1. レベッカ(1940)
女のドロドロした権力争い、しかも死人と争わすなんて、この昔にこんなクサーイ話を取ってしまうヒッチコックに乾杯です。さすがサスペンス・ミステリーの神様。現代サスペンスドラマの基本は全てここにあり。しかしこの作品でのジョーン・フォンテーンの美しさときたらグレース・ケリーやヴィヴィアン・リーも寄せ付けません。ある意味ローマの休日のオードリー・ヘプバーンに匹敵するスクリーン史上に残る美しさです。 [インターネット(字幕)] 7点(2006-05-15 00:47:17) |
2. ハワイ・マレー沖海戦
もしも当時見ていたら自分も予科練に志願したかもしれない。おそらく当時見た少年達の多くはスクリーンに映える白い軍服を見て、海兵への憧れを増幅させたことだろう。予科練の興味深い日常はもちろんのこと、当時の軍歌、「本物」のゼロ戦や赤城などを使った映像、GHQが特撮だと信じなかったハワイ・マレー沖海戦の映像まで、負け行く戦の最中であったとは思えないほどストーリーから特撮までパーフェクトに出来た戦意高揚プロパガンダ映画。気丈に息子を称える母親や姉達に時代の悲しさが見える。特撮も含めトラトラトラよりよほど面白く、トップガンの原型とすら思える。 ブッシュが悪い、共和党が悪い、ナチスは悪、ユダヤは悪、プロパガンダというものは「悪」を一方的に仕立て上げそれを叩くというスタイルが基本だが、この映画は「鬼畜米英」ではない。天皇のために、同輩のために、相手に勝つために、いかに自分を磨くのかということからスタートしている。プロパガンダもここまで優秀に出来ていると逆に感嘆する。 [DVD(邦画)] 9点(2006-05-12 21:16:19) |
3. 我等の生涯の最良の年
戦勝国でも兵士はかわらず傷ついているんですなあ。横井さんは「恥ずかしながら帰ってまいりました」と言ったが、それぞれに抱く社会復帰への葛藤、同情され、尊敬されながらも現実は冷たい社会。戦傷兵のこと、家族のこと、恋人のこと、3時間以上の大作だが長さを全く感じさせない見事な人間ドラマ。具体的な反戦メッセージは無いが、くどくどしい反戦映画などよりよほど反戦映画として機能する人々の心に直接訴える「名作」 [インターネット(字幕)] 10点(2006-05-07 10:39:27) |
4. カサブランカ
臭すぎるセリフの数々といい署長との友情といいラストシーンといい古い時代のアメリカの「粋」を集めたような作品で、冷静に「つまり不倫だよなあ」とか「それって殺人じゃん」とか思ってしまうと駄目。 これはもう、、時代ですな [インターネット(字幕)] 6点(2006-01-11 11:18:23) |
5. 断崖
モノクロ作品だったはずだが某所のネット配信で見たらヤバイくらいカラフルに着色されていた。色をつけてしまうと空など背景が絵だったり着ぐるみの羊だったりが一目瞭然となり作品が非常に安っぽくなってしまっていて無意味な所で笑いを誘われてしまった。ジョーン・フォンテーンは今作でアカデミー主演女優賞を受賞したが、ヒッチコックとフォンテーンと言えば前年の「レベッカ」が代表傑作でありフォンテーン自身も本作よりも演技の出来の良かったレベッカではなく本作で受賞したのは温情受賞のようで不満だったと伝えられる。しかし実際は今作のフォンテーンの演技は受賞に相応しいものがあった。原題通りサスピションが主題であり解り易く心情を読み取れる演技が求められる中、彼女の表情豊かな演技は文化も時代も全く違う人間であるはずの私にもストレートに伝わる人間臭さが感じられるもので、レベッカのような作品賞を取ってしまうレベルの大作ではなく今作のような一見三文推理小説映画のような作品でこそ彼女の真価が発揮されていると言えよう。ヒッチコックの同種疑心暴走系サスペンスの傑作「裏窓」と比べてしまうと、裏窓とは違い結末が期待に「応えてくれた」点も含めどうにも平凡な印象になってしまうが、快作。 [インターネット(字幕)] 7点(2005-12-31 05:44:05)(良:1票) |
