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プロフィール
コメント数 2404
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1940年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  空気の無くなる日 《ネタバレ》 
1910年(明治43年)に20世紀最初のハレー彗星接近がありましたが、日本では明治維新後初のハレー彗星との出会いだったわけです。約75年周期で地球に接近するわけですから現代人の感覚では生涯で一回もしくは二回は出会うことがあるイベントですけど、昔の日本人の平均寿命はまだ短かかったので、一度もハレー彗星を見ることなく墓に入る人が多かったと思います。当時は半端に科学知識が広まっていた時代にはなっていましたので、あやふやな情報が元になったパニックが日本でも一部の地方であったそうです。そんな史実をもとにした児童文学を映画化したのが本作です。 舞台は山奥の集落、平和に農業や牧畜を営む地区にハレー彗星接近の知らせとともにある情報が伝わります。彗星がもっとも地球に接近する七日後の4月20日正午、地球の大気が5分間消失するという驚天動地の新聞記事。なんでも彗星の長い尾が地球を包むのがその5分間なんだそうで、大気がその間彗星に吸い取られちゃうという説明だが、なんでまた大気が元に戻るのかはさっぱり謎。つまり5分間呼吸を止めていれば助かるという理屈なんだけど、校長先生や児童たちは一生懸命に洗面器の水に顔を突っ込んで挑戦するけど、そんなことできるはずがない。すると空気がつまった自転車のチューブを使えば5分間を耐えられるというアイデアが広まるが、チューブや浮袋みたいなものは全て地主が買い占めてしまう。かくして地主一族以外の村民は、地球最後の日を粛々と迎えることになります。 プロレタリア作家である岩倉政治が書いた原作は子供向け寓話の形をとっていますが、痛烈な資本主義批判が込められています。貧しい生活だが清らかに生きる農家の一家と対照されるのが、チューブを買い占めて一族だけで独占して生き残ろうとする冷酷な地主階級というわけです。この原作は戯曲化され、昭和の日教組全盛時代には各地の小中学校で児童生徒を使って上演されていました。実は小学校高学年のときに小生のクラスでも学芸会の演目にされ、校長先生の役で生涯ただ一度(今のところ)の舞台に立ったのは懐かしい思い出です。ウン十年ぶり映像作品として再会を果たしたわけですが、小品ながら映画としても結構良く撮れています。冒頭でハレー彗星の接近が特撮アニメーションで解説されるわけですが、東宝のスタッフやまだ駆け出しのうしおそうじが関わっているのも興味深い。左翼臭もそれほど露骨ではなく、地球最後の日を迎えるように死を受け入れて彗星接近の瞬間を待つ村人たちの様子もしっとりと描かれていましたね。フィクションとはいえ、海外の映画ではこういう人類滅亡の危機では暴動や略奪が起こる(まあ現実でもそうなるでしょうね)のが定番ですけど、死に向かって悟りきったように対処するところも日本人的なリアルさかもしれません。もちろん結末はハッピーエンドですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-10-03 22:27:30)
2.  レベッカ(1940) 《ネタバレ》 
ヒッチコックのフィルモグラフィ中で唯一オスカー作品賞を受賞した映画ですね。もっともオスカー像はプロデューサーのセルズニックに与えられ、自身がノミネートされた監督賞は受賞ならず、これが生涯貰えなかったオスカー監督賞とのお付き合いの始まりとなったわけです。 割と当時としてはモダンなプロットが多かったヒッチコックのフィルモグラフィ中で、唯一のゴシック調ドラマなわけです。ホラー的な要素としてはあくまで心理的な描写がメインですけど、なんか背筋がゾクゾクさせられるようなサスペンスはさすがヒッチコックと言えましょう。彼のお得意の女優虐待演出のおかげでジョーン・フォンテイーンのおどおどぶりが真に迫ってましたが、まだ駆け出しの頃の彼女ですからローレンス・オリヴィエとの共演もかなりのプレッシャーだったと想像できます。でもやはりジュディス・アンダーソンが演じる女中頭に、この映画の美味しいところをすべて持って行かれたという感は否めないですね。