1. 風立ちぬ(2013)
《ネタバレ》 アニメならではのファンタジックな描写と、主人公の仕事と、人生の物語があまりにもアンバランスで、作品として破綻していた。残念なことにアニメーションである必要性が微塵も感じられなかった。 不可解な点はいろいろある。なぜその時代設定で、わざわざきわめて裕福な一握りの人間の、しかも天才の、そのうえ時代錯誤な悲恋の物語にしなければならなかったのか。とか、「省略の文化」にかこつけて、小説のセリフを薄っぺらくなぞっただけで終わらせたのか、とか。色々な事情が省略されすぎて、「生きねば」の説得力が皆無だったとか。 実はいやな予感は冒頭からあった。 冒頭、震災のシーン。蠢く大地の迫力と、肉声の効果音の気味悪さに、これを3.11の後に撮ったのだ、と監督のクリエイターとしての誠実さみたいなものも感じた。が、すぐに失望した。 大火事が起こって大勢の人間が死んでいくその日に、親友は本を運び出して「ひどい日に戻ったな」。主人公はタバコ吹かして、白昼夢。家が倒壊して大火事になればどれだけの人死にが出るか、成人した人間は想像がつく。 創作にそんな感情を持ち込むなと言われても、あれだけ力を入れて地震を描写しておきながら、こんなシーンが出てくるわけだから、この登場人物たちには下界のことよりよほど大事なことがある、つまりは「殿上人」だと宣言しているわけだ。胸糞悪いったらない。 ヒロインのはた迷惑ぶりもすごい。結核の女が見ず知らずの家に居候。うつったらどうすんの? 身内からも忌避される、あの時代、そういう病気でしたよね? 挙句の果てに忙しく立ち働いてる家人のそばに来て、「散歩に出る」神経がいっちゃってる。何不自由なく搾取してきた金持ちの発想そのものだよね。 いちいち引用される詩も、あまりにひとりよがりで失笑。主人公は極めて自分に都合の良い人間関係の中でだけ、生きているんですね。それがあの天才だったに違いない、監督の人生観かな。若くしてあれだけ成功したら、そうなっちまうのも当然かもしれないね。 とうとうこんなものを作ってしまったか。これが全世界で公開されると思うと、正直ぞっとする。莫大になりすぎたジブリブランド、駿作品の影響力の大きさをマイナスの意味で危惧した。好き放題やりやがって! [映画館(邦画)] 3点(2013-07-24 00:55:06)(良:5票) |
2. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 3D環境で鑑賞。スコセッシの個人的な懐古趣味的呟きを、悪趣味な味付けで観た感じ。主人公はメリエスのためにひたすら狂言回しをしてるだけ。すなわち、いる必要がない。人格も謎。感情描写が致命的に手抜き。まさか、子役がせりふで説明するとは思わなかった。スコセッシは「映画をつくるというのは特別な体験で、特別な人間にしかできない、おもちゃ屋なんぞとは天地の開きがある特別な仕事である」と認識しているらしいことはよくわかった。その筋書きだけのために作られたプロットであり、登場人物にはそこに登場する必然は何もないわけで、誰ひとりとして魅力を感じられないっていうのが清々しい。 [映画館(字幕)] 4点(2012-03-11 20:32:33) |
3. TIME/タイム
《ネタバレ》 広げすぎた風呂敷をマント風に首にかけて若気のいたりで走り回ってみました!というか、設定や世界観だけで手一杯になってしまったというか、どこを楽しんでよいのかわからない尻軽な映画。喋り方からしてお頭が足りなさそうなヒロイン、初っ端から最後まで延々手を取り合って駆ける二人、面白いぐらいに機動力を発揮しない体制側…大筋だけでなく映像にすら「お遊戯会的ですね」というカットが目立ち、子供向け絵本を見せられているような気分だった。 [映画館(字幕)] 4点(2012-03-11 20:13:13) |
4. ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
《ネタバレ》 お見事! スーパースターがこれでもか!これでもか!と活躍しまくる贅沢な娯楽大作、安心の出来でした。頭脳派のはずでしかも年配の教授がなぜにそこまで武闘派&肉体派? とか、レア・セドゥーは設定負けしてね? とか、よくも悪くも完璧につくりあげたフィクションの中にも敢えて突っ込みたくなる箇所はおいといて、ところどころ笑いもちりばめてあって至れりつくせりですな。映画館でも笑い声があがってたけど、日米の笑いのツボって同期しはじめてるのかな? [映画館(字幕)] 7点(2011-12-26 12:15:55) |
5. タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
3D環境で視聴。 どうしたことだろう、主人公・タンタンがとにかく勘に障る。顔が、表情がムカつく。よくもこんな苛立たしい造形にしたものだと感心さえする。『太陽の帝国』でも感じた、スピルバーグの少年像への違和感と同じ、主人公にとにかく特別感があって、まったく感情移入ができないのだ。まあ、スピルバーグ自体がスペシャルな人だから、仕方ないのかな? 感情移入という点では、キャラクターの演技とストーリー展開にも難ありと感じた。アル中船長のような、脇を占めるべきクセのあるキャラクターは、やはり性格俳優に演じてもらってこそ味が出るというものだ。CGの限界だろうか、説得力が致命的にない。 フルCGアニメの表現力には脱帽することが多いだけに、CGの限界を感じさせたこの作品は、実写と同じつくりかたをして、失敗した例とみていいのではないだろうか。 絵本のあの飄々としたタンタン、好きだったんだけどな。 [映画館(字幕)] 4点(2011-12-26 12:02:01) |
6. エアベンダー
《ネタバレ》 映画の概念を根底から覆されるような、トホホなつくりだった。 こう、ハコ書きしようとした小説がつながらなかった感じ? 冗長でなぜ描写されているのかわからないシーンが多く、グダグダだった。 冒頭から嫌な予感がしたが、序盤の土の国での対決シーンなど、ハラハラし通しだった。ってか、3者入り乱れた中で、順番に台詞を言ってお行儀よく殺陣がはじまるとか、学芸会を思い出しました。こう、場面として崩壊してるってば! さて、興味深かったのは、キャスト。 それぞれの国に、人種が入り乱れていて、説得力がない。冒頭からして、欧米人の兄妹たちに混じって、モンゴロイドっぽい人々がいたんだもの。火の国はインド、土の国はアジア、気の国はインド+ミャンマー?? とりあえず、どの国も何かしら混ざってる。カオスを感じた。 さらに、印象に残る役者がいなかった。正直、演技力に難アリだと思った。 だが、もしかしたらもしかすると、ナイト・シャマランの逆襲かもしれない。ハリウッド的人選とハリウッド的演技に異議を唱えたということなのかもしれない。 実は行った劇場が混んでいて、仕方なくこの映画を観たのだけれど、うーん第一章とか銘打ってありましたが、続くの? 3Dの超吹替え版とやらで観たんだけど、この吹替えもグダグダ>< 苦笑するほかなかった。 [映画館(吹替)] 1点(2010-08-02 16:27:53) |
7. 借りぐらしのアリエッティ
《ネタバレ》 映画の尺の中に切り取った物語はさすがだと思うし、アリエッティが滑車で上昇するシーンや、人間から見た彼らの身のこなし、借りぐらしたちから見た人間の動きの重々しさ、などところどころにハッとさせられる描写もありました。 が、至らなさも目立ち、特に一部の人物造詣の甘さに監督の力不足を感じました。登場人物が数少ないからこそ、背景を含んで描くことは外せないポイントだったはず。 描ききれていなかった順を追うと、ハルさん、アリエッティの母親、少年、でしょうか。 ①ハルさんのただただ醜悪な様子は意図自体が意味不明。なぜああいう設定にし、異常なまでにこだわって動かしたのかが謎です。 ②母親は、母らしくなるときと、家や住まいに執着を見せる様子がアンバランスで?です。家自体への愛着は、もう少し控えめに描いたほうがよかったのでは? ③少年は、手術を前にした不安定な状態が台詞だけでしか説明されておらず、「きみたちは滅び行く種族なんだ」とアリエッティと対峙する肝心のシーンが、とってつけた宙ぶらりんのように感じました。 ①②から穿って考えますと、監督は日常や女性に対して、嫌悪感に近いものを感じているのではないか、とも見えてしまいます。 しかし、③もあわせて考えますと、監督は映画監督に臨まれる力量は、持ち合わせていないのかな、と思いました。 すばらしいと思ったシーンがすべて宮崎監督がらみだったとしたら、本当にがっかりです。 回顧趣味と言われてしまいそうですが、昔の作家たちは若い時分から目を見張るほどにすばらしい作品を送り出してきたように思うんですが…。分業化の弊害? とりあえず、ジブリは新しい人材を招いたほうがいいんでないですか? [映画館(邦画)] 5点(2010-08-02 16:04:04)(良:2票) |