6. 市民ケーン
なるほど、彼は最後まで薔薇の蕾の頃を追い求めて死んでいったということか。しかしこの映画の評価についてはそこに納得して終わり。パンフォーカスなど何のことやら全くわからない。映像的にはこれより古いバルカン超特急などのほうが斬新であった。他にもこれより古い映画でももっと斬新な、いわゆる「古さを感じさせない映画」は多数ある。この時点で既にマスメディア、政治の本質を啓発してしまっていることが今異常に過大評価される原因だろうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-11-22 08:38:18) |
7. ジャンヌ・ダーク
ジャンヌ・ダルクの伝記を初めて詳しく知ったのだが、あまりにも内容が眉唾モノすぎて入り込めない。ただのアブナイお嬢さんだよなあ…制作費をじゃんじゃんかけまくった割に戦闘も裁判も中途半端で、しかも前半がダラダラ長くどこで楽しめばよいのかよくわからなかった。 [インターネット(字幕)] 2点(2005-11-07 18:53:44) |
8. 素晴らしき哉、人生!(1946)
もし自分という物が存在しなかったとしたら世界の流れにどのような影響を与えていただろうかという漫画的でよくあるようなストーリーが軸の人生賛美ファンタジー。善と悪の構図をはっきり対立させ伏線を張りながらしっかりと起承転結で纏める物語の作り方の手本のようなストーリー。こういう作り方をしてくると、特別感銘を受ける内容ではない平凡な映画であっても大きな欠点が無いし、普通に楽しめるので高得点を付けざるをえない。 [インターネット(字幕)] 8点(2005-08-27 17:27:35) |
9. 救命艇
まさに第二次世界大戦の戦時中ど真ん中の作品だが、ああヒッチコックもこんなん作ってたんだなという反ナチのプロパガンダ映画。グランドホテルや12人の怒れる男、CUBEなどの密室劇にも繋がる、狭い限られた空間に偶然集まった人々による人間模様を描くというのはヒッチコックの得手なのだが、ヒロイズムなどに頼らず、あくまで群像劇で戦意高揚映画を仕上げるというのはヒッチコックらしいものの差別的でプロパガンダ色が強く、深さというものも無かった。戦時中なので仕方ないのかもしれないが、同じ戦意高揚映画でもハワイ・マレー沖海戦などエンターテイメント映画として今見ても傑作という物もある中で、ヒッチコックにしては凡作を作ってしまったと言えるだろう。 [インターネット(字幕)] 5点(2005-08-21 12:41:47) |
10. 桃色(ピンク)の店
後にユー・ガット・メールとしてリメイクされるオリジナル。格下コロムビアに『或る夜の出来事』という名作スクリュー・ボール・コメディを、あろうことか自社のスターを使って撮られてしまった当時の映画界の重鎮MGMの面目躍如。あくまで対立しながらも惹かれていく過程を描くS・コメディに工夫を加え、お互い合った事の無い相手との文通というシチュエーションを使い恋愛模様と当人同士の現実世界での関係を分離・独立させることにより、一般的なS・コメディとは一線を画している。この事により、客は秘密を知り得ることで完全な傍観者として素直に感情移入できる。いつ、どのように当人達に「秘密」を気付かせるかというお楽しみの要素が増えたことは、ラブコメと主人公入れ替わりモノが好きな自分にとってはまさにど真ん中ストライクというお好みの映画で、多少描き方が足りない部分も感じたものの抜群に楽しめた映画だった。当人達だけではなく周囲の(限られた世界での、特に日常生活範囲、この場合店のオーナーと従業員達の)人間模様も(社会への皮肉を込めて)濃く描いていること、特にその描き方は、主演がジェームズ・スチュワートということもあるかもしれないが、ヒッチコックの映画を連想させる。もしヒッチコックがラブコメを撮ったらこんな感じなんだろうか。この映画もある意味スリラーと言えなくもないのだが [インターネット(字幕)] 9点(2005-08-20 03:40:56) |