1. ゴジラ(1954)
SF怪獣パニック映画だが決して子供向け、マニア向けというわけでもなく、大衆娯楽作品とも分類されない至高の社会派作品。 そもそもどういうコンセプトでこの作品が誕生したのかはわからないが 一見突飛なSF色を持ちながらもものすごく真面目に作ってありスタッフの気概が感じられる。 善悪とか恐怖とかでは語りつくせない無常さ。 正に金字塔。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2012-09-02 05:40:36) |
2. 北北西に進路を取れ
ヒッチコックの真髄はスリラー要素にあるが、この作品はアクションに振れすぎかなあ。当時の水準では他に類を見ないどうやって撮ったのかもわからないアクションシークエンスは意欲満点さすが大物監督という感じで楽しめるが いかんせんストーリーの散漫さと冗長さ、そしてスリルの欠如が作品の完成度を落としている。 まあ先駆者の難しさかね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-18 08:09:54) |
3. 七人の侍
207分という長丁場ながら、それは7人の侍達はもちろん村人に至るまで1人1人のキャラクターやその背景を細かく描写しドラマ性を高めるためのもの。シーンがまるで長回しかのように無駄なくつながっていきストーリーテリングも巧みなため長さを全く感じさせない。その個性豊かな面々はそれを見た年頃、年代によっても解釈が遷り変わり見るたびに違う種類の感銘を受けるほどだ。今でも全く色あせないその迫真に満ちた決戦シーンも含め、日本映画のみならず世界映画史上に残る傑作の1つですね。 [DVD(邦画)] 10点(2012-04-27 03:22:28) |
4. 羅生門(1950)
芥川龍之介原作なので当然といえば当然だが、非常に観念的で古典文学的な作品。確かに観念的には意味深い作品で見終わった後に考えさせられる部分はあるが、それは映画ではなく文学的な価値であって、撮影技術の先進性、芸術性はともかくとして映画として娯楽性がどうかと言われると、「この映画はわけがわからん」と言った当時の大映社長永田雅一の気持ちもわからないでもない。大雨の演出も当時の音声技術か、経年劣化のせいなのか、セリフが聞き取りづらくマイナスであった。 [DVD(邦画)] 6点(2012-04-12 18:56:05) |
5. 情婦
素晴らしい原作、素晴らしい脚本、素晴らしい監督に素晴らしい役者、全て揃えばそりゃ素晴らしい映画が出来上がるわなという見本。アガサ・クリスティが自身の原作の映画の中で最もお気に入りだったという、ワイルダーらしい小洒落た演出、ウィットに富んだセリフと役者が織り成す傑作法廷ミステリー劇。 [DVD(字幕)] 9点(2012-04-11 10:58:25) |
6. 欲望という名の電車(1951)
マーロン・ブランド、映画を食う演技とは正にこのことで、彼の出演作はほとんど彼の色に染まってしまうため評価やコメントに戸惑うことが多い。本作はヴィヴィアン・リー、カール・マルデン、キム・ハンターらも揃って名演を見せ、演劇学校の授業のような雰囲気で物語というより演技の観察に集中してしまった。 [インターネット(字幕)] 7点(2006-08-25 21:07:01) |
7. 波止場(1954)
権力を崩すためには司法取引も良しとし、証人保護プログラムなどというものが整備されているギャング社会アメリカを象徴するかのように1人反発する人間を英雄的に描いている。傘の下の集団秩序と団結が最重要視され、牛肉偽装を内部告発した冷蔵会社が倒産に追い込まれた事件に象徴されるように、告発者は英雄ではなく裏切り者と捉えられる日本社会とは相容れないため、日本人にはいかにも臭いヒーロー映画と映ってしまう。ギャング映画や社会派映画が好きな自分にとっては良い出来の映画であったと思うが、単なる英雄映画に終わってる辺り、まだアメリカン・ニューシネマの時代へは遠い。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2006-08-19 18:14:25) |
8. イヴの総て
