1. 惑星ソラリス
《ネタバレ》 ソラリスの海が生み出す人間の物理的コピー。彼女は人間と同じ感情を持ち、人間同様に主人公を愛する。人間は感情を持つ。その物理的コピーが持つ感情とは疑似的なものか?そもそも感情とは何か? 分子生物学によれば、意識及びそれを生み出す脳内の働きは、全てシナプスを起点とした電気信号(イオン化)により説明される。しかし、単純な電気信号の連なりがどのように瞬時で膨大な広がりを持つ意識を生み出すのか、或いは先行する意識がどのように電気信号と結びつくのか、その辺りは全く分かっていない。 ノーベル賞学者のペンローズ博士は、意識の発現を量子重力理論(量子論と相対論の融合)により解明できると言う。ペンローズ博士によれば、意識は神経細胞内のチューブ状の器官の中における量子力学的作用によって発現するという。その領域の物理学的作用は、シュレディンガーの波動方程式による量子の振る舞い(量子作用)によって説明される。最近の研究によれば、量子作用は、神経細胞内だけでなく、消化器官における酵素反応や動物の帰巣本能というべき地磁気の検知、植物の光合成にも関わっていると言われる。よって、人間特有の機能というわけではなく、宇宙全体、そのミクロの領域は量子作用によって構成されているという事実において、意識や感情はいつ何処にでも現れると言える。人間のように死んで終わりではなく、ソラリスのコピー人間のように不老不死の上で永遠に感情を生み出すこともできる。人為的に消滅させることもできる。 死んだ人間は帰ってこない。しかし、人間には愛する人間が必要なのだという事実。それがソラリスの真実であり、人間の真実なのだと理解した。しかし、我々の「世界」は真実と違う。人間の感情は世界に優先されない。人間は常に世界に勝てない。「君と世界の戦いでは、世界に支援せよ」なのである。 昔、SF小説を読み漁っていた頃、レムの『ソラリスの陽のもとに』を読んだが、その内容をすっかり忘れていた。タルコフスキーの映画がレムの原作に沿った内容であること、それがタルコフスキーの思想(人生に苦しみを求めることこそ知性)に合致したという点において、この映画が世紀の傑作であると共に、タルコフスキーにとっても貴重な作品であったことが分かる。 「我々はなぜ苦しむのだろう」 「宇宙的感性を失ったからだろう」 「古代人はもっと純粋でそれゆえに悩みがなかった」 [DVD(字幕)] 10点(2025-01-18 19:35:04) |
2. こわれゆく女
スリリングな映画。感情の揺れのままに場面が進み、拡散しながら、それが何処に到達するのか全く予測できない。特にピーター・フォークの過剰さ。それは不器用な優しさとプライドなのか、こわれていくジーナ・ローランズを見つめる眼差しも、焦点が合わないが故に、とても胸が詰まる。 確かに物語ではなく、瞬間のリアルだと言いたくなる気持ちは分かる。インプロヴィゼーション。それがジョン・カサヴェテスだと。でも、やはりそこに見え隠れする物語性、登場人物たちの過去と未来が思い浮かぶ。それが心に響く。 [インターネット(字幕)] 9点(2025-01-16 21:09:43) |
3. ストーカー(1979)
《ネタバレ》 誰もが等しく理解できる共有化された視覚イメージでは描かれていない。その冒険譚は、暗喩と象徴でのみ表現された大文字の作者の心象風景として具現化される。ゾーンの部屋。そこにあるのは世界の目的であり、黙示録であり、人類の救済である。それは究極の秘密として分散的に共有されることで人々の希望となる。それを導く者。ストーカーの存在意義である。 もちろん、今、私たちの世界でそのような秘密や希望がリアルに存在していると信じる者は少ない。この物語は原始宗教を模した寓話であり、神話である。しかし、それは大きな物語ではなく、私の中の可能性としての物語。ゾーンの部屋に辿り着いた作家はそれを「無意識の望みだ」と言った。自らの腐った本性と対峙し「絶望して死ぬなら、自分の家で飲んだくれる方がマシだ」と。なんと小さな物語。 奇跡は起こらない。象徴的表現は単なる象徴で終わる。ゾーンとストーカーの存在意義も失われ、徒労感だけが残る。ストーカーは「もう誰も連れていけない」と嘯く。信じること、その可能性の残渣が娘に引き継がれるところで物語は終わる。というか、引き継ぐものとしてこの小さな物語はある。 最後のストーカーの妻のモノローグが全てとも思える。「苦しみのない人生はむなしい。苦しみのない所に幸せもない。希望でさえも、、、」 [DVD(字幕)] 9点(2025-01-14 22:04:26) |
4. 影の車
