1. ベン・ハー(1959)
《ネタバレ》 井筒監督が「裸俳優第1号」と絶賛していたので、見てみた。 ノーモアステロイド、ナチュラルビューティ最高、ヘストンオールOK。 見どころは四頭立て馬車の競馬ではなくて、ガレイ船から長官救出までの腰巻き一枚の裸解禁シーンです正味は24分くらいしかありませんが。胸毛・ギャランドゥもあります。 ヘストンは骨格エリートですので誰もがステロイド無しでこのような肉体美になれるというわけではありません。 金を払ってでも見るに値する裸です。素晴らしい。演技なんか本当にどうでもよくなる肉体美です。 芝居が全くできないヘストンを主役に据えた監督さんは、相当センスがあった。一見歴史大作ということにしておいて実はヘストンの裸で勝負、すごい冴えてる。 点数はヘストンの裸が満点という意味です。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-06-29 01:25:44)(笑:1票) (良:1票) |
2. ミュージックボックス
《ネタバレ》 …ここまでやってくれれば、何も言うことはないです。 コスタ・ガブラス、あんたはすごい。 気持ちの弱い人や落ち込んでいる人は見ないほうがいいと思いますが、サスペンスとしては最高の出来です。抑えた演出や編集がニクい。やっぱり社会派作品はこうでないと。 パパが秘書の黒人女性を「ジプシー」と最初から呼んでいることで、なんとなく「クロ」であることは予想がついてしまいまして、2人目の証人の様子でもって「写真を直視することもできないほど怖い」ということなどから、「クロ」であることは容易に観客には割れてしまいます。スカーのある男の件も、伏線が少ないので「たぶんそういうことだろう」とは想像できてしまいます。 するとそのあと、事実が判明したときに娘がどういう態度に出るのか、ということが主な関心事になります。私が想像していたのとは違う結末でしたが、もちろんこのほうがすっきりします。 それにしても、ミシュカという男の凄まじさ、前半生にやったことも鬼畜なら、後半生もそれに引けを取らぬ鬼畜ぶり。 …ミシュカは生まれ変わったつもりだったのです。まっとうに生きようとした。 だから、ミシュカであることの動かぬ証拠をつきつけられても、認めない。生まれ変わって、別人になったのだから。 けれど、昔の仲間に脅されて殺してしまい、なおかつ素性がバレて戦犯で起訴され、どこまでも「ミシュカ」が追ってくる。 追い詰められたミシュカの取った行動は、「家族に頼る」と「ミシュカを否定する」であって、そのエゴイズムはとても醜く露骨に描かれています。 そして、私がぞっとするのは、孫に自分の名前からとって「マイキー」とつけていることだ。この子の本名はおそらく「マイク」か「マイケル」でしょう。 鬼畜殺人男の名前をつけられてしまった孫。なんてことだ。 マイキー役はなんと、子役時代のルーカス・ハースだったのですね。今ではラリリ演技で活動中。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-04-18 21:18:55) |
3. ヤング@ハート
《ネタバレ》 これはすごいです。 誰もが一度見ていただきたい、何かとてつもないすごいものがあるのです。 決してNHKのご長寿番組と似たようなものを想像してはいけません。 誤解を恐れずに言いますと、一見、「ドリフのコント」にぴったりの素材が満載なわけです。 シリアスな病気の話題が日常会話の間にフツーに語られ、メンバーは次々に倒れ入院、相次ぐ病死、しかもポスターのド真ん中に写っているジョーがコンサートの前に亡くなるというついつい笑ってしまう状況。「ショーの間に私が倒れたら、幕袖に引っ張って隠してそのまま続けて。1人減っただけよ。」という女性、酸素ボンベ持参で登場するフレッド。 もうもう、コントネタがあふれるその世界。これがドリフでなくてなんなのでしょう…。 が、ここには笑えるネタと、「老い」「死」という人間の真実が混在しているのです。それが非常にシュールであって、なんともいえない味をかもしだす。ゆえにこの作品からは誰も逃げられない。彼らは、「死」ととても近いところで生きている。死んでしまってショーに出られなかったメンバーも、生きて出演して歌ったメンバーも、実はそんなに距離が遠くない。彼らにとって「死者」は遠くにいる存在じゃない。かなりの確率で、それは自分だったかもしれないのだから。とてもシュールです。ドキュメンタリーであるという「強み」が最も効果的に発揮される作品です。 観客が彼らを喜ぶのは「超高齢なのに」ノリのいい曲を迫力で歌うからです。