1. リミット・オブ・アサシン
《ネタバレ》 暗殺者の孤独、妻子がいたばかりに起きた悲劇、裏で彼を捨て駒の如く扱う組織への復讐、敵対する相手に芽生えるシンパシー。裏社会に生きる男を主役に据えたリベンジアクションに必要な要素は悉く兼ね備えた作品。あとはどう料理するかって感じですね。 本作では、凄腕暗殺者が妻子を自らの裏家業に巻き込んで失ってしまったショックによって非情さを失ってしまい(何で高額報酬で気持ちがなびいたかは不明、何で愛する妻を想いながらターゲットと寝たのかも不明)、結果感情的に流され本来の姿を失わされた相手によって殺されてしまうというのが一つ目の調理ポイント。そして組織によって蘇生して情報を聞き出され、お役御免となって再度殺されそうになったところで逆襲、余命24時間(薬物投与による副作用なのか埋め込まれた生命維持装置の寿命なのか不明)の間に組織の策略を阻止するというのが二つ目にして最大の調理ポイント。 そこにお決まりの逆転また逆転とか、主人公が知らなかった組織の非人間的な行為の露呈とか、思いがけない協力者の登場とか、いくつかのエッセンスが加わってくる訳ですが、スピーディな展開と派手なアクションシーンのおかげで大いに楽しませてくれるものの、肝心要の主人公の凄腕殺し屋感が弱いのです。この人ホントに非情なヒットマンなの?てな感じに見えてしまう。それは、彼の非情さを見せつけてくれるようなシーンがなかったのが一番の原因かと。組織の下っ端とかには滅法強いし非情ではあるものの、それはアクションシーンの中でのお話に限られるし、見逃してあげちゃったりもしてるし。 凄惨なシーンが多々登場する割には意外とライトな感じで鑑賞できる作品。決してキャスティングは悪くない、どころか寧ろ良いと思われるのに、今一つ浅いというかヒネリがないと言うか、シンプルな面白さは十分あるのに何だか勿体なさを感じた作品でした。 あ、ラストシーンは要らないと個人的には思いました。アレって観る者が想像すべき後日談的なもんじゃないかと。減点要素です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-04-24 00:15:04)《新規》 |
2. ランチボックス
《ネタバレ》 ほのぼのとしたラブストーリー。 がんちゃんはハルが届けてくれる弁当が本当は大好きだし朝食抜きの生活にとってなくてはならないもの。でも、仕事が見つからない中で自分のために毎日弁当を作っては届けてくれる彼女に対して、もっと彼女自身のために時間を大切にして欲しいという気持ちもある。だから、つい「もう弁当はいらない」などと言ってしまう。言ってしまって後悔している始末。 ハルはがんちゃんに「もう弁当はいらない」と言われちょっと悲しくなる。けれども、がんちゃんが自分のことを大切に思っているからこその言葉というのも解る。翌日の弁当は白飯おにぎり2個という意地悪をしつつ、直接届けることには気が引けてしまい彼の後輩に託してしまう始末。 一念発起したのかハードルを下げたのかハルは翌日すぐに仕事を見つける。がんちゃんの気持ちにすぐに応えたかった。そして、見つけた仕事は弁当作り。彼女の意地が見え隠れする。それに対して、がんちゃんはもう自分に弁当は届かないと解りつつも彼女の就職を祝う。そして翌日からは後輩同様にランチはコンビニで買う生活に。 弁当を食べながらの後輩との会話、コンビニのおにぎりを食べながらのがんちゃんとハルの会話、ちょっと気まずくなった前と後での二人の寝起き、そしてラストの後輩とのやりとり。細かな演出に二人の心の機微が映し出されていて、観終わってほっこりとした気分になれる作品でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-04-21 00:32:00)《新規》 |
3. なまず
《ネタバレ》 1枚の恥ずかしいレントゲン写真の流失によって振り回される関係者たちを描いたコメディ、なのでしょうけれど、写真の流失騒ぎは単なる発端であって、そこから展開していく物語はイマイチ無理やり繋ぎ合わせている感じがしてシックリと来ませんでした。 そもそも件のレントゲン写真があまりにイイ加減(どう考えてもそのアングルの写真撮れっこないでしょ?ストロボたいてるし)で、ヒロインがそれを自分と彼氏との写真だと思い込むのも根拠が明示されないので無理やり過ぎる感じ。 タイトルのナマズの登場は唐突過ぎるし、ナマズの見た世界をナマズか語るっていうのだったらそれに徹した方が良いし、肝心のナマズで繋がないもんだから各エピソードがバラバラな感じ。 実に取り留めのないという作品。そもそもコメディなのに笑える場面が少な過ぎるのもマイナスポイントでした。 [インターネット(字幕)] 3点(2025-04-19 09:44:44) |
