1. ミスター・ノーボディ
《ネタバレ》 実に洒落た西部劇だぁ~。引退を考えている老ガンマン・フォンダが、彼に憧れている若いガンマン・ヒルに振り回され、挙句の果てには150人のワイルドバンチと戦わざるを得なくなるところまで追い込まれる。フォンダが窮地を切り抜けるのを本当に嬉しそうに観ているヒル。いろいろな仕掛けをするヒルがフォンダの凄腕を信頼しきっているところが面白くも可愛い。床屋で刺客に気付いていながら悠々と髭をあたらせるシーンも秀逸。老いた名人が若いものを育てるというシュチュエーションを真逆にしたストーリーが楽しい。若いヒルによってまさに「生きている伝説のガンマン」となったフォンダが、同じヒルの協力によって見事な花道を飾り、無事もう誰からも煩わされることのない完璧な引退を手にするところに拍手。観終わって心から嬉しくなるような映画です。 [DVD(字幕)] 9点(2005-04-17 17:10:24) |
2. ローリング・サンダー(1977)
《ネタバレ》 特別機からベトナムで捕虜になり8年間の収容所生活から開放されたレーン空軍少佐(ウィリアム・ディベイン)とジョニー・ボーデン軍曹(トミー・リー・ジョーンズ)が降り立つ。空疎な歓迎式典。レーンの妻と息子も出迎えに来ていた。レーンは収容所で受けた拷問の記憶に苦しめられていて、妻子とも心から打ち解けることが出来ない。妻はレーンの不在中、警官と恋仲になっていた。地元の慈善団体から贈られた2万ドル分の銀貨を狙って強盗たちが侵入する。どんなに殴られようとレーンは銀貨の在り処を言わない。強盗はレーンの右手をキッチンのディスポーザーに突っ込む。手首から先を失ってもレーンは沈黙を続ける。そのとき出掛けていた妻と息子が帰宅する。脅され銀貨の場所を教えると二人とも射殺される。重傷を負ったレーンは強盗たちの会話の中の仲間の名前とメキシコにある店の名前を記憶にとどめる。死を免れたレーンは「何も覚えていない」と語る。失った右手は義手。退院後のある日ダイナーに勤めるウェイトレスを旅行に誘う。しかしそれはレーンが自分で落とし前をつけるための旅であった。二連散弾銃の銃身を切り詰め、義手の鉤爪を研ぎ、ピストルへの弾込めの練習をするレーン。メキシコで記憶にある店を探し、女を囮に使って乗り込み、拷問まがいの所業で強盗たちの名前と立ち寄り場所を聞き出す。一方妻の愛人だった警官はレーンの挙動を不審に思い家を訪ね、切り落とされた散弾銃の銃身を見つけてレーンの意図を悟り、後を追う。そしてレーンと女が訪ねた店にたどり着くが、強盗たちに返り討ちにあう。レーンはアメリカに戻り、女と別れ、軍服を身に付けてジョニーを訪ねる。歓迎するボーデン一家。ジョニーに手を貸して欲しいとレーンは頼む。「奥さんと息子さんを殺したやつらですね」それだけを訊くとショットガンを分解してバッグにつめ軍服を身につけるジョニー。女たちは不吉な予感に不安を隠せない。父親だけは息子が何をしようとしているのか感づいているようだった。レーンとジョニーは売春宿近くに車を止め強盗団が宿にいるのを確認する。まずジョニーが客として宿に入りレーンは頃合を見計らって二階の非常口から侵入する。やがて血みどろの凄まじい銃撃戦がはじまる・・・。気だるいテンポで淡々とストーリーは進み、鑑賞後は復讐のカタルシスとは程遠いざらついたいやな残留物が残るたまらない佳作。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-04-17 16:31:41) |
3. 真田幸村の謀略
《ネタバレ》 錦之介さんが老けメイクでおぞましく演じていた家康が実に「悪い奴」でGJ!公開当時は「家康の首が50メートル飛ぶ!」という扇情的な宣伝がなされていたように覚えています。大阪冬・夏の陣での幸村や真田忍軍の活躍を描いており、史実でも家康の本陣まであと僅かまで攻め込んだ真田幸村軍が「実は家康の首を取った」というストーリーです。家康は影武者を多用したことでも知られていて小説では隆慶一郎さんの「影武者徳川家康」という傑作もあります。映画としては何ともテンポがゆるく、合戦シーンもチープな印象が強く、ラストに折角家康の首を飛ばすときにもカタルシスや爽快感に欠けるという感じがします。松方さんと秋野暢子のロマンスも不要といえば不要でしょう。それでも錦之助さんの存在感の大きさと松方幸村の健気さを愛したいと思います。 [映画館(字幕)] 7点(2005-04-17 12:04:47) |
