1. 七年目の浮気
マリリン・モンローを撮らせたらワイルダーの右に出る者はいない。彼女に相応しい演出(セクシーながらもギスギスしてない)に、可愛げを誘う台詞。完璧と言っても過言ではない。 それにしてもこの作品、少ないセットでここまで見せるのは素晴らしい。トム・イーウエルの妄想癖(かなり小心で神経質)をしつこいぐらい見せている。それに対して対局の性質(感性)を持ったマリリンと調和させることにより、コミカルで面白い絵となっている。本当に“笑い”として成功している映画は、こういう作品のことを言うのではないか? 今時の作品は下品なシモネタでしか笑いがとれない作品が多い! それを過大評価して喜んでいる人達が沢山いるのが悲しくなってきます。もちろん、下品なネタも時には楽しいのですが、ソレしかないというのは余りにも芸がない。 7点(2004-10-11 09:15:25) |
2. ダイヤルMを廻せ!
完全犯罪を目論む夫と、罪を着せられるハメに陥る妻の物語。有名な作品なので期待して見たのですが、「うーん」という感想です。決して面白くないという訳ではないのですが、前半があまりに面白すぎた反面、後半息切れしてしまった印象が強く残りました。前半は、綿密に計画された殺人計画の周到さや、その殺人が失敗に終わるマーゴ(グレース・ケリー)とレスゲート(共謀犯)のもみ合いといった、興味をそそる展開がふんだんに有って面白い。しかし後半は地味な操作が続き、見つかった解決への突破口となる証拠も、関心する程のものではなかったのが残念。 ただ、皆さんも同じ意見と思いますが、グレース・ケリーの美しさには思わず追加点を与えたくなる。 6点(2004-02-13 18:20:47) |
3. めまい(1958)
《ネタバレ》 ジェームズ・スチュアート渋いですね。高所恐怖症を患う人物を上手く演じています。マドレイヌ+ジュディー役のキム・ノヴァクも美人ですし。しかし個人的には、画家を演じるバーバラ・べル・ゲデスが一番良かったです。 先の読めないストーリーも素晴らしいです。マドレイヌを死なせてしまったジョンは塞ぎ込んでしまいます。しかし、偶然に町でマドレイヌに瓜二つの女性と出会います。ジョンはジュディーに好意を持ち、ジュディーもまたジョンを好きになってしまいます。が、当のジュディーはそのジョンを騙すことにより、マドレイヌを殺す為の共謀殺人を犯していたのである。2人の悲しいラストシーンは本当に切なくなります。名作です。 8点(2004-02-13 18:19:55) |
4. 北北西に進路を取れ
「逃亡者」のようなイメージの作品です。 一転二転する意外性の有る展開で、迫力ある逃亡劇が繰り広げられます。ラストの岸壁のシーンは、日本のサスペンスドラマが今だにパクリまくってますよね。脚本・音楽・演出とどれをとってもハイレベルな仕上がりだと思うのですが、主人公が飛行機に襲われるシーンは何とも言えないB級感が有りました・・・。 4点(2004-02-13 18:19:20)(笑:1票) |
5. ライムライト
カルヴェロはときおり過去の栄光を夢に見てしまう。自分が一番良かった時の事って忘れられないものですよね。作品の終盤で「過去を振り返らず前に進まなければならない」というような台詞が有ります。“人は常に諦めることなく向上心を持ち、自分らしく生きる”という事がいかに大切なのだということをメッセージとして伝えています。チャップリンの作品の良いところは、台詞の一つひとつに風刺の効いた面白さが有り、人生哲学的な重みがあるというところだと思います。 ただものでないコメディアンですね。 [映画館(字幕)] 7点(2004-02-08 17:41:15) |
6. 戦場にかける橋
《ネタバレ》 強引に力業で橋を建設しようとする斎藤に対しニコルソンは合理的なやり方を主張する。お互い絶対に自分の考えを曲げない人物なので持久戦となってしまうが、結局はニコルソンの粘り勝ちとなる。“主義主張が合わなくても時間が有ればお互い歩み寄ることが出来る”ということをこの作品はメッセージとして伝えているのではないでしょうか。戦争だって同じような理由で始まってしまうのですから、殺し合う前に時間を掛けて分かり合う努力をすることが大切だということが言いたいのだと思います。 一つの目標に向かって日英の敵対する人間が互いに協力しあい、苦労してやっとの思い出完成にこぎつけたものがいとも簡単に破壊されてしまう。最後の「なんと愚かなことか・・・」という台詞が心に響きます。 7点(2004-02-03 18:17:18) |
