1. ここに泉あり
骨のあるいい映画だった。どう考えても存続できそうにない地方楽団が、自ら演じる音楽に助けられながらなんとか歩き続ける姿を映している。やたらに感動の涙やとってつけた団結みたいなものは使わず、金銭的な問題や田舎にいることで感じる焦燥感、団員同士の争いはリアリティたっぷりだった。そして、音楽ってすごいな、やっぱりいいな、と純粋に感じられるシーンは心を救われるような思いがした。さすがに木こりか炭焼きというのはひどいけど、この時代はその発想も仕方なかったのかも。 [地上波(邦画)] 7点(2011-12-29 22:26:40) |
2. めまい(1958)
《ネタバレ》 男の恋はどこまでも幻想、女の恋は全てを覆しても貫くもの…なんと悲しいお話でしょう。昔のバービー人形そのものといった感じのキム・ノヴァクの静と動に感心しました。話の謎解きも最後の最後まで解らず(鈍いですかね…)、あまり観ないサスペンス作品をちょっと見直しました。最後の尼僧のラスボスっぷりに驚きましたが、ジュディに罪悪感があったことの証でしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-21 13:17:17) |
3. 山椒大夫
《ネタバレ》 ここ最近私が見た映画の中では、群を抜いて美しく力のこもった作品だった。黒々とした残酷物語の中を光の矢が走るような展開に胸を高鳴らせ、沼に吸い込まれていく香川京子の、まさに天女のような儚さに目を見開いた。しかし厨子王よ、天晴れ初志貫徹。それは本当になかなかできないことなのだ、今も昔も。 [DVD(邦画)] 9点(2008-10-19 02:44:44) |
4. 素直な悪女
《ネタバレ》 コケティッシュな悪女が大活躍なコメディかと思ってたら、なかなかしっかりしたドラマだった。美人をものにして火遊びしたい男達と、彼女を責める外野の人々、そして奔放ジュリエットの孤独感。裏側にある乾いた物語が意外に良かった。この先あの実直なミシェルとどんな日々を送るのか想像が尽きない。ミシェルの方がグッといい男になったりしそうな気もするなぁ。バルドーはゴージャス美人の手本のようで、シンプルな衣装がまたそれを際だたせている。膝丈ウェディングドレスが最高に可愛らしかった。 [DVD(字幕)] 7点(2008-03-08 18:57:55) |
5. 黒いオルフェ
地球の裏側にある国の、リズムと華やかな色がたっぷりの映画。ギリシャ神話に沿ったストーリーは単純だけど、色だけで押し切っていない計算された画や死に神の描き方などに目を惹かれる。スタートから途切れることのないサンバのリズム、そこから解き放たれた警察のシーンは絶品。丘から見下ろすリオの街並み、昇る太陽、ラストに子どもが歌い踊るサンバ、行ったことのない国に身を置いた気分になる情熱的な時間。ブラジル映画ならこれ!と人に勧めてしまうだろう一本。 [DVD(字幕)] 8点(2008-02-11 10:50:16) |
6. 道(1954)
私にはなぜかこの二人の道行きがそれほど酷いものに見えなかった。砂浜で語り合う二人は素朴でくすぐったくて、少し幸せそうに見えた。社会の底辺で揺られながら暮らす二人の姿を思い出すにつけ、優しいテーマ曲も一緒に頭の中に流れてきて胸に堪える。くるくると目で喋るジュリエッタ・マシーナも愛らしかったけれど、粗暴で自分勝手で、心の在処が分からずに回り道をし、ラストに慟哭するザンパノという男を演じたアンソニー・クインの姿が瞳に焼き付いている。また、彼の行動を一歩離れて見つめ、突き放すことのできない感情を観るものに与える監督の手腕も素晴らしい。 [DVD(字幕)] 8点(2007-09-17 02:01:42)(良:2票) |
7. アニーよ銃をとれ