4. インビジブル・ゲスト 悪魔の証明
《ネタバレ》 既にご指摘のあるように、「羅生門」を想起させる展開ですね。しかも、一人の人間の言動によって事実関係が塗り替えられて行くという変化球。複雑に入り組んだ物語には大いに翻弄されました。キチンと辻褄合わせが出来ている脚本には脱帽です。 が、少なからず展開ありきの肉付けを感じてしまうのも事実。そりゃあこれだけ入り組んだ物語を最終的に一か所に収斂させて行くには力業の一つや二つは必要でしょうけれど、結構何回も「んな訳ないだろ!」的な展開が結構頻繁に見受けられます。痛し痒しとでも言いましょうか、この複雑な物語の落としどころを如何に自然にバランス良く偶然と必然に描き分けるかに当たっては、作り手も相当苦労したのではないかと思う次第です。 極上のエンタメ系作品として割り切るのであれば大いに楽しめました。ただ、一旦疑問を挟んでしまうと、と言うか現実問題として捉えてしまうと評価は一変しそうです。今回はエンタメ系として割り切りました。 ちなみに邦題は良いですね。原題のままだと単に密室殺人の謎みたいなイメージかと。「悪魔の証明」を持って来たことで物語の本筋が見えて来る感じですね。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-17 14:03:43) |
5. バッド・バディ!私とカレの暗殺デート
《ネタバレ》 いいですね~♪ハッキリ言って中身はスカスカ。ストーリーがどうのこうのという内容ではありません。強いて言うなら、主人公の殺し屋(元殺し屋?)が、殺しは悪いことだから殺しを依頼する悪い奴を殺すという詭弁のようで単なる屁理屈というがポイント。そのくせ同じ血が流れてるのを本能適に嗅ぎ取った相手に心の底から恋をしてしまうというアホな純粋性。かなり無茶というか殆どコントです。 でも、だからこその楽しさってものに溢れてる訳で、難しいことを考えないで済むし、主人公もヒロインも概ね無敵だからピンチもピンチと受け取らずに済むし、いざとなれば敵さえ味方になるしで、完璧に無防備でエンジョイ出来るってもんです。 お約束とばかりに主人公が絶体絶命になったり、惹かれ合う二人が引き裂かれたりする心配なんかないこの手の作品は大好物。なので相当甘めの高評価です。 ちなみに邦題はちょっとどうですかね?原題のままとか原題の意訳が良かったような。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-16 16:53:51) |
6. それも恋
《ネタバレ》 製作後10年近く経てから鑑賞したこともあり、些か時代背景は変化してはいるものの、ここに語られるある種の「恋」は永遠普遍のモノと言えないこともないかと。それが証拠に、エンディングに登場する類の事件は後を絶たない訳で、積み上げられた条件がカチッと嵌まってしまうと逃れられない心情になり得るのでしょう。勿論全く肯定はしませんが。 本作の場合は、本人の責任が全くないことはないまでも、良恵の置かれた境遇は日々彼女を追い立て続け、いつの間にやら素直に自分らしく生きる術を見失ってしまった訳ですね。それが最愛の母の死、それもジワリジワリと迫って来た末の死、という衝撃が引き金となって一気にタガが外れてしまったということでしょう。そして、外れること自体は彼女にとって即ち悪ということでもないのに、偶さかそこに中国人青年がいたものだからあらぬ方向になびいてしまった。それは不幸です。彼女だって気付いていただろうに抗えなかった。 中国人青年の方も、細かな背景が説明されていないので俄かに批判は出来ないものの、止むに止まれぬ事情で追い詰められた上で結果的に最近で言うところのロマンス詐欺、昔ながらの結婚詐欺を働いてしまった。 良恵が一方的に中国人青年に騙された訳でもなく、勿論中国人青年が良恵にイイ様に扱われた訳でもない。自然にどちらからということもなく惹かれて行ったと言って良い様に思えます。これ即ち「恋」なのでしょう。殺したいほどの「恋」が芽生えてしまったのですね。 姉に言い寄った男が偶然にも妹の裏バイトの客だったなどという狭すぎる世界には少々引いてしまいましたが、どうにも地味で魅力のない良恵が、「恋」によって彼の前では可愛らしく変化していく様は非常に丁寧に描かれていて好感が持てました。オチは決して意表を突くようなものではありませんが、寧ろ決して珍しくないオチによって鑑賞後の印象は深まったように思えました。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-04-15 16:24:08)(良:1票) |
7. ロマンティックじゃない?