「超高齢なのに」が欠ければ、たいした話題にもならず、おそらくプロを諦めてこの道を選んだであろうプロデューサーのボブはそのことがよくわかっています。 そして「超高齢」に「エンタテインメント精神」や「プロ魂」が加わったとき、彼らはすべての人を説得してしまう。刑務所の囚人も、ノルウェー国王も。 なぜなら彼らは儚いからです。儚いものは貴重で美しいのです。儚いものには誰も逆らえない魅力があるのです。 あなたも私と同じように、ぜひフレッドの「FIX YOU」で泣いてください。それは人間としてとても正しいことですから。 すばらしいです。技巧にも優れユーモアもあり心もこもっているという稀なドキュメンタリーです。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2010-04-30 21:15:43)(良:1票) |
4. ブッチャー・ボーイ
《ネタバレ》 いやー驚きました。 ニール・ジョーダンがこんなすごいものを作っていたなんて。 それなのに、完全無視されてきたために、この存在すら知りませんでした。 が、なぜ「完全無視」されてきたのかそれは見れば一目瞭然で、上映すらできない国がほとんどであることは容易に想像できます。特にアメリカなんか絶対に無理です。 まあ、承知のうえで作ったのでしょうし、コレで賞を取ろうとかゼニを稼ごうとかいうことは全然考えていないに違いなく、いい意味でも悪い意味でも作り手が「満足」する作品であるわけです。 そこんとこを考えてみたいのだが、「いい意味」で言うなら、こんなに妥協のない徹底した完璧な作品は本当に珍しいわけで、似たような意味で思い浮かぶのは「ブリキの太鼓」くらいのものでしょう。 どこにも妥協がない、観客に対するサービスなどハナから頭にない、そして、だからお話として素晴らしい。 いっぽう、この作品における自己満足の結果もたらされた「悪い意味」とはなんでしょうか。 それは映画として「愛されない」ということです。 フツーの観客はこの作品の登場人物の誰をも愛することはできませんし、自分を重ね合わせる対象も居ませんし、アイルランドの寒くてビンボーな風景に愛着を覚えることも困難です。百歩譲って言うなら現地の人々は多少違うでしょう。しかし、「オラが国のムービー」として自慢する対象には絶対にならない。 せっかく作った映画が、ほとんどの国で上映もしてもらえず、無視されて消えていくのです。 私はこの作品が素晴らしいということは全く認めますが、全然愛せません。 もう一度見たいとも、思わない。 フランシーが通行税を取ろうと夫人を脅す場面で、もう、ドン引きになってしまったのです。 フランシーはハードな家庭に育ったため同年代と比べて心身ともに「強靭」すぎて、強靭すぎることが、すなわちくじけることができないことが、その後の顛末となった理由なわけです。 そして、最終的にジョーに拒絶させることで作り手は「物語としての妥協のなさ」を達成しましたが、同時に「観客から愛される要素」もきれいに消し去ったのでした。 そして、私は「映画」とはやはり観客に愛されてナンボ…という気持ちが消せない。 観客に媚びず、なおかつ愛され、妥協もしない、というのが最高ですが…求めすぎ? [CS・衛星(字幕)] 10点(2010-04-11 00:56:12) |
5. DISCO ディスコ
《ネタバレ》 これは拾い物です。 一見、「フル・モンティ」や「シャル・ウィ・ダンス」の寄せ集めに見えますが、全編見終われば、全く違った気持ちになるのだった。「EWFの音楽とディスコダンスは最高だ!」。 オヤジ挽回映画の三国バトルについては、最後に来た「仏」がぶっちぎりでトップですぜ。 この作品はもう、ディディエ役のフランク・デュボスクの魅力に尽きているのです。 私はほとんどホレてしまっただ。あの濃いブルーの瞳で見つめられてみたいものです~。何をしていても絵になる俳優さんだなあ。 この人はコメディアンだそうですが、踊りがものすごく上手い。そして「花」がある。 ジェームス・ディーンを中古にしたような外見といい、ガリガリのボディ、なんとなくオネエぽいふるまい…フツーならディディエはゲイとしてのみ成立する。 しかしそこをストレートとしてサラッと納得させてしまう。ご本人はゲイではないらしいですが。「巣から落ちた小鳥のよう」なディディエ役はこの人しかいない、という超はまり役。 演出も細部まで遊びがあって、この作品に対する愛情が感じられます。海の見える丘の上の家とか、カモメにアフロをかぶせたりとか、あと色使いもかわいいです。ノリノリのDJ氏もいいよね。 コレは繰り返しの鑑賞に耐えうる味わい深い作品だと思います。