4. ラッキー・レディ
《ネタバレ》 禁酒法時代、たまたま意気投合した小悪党三人組ミネリ、ハックマン、レイノルズ。船を使った密輸業者として成り上がっていく。全編スタイリッシュでユーモアに満ちている逸品。銃撃戦のシーンも迫力があって満足。一番笑ったのは、乗っている小船にマシンガンで穴を開けられ、段々船は沈んでゆき頭まで海中に沈んでしまうのだが、最後までオールを漕ぎながら敵に向かって悪態をつくジーン・ハックマン。口が水中に沈んでも悪態をやめず被っていた帽子がぷかぷか浮かぶ水面にぶくぶくと泡が立っているところなどもう最高。ヘタレのレイノルズもいい味を出している。ラスト近くでギャング団に向かい、弱小密輸業者たちの船が集合し舳先を揃えて挑むシーンなど思わず感涙。とにかく楽しませてくれる一本。早急にDVD化を希望。 [映画館(字幕)] 10点(2005-04-01 15:09:55) |
5. ヤコペッティの大残酷
《ネタバレ》 ヤコペッティ流のモンド映画と思いきや、実はエロの皮を被った地獄ファンタジー。地方のことで「エアポート'75」か何かの併映で劇場で観ましたが、こちらの方が強く印象に残っています。宗教審判での拷問シーン(裸の尼僧をローラーにかけると紙のように薄っぺらになる)、ヒロインの居城(中世の設定)にバイク集団が襲い掛かり、シャワーを浴びていたイスラエルの女性兵士がアラブ人の兵士と繰り広げる裸の銃撃戦・・・。ストーリー性重視しない中世や現代や未来が入り乱れる展開に戸惑いつつ、画面にあふれるヌードやエロチックな科白にかなり気恥ずかしさを覚えました(当時私は中学生)。そして主人公カンディドが地獄遍歴の果てにたどり着いた流れる時の河の畔でただ「老い」だけが現実として存在するというラストが妙に印象深く心に残っています。 8点(2005-03-28 13:14:07)(良:1票) |
6. アギーレ/神の怒り
史実に基づいたお話とは申しながら、ストーリーらしいストーリーはありません。映画全編にわたって熱帯雨林の如く息苦しいほど蒸し暑い空気が感じられ、重く退廃的な狂気だけが存在しているようです。ヘルツォーク監督の「キンスキー わが最愛の敵」などによる撮影裏話などを知っているとそれなりに楽しめるように思われます。しかし何の予備知識もなかった初見の際には、幻想的にも感じられた地獄巡りのような行軍シーンに心惹かれるところはありましたが、「あ~鬱陶しい」と言うのが正直な感想でした。どど~んとダウナーな気分になりたいときにはお勧めだと思います。 6点(2005-03-18 13:49:44) |
7. 地球の頂上の島
《ネタバレ》 ヴァイキングと飛行船とシャチという私が大好きな三大要素が含まれている素敵な映画。子供の頃から「ツェッペリン」や「ヒンデンブルク」や本作を見ていて、飛行船が破壊されたり壊れたり燃えたりするシーンになると「うぉぉおっ何てぇことをっ」と胸をえぐられるような悲しさと空しさと勿体無さに涙したものでありました。本作でも強風で絶壁に飛行船が叩きつけられるシーンがありますが、とても悲しかったことが思い出されます。まあ全体的にストーリーのまったり感もテイストというべきご愛嬌ということでご理解を。終盤に鯨の墓場を流氷筏でわたっているときに襲って来たシャチをライフルで射殺するという言語道断のシーンもありますが(美しく気高いシャチを殺してはいかんでしょう。大体シャチは人を襲わないぜ!)好きな作品です。ぜひDVD化して欲しい。 8点(2005-03-14 13:25:53) |
8. 戦国自衛隊