《ネタバレ》 これでもかと言わんばかりの鉄板的ラブコメ作品ですね。数多ある名作ラブコメをパロっているようでいて本作こそが真のラブコメ的な作りになっている。安心・安定のラブコメです。ラブコメ好きの方は勿論のこと、ヒロインのように本当はラブコメ好きなのにラブコメ嫌いを装っている方も含め、大いに楽しめる作品だと思います。なので、心の底からラブコメ嫌いの方は視聴注意ですね。 かく言う私はラブコメ好き(ただし感情移入し過ぎるのであまり見ないようにしているというヒネクレ者)なので大いに楽しみました。結末が分かっていても楽しめてしまう。分かりますよね~、見え見えです。それでも楽しめるように丁寧に作られている作品。作り手のセンスに拍手です。 強いて言わせていただくならば、レベル・ウィルソンさんが美し過ぎ。確かに立派な体格ですがどっからどう見ても美形です。正直、彼女のことはあまり知らないのでライトな体型だった頃とかは分からないのですが、間違いなく美形です。対するアダム・ディバインさんは他の出演作のイメージが濃すぎて素直に美男子には見えないのですが、それでも優しくて気のいい好青年のオーラが出てます。なので、ちょっとお膳立てが揃い過ぎな感が否めません。 とは言え、そんなことに少々抵抗感があったとて本作のラブコメとしての完成度は下げられませんね。ハッピーエンド、しかも誰も不幸にならない完全なハッピーエンド。たまにはこういう作品を観ないとね。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-14 13:57:09)(良:1票) |
8. 予定は未定
《ネタバレ》 アラフォー女性の日常を切り取ったショートフィルムですが、今どきは結婚年齢も遅くなっているし未婚率も高まっているし、そもそも結婚していないことを言うだけでセクハラだし等々、描かれている日常にはそこそこ時代錯誤感があります。 ただ、それは作り手が逆手に取っている部分と言うか、敢えてそこを突くことで社会に対してのシニカルなスタンスを示している感じでしょうか。 ヒロインが日々受け続けているプレッシャー。過去の敗北を引きずり続けているうちに若さをうしないつつある現状。生きることに不器用なことは寧ろ魅力にもなり得るのに。 ラスト、疾走する彼女の口元に浮かぶ微笑みは、何かが吹っ切れた、何かが剥がれ落ちた証しであることを望みます。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-04-13 23:34:28) |
9. HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス
《ネタバレ》 ある意味正しき続編ですね。前作を全体的にキチンと拾い上げて踏襲しています。2作目の難しさってのはあると思いますが、見事パワーアップ、バージョンアップしていて、2作目だからこそ陥る失敗みたいなものは少ないんじゃないかと。 兎にも角にも主演の鈴木さんの鍛え抜かれた肉体、わざとらしいまでの朴訥とした演技、ムロさん、柳楽さん、安田さんなどなどの弾けた演技が、如何にも楽しんで制作した感を醸し出してる。コメディって作り手の楽しさが観客に伝わってこそコメディになると常々思っていますが、本作はまさにそんな感じの空気に満たされていて心地良い限り。強いてちょっとだけ残念だった点があるとすれば、終盤に少々流れが停滞したと言うかちょっと尺が長過ぎたのかも。 観る者を大いに選ぶ作品であることは間違いないです。前作同様、たまたま私はピンポイントでハマリました。なので前作同様の評価です。ここに描かれているのは清く正しく美しい正統派の変態。変態の類型にもいろいろあるとは思いますが、これぞ正しき変態。 次作もあるのでしょうか?「シティハンター」の鈴木さんも良かったですけれど、やはり変態仮面としての鈴木さんを是非今一度観てみたいところです。すっかり大人になった変態仮面の姿を。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-04-13 00:09:58)(良:2票) |
10. ムーン・ウォーカーズ
