1. ブラック・スワン
《ネタバレ》 バレエ好きです.かなりの期待度で観ました.ナタリー・ポートマンが役作りに払った凄い努力と演技力には10点です.また、トウシューズの中敷きを破いたり叩いたり滑り止めの傷を付けたりの細かい描写も、うんうん期待度益々大、となるところだったのですが.途中からあれれ?感が出てきました. 黒鳥って、難易度が高くて派手な振り付けのシャープさの出し方や、顔の表情の作り方等で王子を誑かす踊り分けをするんだと思うのですが、ヴァンサン・カッセル扮する演出家が、黒鳥を表現しきれていないとする理由があまりにも安直で、実際のバレエ・ダンサーの方々はかなり苛っとするんじゃないかと思いました. この辺が心理劇として、だいぶマイナスになりました. 観客にも現実と幻想の区別が付かなくなるストーリー展開と、イタタな場面に目を背けることが多々あり、好きな映画は好きなだけ回数を重ねるのですが、ちょっと躊躇します. ミラ・クニスの背中のタトゥはバレエ・ダンサーにはあり得ないし(しかも代役級で)、ポートマンの白目の着色とコンタクトレンズ?も無いほうがよかった気がします. [映画館(字幕)] 6点(2011-05-11 17:50:11)(良:3票) |
2. ヘヴン
山ほどいる教師の中でもとりわけ愛情深い教師であり妻でもあった人の必然と、全く理屈の介在しない愛情を秘めた人(父親の慈しみの賜でもある)の必然とが作り出した映像として、受け取りました.やはり A. ミンゲラが総指揮を執っていた、と思える映像の美意識がとてもとてもとても好きです. G. リビシの静かな揺るがない眼差しが C. ブランシェットの絶望をぴたりと凝視していて、今でも残像として残っています. 作り手が心を込めて作り出した映画だと思う. 9点(2004-05-05 11:10:53) |
3. es[エス](2001)
無作為で選んだグループの構成なのに、やけに解りやすい分け方をしてしまったので、“人間の心の闇”にまで踏み込めなかった気がする.元々持っていたキャラクターが増幅されただけだというような印象になってしまった.双方とももう少し複雑な行動が出るなら(一人の人間の中では、状況次第では善も悪も生まれるのだから)、もっとリアリティが出たのではないか. しかし一番手に負えないのは、人間性の未熟な研究者のエゴイズムだ、と溜息が出た. 5点(2004-01-02 17:49:05) |
4. バンディッツ(1997)
降参です.キャスティングが巧いので、タバタバイはじめ4人がきちんと存在しているし、何といっても音楽がやたら格好いい.この種の映画の王道をいく勢いと、手応えの確かな音楽性で、ストーリイはどうでもよくなってしまうのだが、全く気にならない.タバタバイは何気ないギターの弾き語りでも、すごい力量の持ち主だなと思う.観客に任せてくれたラストは私は好きです. 10点(2004-01-02 17:25:30) |
5. パリ、テキサス
《ネタバレ》 こういう映画を生み出す監督、スタッフ(音楽、脚本、美術、カメラ、編集)は、映画人冥利につきるだろうと思うと同時に、手堅い力を見せつけられ、降参です.キャストが、これまた素直に降参状態になってしまう面々で、トラヴィスを演じる H. D. スタントンの冒頭からラストまでの演技は、彼以外考えられないし、ハンター役の H. カーソン君の自然な巧さ、終盤に登場するのに強烈な印象を残す N. キンスキーの鮮やかさは、大きな余韻を残す.しかし、この映画が観る者の心を揺さぶるのは、愛情の描き方だ.自分が愛情だと思っていたものが、実は相手を束縛する自己愛以外の何物でもなかったと悟ることで、トラヴィスが得た本当の愛情がラストに直球でこちらに届くから.でも哀しいな、やりきれないな、人間って. 10点(2003-11-09 21:15:03) |
6. ミザリー
普通人の狂気、この狂気が一途なものから、だんだん邪悪さが加わり、難攻不落と思えるくらいバリバリ強靱になっていくので、観るものは敗北感を徐々に植え付けられちゃうんだと思います.でも案外人間って紙一重だったりして・・・それが一番怖い. 8点(2003-11-02 22:23:54) |
7. ターナー&フーチ / すてきな相棒
フーチが、忠犬でもなく、愛らしくもなく、でろんといい加減なところが力が抜けていて好きです.“ Actor's Studio ”でトムが語っていた、カットされたがとても好きだったというシーン ~~~ ターナーとフーチが車の中で交代で見張り番をするシーン ~~~ は入れてもらいたかったな、と思いました. 6点(2003-11-02 22:06:23) |
8. ボクサー(1997)
私の中では最高点の映画です.アイルランドを第二の故郷と呼ぶ D. デイ=ルイスが、寡黙でストイックな役作りをすればするほど、痛いほど哀しく透けて見えてくるアイルランドに対する熱情と愛情.そして、後半の見せ物ボクシングとは好対照をなす、打たれても打たれても倒れないという、ダニー・フリンが示す戦い方.これは、歴史的に翻弄されてきた北アイルランドで培われたものであり、未だに IRA の武装解除がなされず、宗教と領土問題の強いねじれを引きずっている中で、まっとうなメッセージを投げかけてくる.この説得力は役者デイ=ルイスに負うところが大きい.ごまかしを一切せず体当たりでボクサーを演じようとした(この人はいつもそうだが)熱意が、画面から静かに確実に伝わってくるから. 10点(2003-11-02 21:23:08) |
9. イングリッシュマンinニューヨーク
一応 D. デイ=ルイスの映画は目を通すことにしておりますが、ほんとうにトホホな映画でした.ほとんど裸で脱出した後、段ボールをかぶっているダニエルが顔が崩れるように照れ笑いするところが唯一チャーミングなシーン.テーマ曲を担当したスティングにも「ごめんなさい」なのです. 2点(2003-10-20 21:13:31) |