渡瀬恒彦についていって女をさらって犯した後で「そろそろ降りさせてもらうわ」と勝手なことをほざいて渡瀬兄いにあっさり射殺されてしまう海上自衛隊の隊員で高速艇乗務員の一人、そう貴方こそ「渡る世間は鬼ばかり」ではバーコード頭の旦那さん角野卓造さんではありませんか。この映画のアイディアは本当に魅力的なものですね。皆さんのコメントにも「リメイク」という言葉がよく出てきていますが全く同感ですね。斎藤監督さんは「悪魔が来りて笛を吹く」でもそうでしたが、ディテールを無視したすかすかの演出をされているとしか思えません。岡田奈々とにしきのあきらのエピソードなんか本当に間抜けで見るに堪えません。鈴木ヒロミツの自衛隊員もナシでしょう。挿入歌は結構いいのに、劇伴の音楽がぼろぼろです。馬鹿な友人と私が一致している意見は「もし50億円あったら戦国自衛隊をリメイクする」ということです。けど何度も観返してしまう映画です。 8点(2003-05-18 12:51:30) |
9. 柳生一族の陰謀
予告編で錦之助さんが「味方につくも敵に回るも心して決めいっ!」と大見得を切るシーンがありましたが、本編では見当たりませんでした。何と申しましても故成田三樹夫さんの烏丸少将にしびれます。なよなよした公家が実は剣の達人…格好良いっス。錦之助さんの冷徹な但馬守が将軍家指南役の印綬を押し頂いて満足そうな顔をするところも好きです。松方さんの家光公も良い味を出しておられます。どの映画を見ても(特に邦画)不満なのは、戦いのとき倒れた味方に駆け寄り「しっかりしろ」と声をかけ、言葉を交わした後死んでしまうと死体をかき抱いて泣くところなどです。本作でも千葉さんや真田君がしっかり愁嘆場をやってくれていました。戦いや剣の達人なんだからもっとクールにきめていただきたいものであります。プロならプロらしく味方や敵の死体を楯にするくらいでなければ。志穂美悦子さんの死に方も何だかなぁでしたね。それでも大変楽しめる時代劇です。夏八木勲さんの「不承知でござぁる!」には男泣き。 9点(2003-05-18 12:32:33) |
10. ファントム・オブ・パラダイス
ポール・ウィリアムズ演ずる悪魔に魂を売った作曲家兼プロデューサー・スワンが最高です。実際本作の全ての楽曲はこの人が作っているし歌っている(ジェシカ・ハーパーのところはハーパー本人が歌っている)。ジョディ・フォスターが地下酒場の歌姫を演じていた子供だけのミュージカル・ギャング映画「ダウンタウン物語(原題:バクジー・マローン)」の全ての楽曲を書いている人でもあります。マイ・フェバリット・ムービーの一本です。全体を漂ういかがわしさが堪りません。 [映画館(字幕)] 10点(2003-05-10 12:27:42)(良:1票) |
11. ヘアー
生まれてはじめて見たロック・ミュージカル映画です。最初のナンバー「アクエリアス」で「なんじゃこれは!」とショックを受けました。歌や踊りがストーリーと関係なく展開することに最初は戸惑い、下品で強烈な内容のナンバーに驚きつつもラストには完全にハマってしまいました。ベトナム戦争当時のアメリカの若者たちのいらだちや虚無感が痛い映画です。陸軍墓地でのラストシーン、ラストナンバーが頭から離れません。 9点(2003-05-10 12:09:20) |
12. 金田一耕助の冒険
公開当時ハマりましてサントラ買いました。オープニング「金田一耕助の冒険」と挿入歌は今でも歌えます。先日発売のDVDも買いました。時事ネタの風化は激しいものがあります。当時のCMネタなど彼岸の世界(極寒)です。しかしそれでもなお本作は面白い。田中邦衛さんの等々力警部が良い味出してます。ほとんどラスト近く「…さあ撃ちなさい…格好良いですよ…」何と言うことはないシーンでしたが金田一のモノローグが心に残る佳作でした。 7点(2003-05-05 15:40:31) |
13. 八甲田山
三國さん演ずる大隊長みたいな人って結構いると思いません?功を焦って余計な口出しをして現場をかき回し、事態を確実に悪化させて抜き差しならぬどん底に周りを巻き込んで突進する馬鹿って。そしてそれに追従するお馬鹿な取り巻きたち。北大路さん演ずる中間管理職は己のベストを尽くそうとするも上官には逆らえず中隊は全滅…。今も昔も繰り返される官僚組織(会社組織)の悪弊ですね。組織に属する人間は必見の映画。上司に持つなら高倉健さん演ずる大尉さん。少なくとも緒形拳さん演ずる伍長でありたい…(人に頼らず自分だけ助かる算段を忘れない、自分の安全は自分で確保)。 8点(2003-05-05 15:10:59) |
14. ツェッペリン