《ネタバレ》 1970年の清張映画『影の車』の舞台は、都心から神奈川、多摩丘陵を跨ぐ田園都市線の藤が丘駅から東急バスで幹線道路を少し下った地域。バス停沿いに造成された住宅街から外れた丘の上の雑木林の中に建つ一軒家(殆んど山の中?)。60年代に有り得べき、多少デフォルメされた郊外の光景がまず興味深かった。庄野順三『夕べの雲』の自宅も多摩丘陵の丘の上の一軒家だったなぁと。 田園都市線は、大山街道沿いではあるが、基本的に多摩丘陵を横断した新しい路線で、小田急線や中央線に比べてアップダウンが激しく、それを均しながら敷設されているのが特徴。溝の口から長津田が1966年開通なので、基本的に沿線は新興住宅街。東急によって団地と分譲住宅が駅から徐々に広がるように開発されていったが、とにかく坂が多い。映画を観ると当時の開発前の風景がよく分かる。藤が丘駅前のロータリーとか、ロケ地だった長津田、つくし野の方の田舎具合、土壌剥き出しの場所をひたすら延びる幹線道路(246号線?)と突如現れるコンクリート製の団地群のアンバランスさ等。そういう場面カット(特に空撮)だけでも興味が尽きない。 私は90年代に藤が丘駅前に1年ほど住んだことがあるが、当時は市が尾から港北インターまでは本当に何にもなく、田舎道をよく車で飛ばしていた。今はもう雑木林や畑もなくなって、切れ目なく住宅街地域が繋がった典型的な郊外の風景となっている。田園都市線も青葉台とか、たまプラーザは安定した高級住宅街となったが、人々が住んできた地域の歴史という観点からは比較的新しい街故に昔ながらの商店街や古い民家などはあまり見られない。昔は、大山街道や鎌倉街道沿い以外は丘陵地帯で人が住んでいなかった場所が多く、地図で寺社の分布などを見るとその辺りがよく分かる。地図好き、歴史好き、ブラタモリ好きには堪らない記録映画とも言える。 映画は、善悪を超えた純粋な殺意、その存在の狂気を恋愛というノンモラルな舞台の中に描いた殆ど唯一無二のミステリーといえる。これは大傑作です。 真面目なサラリーマン加藤剛と美しい未亡人岩下志麻が道ならぬ恋に落ちる不倫ものというだけでも普通に観られる。そこに加藤剛の妻として小川真由美が絡む、その三角関係のキャストでもう野村芳太郎作品の傑作でしょう。 しかし、本題はここから、岩下志麻の息子が加藤剛に善悪を超えた純粋な殺意を抱くのが、加藤の妄想なのか、現実なのか、そこに愛人岩下志麻の妖艶で純粋な恋愛的な存在が絡み、また加藤が幼少期に母の浮気を目撃するという苦い記憶が自身の妄想に重なり、彼の精神は徐々に崩壊していく。同時に、加藤、岩下、息子の関係も彼ら各々の純粋さ故に悲劇に向かうことになる。この奇妙なミステリーは、斬新、深淵、戦慄で、且つ面白かった。純粋さが善悪を超える存在であることをリアルに示した『影の車』は、ホラーな文学的作品であると共に、エンタメ、社会派ミステリー映画としても充実している。 [インターネット(邦画)] 9点(2024-10-05 21:19:15) |
5. 男はつらいよ 寅次郎春の夢
《ネタバレ》 マドンナは香川京子。 しかし、この回の主役はアメリカの寅さんとでもいうべきマイケル(ハーブ・エデルマン)なので、彼が慕うさくらこそ、本作のマドンナと言うべきだろう。実際のところ、香川京子のマドンナとしての存在感は薄い。個人的には香川京子の大ファンなので、もう少し出番があって欲しいとも思うが、この回の主役がマイケルとさくらであることを考えれば仕方がないことだったろう。 マイケルの本名はマイケル・ジョーダン。彼が冗談を言いながら、「マイケル・ジョーダンです」と言い放つところで、僕らは後のNBAスターの顔を思い出しながら、これも冗談なのかなと思ったり。マイケルの妄想の中でさくらが蝶々夫人のアリア『ある晴れた日に』を歌うシーンがあるのだが、その歌声が素晴らしく、とても印象に残った。 さすがは元SKD、養成所の首席、歌手として何枚もアルバムを出しているだけある。(実際の舞台では、一座の看板 大空小百合が蝶々夫人を演じるが、かなり残念な感じ。格の違いか。。) [DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 23:09:53) |
6. 男はつらいよ 翔んでる寅次郎
《ネタバレ》 マドンナは桃井かおり。 彼女の個性がちゃんと効いていて、寅さんとの絡みもなかなか面白かった。湯原正幸もいい味を出していたな。ラストの結婚披露宴という流れは第1作と同じ。志村喬のスピーチに対抗するのが布施明の歌だけど、比べちゃうとやっぱり重みのある志村喬のスピーチだよなぁ。でも、ちゃんと感動したよ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 23:09:50) |