私は26日に録画してから毎日見ていますがまだ飽きません。 フランス映画によくあるあいまいなエンディング後のストーリーは、本編の内容から判断するとだいたいこうなる(はず!)のですが、NYに渡ったフランス(ヒロイン)は何を見ても聞いてもディディエを思い出して涙してしまい(鮭料理とか生肉料理とかビージーズとか)、そんなときウォルテールとスリーズの結婚式のためフランスに帰国することになり(ウォルテールとスリーズは市場などで偶然再会してなぜかすぐさまベッドイン、気がついたら結婚することに)、ディディエと再会し、めでたく結ばれるのです~。頭の中の上映部分まで含めてこの映画だと思うのですが。 とにかく70~80年代のディスコ音楽の誘惑には逆らえず、ウキウキを止めることはできません。中でもラストの「セプテンバー」がかかれば理性はふっとび知能は低下し瞳孔は拡大だ。 あなたもぜひディディエの「セプテンバー」でドキドキしてください! 不満をいえば(ディディエの)ダンスシーンをカットなしでもっと見たかったな。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2010-03-31 19:36:33) |
6. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 フリードキン版は先に見ていたし、個人的に白黒が苦手なので敬遠していたが、やはり見て正解だった。「白黒だよなあ…白黒だよなあ…」というボヤキが、いつのまにかなくなってエンディングをむかえてしまった。 脚本と演出の隙の無さに、各演者の名演で質の高い作品となっている。 今となっては、証拠の検証方法がこんないいかげんでいいのかという時代の違いは否めないので、犯罪ものや法廷ものとして見るのではなく「かの国はことほどさように言葉を重要視する文化なのであるなあ」という異文化発見ものとして見るのがいいかと。 英語で「約束するよ」「必ずするよ」という場合によくアイギブユーマイワードとかユハブマイワードとか言いますが、言葉を与えられたお前は約束のものを必ず受け取れる、と。言葉なのだ。とにかく言葉。 ところが、こういうものはアジアの文化特に日本にはもともとなかったです。今も、欧米並みにあるとはとても言えないでしょう。そして、このへんの誤解があるために外交がなかなかうまくいかないことになる。 彼らはなぜ、そんなに「言葉」を重視するのか。そのヒントがこの映画にある、と私は思う。 12人の怒れる男はそれぞれの理由で「怒って」いて、そのため「偏見のないジャッジが難しい」ということが如実に示されます。誰が、何に対して怒っているのかを一人一人見極めていくのもこの作品の楽しみといえるでしょう。少数意見を無視しないとか異なる意見の人物でも尊重するとかいういささか美化された民主主義の手順が描かれています。 ひとつ日本人が気に留めなければならないのは、カンカン帽の野球に行きたい男です。 彼の「怒り」は「充分な教育を受けられなかったために、学歴や教養が無いことで他人に軽視されがちである」ことで、本人も教養が無いことを心中で恥じています。 そういう彼が評決に当たってどういう行動に出るかというと、「右に倣え」です。根拠を述べるように求められても自分の意見を言うことができない。 実はこの態度は、原因は違っても「世間」や「不文律」や「みんなの満足」を行動の根拠にしてきた日本人と結果的に同じなのである。我々はこの男にならないように常に心がける必要があります。 個人的には、この時代にしかも白黒なのにここまでできるという点で、リメイク版よりこちらに軍配を挙げたい。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2008-07-30 16:35:53) |
7. 真夜中の弥次さん喜多さん
《ネタバレ》 でいでいでいでいっ。サンデーマンデーてやんでい。 面白いっ。 クドカンという人は外見が果てしなくショボイのであるが、やはり才能ある人の例に漏れず、己の見た目などに構わず余分なエネルギーを全部クリエイトに回しているタイプだったのだなあ、と再認識。 原作のマンガについては未読だが、傑作であるとの批評は目にしていた。 しかし、クドカンが脚本のみならずメガホンまで取らなければ、よくある陳腐な作品として忘れられていく凡作になったであろうまちがいなく。そのくらい、「俗」に流れずにシュールに笑わすのは難しいと思う。 長瀬については1%も期待していなかった私だが、冒頭から「てやんでい」の切れの良さに感心しきりとなる。おお、長瀬、悪くないかもよ。長瀬にこんなに突っ込みの素質があったとは意外だ。