10. ざわざわ下北沢
何が印象深かったかというと、フジ子・ヘミングと広末のやりとりとか、原田芳雄と豊川悦司の会話とか、下北沢住民たちの日常を切り取ったかのような部分.監督はこの街の雰囲気(と、下北沢文化!)を半記録映画として残したかったのでは?“愛”が感じられます. 5点(2003-10-19 17:16:17) |
11. 少林サッカー
いかにも香港映画風のお決まりの脚本、展開、ギャグ.最後は好みの問題だと思うので、この点になりました. 5点(2003-10-19 10:38:12) |
12. シザーハンズ
やはりJ. デップへの賞賛を真っ先に書きます.あのメイクを施しながらも、困惑や不安や哀しみが痛い程伝わるというのは、役作りへの情熱が半端じゃなかったのと、演技力がずば抜けていたのだと推測します.何年も前に観たのに、印象が薄まらないのはさすがです. 9点(2003-10-18 20:42:38) |
13. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
アフレックとデイモンの二人が脚本を持ち込んだ映画だと知って、映画の中の彼らの友情とだぶりました.直球ですが最後まで集中して観ることができる映画として、上質だと思います.M. ドライバーは包容力と冷静さを持つ女性として大きな存在感が感じられて、いいキャストだったと思います. 8点(2003-10-14 23:31:55) |
14. ロード・トゥ・パーディション
役作りに拘って引き算の演技をしたのであろう T. ハンクスと、同じく役作りに拘って足し算の演技をしたのであろう J. ロウの間で、相手の出方を見ながら火花が散ったような気がします.どちらもどうしようもなく哀しいギャングだが、この人間としての哀しみを息子が引き継がないラストでよかった. 7点(2003-10-14 23:14:32) |
15. 普通の人々
封切り時に観て以来、母親のキャラクターの設定に自分の中で何かちぐはぐとしたものが残った映画.息子に作ってやったフレンチ・トーストを有無を言わさずゴミ箱に放り投げるシーンに象徴されるような、母性の中で葛藤するという描き方ではなく、冷酷さを前面に描きたかったとしたら成功なのでしょうが、ここは愛憎の間で苦悩する母親を出して欲しかった.そのことで、普通の人々の苦悩がもっと鮮明に浮かび上がるのではないかと思った. 6点(2003-10-13 23:50:26) |
16. 激突!<TVM>
初めて観たのがもう大昔で、しかもテレビの吹き替え版だった.「警部マクロード」のデニス・ウィーバーが一人っきりで、マクロードの口調で独り言を言ってるし、何も期待せず観始めたらもう面白くて最後まで目が離せなかった.これは映画との出会いとしては、本当に希で幸せなケースだと思います.後でスピルバーグの習作と聞いてびっくりしながらも納得.物体であるトラックが次第に表情を持ってくる演出が、理由のない恐怖を増長させて巧い.こういう映画にまた挑戦してもらいたいのですが・・・. 8点(2003-10-13 22:33:29) |
17. リプリー
敢えて高得点にしました.“太陽がいっぱい”とは別物と考えたい.ミンゲラもデイモンも違う方向を目指したのでしょう.朴訥で勤勉で温厚そうで垢抜けない青年が冒頭“スターバト・マーテル”の伴奏をしている.この旋律がこの直後からの展開の節々に、低くはあるがしっかりと鳴り響いているような効果がありました.Mr. Ripley は、“The Talented“であり、外見とは裏腹の暗闇と狡猾さ(はじめは小器用というレベルなのだが)を併せ持ち、暗闇に堕ち続けなければならない哀しみを持つ人間である、という解釈を、M. デイモンは忠実に大仰でなく演じたのだと思います.目を背けたくなる人間の醜さと凡庸さなんて容易に同居できるのだ、という視点を評価したい. 8点(2003-10-13 10:22:20) |
18. 2001年宇宙の旅
難解と思えるのはオムニバスのようにストーリイに一貫性がないようにみえるからでしょうか.細部に拘ったかと思うと、いきなり訳のわからない展開が延々と続いたりするので、独りよがりだなあと思わないでもなかったです.でも通奏低音のようにいつも大きな存在が見え隠れしていて、モノリスに象徴された「神」を意識せざるを得ない、そしてこの輪郭を観る者に委ねているところが私は好きです.スクリーンをはじめ、何回か観ているのですが(続編の “2010 年” と比べてみるとよけいそう思いますが)、手が伸びてしまいます.しかし当時の人々は、21世紀には宇宙ステーションくらい夢じゃないとおぼろげに思っていただろうに、現実はもう2003年なのだな・・・. 8点(2003-10-13 09:50:23) |
19. カラー・オブ・ハート
原題“Pleasantville”をこの邦題にしたのは、巧いのかもしれない.時代の流れとともに、以前はタブーになっていたことがずいぶん開かれ清濁併せ呑む価値観にゆっくりと変わってきているのだと、「価値観の多様化」などと一言で括ると簡単に通り過ぎてしまいがちなことを、この映画で真剣に実感してしまった.そして T. マグワイアは観る側に不思議に安定感を与える人で、この魅力がキャラを立たせていて、適役だったと思う. 8点(2003-10-13 01:07:16)(良:1票) |
20. ガーゴイル(2001)
ストーリイがきちんと落ちていかないのと、主人公のキャラが掴みにくく苦悩そのものが伝わってこないのとで、非常に曖昧な印象のまま今に至っています.ただならぬ緊張感と閉塞感が醸し出す空気は十分感じたのですが・・・. 4点(2003-10-13 00:46:44) |