最初TVで観ました。この映画のお陰で飛行船フェチになってしまいました。2度目にラテ欄で本作の名前を見つけたとき、小学生だった私はカセットテープレコーダーのマイク(古い話ですがVTR以前は音声を記録するのにこの方法しかなかった)をスピーカーの前でじっと構えて録音しました。ビデオテープも買いました。残念なことにその後WOWWOWでワイドバージョンの放映があったらしいのですが見逃してしまいました。ヒンデンブルクはただ墜落するだけですが、本作では雄雄しく戦う飛行船の勇姿を観ることが出来ます。とにかくLZ35(だったと思う)が格納庫から引き出されてくるシーンや山中の湖に着水するところなど巨大感にあふれていて最高でした。勇壮なテーマは小学校以来何十年も頭にこびりついて離れません。飛行船が出てくる映画は余り多くなく「ブラック・サンデー」「ヒンデンブルク」「ガン・バス」「天空の城ラピュタ」「インディ・ジョーンズ3」「魔女の宅急便」「地球の頂上の島」「劇場版 パトレイバー2」などだと思われますが、そりなかでも第一次大戦が舞台の本作が最高だと思っています。美術品を盗むために出撃という何ともトホホな目的であり、失敗するとポテトマッシャー(ドイツ柄付手榴弾)を腹いせに放り込むという支離滅裂な行動、そして主人公マイケル・ヨークが果たして任務を成功させたのか否か理解に苦しむオチなど穴は結構多いのですが、ツェッペリン飛行船の勇姿の前には些細な問題に過ぎません。そう言えば本作や「ヒンデンブルク」を始めとして、飛行船は最後に炎上したり悲惨な目に合うことが多いですね。柘植久慶著「ツェッペリン飛行船」に不燃性のヘリウムガスを使えなかった(アメリカが売らなかった)ための悲劇が詳しくかかれてます。やはり飛行船は硬式飛行船に限ります。巨大で美しい…。グッドイヤーの軟式飛行船を見るたびに、硬式飛行船を観ることが出来ない時代を恨みます。 8点(2003-03-16 13:41:38) |
15. 風とライオン
《ネタバレ》 ライズリ(ショーン・コネリー)が遊牧民を率いて出陣するシーンなど理屈抜きで格好いい。拉致されたペカデリス(キャンディス・バーゲン)一家が脱出する際見張りの頭に鉢を叩きつけて気絶させてライフルを奪い、流民に売られそうになるとナイフを振り回し銃を撃ちまくって母と妹を守ろうとする少年も男前。ライズリとルーズベルト(ブライアン・キース)の男気対決も楽しい。「ペカデリス親子の命かライズリの死か」と叫び、自ら撃ち殺した灰色熊(を横に「奴から見れば我々こそが侵入者なのだ」と語り、「ウィンチェスター社宛に『なぜ米大統領が満足できるライフルが米国で造られないのか』と伝えてくれ」ととにかく男気むんむん。米領事館に乗り込み「軍事介入だ」とジェフリー・ルイス領事に圧力をかける提督と海兵隊大尉。岸壁に整列した海兵隊ライフル中隊の先頭に立ち知事宮殿に行軍、戸惑う警備隊に向けていきなり発砲、公邸内に突入し実力で制圧「ただではすまんぞ。気でも狂ったのか大尉」と非難する知事にサーベルを突きつけながら満面の笑みを浮かべ「イエッサー」、独軍が介入しライズリが捕らえられた時ペカデリスが「ルーズベルトは約束を守るはず」とライズリ救出を依頼(首にナイフを突きつけて)されたときに「先に口で言っていただければよろしいのに」と優勢な独軍相手のドンパチをお気楽に承諾するジェローム大尉。能天気かつ無謀で無意味に勇敢な大尉と彼が信じる「アメリカの正義」が実に愉快。これぞミリアス魂。押し寄せる遊牧民に独軍は野砲で攻撃。近距離に迫った騎馬隊に対しては弾種を「榴散霧弾」(弾頭に青いラインが入る芸の細かさ)に変更して発射、広い範囲に着弾煙が生じて複数の騎馬兵が一斉に倒れるところなども注目シーン。刀を目の前に構えて不敵に笑いかけるライズリに応じて拳銃をホルスターにしまいサーベルを抜いて顔の前に構える騎乗した独軍騎兵将校…燃えますぜ。ホワイトハウス内で倒した熊の剥製を前に人払いをして「貴殿は風、我はライオン。強大な風がいくら吹こうとも我は大地に足を踏みしめて耐える。風はそこにとどまることかなわず、ただ吹き去るのみ」というライズリの手紙を一人で読むところは明らかに黒澤監督「七人の侍」の焼き直しと思われるがルーズベルトの孤独がよく滲み出ていて秀逸な出来だと思う。 [映画館(字幕)] 10点(2003-03-15 15:23:21) |