勢ですね。だから久しぶりに観ても、相も変わらず乳に感動しました。原題の「LIFEFORCE」は、あのお姉さんに吸い取られる“精気”を指しているのでしょうが、配給会社もまたB級にふさわしい邦題を付けたものです。吸い取った“精気”を巨大な宇宙船へ転送して傘の部分で受けとめ、冬眠中の仲間が死なない程度のエネルギーにする。そして宇宙を漂い次の獲物が近づいてくるのを待つ。B級らしい胡散臭さを残しつつ、良く考えられていると思います。宇宙船の中でじっと獲物が近づいてくるのを待つ習性が「エイリアン」に似ているなと思ったら、脚本家が同じ方でした。 [映画館(字幕)] 8点(2009-01-20 00:04:51) |
1805. 自虐の詩
悪くない。主演二人の演技に尽きる感じです。自分には縁がない恋愛のカタチですが、確かにどーしようもないと思える野郎にも良くできた綺麗な嫁さんがいることがある。誰かを愛する理由って色々あるのでしょうが、他人には理解できない接点でも特別な強い絆になるってことですね。いや、理解できない繋がりこそ、実は強く結ばれているってことかな。最後の中谷美紀の台詞。「幸せにも不幸にも同等に価値がある。人生は間違いなく意味がある」ですが、後ろ半分は良いとしても、前半部は人生半ばで断言できるものではないし、少なくとも不幸を乗り越えない限り言えない言葉です。簡単に諦めるな、という意味では賛同しますが、普遍性のある言葉ではないですね。さらに、彼女が不幸に意味があると言えるのなら、それはすでに前向きな意思の現れであり、自虐じゃないですね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-19 05:34:00)(良:1票) |
1806. 愛の流刑地
《ネタバレ》 予備知識がなく「失楽園」と同じような内容と思っていたら、なかなかどうして、ちょっと考えさせられました。正面から向き合うと重い映画ですね。 裁判とは起こってしまった事象に対して人が作った法律で量刑を決する手続き。トヨエツも言ってましたが、愛情の質とか深さといったものは法律では類型化できない。二人の間に存在していたものが、裁判の手続き上の言葉に置き換わって行くことに対する違和感。それは説得力がありました。ちなみに、行為中に殺して欲しい云う感覚は理解できないです。自分が男だから? そして忘れちゃいけない長谷川京子。登場シーンは寺島しのぶより見応えがありました。むかつく美人を演じてましたが、あのわざとらしさは演出? 公判中にトヨエツから「あなたは本気で人を好きになったことがないんだ~」ってエライことを言われて黙ってしまいますが、あのシーンが爽快だったと云うことは良い演技をしてたってことですね。えっ、ちがう? [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-01-19 05:09:35) |
1807. 失楽園
二人が深く愛し合っているのは分かりましたよ。けど、敢えて言いますがただの不倫ですね。それ以上でも、それ以下でもない。映画にする意味なんてあるんだろうか。会社でベテランばかりを集めた部署で吹き溜まっている主人公は、もう不倫くらいにしかやることが無いみたいで、一介のサラリーマンとしてはとても嫌なものを見せられた気分でした。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2009-01-19 04:42:36) |
1808. RETURNER リターナー
《ネタバレ》 もう随分と前の映画だけど、確かに観たことあるようなシーンが多かった。鈴木杏ちゃんが良かった、かな。金城よりちゃんと演技してましたよ。未来で兵士をやってたにしては、サラ・コナーのように荒んでなくて良かったです。とくにパスタで涙ぐむシーンが良かったです。おかげで退屈しなかったです。日本にもこんな映画があっていいんじゃないですか。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-15 00:44:52) |
1809. 88ミニッツ