この人劇中で一度も笑顔を見せないどころかまったく表情が変わらない。そして登場シーンでは毎回いつの間にかジョーン・フォンテイーンのそばに立っている、この女こそまるで幽霊みたいな感じです。そして亡妻レベッカを映像としてまったく見せない演出も効果的だったんじゃないでしょうか。 最近Netflixでリメイクされたようですが、どうもグダグダで評判が悪いみたいです。やはりあの解決にいたるラストの展開は、ヒッチコックのような名手でないと嘘くさくなってしまうんだろうな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-09-23 23:41:10)
3.  天国は待ってくれる(1943) 《ネタバレ》 
まず始めに出てしまうのが、「これが世界中で死が渦巻いていた第二次大戦中の映画なんだ…」というため息です。しかもカラー撮影!戦時中を意識させるのは、ラストに出る「勝利のために、あなたもこの劇場で戦時国債を買いましょう!」という政府宣伝だけなんですから。こりゃあ、日本もドイツもアメリカに勝てるわけないですよ。 ところで、私はある勘違いをしたままこの映画を観始めました。「なんかヘンだな?」と観進めるうちに違和感が…実はわたくし、本作が『天国から来たチャンピオン』の元ネタだと思っていたんですね。ウォーレン・ベイティの『天国から…』は41年の『幽霊紐育を歩く』のリメイクだったんですよ、だってどっちも“Heaven Can Wait”が原題なんだからややこしいです(笑)。ドン・アメチーがふけメイクをして地獄の受付係(閻魔大王?)の前に進み出ます。この人はこれから40年後の本当の爺さんになったところで『コクーン』でオスカー受賞するんですから、人の世は奇なるものです。彼は50年代から晩年になるまで映画出演が極端に減ったので日本では馴染みが薄い存在でしたが、若い頃の演技を見てもその芸達者ぶりが良く判る名優です。あの世の入り口で死者が審判を受けるというファンタジーは良く見かけますけど、本作ではファンタジー要素は冒頭とラストだけで、予想を裏切るハートウォーミングな愛情物語でした。監督がエルンスト・ルビッチですから安心して観れますし、幕が下りたらほんわかした気分に浸れます。まあ、アメチーの人生があわや地獄に落ちそうものだったとは到底思えないところが、難点と言えば難点ですかね(笑)。 しかし全世界で無意味な死が積み重なっていた時に、一人の人生とその終焉にここまで意味づけするアメリカ人の感性は、果たして単なる能天気なのか深い達観なのか、解釈に悩むところですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-24 22:59:21)
4.  白熱(1949) 《ネタバレ》 
この映画はよく観ると、アル・パチーノの『スカーフェイス』とよく似たプロットなんですよ。ジェームズ・キャグニーが演じるコーディが病的なマザコンというところは、『スカーフェイス』でトニー・モンタナがシスコンというところを彷彿させるし、コーディが劇中何度か口にしラストの閉め台詞でもある“The Top of The World”も『スカーフェイス』で死せるモンタナに落ちてくる垂れ幕のキャッチ"The World is Yours"に通じるものがあるし、その垂れ幕をぶら下げていた気球は爆発するガスタンクを彷彿させるところがあります。もっともこれは『スカーフェイス』の元ネタになった33年の『暗黒街の顔役』に『白熱』が寄せていった結果だったのかもしれませんが、オリヴァー・ストーンも少なからず意識していたんじゃないかな。 コーディ一味はどいつもこいつも1ミリも感情移入できないクズばかりというのがある意味凄い。コーディは強盗の被害者や仲間でさえも容赦なく殺すけど、いちばん怖いと思ったキャラはやはり母親ですかね。まさに「この親にしてこの子あり」という感じですが、シェリー・ウィンタースが演じたマ・バーカーを遥かに凌駕しています。ある意味もっと怖いというか悪辣なのはヴァージニア・メイヨ=ヴェルナで、全編裏切りの連続のうえに母親まで殺しちゃう。でも最後までコーディを騙して悟られず結果的には彼女だけが生き残って逮捕、お前なんかコーディに…!(以下自主規制させて頂きます)つまりこの映画が言いたいことは、“女は怖い”ということになるんでしょうかね。 とにもかくにも40年代とは思えないスピード感に満ちた作品でした。警察(厳密には財務省なのでシークレットサービスか)の潜入捜査や追跡も丁寧に描かれているし、良い脚本です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-02-22 22:04:05)
