1. スローターハウス5
《ネタバレ》 この映画にはドレスデンの大空襲がでてくる。だから反戦映画と言われていたりするけど、その見方は十分ではない。主人公のビリーは、地球外生命体トラルファマドール星人に誘拐されてから、事象を四次元的にとらえるようになる。つまり、ビリーは、過去→現在→未来という区別なく、自分の人生の様々な瞬間を何度も行ったりきたりしながら浮遊しつづけているのだ。だからビリーは、自分が死ぬ瞬間やドレスデン大空襲に遭遇する瞬間も何度も体験して良く知っている。このように何度も空襲を体験するうちに、ビリーは『大空襲が起こらないようにすべきだ』という反戦のスタンスよりも、「So, it goes=物事はそういうものなのだ」という緩やかな全肯定のスタンスを取るようになっていく。トラルファマドール星人流のあいさつ、「こんにちは、さようなら」にもおなじスタンスが感じられる。時間軸を漂流する旅人となったビリーには、地上の悲惨な戦争ですら静かで小さな出来事なのだ。このビリーの感覚に共感できる人にとっては、この作品は忘れがたいものになるだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2010-03-31 15:27:16) |
2. 待ち伏せ
大スターの共演が売り物の本作。中村錦ノ介の肝が小さい役人の演技だけがやけに印象に残った。その他、三船敏郎はいつもどおり、勝新太郎の悪役はハマってるがまあまあ、石原裕次郎はそもそもあんまり活躍しないというわけで、なんだかすっきりしない時代劇になってしまっている。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-03 16:17:44) |
3. 事件
いつのころからか、この映画に描かれれているような日本の情感はなくなってしまっているのではないかと思う。このような愛憎の図式にリアリティーを感じられなくなっているのが現代の日本的な感覚だと思う。それはなぜか。それは、この映画に描かれている事件が、「社会的な構造が生んだ悲劇」と表現されており、そのレッテルを当事者自身が自覚して、自らを悲劇として生きているからではないか。そのような自己理解をする日本人は現代にどれだけいるのだろうか?この映画には、過去の日本がたどった精神性を逆照射させてくれるものがあるとは思うが、あまりにも現在と違うという点で面白さがすこし削られてしまっている。 [DVD(邦画)] 6点(2008-07-27 18:57:29) |
4. 新幹線大爆破(1975)
サスペンスの要素はよくできているが、人間の背景描写が濃すぎる。「人間の真の姿を描く」ということが、唯物論に席巻された日本の抱え込んでいたテーゼだとしたら、この映画は、そのテーゼの具体化において、やりすぎたゆえに失敗作になってしまっている。ただ、当時の人からみるとおおいにうなずける作品だった可能性もある。なにはともあれ、悪いことするにも理由がないと納得できない。説明せずにはいられない。そういう時代の日本を知る意味でも貴重な作品。 [DVD(邦画)] 6点(2008-05-23 20:50:15)(良:2票) |
5. カプリコン・1
火星への有人飛行がウソだったらというアイデアに+2点、NASAの陰謀とジャーナリストの攻防がうまくできてるから+2点、余韻を残したラスト(というか、ラストのその後を描いたら結構悲しい話になる…)に+2点、こんなフィクションがあってもおかしくないと思わせるアメリカという国のイメージに+2点。 [DVD(字幕)] 8点(2008-05-12 19:45:03) |
6. リスボン特急
冒頭。一台の車をフレームに収めながら追うカメラ。無言のまま銀行強盗がはじまってゆく。その語りッぷりのうまさに、熟練した監督の手腕を見る。ストーリーはたいしたことはない。サスペンスにとって重要なプロットも普通だ。だけど、材料から考えれば当然凡庸な作品になるはずのこの映画を素敵な映画にしてるのが、監督や俳優のうまさだ。一言で言ってしまえば「雰囲気がいい」。こういう老獪な映画は、すこし渋すぎるのが気になるが、曇りの日に見ればそんなことも気にならない。フランスらしい、適度にひねくれた作品だ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-10-23 22:36:47)(良:1票) |
7. リトル・ロマンス
この映画、高校生の時に見れて、良かったなぁと昔を振り返ってます。10代前半でハイデッガーを読みこなすとか、競馬予想システム作っちゃうとか、多少わざと観客の心に刺激を与えようとしすぎている嫌いがありますが、旅に出てからの展開でもう納得。こんなにかわいらしいボギー&バコールですか。やられますよそりゃ。 9点(2005-03-12 08:16:09) |
8. オリエント急行殺人事件(1974)
原作の綿密な推理を展開するポワロ像は、とても映画の時間制限の中では再現できないのでしょうがない。それにしてもポワロが少し声大きすぎ。僕の中では、もっと神経質な小声のイメージなのだが。。。 しかし、ジャックリーン・ビセットがあまりにも美しく撮られていて、正直、降参です。 5点(2005-03-07 14:58:30) |
9. 書を捨てよ町へ出よう
「映画なんてただのスクリーンの上のできごと、映画館の電気がついたら消えなきゃならない。所詮そんなもの」とか何とか主人公が言っていたような気がするが。そういうみもふたもないこというのは勝手だけどさ、僕は観客としてお金を払って映画館いってるんだから。1800円払ってんのに、そんな話をきかされてもね。ただ単純に「金返せ」としか思えない。とても腹が立った。ストーリーも謎、どうしようもないほどちりばめられた有名著作からの引用、斬新かもしれないカメラワーク。なんか時代の最先端を行こうとして、一番先に色あせてしまったという感じ。本当は0点としたいところだが、僕の感想はあくまで現代に生きている僕の意見に過ぎないし、この映画が製作された当時には結構評価されていたらしい事を考慮して1点。 1点(2004-07-24 21:00:14) |