演劇界で成り上がるのは智謀をめぐらせば容易なことであり、また容易であるが故に突き上げによる転落も早い。演劇界の幻想を見事に突き崩した優れた映画だが同年のサンセット大通りと比べると、ハリウッドがブロードウェイを外部から一方的に風刺したもの、ハリウッドがハリウッドを内部から自己総括したものという責任の差か、どちらが深層に迫れているかという点では後者より劣る。 [DVD(字幕)] 7点(2006-02-09 09:10:20)(良:1票) |
9. シェーン
無駄に力をひけらかすことも無く(彼自身は自分が正義ではないことも知っていた)じっと耐えていたがお世話になった主人と、何よりその妻や子供に危機が及ぶようになると命を張って戦う、ああ、日本人の心(?)サムライ魂だよ。一方で典型的西部劇ヒロイズムも合わせ持つ作品で、それに拒否反応が出ない限り西部劇としては最高傑作。悪役の言い分もオヤジの意地もオヤジの妻とシェーンの間にある感情もシェーンに憧れる子供の気持ちもみんな理解できる。シェーン、カムバーク。ええ話や。惜しむらくは子供に眉毛があれば [インターネット(字幕)] 9点(2006-01-07 15:45:53)(笑:2票) |
10. 花嫁の父
リメイク版と比べてコメディ要素が大分欠けているが、それだけでここまですっきり纏まった作品になるとは。コメディであることには違いないが中途半端なシリアス路線だったリメイク版とは違い、しっかりと父親心理を描いた社会派ドラマの範疇の映画で、その父親心理の描写はバリバリの社会派映画「招かれざる客」にも通じるものがある。スペンサー・トレイシーのような名優が、招かれざる客の時とは性格が違う慌てふためくオトボケパパを演じているギャップが楽しい。 [インターネット(字幕)] 7点(2006-01-05 10:55:39) |
11. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 疑心から暴走する主人公というのは「断崖」と同じだが、主人公が骨折し部屋から動けず推理の材料は窓から眺める外の様子のみと映画として特異な制限をかけ、そもそも覗き行為を行う主人公自体にも不信感を感じさせることで、どれほど推理が確信に近づいても観客には主人公と共に犯人を追うのではなく、あくまでも疑心を持ったまま一歩引いた位置から見せるという演出が効いている。そうでなくても多くの人間はこの手のドラマにありがちなオチを期待するため、犯人が部屋に来た時点でもまだ確信ではなく、犯人が主人公に対して殺意を見せた瞬間に観客はようやく確信に達し急激なスリルに襲われる。このような「見せ方」が全ての作品であるからこそヒッチコックの味が詰まっており、ヒッチコックの「代表」作。体験して損はない。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-01 03:04:15) |
12. 雨に唄えば
トーキーに順応できなかった大女優の顛末をまるでコントのようなコメディタッチのミュージカルで描いた傑作。名曲の揃ったミュージカルでダラダラ長くも無く圧倒的なハイテンポ、ハイテンションでコミカルな最高のエンターテイメントに仕上がっている。ラスト前の唯一余分な長めのロマンスミュージカルシーンが無ければ満点だった。とにかくジーン・ケリーの動きに圧倒される。唄って踊れるジム・キャリーだもんなあ… [インターネット(字幕)] 9点(2005-12-29 01:21:54) |
13. 遊星よりの物体X
肝心の怪物が、宇宙人というより人間の延長線上にあるフランケンシュタインでしかない。そこそこ緊迫感はあってまとまった話にはなっているが全く宇宙人らしさが無い。タイムマシンもそうだがこの頃のSFは全体的にチープな作品が多く、これもRKOの作品だと思うがキングコングから何も進歩が無いのは残念。 [インターネット(字幕)] 5点(2005-12-26 17:59:46) |
14. サンセット大通り