5.  市民ケーン 《ネタバレ》 
古い映画だと侮って長年じっくり観たことがなかったけど、今更ながら観直してみるとトンデモない映画だと改めて気づかされました。これが弱冠25歳の演劇青年の初監督作だとは、恐るべしオーソン・ウェルズ! 狂言回し役の新聞記者がチャールズ・フォスター・ケーンの関係者たちを回って彼が発した最期の言葉「ローズバッド…」の意味を探ってゆくというストーリーテリングは、37年のフランス映画『舞踏会の手帖』とよく似ているというか参考にしたに違いないと思います。たしかに舞台演出家だったウェルズらしくセリフには拘っている感はありますが、根本的に本作はあくまで映像でストーリーを繋ぐ映画です。その映像がまた凄いの一語に尽きるのです。ローアングル・パンフォーカス・長回しと目くるめく映像テクニックの玉手箱状態、撮影監督グレッグ・トーランドの力量もあるでしょうが実現させたウェルズのイマジネーションの成せる技であるのは間違いないです。またウェルズやジョセフ・コットンおよびエヴェレット・スローンなどの老け演技がまた見事で、メイクアップ賞をあげたいぐらい(そのころのアカデミー賞にはメイクアップ賞はなかったけど)。チャールズ・フォスター・ケーンは映画史に残る複雑なキャラ、でもこれが数奇な映画人生を歩むことになるオーソン・ウェルズの未来を予言しているような感すらあります。とにもかくにも、一生に一度は観て損はない映画だと思います。 モデルとされた新聞王ランドルフ・ハーストが激怒して潰しにかかったというのは有名なお話し。でも“ローズバッド(バラのつぼみ)”が愛人のマリオン・デイヴィスのアレにハーストがつけた愛称だったとは、そりゃハーストも怒りますよね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-02-16 22:33:00)(良:1票)
6.  雷撃隊出動 《ネタバレ》 
湿っぽいストーリーなので現在の視点からはまるで反戦映画の様に捉えられがちですけど、まあこれは普通に戦意高揚プロパガンダ映画だと思います。帝国海軍の雷撃機部隊をメインに据えていますが、そもそも海軍航空隊は43年以降は華々しい勝ち戦はほぼ皆無、さすがに実話での景気が良いお話しにはできなかったんじゃないですか。すでに特攻隊が編成されたという事が大々的に新聞等で報道された後ですからねえ。 迷彩された甲板やゼロ戦の部隊番号からして、空母瑞鶴とその航空隊が撮影に参加していることは明白で、貴重なフィルム映像資料となっています。おそらく時期としてはマリアナ沖海戦からレイテ沖海戦までの間でしょう。円谷英二の特撮は戦争末期ということもあってスケールダウン感はぬぐえませんが、雷撃機に正面から撃ち込んでくる高額処理された曳光弾には、さすがに迫力がありました。 公開時にはレイテ沖海戦に惨敗して瑞鶴も海の藻屑と消えて連合艦隊は実質的に壊滅していたのは有名ですけど、撮影中もさすがにスタッフは戦争の行く末が危ないことは実感していたんじゃないかな。現代人としては理解しがたいところがありますが、当時の日本は軍部も国民もいわば“滅びの美学”というようなものに憑りつかれていたような気がします。劇中でも「米国は人命の損失がいちばん堪えるから、10人殺してひとり戦死すれば勝てる」なんてセリフがありましたが、実際には殺すどころか敵艦に近づくことすらできずに一方的に撃墜されていたのが現実です。こういう心理状態にまで追い込まれていますので、ラストで敵艦隊壊滅の代償で雷撃隊が全滅しても製作側も観客もちっとも反戦的なメッセージというふうに受け取ることはなかったはずです。 興味深いことに、ナチス・ドイツも戦時中プロパガンダ映画をけっこう製作していますが実際に進行している戦争を題材にしたものは皆無、反ユダヤ主義プロパガンダや明るいコメディ調の軽い娯楽映画が大半なんです。終戦間際になってナポレオン戦争時代のプロイセンの戦いを再現した大作映画を製作したぐらいで、徹底的な現実逃避が貫かれています。これは映画プロデューサーとしても有能だった宣伝大臣ゲッベルスの方針で、国民に鞭だけじゃなく飴をしゃぶらせることを忘れないナチスらしい政策でした。そういうところを比べると、日本の軍部は幼稚というか馬鹿正直なんですね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-12-16 11:08:55)