《ネタバレ》 オープニングのスタイリッシュなアニメーションから始まり、エンドロールで跳ねるおデブさんまで、全編通じて楽しませていただきました。ライトなお笑い感覚にライトなエロティシズム、そこに挿し込まれるハードなアクションとグロカット。塩梅が良い感じ。ベタなアメリカンコメディも大好きですが、若干イギリス感のあるこのフランス・ベルギー合作コメディも良いですね。 有人着陸のフェイク映像に関する作品と言えば「カプリコン・1」が真っ先に思い浮かぶところ。また、アポロの友人月面着陸には様々な観点からフェイク疑惑があるという都市伝説的噂。本作は、更にそこにキューブリック監督まで絡ませて実に楽しく魅せてくれました。 そして、本来コメディ感の薄い?ロン・パールマンさん演じるCIA諜報員が良いですね。恐いんだかニブイんだか分からない感じ。ベトナムでの3年間によって負ったPTSDに悩まされる疲れ切った敏腕諜報員。板に付いてます。流石です。ハリポタのロン役だったルパート・グリントさんのクソ野郎だけど憎み切れない感じもまた良し。また、CIAが情け容赦なく殺しまくるという設定がホントかどうかは知りませんが、少なくとも本作としては最高に効き目のあるエッセンスじゃないかと。あ、謎の映画監督?とその秘密の館もなくてはならないエッセンスですね。 もっと諸事情に詳しければ、パロディ要素等々更に楽しめたに違いない作品。いろんな要素をバランス良く絡ませたコメディに8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-12 14:28:51) |
11. NIMIC/ニミック
《ネタバレ》 当たり前の日常。家族で一番早く起き、朝食用の茹で卵を作る。オーケストラのリハーサルに行き満足した演奏が出来ないまま帰路に着く。妻との間に、そして子どもたちとの間に何があるのか?冷めてもいなければ温かさもない日常。チェロの演奏もまた然り。日々リハーサルを積んでもそこには新たな喜びもなければ達成感もない。 そして、特に必要性もないまま唐突に発した「今何時?」という一言。聞かれた女はその時点で彼と同期する。或いは入れ替わり始める。そして、彼と同様に彼女もまた誰かに時間を聞く。その上で彼女は彼を追う。否、追っているようでいて追ってはいない。それは彼女は彼だから。自宅の鍵も所持している。夫として父親として家族に受け入れられる。更にはオーケストラにも受け入れられる。そのことは即ち彼が存在を失ったということなのか。しかし、彼は誰なのか判らないまでも少なくともそこに存在する。そして、もしかしたら彼女がそうだったように、彼もまた失った存在を取り戻すべくNIMICを求めるのでしょう。誰かに時間を訪ねるカットこそありませんが。もしかしたら連鎖を断ち切る?そんなことはなさそう。 タイトルの「NIMIC」はルーマニア語で「何もないこと」らしい。何もない彼女は全て揃っている(機能しているか否かは兎も角として)彼になり、彼はいったん「NIMIC」となって行く先を求める。存在は本質的には限りなく不安定かつ流動的であって、見極める間もなく移ろいでしまうものなのだ、といったメッセージなのでしょうか? 日々の生活の足元を揺るがされるような不気味さが漂う、単調ながら不安と期待が綯い交ぜになった短編作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-11 00:09:53) |
12. ロブスター
《ネタバレ》 近未来SFなんですね。未来の世界は今と違ってこれこれこうなっていますみたいな一つの定番。ここでは子孫を残せない独身者は社会悪、ということのようです。今の世界で常識化しつつある「多様性」とは真逆の世界。現実世界にシニカルな視線を向けたダークファンタジー、或いはダークコメディといったところでしょうか。 キライではありません。一見奇抜さを求めて思い付きのままに作られた作品のように思えなくもありませんが、考え抜かれたプロットに基いた作品であることは間違いないと思います。ただし、テーマが解りにくいことも間違いない感じ。おそらくは「愛」なのでしょうけれど、設定が設定なだけに少なからず歪んだ愛のような。 この世界では「似たもの同士こそが夫婦のあるべき姿」のようですね。意外と古風。ホテルでの一連のプロセスはそのフィルターということでしょう。支配人のカップルが理想型とも思えないあたりはコメディ要素かと。 で、生き残るためには、幸せになるためには、愛する人と同じ特性を身に着けなければならない。少々問題ありのキャラ設定である主人公は、愛するが故に自ら失明の道を歩んだのか。多分答えは「否」のように思えます。彼にはそこまで出来ないでしょう。そしてロブスターにされたかの如きエンドロール。 繰り返しますが嫌いではありません。