《ネタバレ》 感想は4つ。①アル・パチーノが良く走る。階段も駆け上ってました。普通、あの歳であれだけ走ればかなり息切れします。頑張ってました。②アル・パチーノを取り囲む女性たちが相当な美人です。なぜか全員。羨ましかった。命さえ狙われなければウハウハですね。③自分でも言ってましたが、アル・パチーノは人に恨まれますね。あのギョロ目で、自信満々に言葉で相手を追い込んだら、そりゃー憎らしいですよ。味方なら頼もしいけど、敵側に回ったら殺してやりたくなる。仕方ない。それで、ストーリーが進んで行く過程でもあまり応援してなかったです。④展開が速すぎてストーリーが擦り切れ気味です。88分に区切って盛り上げようとしたのなら、効果無かったです。周囲の全員が犯人の可能性を秘めている展開だけでも面白かったので、じっくり描いても良かったかも…。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-15 00:37:19) |
1810. バロン
この監督の最近の映画を観て、全く面白いと思わなかったんだけど、過去に遡っても同じですね。けっこう小ネタが連なるんだけど、どれとして面白いと思えないし笑えない。自分には合わないことを再確認。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2009-01-15 00:30:08) |
1811. ローズ・イン・タイドランド
どこからお話が盛り上がっていくのかと思っていたけど、最後まで意味のない台詞と描写を続けただけだった。これを楽しめる方もいるようで、やっぱり人って色々ですな、って自分の方が少数派なんですが…。この監督との相性がとことん悪い。本来1点のところを2点にしたのは主演の彼女の色っぽさと頑張りに。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2009-01-15 00:28:25) |
1812. ブラザーズ・グリム
驚きも、緊張感も、恐ろしさも、何もない映画だった。無意味に騒ぎ続ける出演者たちにイライラした。いい役者使ってるのにね…。モニカ・ベルッチの魔女だけがはまり役と言えなくもない。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-15 00:20:27) |
1813. 長江哀歌
《ネタバレ》 嫁さんをお金で買うのには少し驚いたけど、ストーリーに大した意味はない。同様に、芝居自体にも観るものはない。飛んで行く建物もちょっとした遊びで深く考える必要はない。これは作品全体から中国を感じる映画だと思う。やる気が有るのか無いのか分からないような空気感があの国の虚飾のない日常なのでしょう。それは観光などでは見えない側面です。この監督の作品は「一瞬の夢」に続いて2作目だけど、今作の方がメッセージが明確でした。携帯電話は持っていても、尋ね人を探し当てるまでに何ヶ月も掛かる。決して人口が多いからじゃない。それを見せてもらったことには、意味がありました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-13 18:36:39) |
1814. 転校生-さよならあなた-
《ネタバレ》 う~ん、さすがにこれは難しいんじゃないか…。前作と同じ事をやっても意味が無いと考えたのでしょうが、男女を入れ替えた状態で不治の病を罹病させた。前作に慣れ親しんでいる自分でさえ、それぞれの心情をトレースしきれない。共感に至るにはちょっと苦しい映画でした。一美の中に入った一夫は、一美の体とともに死を覚悟します。その部分に前作とはかけ離れたテーマがあるはずですが、その葛藤がもう少し表現されても良かったのでは、という意見です。あまりにもあっさりと死を受け入れていた印象です。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2009-01-13 18:08:09) |
1815. 転校生(1982)
これより前の大林作品は、監督の思い入れの強さが変なアウトプットになって、違和感が先行する可哀想な映画が多かった。が、この「転校生」は監督がやりたいことと、観客の見たいもののバランスが初めて合致した記念碑的な作品ではないだろうか。そして、そのバランスは凄いパワーを発揮する。中味が入れ替わってしまった男女の戸惑いが、やがて思いやりと友情に変化してゆく様が、軽妙な笑いの中に表現され切っています。爽やかこの上ない映画です。入れ替わった後の性格が少し違うんじゃないかと云う指摘もあり、実は自分も同感なんですが、細かいことは気にしていません。後に尾道三部作と呼ばれる連作の初作ですが、海あり・山あり・坂道ありのロケーションを巧みに使っています。なんというか、そのロケーションの活かし方に土地に対する愛情を感じるんですね。そんなことを思わせる監督もこの人くらいです。ちなみに、もう二十年以上前の話ですが、多くの大林ファンのご多分に漏れず、行きましたよ、尾道。あの石段を転げ落ちたらフツーは昇天ですね(笑)。 [地上波(邦画)] 8点(2009-01-13 18:04:36)(良:1票) |