7.  ヨーク軍曹 《ネタバレ》 
公開されたのは41年だけど米国が参戦したのは真珠湾攻撃をくらった12月、つまりまだ戦争状態ではなかった頃なので戦意高揚プロパガンダ映画と言うよりはキリスト教プロパガンダをメインとしたヒーロー映画とみるのが適切でしょう。まあルーズベルト大統領は何とかして大戦に参戦して英国を助けたいと苦心していた時期でしたから、製作するにあたって忖度というか裏工作があったかもしれません。そう言えばヨーク軍曹が凱旋してから世話をする地元テネシー州選出の下院議員はコーデル・ハル、すなわち当時の国務長官で日本に最後通牒ハル・ノートを突き付けたご当人、ストーリーテリング上は登場しなくても別に差し支えないキャラだったので、なんか意味深なものを感じます。 前半はまるで西部開拓時代の様なお話しです。1910年代でも南部の田舎ではここまで素朴な生活だったのかと驚かされます。ゲイリー・クーパーは当時すでに40歳、20代のアルヴィン・ヨークを演じるにはちょっと老けてるような印象ですけど、朴訥なキャラはクーパーに適役だったんじゃないでしょうか。アルヴィン・ヨークが若い頃はゴロツキの嫌われ者だったというのは意外でしたが、史実通りとはいってもそんな男が聖書通りに行動するような信仰を持つようになったとは驚きで、それこそ「神のなさることは理解できない」ですね。ここら辺の無理ゲー的な展開ですけど、ジョン・ヒューストンも加わっている脚本が丁寧なので、意外と納得できるのがなんか不思議です。でも厳密に言うと、アルヴィン・ヨークは良心的兵役忌避者ではなくて“信仰心から戦闘に参加するのに躊躇した人” という分類に入れた方が妥当でしょう。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-11-12 22:23:12)
8.  第三の男 《ネタバレ》 
アントン・カラスの『ハリー・ライムのテーマ』や長回しのラスト・シーンであまりにも有名な映画。あのラスト・シーンは、個人的には映画史上最高のラスト・シーンだと思っています。グレアム・グリーンが書き下ろした脚本は、ジャンルとしてはフィルムノワールに分類されるかと思いますが、本家ハリウッドのノワールとは趣を異にする英国風味が特徴。舞台が占領下のウィーン(まだオーストリア国家の主権が回復されていないころ)で、登場人物の国籍も米・英・ソ・墺・ルーマニア・チェコスロバキアと国際色豊かで、まだ瓦礫が方々に残っているウィーンでロケしているのも貴重です。オスカー受賞した映像は大戦後にドイツ表現主義を復興させたような完璧な構図の数々、とくに夜間撮影の素晴らしさも映画史上最高かもしれません。最近の下手クソな撮影監督による何が映っているのかさっぱり判らない夜間撮影に比すと、モノクロ撮影ながら闇は闇、淡いながらも光が当たる部分はくっきりと見せる匠の技、とくに闇の中からオーソン・ウェルズの異相が突然にスクリーンに映し出される瞬間は鳥肌ものです。あとハリー・ライムの共犯者たちやアパートの管理人などの脇のキャラに、癖の強い顔の役者を揃えてそのアップショットが多いのも特徴でしょう。いちおう主人公と言えるのはジョセフ・コットンが演じる三流作家なんですけど、こいつが事件解決の糸口を作るけどハードボイルドとはほど遠いグダグダな男で、ライムを警察に売ってしまうのはなんか後味が悪い。ラストでまだ未練たっぷりのアリダ・ヴァリに強烈なしっぺ返しを喰らったのは、当然と言えば当然の結末だと思いますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-14 10:15:22)
9.  サハラ戦車隊 《ネタバレ》 