敬愛する故デヴィッド・リンチ監督の描いた不条理劇を愛する私。不条理風なこの作風も嫌いではない訳です。だいぶ異なる作風ですが。 絶賛したいところです。ただ、冒頭の馬射殺と中盤の主人公の元兄の犬惨殺とウサギの受難には許し難いものがあります。愛するサメ映画の鉄則(ただし一部の作品にのみ通用)「犬は死にません」を見習って欲しい。これはいけません! まるで別人の如きコリン・ファレルさんの演技の素晴らしさ(太ったのは役作り?)の分を考慮しても、動物殺しのマイナスの方がデカいので7点止まりとさせていただきます。 (追記です) 書きたい小ネタは多々ありますが、どうしても書きたいのを追記します。 ①ホテルの従業員の女性がデヴィッドを助け「何でだか分からない」みたいなこと言いますが、そりゃ毎日あんなことやってたら情が移りますって。 ②プールのシーンの背泳ぎ。今まであんなに官能的な背泳ぎを見たことがないです。あぁなんと艶めか美しいこと。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-10 18:45:11) |
13. 鼓動
《ネタバレ》 父を亡くした若者・ミツルと若い息子が不治の病に侵されつつある男・高橋。恋人に別れを告げられ帰路を急ぐミツルと、駅前の路上で携帯を前に泣き叫ぶ高橋には実質的な接点は全くない。しかし、父への後悔の念はミツルを振り返らせた上に高橋に歩み寄って手を差し伸べさせる。そして、息子と同年代のミツルを仰ぎ見た高橋は、それに応え強く握り返す。 ミツルは死の直前の父からの電話を繰り返し無視し続けた。そして、冷たい言葉を投げかけた電話が父との最後の会話となってしまった。父親に愛情を感じていなかった自分。一方的に自分からの感情のみによって父親と接して来た。それでは自分は何をして来たのか。ただ自堕落な生活をしていただけではないのか。反省は内側にも向かう。そして見ず知らずの泣き叫ぶ高橋に父を重ね手を差し伸べる。 一方、差し出されたミツルの手を握り締めた高橋には何が伝わったのだろうか。常に厳しく接し続けて来た息子が、今や寝たきりの状態で発語さえもままならない。進行する病魔と死への恐怖。きっと父親のことを恨んでいるのだろう。息子への厳しい言葉や態度が悔やまれる。それは自分のことは顧みず息子に苦行を強いていただけではなかったか。もっと違う父子関係であれば息子は病床に臥せずに済んだのではないか。そこに差し出されたミツルの手。ミツルと我が子を重ね合わせ、逡巡しつつも差し出された手に我が子の手を重ね合わせ身と心を委ねる。 この先ミツルと高橋の歩む人生がどうなっていくのかは観る者に委ねられるエンディング。時として振り返ることが後の人生に如何に大切なことか。しかし、それでも人は振り返れない。だから常に後悔がある。そんな感想を抱きました。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-04-07 13:21:59) |
14. ある夜
《ネタバレ》 妻に先立たれた初老の男。息子は心配だから一緒に住もうと言ってくれるが、妻との暮らしを守り続けるかのようにそれを拒む。なんだかありがちな設定ではあるものの、自分の年齢や今の暮らしぶりを考えると矢鱈現実味のある話とも思えます。 ある夜、彼の部屋に現れた不思議な影。霊的なものとも思えず、さりとて幻影とも思えない影。男はその動きに惹き付けられるうちに、それが恋人時代からの夫婦の暮らしを再生していることに気付く。彼の心を覆っていたもの、捉えていたものがスッと晴れて行く。 このファンタジー感のある演出が良いですね。シンプルにシルエットのみで表現することで夫婦の暮らしぶりが深みを増しているように思えます。 結果、男は新たな気持ちで現状に向き合い、息子一家との暮らしに一歩踏み出す。わずか10分余りの尺の中に込められた物語。ごくごくシンプルな物語ながら観終えて何か温かさの残る1本でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-04-07 12:03:39) |
15. Tea for Two(原題)(2015)