1816. 東京裁判
4時間37分。自分が劇場で観た映画で最も長い作品はこれです。でも、全く長く感じなかった。当時、映画館には数人しか客がいなかったんだけど、まるでその裁判の傍聴を特別に許された人になったような気分で身動きできなかった。それだけスクリーンはメッセージを発し続けていたってことですね。戦後生まれとして、もちろん勉強にもなったし、簡単には感想をまとめられない重い重いドキュメンタリーです。この裁判が抱える欺瞞は多くの指摘を受けているが、もし日本が太平洋戦争に勝利していたら、逆のことを米国に対して行ったのかな、というのが当時の自分が思ったことでした。その場合は、A級戦犯も英雄に翻る訳です。やってしまった事に対しては、何らかの決着を付けないと先には進めない。戦争犯罪を追及することは、その真偽を諮ることが目的ではないのだろう。 [映画館(邦画)] 9点(2009-01-13 16:31:11)(良:1票) |
1817. 明日への遺言
お恥ずかしい話だけど、二次大戦当時から軍事施設以外への無差別爆撃は国際法違反という考え方があったのは知らなかった。が、この映画が描きたかったことは戦争犯罪の真偽を問うことではないのでしょう。岡田資中将の潔さ。その一点だけだと思うし、それは伝わってきました。裁判中に、米国側の検事や裁判官が岡田中将の居住いや発言に一目置くような素振りが見られたけど、自分もそんな心境でした。法廷ものとしては異色ですね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-13 15:16:44) |
1818. シルク(2007)
川端康成の小説みたいな映画ですね。説明不足を指摘する声が多いようですが、自分はそうは思わなかったです。主人公にとって日本で出会ったあの女性は、何者か分からず意味不明だったからこそ魅了されてしまったのだと思います。かくいう私も日本人のくせに同類です。異国で出会った、ほとんど喋らない女に会いたくて、仕事にかこつけて何度も長い旅に出る男。この映画が描きたかったことはそれだけでしょう。私的で乱暴な意見だけど、最後のオチはあっても無くても良かったくらい。その為に必須なのは、あの日本女性の存在感ですが合格点だと思います。この映画に関する限り、芦名星はキーラ・ナイトレイより魅力的に見えました。最近観た映画の中では、最も音楽が活躍していた作品でもあります。坂本龍一、さすがです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-01-13 13:42:48) |
1819. TATTOO<刺青>あり
30年近く前の作品で、ずーっと気になっていたんだけど、やっと先日鑑賞。実話であるが、特異な顔をもった銀行強盗を描いた映画です。優しく凶暴で繊細で残忍で勤勉で破滅的で計算高い。普通は同居しない性向がひとつの人格にまとまっている。これを奥深い、と言うのだろうか。共感はしないけど、ただの凶悪犯で片付けられないのは、その行動の中に本来なら褒められるべき要素が入っているからでしょう。30歳までにでかい事をやる、という自らに課した誓いがなぜあのようなカタチを取らねばならなかったのか。短絡的という言葉では回答にならない内容を描写していますが、正解は見えない作品でした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-01-13 12:27:07)(良:1票) |
1820. 図鑑に載ってない虫
ストーリーはそっちのけで、生理的に気持ち悪いものを積極的に並べようと頑張ってましたな。その小ネタの波状攻撃を面白いと思えるかどうか、という映画です。ところどころ笑える部分もありましたが、自分はどうも突き抜けている感じがしなくて、この点数までです。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-08 02:00:07) |