地蔵突っ込み、コダマ突っ込みなど、いずれも悪くない。 そして、なんと「明治天皇(ラストサムライ)」から「ホモで薬中の金髪」へと大変身を遂げた七之助。すでにその役柄の落差だけでいかにもシュール。 ジャニーズと歌舞伎がホモの恋人どうしで絡み合っているという、有り得ないシュールな光景はこの映画ならではなり。ヘタウマの絵や「おまえ」「おいら」「ゆかた」などの殴り書きもばっちり合っている。 私は、日本人はブラックな笑いを作るのが下手だと思っているけれど、クドカンについては全くそんなことはない。クドカンはすごい。これを見た松本仁志は嫉妬にかられて初メガホンを取ったのではないかと私は思う。まちがいなく松本のライバルは北野武ではなくてクドカンである。 「何がリアルか」「リアルには自分の思い込みが入っているのではないか」「思い込んだらそれは現実か」という深遠なテーマに沿って、次から次へと有名人が登場しては笑わす。これはこたえられない面白さだ。ぜひともクドカンのすごさを堪能してほしい。 ひとつ残念なのは、これだけ有名人を出しているのだから、バーテンはぜひともクドカンとも親交のある及川光博にしてほしかったところ。こういうチョイ役よくやってるのになあ。忙しかったのかなあ。 とにかく面白いです。イケてます。イチオシのギャグはナカムラ父の「夜でもアーサー」。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2007-12-24 15:51:16)(良:2票) |
8. 殺人の追憶
《ネタバレ》 見る順番が間違っているが、「グエムル」に比べたらものすごく完成度の高い作品だ。 「殺人の追憶」という金字塔を打ちたてながら、「グエムル」になってしまうのか(ポン・ジュノは)…というちょっと悲しい気持ちすらしてくる。というほど、「追憶」はすばらしかった。 なんといってもソン・ガンホである。 この映画は、脚本の巧みさもさることながら、ソン・ガンホの魅力を満喫するに最適だ。 ソン・ガンホ。別に美男ではなく、スタイルとてずんぐりむっくりだ。いったいどこがどうなのかと言われても困る俳優さんだ。 「グエムル」でも感じたが、ポン・ジュノは作品づくりにあたって、徹底して「世界を美化する」ことを拒む作り手だ。そういう意味では彼の作品は、日本でも大流行の韓国ドラマから最も遠い位置にある。そして「美化」を拒むボン・ジュノの映像に、ソン・ガンホの煎餅顔ほどぴったりなものはない。その煎餅顔が強力に主張してくるものは、「庶民」とか「雑草」とか「ある種の諦観」のようなものだ。 私は、ソン・ガンホを見ていてこんなに役柄にしっくりきたのは「追憶」が始めてだ。 脚本、これがまたすばらしい。1986年のプロローグの同じ場所に2003年に終わる、という循環性を持たせたことも、犯人不明のままエンディングを迎えたことも、作品の質を損なわない絶妙の構成である。パクの恋人の存在や、女性刑事が一役買うところ、同僚刑事の足切断、DNA鑑定の不一致など、ドラマ性も充分だ。 なおかつ、ポン・ジュノは笑いのセンスもある。土手から次々転げ落ちるのをパクが突っ込むとかいう、何気ないシーンにも…。こういうのをセンスというのだ。 そして、ラストの少女の言葉がこれまたすばらしい。「普通の顔だった」…。 少女の言葉を聞いたパクの慄然とした表情が何を物語るのか。これも観客に任されているのだが、おそらく犯人は、パクたちが取り調べた人間の中に居た、のであろう。しかし、その手がかりは「柔らかい手を持ち、普通の顔をしている男性」しかないなんて。パクの頭には、あのとき千切って捨てた容疑者ファイルの中の一人一人の顔が浮かんだのであろう。 日本人による音楽も、ピアノを中心としたクラシカルな感じがよい。 洋の東西問わず私が見た刑事物サスペンスの中では、いまのところ第1位に挙げたいと思う。「羊たちの沈黙」以上の出来と思う。これは文句なしにすばらしい。 [DVD(字幕)] 10点(2007-06-27 12:43:15)(良:6票) |
9. ヨコハマメリー