《ネタバレ》 ハートウォーミングなショートフィルムですね。あまり背景は説明はされず、二人の行動・言動、アップで映し出される時計、そしてカフェの店員の眼前から消え去る二人。更には明かされる若い二人の名前。観る者はそれらのパーツを組み合わせてラストシーンに至って気付かされます。あぁ、若い二人は初老の二人の出逢いの頃の姿なのか、と。 何故、過去に遡って若かった二人の出逢いを導かねばならないのか?見る限り初老になっても仲睦まじく見えるジムとアリスなのに。もしかしたら、すれ違い知り合うことのなかった二人が初老になって偶然出逢い、語り合ううちに過去のすれ違いに気付き、方法はどうあれ過去に遡って出逢いを創出したという物語?個人的にはそんな印象でした。違うかなぁ? だとすれば短編だからこその洒落た物語ですね。だって、二人には既に生きて来た人生がある訳で、そこには数多くの人々との関わりもあれば社会との関わりもあった筈。所謂タイムパラドックスが生じるかも知れないですね。あくまでも過去を変えることが可能だとする説に立っての話ですが。 過去は変えられないという説に立てば、人生をやり直す物語。ただし、初老になったジムとアリスにはその行く末を見ることも知ることも出来ない。自由に二つの世界を行ったり来たり出来ない限りですが。 いくつになっても夢を見続けていましょう、そんな語りかけを感じた小品でした。 (追記)字幕は全く意訳なしの直訳です。なので相当激しく違和感ありますが、字幕があるだけでもラッキーとの思いで観賞しました。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-04 11:42:43) |
16. ザ・サイレンス 闇のハンター
《ネタバレ》 面白くないとは言いません。ただ、№1のレビューでも触れていらっしゃいますが、あまりに類似するプロットが先行作品にある(それも複数)のが気になり過ぎます。正直なところ、タイトルとジャケだけ見て、「あ、これは視聴済み!」と思って当初はマイリストから外してしまいました。ざっと調べた限りでは本作は後発作品。他社系と本作と同じネトフリ系各1作を調べたら、いずれも原案・原作は大分遡りますね。オリジナリティがあることは判るのですが、やはりそこが一番残念でした。 ただ、オリジナリティと言っても、例えば洞窟を壊したら飛び出しちゃったというのは怪物系のアルアルですし、設定を置き換えれば呪い系や悪魔系のアルアルでもあります。モンスターにしてみても、先行作のはもっとデカくて人間では太刀打ちできない感じなのに対し、こちらは集団で襲い掛かるタイプという違いはあるものの、ピラニアとか虫系のホラー等々による既視感は否めません。そして、カルト集団が理不尽に襲い掛かるってのは、世紀末モノやオカルトものの定番。これも既視感タップリです。 繰り返しにはなりますが、なんだかんだ言っても面白くない訳ではありませんでした。観終えてみれば続編製作意欲満々みたいな終わり方。そもそもが連続TVシリーズのパイロット版的な雰囲気でもあり、ネトフリでそういう構想があるのかどうかは知らないのですが、そうであれば本作としてはこの程度の展開で留めるのもありかなと思えないこともありません。回を重ねるごとに様々なエピソードが積み上げられて作品世界を充実させていくみたいに。 と言う訳で、何か一味違うものが欲しかったという4点献上です。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-04 00:04:37) |
17. Cargo(原題)(2013)
《ネタバレ》 長編版より先に観ました。評判通りの感動的と言うか衝撃的と言うか、エンディングは哀し過ぎますね。 事故車で気が付くと謎のウィルスに感染した妻が助手席でゾンビ化。逃げようもなく噛まれた主人公は自らの感染死を覚悟します。何としても愛娘を誰かに託さないとならない。妻の遺志に応えるためにも誰かに愛娘を託さざるを得ない。誰よりもこの子を守りたいのに。このジレンマには壮絶なものがあるでしょう。僅かな尺の中に込められた思いがひしひしと伝わって来ます。 感染型のゾンビ映画ではありますがゾンビは殆ど登場しません。潔い演出ですね。そして唐突とも思えるエンディング。狙撃者が誰なのか、そして狙撃の目的は何なのか。一切明かされませんが、赤ちゃんを見つけた時の彼女たちの衝撃は、きっと希望に繋がるものだったに違いありません。遺された父親のメッセージには泣かされるものがあります。 この作品を元に製作された長編版は当然の如く物語をアレンジして膨らませていますが、短編のこちらは中心となるテーマを抜き出してスリムにした作品。元ネタだから当然と言えば当然ですが。いずれも未見の方にはこちらを先に鑑賞することをお勧めします。短編ならではの感動に浸れました。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-01 10:46:40) |