《ネタバレ》 主役ベティ・ハットンが終始スーパーボールのように飛び回っている楽しい映画。賑やかで見せ場もあってもちろんロマンスもの娯楽大作。最初に驚いたのは、ハワード・キールの歯の輝き。登場シーンで微笑んだとき、あの真っ白いスーツ以上にギラリ~ンと光った歯!うちの月賦で買った液晶テレビは、50年以上の歳月を越えて届けられたギラリ~ンを正確に再現した。そらアニーも目玉グリグリさせて一目ボレするわな。ちょっとするとドスの利いた歌声になっちゃうけど、ピンクな女の子を目指しちゃうわ。世界各国でもらった勲章ぶら下げたって、恋する娘の気は晴れない。そこで出るパパの名ぜりふ「恋は銃で射止められない」!そうよ、引くのも必要、勉強になるわ。ビーズ沢山のウェスタンウェアも可愛いし、女の子にお勧め。 [DVD(字幕)] 7点(2007-04-22 10:02:18) |
8. 近松物語
《ネタバレ》 ストーリーの暗さと長谷川一夫のねっとりした感じがどうも許せないけれど、映像作品としてはすごい力を持っている。どのシーンでも奥行きを持たせた画が絵画のようで、琵琶湖の心中や竹藪のシーンは、植物のしなやかな美しさが最大限に引き出されていた。鈴を転がすような声の香川京子、おきゃんっぽい南田洋子も適役。どこかあざとい男衆もいい顔してる。でも長谷川一夫だけは浮いて見えた。主役が浮くとは…。物語は、成り行きで行動を共にした二人が恋の魔物に取り憑かれて昇天していく話。こういう話で町人の涙を搾り取るのが江戸時代のストーリーテラーの仕事だから、暗さに文句を言っても仕方ないが、まあなんと周りの人間の勝手なこと。そしてそれを突き抜けて進む二人の恐ろしい姿。だけどやっぱり長谷川一夫がなぁ。 [映画館(邦画)] 7点(2007-03-26 22:43:23)(良:1票) |
9. 浮雲(1955)
モノクロの画がとても綺麗。今まで観たモノクロ作品は「これはカラーで観たかったなぁ」と思う映画ばかりだったのに、これはもう絶対モノクロが良い。モノクロだからこそ引き立つ墨色のバランスや光の明暗に惚れ惚れした。そして高峯秀子が凄い。美しくて嫌味で、皮膚に粘っこいものが浮き上がってくるようなあの感じ。時折パパパッと移っていく視線なども、女の情念が充ち満ちていた。ストーリーは、もうどうしようもない男と女の道行き。二人で酒を飲んでは管を巻き、そぞろ歩きしては反発しあう。それでもお互いの心にこびりつく想いをたどってまた会ってしまう。華々しくて爽やかなだけが恋愛ではない。泥の中を歩んでいくようなこんな二人の関係もまた愛なんだろうな。 [DVD(邦画)] 8点(2006-07-29 13:22:25)(良:1票) |
10. 麗しのサブリナ
ヘップバーンと細かなジョークが愛らしい映画。個人的にはお父さんの言葉ひとつひとつが頭の上に落ちてきて妙に納得させられた。切ないねえ、パパ。それからバナナの歌大好き。 [DVD(字幕)] 7点(2006-07-12 23:34:06) |
11. カラミティ・ジェーン
あたしも保安官の方がいいなァ…ま、それは置いといて。可愛らしいミュージカルでした。しかし私、カラミティを観て「モンスター(2004)」のシャーリーズ・セロンを思い出しましたよ。美人のガニ股演技の草分けでしょうか。ドレスを着てもドカドカ歩きなのはご愛敬、川で転がって泥だらけなとこはやりすぎな感もあるけど…キュートでした、うん。 [DVD(字幕)] 7点(2005-09-03 13:52:04) |
12. 掠奪された七人の花嫁
《ネタバレ》 そうなのよ…。神の名のもとに立派に誓ってみたりするけれど、結婚って金の面倒と身の回りの世話を交換条件として、ゆくゆく自分の子孫を残すための儀式なのよ。いくらレディ・ファーストの国アメリカだって、この映画の公開時は男女の役割がはっきりと分かれていた時代です。映画を観た女性は「そうなのよ!フン!」と強くて明るいパッチワークドレスのミリーを応援していたことでしょう…。それでも、ポンティピーブラザーズは彼女に敬服していたからエライ。だから夫婦愛も産まれたんでしょう。ダンスは楽しいし、兄弟達結構カッコイイし、単なるラブ・ロマンスと違って先は読めないしでなかなか充実した映画です。ラストなんて、6人のお嬢さんが揃って「mine!!」と言うまで、どうなるかヒヤヒヤしちゃいましたよ。単純に楽しい映画が観たいならオススメです。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-25 20:20:03) |