7. 男はつらいよ 噂の寅次郎
《ネタバレ》 マドンナは大原麗子。 とらやで働く大原麗子、思いのほか違和感はない。彼女の甘い声はとても魅力的で、タコ社長じゃないけど、「いい女だな~」って感心してしまう。そんな女性から「好きよ」と言われて舞い上がってしまう寅さん。この「好き」の意味合いが完全に恋愛感情からずれているのが『男はつらいよ』初期からの王道パターンである。(本当に恋愛感情を抱かれる場合もあるが、その場合、逆に寅さんの方が引いてしまう) この回で博の父親役の志村喬が最後の出演となる。旅先で寅さんを諭すセリフにはやはり重みがあって、寅さんでなくても生き方を反省してしまうのだ。ただ、志村喬も本当は寅さんのことが羨ましいということが垣間見えて面白い。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 23:09:47) |
8. 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
《ネタバレ》 マドンナは木の実ナナ。 舞台は松竹歌劇団(SKD)である。さくらこと倍賞千恵子が実はSKD出身で、松竹音楽舞踊学校を首席で卒業したことは有名な話である。さくらの柔らかい身のこなし、芯の強さを感じさせる凛とした姿勢はそんなところから来ているのだろう。スタイルも良いし、頼りがいのある母性と知性を彷彿とさせる。今回も熊本の温泉宿で文無しとなった寅さんを迎えにわざわざ東京から迎えにいくのだが、寅さん曰く、「うん、あれはねぇ、ちょっと目を離したらすぐ来るんだよ。口うるさいやつでね」 自分で呼んでおいて、それはないだろw さくらこそは寅さんの庇護者であり、生き方が正反対であるが故に共依存の関係にあり、振られ続ける寅さんのこころの拠り所であり、永遠の女性なのだ。 木の実ナナは多少キャラがリリーとかぶるけど、元気があってよい。お相手のゴリさんが意外や肉体派であることに少し驚いた。 話自体はパターン化された安定感に尽きる。冒頭で騒動を起こし、とらやを飛び出すわがままな寅さんと地方では人徳者となる寅さんの対比。いつもながらであるが面白い。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 23:09:44) |
9. 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!
《ネタバレ》 マドンナは藤村志保。 この回の主役は、中村雅俊と大竹しのぶの若いカップルだろう。2人は配線工と食堂の女給。山田監督らしいブルーカラーな取り合わせだなぁと。寅さんは14作目に続き恋愛指南役である。こういう役回りはこの後結構増えてくるのだが、今回はその先駆けといっていいだろう。寅さんのデート指南はディテールに富んでいて、最高に面白かった。基本はいつも同じで、言葉ではなく、目で物語るというアレであるが、結局のところ中村雅俊はその通りにしていないところが笑えた。中村雅俊にはエラそうに言うのだけど、いざ自分が藤村志保に対して同じ境遇になった時には全然なっていないというのはいつものパターンである。 中村雅俊と大竹しのぶのカップルが初々しくて、溌剌としていて、純朴で、とてもよかった。大竹しのぶには泣かされたなぁ。キリシタンの島、平戸の風景もよかった。最後は大空小百合にも会えたし。この回は傑作! [DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:31:41) |
10. 男はつらいよ 寅次郎と殿様
《ネタバレ》 マドンナは真野響子。 冒頭のこいのぼり騒動は、これまでのメロンやピアノと同じだが、ここを堪える寅さんには成長の跡が。。。しかし、犬の名前騒動が併発して、いつものパターンに。 殿様役の嵐寛壽郎とのやりとり、三木のり平とのからみは最高に面白かった。真野響子はとても綺麗でよかったけど、寅さんとアラカンが二人ともあっさりフラれてしまうのは少しタンパクな感じだったかなぁ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-28 23:31:37) |
11. 男はつらいよ 寅次郎純情詩集
