1. パリ、テキサス
《ネタバレ》 こういう映画を生み出す監督、スタッフ(音楽、脚本、美術、カメラ、編集)は、映画人冥利につきるだろうと思うと同時に、手堅い力を見せつけられ、降参です.キャストが、これまた素直に降参状態になってしまう面々で、トラヴィスを演じる H. D. スタントンの冒頭からラストまでの演技は、彼以外考えられないし、ハンター役の H. カーソン君の自然な巧さ、終盤に登場するのに強烈な印象を残す N. キンスキーの鮮やかさは、大きな余韻を残す.しかし、この映画が観る者の心を揺さぶるのは、愛情の描き方だ.自分が愛情だと思っていたものが、実は相手を束縛する自己愛以外の何物でもなかったと悟ることで、トラヴィスが得た本当の愛情がラストに直球でこちらに届くから.でも哀しいな、やりきれないな、人間って. 10点(2003-11-09 21:15:03) |
2. ターナー&フーチ / すてきな相棒
フーチが、忠犬でもなく、愛らしくもなく、でろんといい加減なところが力が抜けていて好きです.“ Actor's Studio ”でトムが語っていた、カットされたがとても好きだったというシーン ~~~ ターナーとフーチが車の中で交代で見張り番をするシーン ~~~ は入れてもらいたかったな、と思いました. 6点(2003-11-02 22:06:23) |
3. イングリッシュマンinニューヨーク
一応 D. デイ=ルイスの映画は目を通すことにしておりますが、ほんとうにトホホな映画でした.ほとんど裸で脱出した後、段ボールをかぶっているダニエルが顔が崩れるように照れ笑いするところが唯一チャーミングなシーン.テーマ曲を担当したスティングにも「ごめんなさい」なのです. 2点(2003-10-20 21:13:31) |
4. 普通の人々
封切り時に観て以来、母親のキャラクターの設定に自分の中で何かちぐはぐとしたものが残った映画.息子に作ってやったフレンチ・トーストを有無を言わさずゴミ箱に放り投げるシーンに象徴されるような、母性の中で葛藤するという描き方ではなく、冷酷さを前面に描きたかったとしたら成功なのでしょうが、ここは愛憎の間で苦悩する母親を出して欲しかった.そのことで、普通の人々の苦悩がもっと鮮明に浮かび上がるのではないかと思った. 6点(2003-10-13 23:50:26) |
5. インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
インディ・ジョーンズものって、スクリーンで初回に観たものが最高なので、集中して観ました.サービス精神満点の娯楽映画. 7点(2003-10-05 20:49:06) |
6. マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ
こどもだって絶望や孤独に潰されないために必死に逃げ道を考える.押し付けがましくなく抑制が利いているので、観る者を惹き付ける映画です.ハルストレム監督の映画は思わず心を沿わせて観てしまうものが多いです. 8点(2003-09-28 21:12:28) |
7. ツィゴイネルワイゼン
自由無限な姿勢と厳しい美意識とを併せ持つ、清順翁だけが作り出せる映像と空気.この映画を観る直前にサラサーテの音声が入っている CD を聴いたのがあまりにも偶然で忘れられない.太谷直子の綺麗さと大楠道代の大きさが印象深い. 9点(2003-09-10 22:00:27) |
8. 八月の鯨
“可愛らしい老女”とは、それまでの生き方が物語るんだなあとしみじみ.かなり昔に観たんですが、L. ギッシュの愛らしい目元が印象に残っています.そして、生活することを面倒がらずに身体を動かし、綺麗なものを周りに置いて、丁寧な暮らし方を自然にしているのに、それでいてどこか潔い感じが、力を与えてくれる.逆に B. デイヴィス演ずる老女は老いが怖かったのだろう.でも彼女の頑さもこれまた自然だった. 8点(2003-08-26 21:18:36)(良:1票) |
9. 天空の城ラピュタ
私も何回も観ました.日本が世界に誇れるアニメ映画のひとつですよね.宮崎さんの映画作りの心根が、とてもきれいで懸命で、ディズニーも見習って貰いたい.自分がパズーやシータの年齢の頃に観たとしたら、地に足が着かないくらい夢中になるんじゃないかと想像します. 10点(2002-11-03 22:15:27) |
10. ローズ家の戦争
アメリカ人の主婦のインテリアに懸ける執念ってすごいと思うと同時に、主のいない美しい家の虚しさよ、とも思った.選ぶのに凝ったであろうシャンデリアごと絶命していくラストも虚しさを助長する. 6点(2002-04-07 18:13:18) |
11. 愛と哀しみのボレロ
突き上げてくるような感情を覚えたのは、シモン(フォリー・ベルジュエールのピアニスト)とアンヌ(同・ヴァイオリニスト)の二人の軌跡.シモンはアンヌの目前でガス室に入れられて処刑されるが、アンヌのほんとうの哀しみは、彼女が収容所を出た後にシモンの安否を問われて、「シモン?」とつぶやいて微笑むところで、観る側に痛いほど伝わる.人は極限の哀しみの中では、決して泣けないのだと.ストーリーが同時進行するし、一人二役を演っているので、1回観ただけでは構造上の理解がむずかしいかもしれないが、音楽が洗練されている上、バレエの神髄(ジョルジュ・ドンの踊るボレロ)も観られるので、味わい深いと思う.ルルーシュ渾身の作品. 9点(2001-11-02 10:21:05) |
12. 眺めのいい部屋
観終わった後、深く余韻の残る映画のひとつです.D. デイ・ルイスの演技の多彩なこと、深く尊敬します.彼の口調に上流社会への痛烈な皮肉が表れている.役柄以上のものを秘かに感じたりもしたのですが・・・.H. ボナム・カーター科白廻しもとてもきれい. 8点(2001-07-31 21:43:51) |
13. マグノリアの花たち
好きです、この映画、甘~いですが.マクレーンはじめ女優陣が達者ですし.終盤はサリー・フィールドの演じる哀しみがとても苦しくて心が痛い. 8点(2001-05-15 10:59:47) |
14. バグダッド・カフェ
大好きな映画です.思い出すと繰り返し観たくなる.映像、音楽、ともにお洒落ですし.バッハのプレリュードを繰り返し弾く少年と励ますジャスミンのシーン、泣きたくなる. 9点(2001-05-14 18:38:14) |
15. 存在の耐えられない軽さ
観直してみましたが、評価は変わりません.D. デイ=ルイスと J. ビノシュと L. オリンが醸し出すこの映画の空気が自分の気持ちにぴったりと添っているのだと思う.そしてデイ=ルイス演じるトマーシュの人物像が、軽くいい加減で地に足がつかない一面と、実は最後まで体制に取り込まれることを拒否する骨太な内面を併せ持ち、その代償も恐れない人物だったことが判ってきて、俄然後半が活きてくる.プラハの春が踏みにじられる映像のつらさと、ラスト近くで二人が足に足を載せて宿の部屋に消えていくときの、胸が締め付けられるような感じは忘れることができない. 9点(2001-05-10 10:09:06) |