舞台は北アフリカ戦線、「トブルクが陥落した」というセリフもあるので1942年半ばという時代設定みたいです。この映画の影の主役はやはりⅯ3リー戦車、製作された43年にはすでにⅯ4シャーマンが登場していますが、当時のバリバリの現役戦車です。米軍が師団単位で本格的に北アフリカ戦線に投入されたのは42年後半のアルジェリアからですが、Ⅿ3戦車は英軍にも供与されたので、そのトレーニーとして米軍の分遣隊が先駆けて戦場にいたという設定ならばさほど無理がないかなと思います。“ルル・ベル”というのが戦車につけられたニックネームですが、『1941』に登場するⅯ3戦車もニックネームが同じで、つまり本作へのオマージュだったわけです。 この戦車が英軍部隊に出会ってイタリア兵とドイツ・パイロットを捕虜にして井戸がある拠点を目指すロードムービー風の前半がとくに秀逸です。英軍兵も南アフリカ兵やフランス人志願兵やスーダン人植民地兵がいて多彩な顔ぶれで、それぞれのキャラも丁寧に撮っていて好感が持てます。イタリア兵捕虜がヒトラーとムッソリーニを比較したりしますが、まだ大戦の形が付いていない時期なのにムッソリーニを好意的に語らせているのはちょっと意外でした。とうぜん軍の検閲が入ったはずですが、こういう余裕がアメリカのアメリカたる所以なんでしょう。 水を求めて攻撃してくるドイツ軍との戦いが繰り広げられる後半ははっきり言ってマンガみたいなお話しですけど、ドイツ軍を騙すための策略や拠点の陣地化する作業などは丁寧に描かれていて好感が持てます。とはいえ大隊規模の部隊が、いくら砂漠での戦闘であるとしても燃料・弾薬じゃなくて水不足で戦闘力を半ば失うなんてことは、現実ではあり得ないでしょう。旧帝国陸軍じゃないんだからそんな補給のヘマはしませんよ、ドイツ軍をバカにし過ぎです(笑)。 9人対500人というおとぎ話みたいな戦闘ですが、ボギーの側もけっきょく二人しか生き残れなかったというのはそれなりにシビアな結末だったのかもしてません。 ハリウッド映画とは言っても戦時中でしかも戦争ものなのでプロパガンダ的な製作意図はとうぜんあったでしょうが、そんな偏見を超えた普遍的な面白さを持ったエンタティメントだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-07-27 23:22:45)
10.  黄金(1948) 《ネタバレ》 
けっこう駄作も撮っている巨匠ジョン・ヒューストンですけど、彼の最高傑作はやはり本作じゃないかと思います。 この時代のハリウッド看板スターにしては珍しく、ボギーが演じるドッブスはまさに人間のクズみたいな輩です。ほとんど悪役といっても過言じゃないくらいで、あの『カサブランカ』の気障な男を演じたのと同じ役者だとは信じられないぐらい。すでに大スターの座を揺るぎなきものにしていたボギーをこんなキャラにしちゃうし、彼に冒頭で三度も施しを与える白スーツの男をヒューストン自身が演じているし、実はヒューストンはオットー・プレミンジャーに負けないサディスト監督だったのかも(笑)。でもボギーも、ヒューストンとコンビを組んだ作品ではどれも彼の持ち味が最大限に引きだされており、やはりこれは名コンビだと言えるでしょう。 三人の男が金を掘り当てるために協力しあうというプロットは、タランティーノならお得意の三すくみのギトギトの欲望劇にしちゃうのは間違いなしですが、カーティンやハワードにもちょっと怪しげな感じもあったけど、やはりドッブスの悪逆な小物感が突出していますね。そこはウォルター・ヒューストンの対照的な大人感があるので余計に目立つわけで、ラストでハワードに豪快なバカ笑いされちゃあカーティンも一緒に哄笑するしかないですよね。終わってみればウォルター・ヒューストンが美味しいところを全部持って行ってしまったわけですが、これこそジョン・ヒューストンの親孝行じゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-05-31 22:22:12)
11.  七つの顔 《ネタバレ》 
“和製アルセーヌ・ルパン“多羅尾伴内がスクリーン初登場!GHQにチャンバラ映画製作を禁止された苦肉の策で、時代劇専門の大スター片岡千恵蔵で初の現代劇を撮るという奇策は関係者の危惧をものともせず大ヒットして映画史にその名を刻むことになりました。 こういう際物的な出自なんですが、これがどうして、テンポの良い探偵映画の秀作なんですよ。この映画の特徴は、終戦翌年でまだまだ復興にはほど遠い状態の東京なのに、画面に戦禍の跡や闇市やボロ着の庶民などが一切映らないところ。劇中「引き揚げ」「公職追放」の二語だけがセリフにありましたが、徹底的にファンタジーの世界に徹しています。これなら戦争の傷跡が癒えない庶民が熱狂したのもなんか納得できます。