13. サンセット大通り
《ネタバレ》 ラストがだいたい分かっているのに、面白くてモノクロの画面に引き込まれてしまった。憐れな女優の物語。「サンセット…」というタイトルと、パラマウントの撮影所でのワンシーンに全てが集約されている。旧知の照明技師が当てたスポットライトによって、スタジオ中の人が「ノーマよ!」と元大女優に駆け寄るが、光が逸れると群衆も三々五々彼女の元から散っていく。太陽が沈んでいくのと同じ、時間が絶え間なく流れるのと同じ、自分の価値が変わっていくことを心の底で判っているからこそ無駄に藻掻いて、見苦しい姿になっていくノーマ。三流の脚本家にまで捨てられ、プライドゆえ狂っていく。人間、プライドなんぞより流れる時間を楽しむくらいの余裕が必要なのだ。もしかしたら彼女はそれにも気付いていたかもしれないけれど…。あの執事も時の囚われ人で、彼をもっと掘り下げて描いたら、いっそう不気味さが益したろう。人間の内面の愚かさを巧みに映像化した秀作。明日は我が身と震えた業界人も多いのでは…。 [DVD(字幕)] 8点(2005-07-04 21:46:00)(良:2票) |
14. 海底二万哩
《ネタバレ》 昨年ディズニーシーに行った時のこと。『海底2万マイル』のアトラクションに乗っている最中に娘が一言「ネモ船長って誰?」そうだねえ、それはキャストさんに聞いてみましょう、と、降り口にいた小柄でカワイイキャストのお姉さんに質問させてみたのでした。忙しそうなお姉さんは、それでもニッコリと「いろいろなものを発明した、偉い人なのよ…」そして私にむかって「映画、ご覧になってみてください。」とおっしゃいました。ああ、映画見て無いじゃないの!と思いつき、借りてみた次第です。なるほど、ディズニーシーで見かけたあれやこれやがポチポチと登場して、遊びに行く前後に見ると面白さUP!かもしれません。一番好きなのは「狩り」のシーンです。あの車エビ(?)やら魚やらを捕まえている映像、最後カメと手(ヒレか??)を取り合って海底を歩く姿には、「ひゃーー」と驚きどおしでした。あれって特撮じゃないですよね?娘は「カメを食べるな!!!」と怒っていました。気持ち、わからないでもないな…。子ども向け小説を読んだ記憶があるものの、内容をさっぱり覚えておらず、なかなか無骨で男のロマンみたいなものを感じる内容に少し驚きました。配給ディズニーだったから、「みんな仲良く一つになって、冒険だぁ、頑張るぞぉ!」という映画だと勝手に思っていましたので…。子ども向けにしては長いし、登場人物も全て男性という点で華もないので、娘は途中でだれていましたれど、私は結構楽しめました。この制作年でここまでの映像を作ったのもすごいと思います。 7点(2005-02-03 22:57:10) |
15. 80日間世界一周
かなーーり長くて疲れてしまった…。でも、この手の楽しい冒険映画に冷たい評価が出来ないのが、私の弱点だろう。1950年代、映画に夢を求めている人が沢山いた時代の作品。世界旅行がまだまだ人々の夢だった時代に、これだけの美しい映像で楽しい旅の日々を綴った制作サイドの面々に点数を捧げたい。あの有名な優雅なテーマ曲に乗って、お茶目なパスパトゥを従えて、難しいことは何も考えず、ディズニーリゾートにでも行っているような感覚でトリップするのが最適。 8点(2004-11-23 17:44:24)(笑:1票) |
16. 悲しみよこんにちは