7. 裏窓(1954)
けっこう最後まで引っ張るので驚愕のオチを期待してしまいましたが、以外にもそのまま終わります。観賞後に少し消化不良という感じが残ったのは残念でした。ただ、緊迫感というものは非常に上手く出せていたし、犯人が迫って来るラストのスリリングな描写も手に汗握るものがあった。 特に感心したのは「見せ方」による工夫です。主人公のアパートから向かいのアパートまでは距離が有るので住人の声は聞こえませんが、住人の身振り手振りによる動作で何をしているのか分からせてしまうという見せ方が上手い。 あとは、やはりグレース・ケリーの美しさが際だっていたのが印象的です。 6点(2004-01-27 18:10:03) |
8. 誓いの休暇(1959)
母親への愛情・戦友との約束・一時の恋愛、それぞれどのエピソードをとっても深い味わいが有り、戦争の非常さというものが心に残ります。例えば、貨物列車での物語をとってみても、これが本当の「恋愛物語」だと言えます。純粋で優しく誇り高い。昨今の陳腐な恋愛映画には無い素晴らしさが有ります。 8点(2004-01-21 16:15:56) |
9. 汚れなき悪戯
宗教色の強い映画という印象です。 マルセリーノを一生懸命育てる12人の僧侶、主題歌に乗せて日々の生活が語られるシーンは名シーンと呼ぶに相応しい。 見たこともない「母親」という存在をマルセリーノは切望します。非常に心打たれるものが有り、ラストは何とも言えない感情が込み上げてきます。 7点(2004-01-21 16:06:58) |
10. 眼下の敵
《ネタバレ》 アメリカの駆逐艦とUボートの闘いを描いた戦争映画です。第二次世界大戦を舞台にしたハリウッド映画の場合は「ドイツ=悪」として表現されることが多いのですが、この作品は従来の戦争映画とは異なり、ドイツ兵を悪役とは見なしていません。 アメリカ・ドイツ双方の艦長は互いに非常に優秀な人材で、人物像としても誇れる感性を持ち、部下からも慕われている。壮絶な戦闘を繰り広げるうちに、敵ながらお互い尊敬に値する気持ちが沸いてきます。結果として闘いは痛み分けとなり、アメリカ側の艦長がドイツ側の艦長を救助します。もし、立場が逆の場合でもドイツ側の艦長は同じことをしていたでしょう。 意見の相違や文化の違いなどにより双方の不満が蓄積し「怒り」が生まれ「殺し合い」に及ぶ。世界から戦争や紛争が完全に無くなることは絶対に無いだろう。しかし、それにより本来は争う必要のない者同士が殺し合うという愚行を繰り返すことになる。この作品が語る「悪」とは戦争という行為そのものであり、人間の「心の闇」を指している。 7点(2004-01-07 16:10:50) |
11. お熱いのがお好き
トニーとジャックの掛け合いの面白さは言うまでも無いが、やはりこの作品はモンローでしょう。「華が有る」という点で、過去の名の有る女優と比べても、その存在感は群を抜いている。 作中では、かの有名な曲も歌っているが、一番魅力を感じたのは電車の中で歌ったシーンです。本当に輝きを放っているように見えたし、素材の違いを痛感した。 この作品は、脚本・映像・演技と全て兼ね備えており、コメディーの中では指折りの一品です。 7点(2004-01-01 16:46:51) |
12. サンセット大通り
《ネタバレ》 取り憑かれたように過去の栄光にすがるノーマ。 俳優業には歳相応の役柄というものが有り、柔軟にそれに対応する俳優もいるが、その一方で歳をとってしまった姿を観客に見せたくない心境から、若いうちに引退し、その後姿を二度と見せない女優もいる。役者には「旬」というものが有り、主役クラスでないとプライドが許さない、ノーマはそんな人物だったのだろう。 16歳の頃から映画の主役を張っていた、それだけに彼女は仕事一筋の人間で、それを失うと「人生の目的」というものを失ってしまった。 「仕事も私生活も常に脚光を浴びていたい」。そういう暮らしを一度手に入れてしまった者が陥りやすい事なのでしょう。 ノーマは錯乱状態でラストを迎えるが、有る意味、最後まで女優で一生を終えることが出来たことは幸せだったのかも知れない。 6点(2003-12-31 15:33:33) |
13. 情婦