18. CARGO カーゴ(2017)
《ネタバレ》 感動的なゾンビ映画、という評判通り、エンディングには胸に迫るものがありました。 感染した妻に噛まれ自らも残り48時間の命となってしまった父親。しかし、妻が最期の力を振り絞って遺した「娘を守って」というメッセージに命ある限り応えようとする彼。時として愛娘を必死で守り抜こうとする力強い父であり、時として自らの運命に狼狽し生きることを諦めかける一人の男であり…主演のマーティン・フリーマンさんの静かな演技が光りますね。アボリジニの少女トゥミ役、シモーヌ・ランダースさんの素朴な演技も素晴らしい。 基本設定は数多あるゾンビ作品と概ね共通してはいるものの、バッタバッタとゾンビを駆逐するという定番的演出は抑えめにしてヒューマンドラマとしての側面を際立たせた作品。ここでは短編の元ネタとの比較は最小限にしたいと思いますが、アチラが短編ならではの衝撃的とも言える展開であることに対し、アレンジを変えエピソードを加えたコチラには短編とは一味違う新たな衝撃があることは間違いないと思います。素直に感動して8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-30 23:47:06) |
19. おるすばんの味。
《ネタバレ》 わずか10分ほどの作品ながら、一人の少女が大人になって母の愛を改めて感じるという流れが丁寧に描かれている小品ですね。 まぁ斜に構えて観てしまえば、「いくらなんだって毎日カレー?そりゃ子どもだって飽きるんじゃね?」などと言いたくならない訳でもないのですが、そこはカレー大好きオジサンとしては毎日三食カレーだって構わない訳でもあり、だいたいからして今日はポーク、明日はシーフード、明後日はビーフは高いからチキン、みたいにアレンジすれば尚更に毎日でもOK。栄養バランスも良いし毎日カレーで文句言うなよみたいにテーマと関係ない思念に耽ってみたりもしましたが、要はカレーというのは我々(特に)戦後派の日本人にとっての母の味の代名詞みたいなもんですから、ここでのカレーは概念として捉えていいのではないかなどとも考えてみたり。(以上蛇足です) さほど年齢の違わない同僚がコンビニのカレーを食べつつ母の日のカーネーションを邪険に扱う姿を引き金に、日常忘れかけていた亡き母への思いを募らせていくみゆき。母の思い出をかみしめながら自ら作るカレー。そこには母の味があった。非常に短い尺の中で彼女の心境の変化を表しているのだから、少なからず唐突な印象を受けてしまうのは仕方ないところ。短編ならではの味わいに6点献上です。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-03-26 10:58:20) |
20. レディ・オア・ノット
《ネタバレ》 シンプルに楽しめました。由緒正しき大金持ちの一族。その成功の秘密は悪魔に魂を売ったこと。だから定期的に生贄が必要。そのための儀式を一族として定め、代々守り抜いている。そこに嫁いだ花嫁の危機。そんな感じの物語ですね。大笑いの場面はほぼありませんが、所謂ダークコメディと言えるのではないかと。だって荒唐無稽に過ぎますから。 明確に悪魔崇拝を前面に置いている訳でもないのですが、まぁ崇拝しているのは悪魔なんでしょう。悪魔系のお話は正直あまり好まないのですが(何でもありになってしまうので)、参加者の多くが儀式自体を迷信的に捉えていて信じておらず、ノリで人殺しを楽しんでいるだけみたいなところとか、罪もない使用人が巻き添え食ってしまうところとか、ダークな笑いが仕込まれているのとスピーディな展開で一気に楽しめました。 そもそもはあり得ない設定(まぁB級悪魔系ホラーだと思えば定番ですが)ながら、罠にはまったグレースが事の真相を理解して逆襲に出て、ル・ドマスの胸糞一族を次々に血祭りにあげる爽快感。何も考えず見る分には文句なしです。なんだ何にも起こらないじゃんと思いきや一族が次々と爆発するのが最も笑えるところかも。 そして、個人的には何より相変わらずキュートなサマラさんのキレっぷりが観れるというのが一番の評価点。うん、今回も可愛い。ということで+1点の7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-03-26 10:31:08) |