《ネタバレ》 マドンナは京マチ子。 冒頭、帰郷早々に満男の家庭訪問の件で騒動を起こし、旅に舞い戻る寅さん。いつものパターンである。旅先の別所温泉で出会うのは懐かしの旅芸人一座。大空小百合の再登場である。(実は彼女は寅さんシリーズではいろんな役をこなす常連さん) 「車せんせい~」と煽てられ、調子に乗って、一座との宴席を持ち、勘定を自分持ちとしてしまったが為に無銭飲食で警察に捕まるという展開。いつもは金がすっからかんで終わりというパターンだが、今回は犯罪に発展かw。大空小百合が大人っぽくなっていたのが印象的。 今回のマドンナは珍しく最後に死んでしまう。そういう別れ(振られ)のパターンもありか。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-28 23:31:34) |
12. 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
《ネタバレ》 マドンナは太地喜和子。 彼女の可愛らしさが光る。愛しい彼女の金銭トラブルを解決しようと奮闘する寅さん。思いは必死だけど、金のない寅さんにはどうしようもできない。これはつらい。でも最後に押し掛けた画家先生に思いが通じて、なんとかお金が工面できることに。こういう伏線があったのね。人徳は大事。寅さんの男気と優しさに感動した一篇。 [DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:31:32)(良:1票) |
13. 男はつらいよ 葛飾立志篇
《ネタバレ》 マドンナは樫山文枝。 彼女が大学助手役故に今回は学問を志す寅さんのお話。よって茶の間談義も「学問とは?」「己を知るとは?」である。そこでまたしても博が理屈っぽい意見を披露するのであるが、今回は少し中途半端であった。「自分が何故生きているのかを考えなければ、ただ金儲けだけで一生を送ってしまうことになる」という博の見解に対し、タコ社長が「それで悪いのかい?」と答えて話の腰を折ってしまうからだが、実は、社長の素朴なつぶやきの方が印象に残ったりする。「明日に道を聞かば夕べに死すとも可なり」 学問の道は遠いなぁ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-28 23:22:04) |
14. 男はつらいよ 寅次郎相合い傘
《ネタバレ》 マドンナは2回目の浅丘ルリ子。 シリーズでは1,2を争う人気作である。メロン騒動が寅さんのドタバタ劇の中でも秀逸だけど、やっぱり最後の寅さんとリリーが結婚かという場面で、じわっと盛り上がって、すうっと引いてしまう心の機微には悲しくてグッときた。 船越英二を含めた男女3人の旅模様はとても楽しかった。寅さんとリリーは計4作で共演することになるが、本作が2人の若さと勢いがあって、一番いい。 [DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:22:00) |
15. 男はつらいよ 寅次郎子守唄
《ネタバレ》 マドンナは十朱幸代。 前半、春川ますみが子供を引き取りにとらやにやってくるシーンが良かった。この回より、おいちゃんが下條正巳に変わって、とらやでのドタバタがかなり抑えられることになる。(ドタバタするのはタコ社長と寅さんくらいかな)下條のおいちゃんは前二人と違って至極真面目。それを察したのか、おばちゃんがところどころでお笑い担当となる。彼女の「あの、何てったっけ、ひげ中顔だらけの、ほら」というセリフは、森川信の「まくら、さくら」を思い起こさせた。 十朱幸代は可愛らしいけど、この頃になると寅さんもあまり入れあげなくなって、あっさりと社会の服部先生(『金八先生』)に譲ってしまうのである。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-28 23:21:57)(良:1票) |
16. 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ
《ネタバレ》 マドンナは2回目の吉永小百合。 9作目の柴又慕情の続きということで。今回も恋愛という点では寅さん最初からアウトオブ眼中。焦点は吉永小百合演じる歌子の自立と父親(宮口精二)との和解である。そこに主に絡んでくるのは、寅さんではなく、今回はさくらと博である。この二人が本作品の立役者だろう。茶の間でのいわゆる「幸福談義」では博の言葉が光る。このころになると、博は監督である山田洋次の代弁者ともいえる存在で、今回のお題「幸福とはなにか?」を理屈っぽく答える博に山田洋次の思いが重なるのである。(その対極は理屈ではない寅さんなのだろうけど) 最後のとらやでの歌子と父親の和解のシーンは泣けた。