《ネタバレ》 この映画の場合は「ネタバレ」が完全に致命傷になるので、未見の人はこれを読まないように絶対に注意してください。 この映画に「どんでん返し」が有るとういうことは有名で、相当こちらもいろんなオチを想定しながら身構えて見ました。 まず、傍聴席に看護婦と一緒にいた女性。毎回熱心に傍聴していて、涙も見せていました。この時点で彼女が最後に事件に関わってくることは分かりました。(綺麗な女優さんだということも手伝いました)。 僕が予想したオチはこうです。「ボールのドイツ人妻は夫の浮気に気付いていた。その浮気相手をお金持ちの婦人と勘違いして殺害する。すると、上手い具合に夫が容疑者となってしまう。依然として夫の浮気が許せなかったドイツ人妻はボールに罪をかぶせようとする為に不利な証言を始める。しかし本当の浮気相手は傍聴席にいた女性だった。」というものでした。 絶対に自信が有る推理でしたが、見事に玉砕されました。 この映画のオチを完全に予想できる人っているのかな? [映画館(字幕)] 7点(2003-12-23 14:38:17) |
14. ぼくの伯父さん
無声映画のような独特のタッチで、日常の暖かに日々を描いた作品です。 僕が一番心に残っているシーンは車の縦列駐車のところですね。何とも言えない「間」が大好きです。 最後に犬がピョンピョンはねてるシーンなんかは何か幸せな気分になれます。 6点(2003-12-22 15:13:01) |
15. ベン・ハー(1959)
《ネタバレ》 キリストまでも絡めた壮大なストーリー、CGなしの豪華なフルセット、どうやって撮影したか不思議なぐらいの豪快な戦車戦、個々の場面にマッチした音楽・・・。世間で言われる通り、全てを兼ね備えた一大スペクタクル。 強者が弱者に対する理不尽な虐待・・・。民族間や宗教観の相違による争いや問題点は当時からのテーマである。そして、それに立ち向かうベン・ハーはまさに正義の象徴として描かれる。 メッサラは幼少の頃はベン・ハーと親友関係にあった。ところが、学ぶ環境や生活する環境から、2人の間には深い溝ができる。有る意味、人間は「環境に洗脳されて生きている」のではないだろうか。作品の中でベン。ハーは、ローマの司令官を救うことにより、出世してローマ屈指の剣闘士になる。しかし、その恵まれた「環境」にあまんずることなく、家族のもとへ戻る。その環境に溺れず流されない人物像は本当の勇気を示していると感じた。 故郷に戻ったベン・ハーは母と妹を殺されたと思い、メッサラへの復讐に燃える。復讐は成功するが、後に残ったものは無かった・・・。それゆえに、キリストの最後の言葉である「神よ彼らを許したまえ」はグッとくるものがあった。 7点(2003-12-21 11:01:51) |
16. 雨に唄えば
古いタッチが実に良い風味を醸し出しています。オープニングで3人が黄色いレインコートを着て『Singin' In The Rain』を歌いながら始まるところなんかは楽しげで良いですね。 無声映画からトーキーに変わる時代の物語に上手くラブストーリーをのっけて作っています。 物語だけを見ると淡々と進行するように脚本されていて、ミュージカル部分を省くとおそらく1時間以内に収まります。が、そこにタイミング良く歌や踊りを盛り込むことにより娯楽性が格段にアップ。最後は気持ちの良いハッピーエンドになっています。 8点(2003-12-19 17:57:49)(良:1票) |
17. ローマの休日
このストーリーにオードリーをキャスティングしたことが全ての勝因。単純明快な物語は一般受けする見本。 ただ、世間はどうしても過大評価しすぎてしまう。おそらく日本人のほとんどの人が「オードリーと言えばローマの休日」でしょう。他にも沢山オードリーの映画は良い作品が有るのにね。もう少し評価が割れてもいいような気がしますけど・・・。 ちなみに僕の場合は断然「マイ・フェア・レディー」です。 6点(2003-12-18 17:05:40) |
18. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 最初は一人の反対意見。しかし、その男の括弧たる信念の訴えかけにより「単に人の意見に流される者」は簡単に無罪という意見に傾く。また、「証拠や目撃談を信じる者」も実験や分析などから生まれた矛盾点を指摘されると意見は無罪へと変わっていく。ただ、最後まで意見を変えなかったのは「偏見を持つ者」であった。偏見による差別的な感情が、実は一番根深い問題なのだということを教えられた。 9点(2003-12-18 17:03:09) |