「メロウな雰囲気に憧れるあなた、読むべし!」高校生の頃、雑誌にこんな風に紹介されていた「悲しみよこんにちは」。メロウというか、ふてくされた女子高生だった私は即座に薄い文庫本を購入して、気怠いフランス文学を読みふけりました。映画化されていると知ってから何年経つでしょう。念願叶っての鑑賞でした。詩的なセリフは原作から抜き取ったようだったし、松林をぬけて恋人に会いに行くシーンも私が思い描いていたものに沿っていました。回想シーンで声にエコーが掛かったり、ときどきいやに不幸せそうな表情を見せるのが少しくどいのですが、瑞々しくて可愛いくて、勝手気ままなセシルがとてもステキです。ジーン・セバーグバンザイ!彼女を観るだけでも価値があります。 [映画館(字幕)] 8点(2004-09-04 19:13:14) |
17. 紳士は金髪がお好き(1953)
モンローが持っている魅力全てを使ってお芝居しています。共演のジェーン・ラッセルも そうでしたけれど、ムッチムチボディと歌と素敵な衣装と…、話の筋などよりは目の保養に良い映画でしょう。この映画での彼女の役どころは「金こそ全て」という、しかもそれを包み隠すことのない女性。んまー、共感はできませんけどその設定が似合っているところがマリリンのすごいところでしょうか。いや、彼女にそんなイメージを焼き付けてしまったのが逆にこの映画なのかもしれないですね。丸窓から脱出をはかる時、「ピーターパン」のティンクと同じ事をしていました。このあたりは表情から何からとても可愛らしかったです。でも私自身の好みはラッセルの方かな。きりっとした視線が格好良かったです。 6点(2004-06-19 18:37:48) |
18. ショウほど素敵な商売はない
《ネタバレ》 じ、実はアメリカのバラマリリン・モンロー初見です。白状すると、端からミュージカル映画と知っていたしマリリン・モンロー出演ですから、あまりストーリーには期待していなかったんです、ゴメンナサイ。なかなか良いお話ではないですか。興行が生業のドナヒュー一家のお話です。ミュージカルなのでショウのシーンがとても多く、ステージシーンはかなり大がかりで息を呑むほど。終始一貫、それがただの朝食のシーンでも画面は華やかでした。色々な出来事の中、違う道を歩んでいた家族が最後にまた同じステージに立ったときはちょっとほろりときました。大恐慌時代や戦争の影などちらつかせながらも、誰でも聞いたことがある「ショウほど素敵な商売はない」で明るくあでやかに締めたのは良いですね。マリリンは…ショウのシーンもあるんですが、添え物の感あり。途中悪者扱いされていたりしたし、ちょっと残念かなあ。 7点(2004-06-12 18:47:35) |
19. 戦争と平和(1956)
原作は文芸大作。本を読む気にはならないし、オードリーが出ていれば最後まで観られるんじゃないかな、と勉強のつもりで観てみました。ナポレオンのロシア侵攻を基にした壮大な物語です。はい。難しかった。理解力のない自分が情けないです…。オードリーは無邪気で美しいお嬢さんといった感じでした。一番印象深かったのは、後の夫メル・ファーラーをオードリーが看病するシーン。メルの視線は私情が入りまくってます。もう可愛くってしょうがないのねー彼女が、とこっちが照れちゃうほどの熱いまなざしでした。 5点(2004-03-03 19:19:28) |
20. 欲望という名の電車(1951)
始めの1時間は、ブランチの気色悪さになぜか引っ張られた。その後1時間は、どんどんエスカレートしていく彼女の狂気に引っ張られた。こういう、目の離せない演技というのを久しぶりに見た。スタンレー(M・ブランド)は乱暴を振るうとき、少し手が震えたりしていて、彼女の芝居に比べたら…。追い詰められ破綻し、けばけばしい外身から悲しみが流れ出てくる。こんなにおぞましく、すごい役を役を演じられるヴィヴィアン・リーに8点。 8点(2004-02-16 18:58:36) |