1. 傷だらけの栄光
あのポール・ニューマンの出世作というのにレビューなしとは意外です。 映画は実在のプロボクサー、ロッキー・グラチアノの一代記。元ボクサーの父に虐げられ、スラム街で悪事の限りをつくした少年時代から少年院、刑務所を経て更生し、ボクサーになって、世界チャンピオンにたどり着くまでを描きます。人から愛を受けることを知らない少年が、母や妻の愛を得て栄光に輝くというのは定石どおりではあるけれど、ポール・ニューマンが武骨な男を好演しています。特にボクシングシーンは迫力があります。見どころは少年院時代。溝掘りの労役や他の収容者や看守との軋轢などが「あしたのジョー」にそっくり。個人的には、梶原一騎はこの映画の描写を下敷きにしたと確信します。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-06-23 19:29:24) |
2. ピクニック(1955)
まるで大映ドラマのように突っ込みどころ満載の映画。キム・ノバク(マッジ)とウィリアム・ホールデン(ハル)のダンスシーン。そこへ酔っ払ったオールドミスの先生がホールデンにダンスを迫り、拒絶されると「ジャジャジャーン」と思わせぶりなBGMがかかり、先生はホールデンに悪態をつく。何も言い返せずうつむくホールデン。なぜそこまでボロクソに言われなければならない? さらには気持ちが高ぶった先生はボーイフレンドの中年ハワードに自ら求婚。ハワードは結婚をためらう自らの気持ちを伝えることができずに周囲に押し切られるようにハネムーンへ。はっ? ラストもホールデンは穀物工場の跡取りである親友と仲たがいしてるにもかかわらずに、ノバクに「穀物工場の作業員でもいいか」なんて口説いてる。直前に親友とあれだけ派手な立ち回りを演じているにもかかわらず。なんで? そのくせ、最後に旅立つ時には「タルサのホテルで働く」だなんて。 ピクニックの描写の楽しさと、ノバクの美しさは一見に値しますが、映画としては支離滅裂という印象はぬぐいがたい。 [ビデオ(字幕)] 3点(2005-06-02 10:51:15) |
3. めぐり逢い(1957)
豪華客船で展開する前半は快調。ところがばあさんの出てくるところから一転。グラントの「ばばコン」ぶりに辟易した。なぜにこのシーンを描いているのかが理解不能。後半、NYに上陸してから多少盛り返すものの、交通事故以後はまただらだらと。子どもの合唱隊も作品の印象を散漫にする効果しかないように思う。最後の絵の登場で力技で感動させられて幕となりましたが、全体としてみると、最初と最後だけよくて、間がメチャクチャという印象。恋愛映画としてはこれをモチーフにした「めぐり逢えたら」やリメイク「めぐり逢い」の方が出来はいいのでないでしょうか。(オリジナルは未見) 6点(2004-12-07 09:36:21) |
4. ショウ・ボート(1951)
さぞや傑作と期待が大きかっただけにがっかり。スタッフ、キャストに「アニーよ銃を取れ」の顔ぶれがそろっていることから、同様にケレン味たっぷりのソング&ダンスシーンを期待したのですが、ハワード・キール、キャスリン・グレイソンが朗々と歌うシーンが中心でねむかった。キール主演の「掠奪された7人の花嫁」もアクロバティックなダンスが魅力で大好きなのですが、よく考えるとあの中でもキールは歌う人だったし、グレイソンも歌の人らしいので、当然といえば当然なのだが。物語的にも今ひとつ。ちなみに個人的にはこの映画と前後して、「ファニーガール」「有頂天時代」を見たのですが、なぜ登場する男性はみんな判で押したようにギャンブル好きなのでしょう? 6点(2004-08-03 10:51:02) |
5. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 演出に斬新さは感じるのだけど、肝心のストーリーが全くの拍子抜けであまり評価できない。犯人の犯行をうかがわせる場面の一つに、犬が「何か」が埋まった花壇を掘り起こす場面があるけど、そもそもあれだけ窓に面した場所に犯人がものを埋めるなどという、目に付く行動をするものだろうか。3回に分けて遺体を運びだす“慎重さ”と矛盾するのでは? 主人公の推理通りに筋が展開するのも間が抜けている。サスペンスというよりも、リザ役のグレース・ケリーの美しさとその大胆な行動にはらはらする場面の魅力などを支えにしたロマンチックコメディととらえるべき映画でしょう。 4点(2004-06-27 22:47:12)(良:2票) |