《ネタバレ》 ドキュメンタリー映画というものは、途中でボツになり日の目を見ないことが多いらしいですね。だいたい理由は内輪モメであるが(森達也の下山事件とか)。この作品中にもボツ作品のことが出てくる。しかも、往時のメリーさんを撮った貴重なフィルムが行方不明とはどういうことやねん(怒)。 そういう意味で、これがきちんと映画に仕上がって、観客の目に触れたというのは奇跡である。 もちろん、戦後60年にわたる横浜の歴史を、証言者が生存しているうちに記録したという意味でも、非常に価値がある。作り手の執念を讃えたい。 永登元次郎をはじめとして、ここに出てくる伊勢崎町周辺の人々の「濃さ」といったら。全員ものすごく濃いのさ。 この「濃さ」というのは、「戦争に負けた」を肌身で経験し、成長してきた横浜の「アク」のようなものなのであろう。だいたい、肩書きが「元愚連隊」ってどうなのよ。思わず突っ込みを入れずにいられないじゃん。 それでまあ、私は小学校5年生からずっと横浜に住んでいる。(両親は流れ者ゆえ、横浜の戦後史を子供たちに教えることはなかった。) で、メリーさんを目撃したことも、当然ある。職場が関内だった時期もある。この映画に出てくる場所も、ほとんど自分の足で歩いた馴染みのとこばっかりだ(伊勢崎町通りから南側を除いて。そこはあんまり行ってはいけないとこなのだ)。 「メリーさん遭遇」というのは、職場の世間話のあいまに語られる、ほとんど「風景」のようなものだった。「男」説も、もちろんあった。高島屋のエレベーターのドアが開いたら、いきなりメリーさんが居た、という先輩もいた。 アート宝飾の前のベンチ、今はもうないけど、メリーさんはよくそこに居た。ディスクユニオンに中古品を漁りに行くとき、あっ今日は見ちゃった。って思った。 私は、今回コレを見て、仮説を立てた。メリーさんは肉体的にはやっぱり男性だろう。だって、生理用品と常時使用可のトイレを確保しないで、あんな着飾ったホームレスができますか? なぜ故郷を捨てて、女の成りをするようになったのか。それはつまり兵役逃れか、逃亡兵だったとしか考えられない。…単なる仮説だけど。 いろいろ言いたいことはあるが…とにかく、これは非常に貴重な記録である。老人ホームにおさまったメリーさんの姿を公表することの意味については、個人的には疑問が残る。と言っておく。 [DVD(邦画)] 10点(2007-06-22 20:40:18) |
10. カリートの道
《ネタバレ》 これは10点つけるしかない。 なんてことだこれを見ていなかったなんて。 脚本演出キャスト音楽全部すばらしい。(音楽のジェリービーンは昔マドンナと組んでた人ですね。この人の音は昔から快い。) デパルマは、全編通して「くくっ」という笑いとともに作っているんですね。それは「ガハハ」でも「フフフ」でもなく「くくっ」である。どうですこの散りばめられたコントの数々。しょっぱなから「レンタカー屋はあまり殺されないから」って決めセリフで「笑」。だいたいペンの髪型からしてバカにしてます。昔の栄光も陰が差し、ムショを出てから次々に昔の仲間が現れてはカリートを裏切る。裏切らなかったのはサッソだけ。そして最も信じていた相手に裏切られて死んでゆく。これは意図的に「笑い」を演出しなければ「悲劇」でしかないわけです。それをデパルマはあくまでも乾いた笑いを基調にテンポよく見せていく。なんという匠の技。 ここに出てくる暗黒社会の男たちは皆可愛くてアホに撮られている。特にカリート、なんて可愛くてアホな中年男性なんでしょう。 構成も絶妙といえます。「俺はしぶといから死なない。」のプロローグから、「OKボーイズ、もう助からない」のラストまで。「あっこいつは死ぬわけね。」と最初から分かっていたのに、カリートの人生を垣間見た後では、ウルウルしないではいられないラスト。まさにマジック。(同じ場面でありながら、最初と最後で見る者の気持ちが完全に変化していること、これを味わわせるためだったと思う。) スコセッシ、コッポラの両巨匠の撮ったヤクザものよりこちらのほうがはるかに洗練されていて完成度が高い。カリートが「勘」を頼りに生き抜いてきたというのがリアリティを感じさせる。デパルマはすごい(のも撮る)。 ペネロープ・アン・ミラーはニコール・キッドマンに似ていますね。ドアチェーンごしのラブシーン、明らかに「シャイニング」のパロディーと見た。こんなとこでまで遊んでいるデパルマ、イケている。 パチーノがプエルトリコ系移民というのはどうみても無理があるけどそれも「洒落」なんでしょう。このとき何歳だか知らないけど後半パチーノを無茶苦茶走らせるのもデパルマ流の「洒落」ですね。 つきぬけた名作。大拍手。 [DVD(字幕)] 10点(2006-08-09 12:54:36)(良:3票) |
11. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 コルレオーネ家は、ケネディ家を模していると言われているが、日本人の私は「田中角栄」を連想してしまうのだった。 「フィクサー」とは、「もめ事の調停が得意な人」と私は解釈している。 では、どうすれば「もめ事調停分野」において他人より秀でることができるのだろうか。 角栄の事を書いた本をいろいろ読んでいくと、その道の常道はまずは「懐柔」そして「脅し」であるらしい。角栄の場合は、「懐柔」のほうに力を入れていて、「相手に法外(相場の2倍以上の)に有利な条件を提示する」ところから始めたらしい。これは当然「自分が持ち出す」ことが必須となる。そうすると、「常に自分が豊富なコネや資産を有する」が絶対条件である。そのために金策が欠かせないから無理に無理を重ねていくことになってしまう。しかしこうしてひとつ「貸し」をつくると、次の別件のときに「そうだあいつに貸しがあったから今回利用しよう」となり、「貸し」が増えるほどフィクサー本人はどんどん「ラク」になっていくという構造になっているらしい。 そしてわがドン・コルレオーネ。彼もまた無一文からのスタートであるから角栄とあまり変わらない。 元手となるものがない彼が「元手」とした最初のものが、街のダニであるドン殺しであったことは「Ⅱ」で判明する。彼が仲間に「貸し」を作り、優位に立つための「元手」、それは「人殺し」だった。そして「フィクサー」としての彼の手法は、「金を取らず」「貸し」を無限に積み重ねていくことで営まれてゆく。上記の「どんどんラクになる」の方程式に従って。このへんが、「Ⅱ」でのコロンボ夫人問題の時に如実に描かれていて、ヴィトの「手法」を鮮やかに見せる。しかし、ヴィトはあくまで「古い時代の町の相談者」に甘んじて、それ以上に「儲け」ようなどと思っていない。 ところが、大学出のマイケルは、単なる「もめ事調停人」から脱することを望み、そして「親父の時代のヤクザな仕事」から徐々に手を引いて、まっとうな「ファミリー」へ脱皮しようとしていくのだが…。 ちなみに、マイケルにヴィト譲りの並々ならぬ「ネゴシエーション」能力が引き継がれていることがはっきりと描かれている場面が「Ⅰ」にあります。皆さん、一瞬考えて見てください。 それは、シシリアでアポロニアに一目ぼれした彼が、拒絶する彼女の親父さんを口説いて面会にこぎつける場面です。 [DVD(字幕)] 10点(2006-06-25 22:03:47)(良:2票) |
12. ゴッドファーザー PART Ⅱ
《ネタバレ》 本当に何度見てもすばらしい。 今回見直してみて感じたこと、2点述べたいと思う。 まず「人生の収支」について。 ヴィトはコソ泥仲間に先駆けて、いちはやく人殺しを行った。しかも誰に強制されるでもなく。普通に考えたら、ヴィトは仲間よりもダントツにひどい人間だ。 ところがヴィトのその後といったら、町の住民には尊敬され、商売もうまくいき、仲間にも慕われ、妻にも愛され、多くの子供を授かり、あげくのはてに両親の復讐まで成し遂げる。そして彼に倒された多くの敵と違って穏やかに死ぬことができた。 彼の才能と努力のたまものといってしまえばそれまでのことだが、私はここに(コッポラの考えるところの)「人生の収支」の存在を感じる。 つまり、ヴィトの前半生は、後半の大成功を補ってあまりある悲惨極まりないものだったわけだ。ほとんどこれ以上の悲惨な少年時代はない、といえるほどに。私はヴィトの人生は源頼朝と似ていると思うのだが。(前半生悲惨、後半バカツキ) そして対照的に限りなく重苦しいマイケルの人生とはなんなのか。 私に言わせれば、マイケルに次々に降りかかる災難や、失われてゆくものこそ彼の「人生の収支」の「支」であるのだ。つまり彼は父から多くを与えられすぎているのだから。 2点目はドンの力が文字どおり「GOD」を超えたところで「Ⅱ」が終了していること。 フランクが自殺したこと、これはすごいことなのだ。シシリア生まれのイタリア人=ゴリゴリのカトリックの彼が、神に背いてまでドンの力に屈したのだ。そしてフレドはマリア様を讃える歌を歌っているというのに殺される。そしてエンディング。なんてことだ。マイケルはついに神様より強くなってしまったのだった。 しかしそんな全能のマイケルですら思い通りにすることができないもの。それが「金目当てでない女」である。生きるのがせいいっぱいの時代には、共に苦労したヴィトの妻なら、夫のすることを肯定し愛し続けたわけだが、マイケルの言う「時代が違う」=「女が変わった」。それなら「金で転ぶ」女にすればいいじゃん、といっても、肝心のマイケル本人は「金で転ばない女」が好みなわけで、どうしたってうまくいくわけがないという完璧なパラドックス(コッポラの作った)なのであった。 [DVD(字幕)] 10点(2006-06-23 22:45:18)(良:5票) |
13. 幸せになる彼氏の選び方 ~負け犬な私の恋愛日記~