ストーリーはフィクションだが、映画が語っていることはノンフィクションとも言える。キャストがパーフェクトで、主演のグロリア・スワンソンは実際にサイレント時代に活躍した女優、マックス役のシュトロハイムもその時代の映画監督であり、作中で彼女が見ている自らの主演映画は彼が監督し彼女が主演したQueen Kellyという実在の映画。本人役で登場するセシル・B・デミルも彼女の出演作品を撮っていて人物関係が実にリアルなのだ。ブリッジを囲むメンツもバスター・キートン、H・B・ワーナーなど実際のサイレント時代のスター。パラマウント撮影所のセットも全て実際の建物を使用、また途中出てくるドラッグストアも実際にハリウッドの俳優達が溜まっていた店であり、ハリウッド人の生活の実情と歴史がこの作品には詰まっている。お熱いのがお好き、アパートの鍵貸しますといったコメディの傑作、本作のようなハリウッドの暗部を痛烈に突くような社会派サスペンス、優れた映画監督にして脚本家であったワイルダーの鬼才ぶりに感服。 [DVD(字幕)] 10点(2005-12-15 22:47:35)(良:2票) |
15. めぐり逢い(1957)
母親に関する所の話や最後の終わり方なんかは中々だが絶賛するほどでもない。観客の同情を買おうというのかどうにも展開が強引すぎて逆に引いてしまう。タイタニックで号泣できるような素直な人にはお勧めできますが。というか俺が見たのが間違いだった。女性向けの映画 [DVD(字幕)] 6点(2005-12-04 01:53:29) |
16. お熱いのがお好き
コメディと思って油断して見だすといきなりドンパチシーン。そして棺桶から流れ出る液体を見て「禁酒法の話かよマフィア映画みたいな展開だな」と思い出す。それもそのはず。カポネのパロディキャラが登場し、聖バレンタインの虐殺なんてハードな物までネタにしてしまう。この時点でこの作品の方向性がわかった。今の何でもネタに持っていこうとするおバカ系コメディの走り。かといって今の同類映画のように下品ではなくスタイリッシュに洗練されている。あまりに狙い過ぎたジョークにネタフリの時点で笑いが吹き出す。バレンタインのパーティと聞いた瞬間爆笑してしまった。おバカ系映画・マフィア映画好きにとっては文句のつけようがない名作。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-11-22 11:59:41) |
17. 百万長者と結婚する方法(1953)
ラストのオチが好き。人は見かけによらない。同時に、ある物にどんなに執着しても、意外と執着していない人がそれを掴んだりする。そして掴んだからといって幸せだとは限らない。途中の旅行シーンなんかがなければもっと纏まっててよかったと思うがなあ。あれで流れが少しダレた。 [インターネット(字幕)] 6点(2005-11-20 02:39:59) |
18. 宝島(1950)
もはや何のために撮ったのかすらわからないほど単調でありきたりなディズニーの実写アドベンチャー。ディズニーならやっつけ仕事程度でもこの作品以上の海賊アニメを撮れるはずだ。ドラえもんやアラジンのほうがよっぽど大冒険である。 [インターネット(字幕)] 3点(2005-11-18 18:33:38) |
19. ローマの休日
下界に放り込まれた王女の反応を見る楽しさは過去から未来へ飛んできたタイムトラベラーを見るのと同じようで興味を惹かれる。客と同じように彼女の一挙一動を楽しむ傍観者ペックと常に何かを見ては好奇心を見せる子供のような愛らしいオードリーの演技はコミカルで初めから終わりまで映画にのめりこみ退屈なシーンが無かった。2回続けて見ても飽きない映画。全く古さを感じさせない。それにしても王女が消えたってのにみんなのどかですねえ。 [DVD(字幕)] 10点(2005-08-31 17:16:57)(良:1票) |
20. 真昼の決闘
西部劇は見たことが無かったがBTTF3がどの辺りをパロってるのかを見るという興味が加わっていたこともあり楽しめた。主人公が周囲に応援されながらではなく、どちらかというと疎まれながら孤立して悪党と闘うという内容も西部劇の定型的なヒロイズムとはずれていて斬新(ジョン・ウェインが批判するのもわかる)。その周辺の人間の心理描写も含めた社会的な話が中心でむしろ決闘シーンはさらりと描かれているのはテンポも後味もよく好印象。当時のハリウッドの赤狩りに対する皮肉的な内容になっている。空撮風の引き、ガラス越しの緊迫感、馬上から一人佇む保安官を見下ろすシーンなどカメラワークが多彩かつ斬新で西部劇的な古さが無い。そして何よりも映画内の時間進行と現実の時間進行が一致しているというリアルタイムムービーという斬新さ。とにかく斬新という言葉が似合うニュータイプウェスタンムービー [インターネット(字幕)] 8点(2005-08-20 03:44:32) |