シリーズで一番泣けるシーンだったかもしれない。あの宮口精二を泣かせるのだから、もうしょうがないね。 冒頭に、寅さんがタコ社長とさくらを連れ立ってお嫁さんにしたいという女性に会いに行き、超速で振られてしまうのだけど、その相手が宮沢保のお母さん(『金八先生パート1』)というのが少しツボだった。 松村達雄のおいちゃんはこの作品で最後。今回もなかなかいい味を出していて(パチンコ好きのちょっとやくざなおいちゃん)、ちょうどこなれてきたって感じだと思うのだけど、彼はおいちゃん以外の役でこの後も結構活躍することになるので、このあたりが潮時だったのかな。彼はおいちゃんをうまく演じていたけど、おいちゃんそのものにはならなかったのだな。 [DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:21:54)(良:1票) |
17. 男はつらいよ 私の寅さん
《ネタバレ》 マドンナは岸恵子。 初期シリーズとしては、珍しく寅さんが冒頭にケンカ別れしてとらやを飛び出すこともなく、ずっと柴又に逗留する。その代わり、寅さん以外のとらや一家が九州に旅行、寅さんが留守番となる。九州旅行から帰ってきた家族を迎える寅さん。長旅から疲れて帰ってきた家族をいかに暖かく迎えるかを源公やタコ社長に言って聞かせながら、いつものようにシミュレートするうちに胸があつくなり、実際に帰ってきた一同の「うちが一番だ」との言葉に感涙しつつ、それを必死に見せまいとする。とてもいいシーンである。 岸恵子との絡みはとくに印象的なところもなかったかな。いつもながら前言撤回で手のひらをさっと返す寅さんのいい加減さは笑いを誘うけど、振り回されるさくらたちが気の毒だなぁと。。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-28 23:04:04) |
18. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草
《ネタバレ》 マドンナは浅丘ルリ子。 彼女が演じるリリーの1作目。リリーは、寅さんが憧れるマドンナというよりも女版の寅さんとでも言うべき存在。だから寅さんは、彼女のことを自分の分身のように想う。これも寅さんの愛なのだ。 この頃のとらやは茶の間談義が楽しい。今回は「中流家庭とは?」「上流階級とは?」ということについて話題になり、いつものように博の少々理屈っぽい意見(これは山田監督の意見なのだが)でしめる形になるのだが、今回はさくらが寅さんのことを「お金で買えないものをたくさんもっている」(それを「愛」だと表現したのは少し唐突だったけど)といって褒める場面が印象に残った。近年流行りの「プライスレス」の奔りが寅さんのライフスタイルなのである。 まぁ、何だかんだ言って、寅さんのそういった生活を支えているのはさくらで、リリーへのフォローも、北海道の開拓農家(寅さんが2-3日働いてあまりの辛さに投げ出してしまう)へのフォローも、寅さんの金銭面も、心の拠り所も、全部さくらが支えているのがこの一篇で分かるのだ。 あと、ピアノ騒動は面白かったけど、ドタバタもパターン化してきたって感じ。 [DVD(邦画)] 9点(2012-04-28 23:04:01) |
19. 男はつらいよ 寅次郎夢枕
《ネタバレ》 マドンナは八千草薫。 彼女が演じるお千代さん。いいね。寅さんの幼馴染ということで、いつものように寅さんがマドンナにのぼせ上がる代わりにインテリ助教授(米倉斉加年)にその役回りをさせるという。お千代さんと寅さんは、結構相性がよかったのではないかな。珍しく寅さんがマドンナを振ってしまうというパターンでした。 [DVD(邦画)] 9点(2012-04-28 23:03:54) |
20. 男はつらいよ 柴又慕情
《ネタバレ》 マドンナは吉永小百合。 清楚で可憐。そして美しい。寅さんでなくても惚れちゃうね。その結婚相手がひげ面のデブ男というのには少しがっかり。それなら寅さんの方がいいのになぁと思うのだけど、最初から寅さんはアウトオブ眼中なのね。吉永小百合と宮口精二の親子はこれといった大きな軋轢もないまま最後に仲違いしてしまう。その辺りの経緯は少々物足りないが、その後の展開も含めて、続編となる『恋やつれ』に期待かなという感じ。 それにしても、この頃のハツラツとした寅さんは最高に面白いね。おいちゃんが本作から松村達雄に代わるが、寅さんとの絡みはなかなか派手で(多少暴力的なのだが)息の合ったところを見せている。 [DVD(邦画)] 9点(2012-04-28 23:03:50)(良:1票) |