《ネタバレ》 やっとこれが書けてうれしいです。これを申し込むために、DVDまで購入した甲斐があった。「ブリジョン」に続く負け犬系ムービーです。いやこれ、すごいんだ。ほんとに。最初見たときあまりの斬新さにぶったまげ。30歳以上の女性の皆さんは、誰しも「うんうん」と頷くことでしょう。「いったい誰と結婚することになったワケ」と途中で期待を持たせて引っ張ること引っ張ること。この手法、参りました。何年に一度の「大当たり」ムービーでした。皆さんの予想は当たりましたか?それでさ、「やっぱり親の受けが良い人にしようよ」って納得しましたか。(ちなみに私は親の反対を押しきろうと思っていたのにあっさり相手に振られた過去あり)親が賛成してくれる男にはそれなりの価値と理由があるのさ。ね。「僕の両親も全く同じだから」ってとこで、もう「決まり」だったよね。こういうこと言う男、大したもんだよ。好きだ。出会いが最悪だったのもパンチが効いてていいね。男子の皆さんは、これを見てよく勉強し、相手の親に気に入られるようにしましょう。女子の皆さんは、「親に反対された時」に、この映画を見て、反省して思いとどまりましょう。ああ、こんなパパいたらいいな、あの「ショートフィルム」最高に良かった。泣けた。(バリーのママ美人でやさしそうで良い)もう言うことなし、最高です。 [DVD(字幕)] 10点(2006-01-08 15:07:27)(良:1票) |
14. 東京裁判
《ネタバレ》 点をつける作品じゃないけど。事実のみだし。私も母親と見に行きました。パンフの原題をいっしょうけんめい暗記しました。もう忘れた。思い出した。Military Tribunal For the Far Eastだったな。パンフには、俳優さんのごとくひとりひとりの顔写真および経歴アンド判決と受刑内容まで盛り込まれ、豪華であった。あのころは、子供が元気で学校行くだけで親は満足じゃなくて、さらなる教養をつけてやろうなどということを考える余裕があったように思うなあ。なんか他の方も親と行ってたりするみたいだし。東條が頭ポコンてやられるの、実際に見るとすごいよね。「げげー。実物ー」。ひたすら本で読むのみの「戦争」の実物が目の前に。このころ何を思ったか「大日本帝国」も見に行ったな。ウルトラマンタロウと夏目雅子が出てた。映画「東京裁判」にソ連と司法取引したとかしないとか近頃疑惑の瀬島龍三が出ていたかどうかわからず。もし出てたら、「あー、このとき妻子と会わせてもらってたわけね」なんていう臨場感もありだな。今これを子供に見せる親なんているのかな。戦後は遠くなりにけり。2000年近くも親から子へと怨念をつないで行ったユダヤ人とはなんたる違いか、単に宗教のある無しか。映像は100冊の本より雄弁。 [映画館(字幕)] 10点(2005-12-25 22:09:02)(良:1票) |
15. ストーリー・オブ・ラブ
《ネタバレ》 一時所有していました。これはロブライナーの絶頂期といえるのでは。もう最高のコメディです。笑いっぱなしで、最後の「チャオファン」のところで必ず泣いてしまう。憎いねえロブライナー。超リアルなのに品があり、ジョーク全開。脚本よし。男3人、女3人のお食事会、面白いですね。「ベッドに6人いる」っていうのも斬新だ。そうだったのか。ロブライナー本人もいつもながら味のある役どころ。とにかく悪い人が出てこないのがいいね。これを見ると、ブルースってうまいなあ、と思いますね。こういう男の人、困るけど、いいよね。ピュアだ。ぜひ「チャオファン」の場面も撮っていただきたかったものだ。ロブライナーがんばってまたこんなの作ってください。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-20 20:43:44) |
16. ユー・ガット・メール
《ネタバレ》 トムの行動が、道徳的に考えてどうなのか、なんていうのは、野暮というもの。 だって、こういう場合は男性はどんな手段でも使うし、肝心な相手の女性が「あたしゃー、そんな姑息な男はごめんだね!」と思わなければ、それでよしとなるのが男女関係。べつに犯罪でもないし。 私は女なので、この場合はトムがかっこよくて、心がきれいで、やさしそうなので、「もーやだージョーったらーほんとにー」とか言いますよ。そんなもんです。女性は。 音楽が最高、ブラックの友達もよし、ニューヨークは美しいなあ、ああ、夢のよう。 「男なんかみんな死んでしまえ」という気分の時にはこれを見て気を取り直すことにしています。でも、トムのような人には一生会わないことは間違いありませんが。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-13 17:08:44)(笑:1票) (良:1票) |
17. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 「ユーガットメール」とともに、個人的ラブコメ最高峰。最近これに「幸せになる彼氏の選び方」モニカポッター版を加えたいと思っています。まだここに入ってないみたい。 「アレルギー体質の彼」ってリアルだわ。要するに「ロマンティック」じゃなかったんだね。 「ロマンティック」じゃないとダメな女って、負け犬体質なんだけどね。確かにこの作品のメグは30歳以上のようだからこの時点で婚約して負け犬脱出中である。しかしもしも屋上でトムと会えなかったら、また普通の負け犬ライフを送るんだなあ。そっちのほうが現実的だけど。 ロブライナーのささいなギャグが最高。「ヘイ、ダイアン」てやつです。トムとジョナのやりとりが最高笑えます。ところで、アメリカでは、「地理」が分からないと、相当バカにされるんでしょうか。「男の必需品」みたいな。あんな子供のころから叩き込むのね。 トムハンクスは、まだおじさん入ってなくて、超ハンサムです。アメリカでは、元号がないので、時代を表すときに「○○大統領の時」、なんて表現するのね。日本で政治じゃない普通の会話に「○○総理の時」って使わないよね。ともかく、ロマンスにどっぷりしたいときには、私はこれか「ユーガットメール」です。音楽、映像、人物、美しい。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-13 16:55:20)(良:3票) |
18. 遊星からの物体X
《ネタバレ》 閉じ込めものの最高峰。カーペンターは絶好調である。異変が広がるまでの進め方がすばらしい。アイディア満載。カートラッセルはこのころそんなにマッチョじゃなかったね。これよりすばらしいパニック映画に出会っていない。CGなど駆使しなくても、これだけおもしろいものが作れるなんて。「映画のお手本」といえましょう。それぞれのキャラ造型もよし。冒頭、医師がガラスをピストルで壊して一発ぶちこむ、というところがしびれます。クールだ。いつみてもおもしろい。一本だけ映画を持って無人島へ行くならこれにします。追:ザ・チャンバラさんが私の思っていることを理路整然とすべて説明してくださっていてすばらしいレビューでございます。 拍手。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-07 20:20:06) |
19. フィラデルフィア
《ネタバレ》 すばらしい。作品に恵まれず駄作に出がちのデンゼルもよし。プロローグからラストまでの一気感はピカ一。殺人も起こらず宇宙人も出てこず戦争も無いのにこのスリル。デミはこの作品が頂点であったのでは。トムハンクスは「主役」をやる人であることを再確認した映画。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-06 21:15:10)(良:3票) |
20. スーパーノヴァ(2000)
《ネタバレ》 大大好き。なぜなら人物もプロダクツもすべて美しい。監督が逃げたなんてこと、どうでもいい。(そのこと知らなかった)マッチョに変身した3次元男スペイダー演じるニックが、実に理想的なヒーローであった。ニックはいわゆる「地獄を見た男」であり、どんなときも超冷静、弱気になんかならない。アンジェラのケイラも「地獄を見た女」であり、頭が良くてきれいで強い。なんだけど、そんなケイラも思わず頼ってしまうほどニックは頼れる男。そんなわけでケイラが強いほどニックの強さとかっこよさが強調される仕組みですね。ああスペイダーかっこいい。これ以上のヒーローなし。最強。「ボーンアイデンティティ」のマットよりかっこいい。見直したらなおよかった。ベンジャミンのシーンは悲しかったな。ドラマじゃー。ジャンプ前のケイラのセリフ、よかったですね。「二人とも入るか、二人で死ぬか、どっちかよ」って、土壇場の女の底力に救われたわけね(結果的には)。でもたぶん私もそう言うな。ニックと離れたくないもんな。ラストのハプニングはセンスよし。遺伝子が伝達されてって、「ハエ男」ならホラーだけど、なんてロマティックなんでしょう。しかもベイビーまで。いいなあ、こういうの。二人の子供だから、さぞ強ーい子になるでしょう。大納得のエンディング。ほとんどこの作品の感想書きたさにログイン。こういうキレイな人ばっかり出てくるの、映画らしくてものすごく好きだ。だれも認めてくれなくても極私的大絶賛。不思議なお酒の壜がよいですね。(この作品の美の象徴といえる) [ビデオ(字幕)] 10点(2005-10-31 22:55:15)(良:1票) |