千恵蔵の変装はどう観ても千恵蔵にしか見えないのはご愛敬ですが、彼のコミカルな演技は当時の観客には新鮮だったでしょうね。チャンバラの代わりに拳銃を撃ちまくるというわけですが、殴り合いでの千恵蔵の身のこなしは想像以上に俊敏で、重厚な無線付きオープンカーを駆ってのカーチェイスまで見せてくれたのはさすが大スターという感じです。監督はマキノ一家の松田定次でさすがエンタメの極意が判っているし、ストーリーはルパンもののほぼ翻案ですけどトリックは正統派推理小説そのものでした。 古い映画ですけど観て損はない一編だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-11-22 20:03:45)
12.  ハワイ・マレー沖海戦 《ネタバレ》 
それまで燻っていた円谷英二が齢40にして培ってきた特撮技術をついに華開かせた歴史的大作です。現在の眼では初歩的なVFXという冷めた見方もできますが、円谷は戦後『太平洋の嵐』で本作と同じ特撮カットに拘ってスケールアップした真珠湾攻撃を再現しました。その後『加藤隼戦闘隊』などの作品でその名を轟かせましたが、そのため山本嘉次郎ともども戦後は公職追放の苦難をなめることになります。■冒頭タイトルが流れると次に「後援 海軍省」「企画 大本営海軍部」というテロップが出ます。実はこの映画にはキャスト・スタッフが紹介されるタイトル・ロールが存在しません。これじゃあまるで海軍が製作した映画みたいですね。実際は真珠湾攻撃を報じる新聞に載った写真と数十秒のニュース映画の映像を観た撮影所長の森岩雄が、「これを映画化したい」と感じたのが事の始まりです。すぐに海軍省に出向き企画を説明して、そんな発想は欠片もなかった海軍から後援を取り付けたのが真相です。でもこれは昭和17年の年初のことで、海軍からは12月8日の開戦一周年に間に合うように製作しろというきついお達し。でもその公開日には、真珠湾攻撃した南雲機動部隊のうちすでに空母四隻は海の底で眠っていたというのは、不謹慎かもしれないが笑えない話です。■いざクランクインしてみると、予想外の苦労に見舞われます。それはロケや取材に対する現場部隊の非協力的な対応で、これはお役所特有の縦割り組織文化のせいでした。一番苦労したのは主役メカのはずの空母で、乗艦どころか外観を撮影することすら許されなかったそうです。でもなんとか苦労して原寸大の空母セットを造り上げましたが、試写をご覧になった事情を知らない海軍大佐・高松宮が「なんだこれは!日本にこんなフネはないぞ!」と激怒されたそうです。でも観てみるとけっこう雰囲気は出ていると思いますけどね、艦橋が左舷にあることから赤城のつもりでしょうが、外観はどちらかというと翔鶴型に近いという感じですね。■前半の圧巻はやはり主人公が志願する予科練での教育シークエンスです。霞ヶ浦の予科練で実際にロケしており、朝イチで訓練生が運動場に集合して体操するシーンは迫力すら感じます。この時動員された訓練生は四千人だったそうですが、終戦までに四千人の七割が戦死したというのは悲しいことです。■そしてクライマックスの真珠湾空襲、雲下に真珠湾が見えるというシーンでは、公開当時は観客から拍手と歓声が沸き上がったそうです。そりゃここまで来るのに一時間以上かかっており、前半の修身的ドラマや予科練シークエンスが長いのでみんな待ちくたびれてたんじゃないの(笑)。皮肉なことにアメリカ戦艦群のミニチュア製作は日本の空母よりよっぽど楽だったそうで、それは雑誌掲載写真やジェーン海軍年鑑などの資料入手が容易だったからです。魚雷命中時の水柱が高すぎる気がどうしても拭えないんですが、記録映像や目撃談から割り出して円谷がこの高さにしたそうで、拘りが凄いです。ただ当たり前ですが水は縮尺することができないので特撮表現は難しいですよね。この「水の特撮表現」は円谷の生涯のテーマとなり、遺作である『日本海大海戦』で完成の域に達します。■実は当初の企画ではあくまで『ハワイ海戦』であり、真珠湾攻撃がテーマでした。ところがシナリオ段階で海軍からのゴリ押しでマレー沖海戦も描くことになってしまいました。これはスケジュール的にもハードどころの騒ぎではなく、助監督たちに至っては山本嘉次郎を飛び越えて森岩雄に「公開を一カ月延期してください」と談判する騒ぎになったそうです。そういうわけでプリンス・オブ・ウエールズとレパルスの撃沈特撮シークエンスはわずか二日で撮影されました。このシークエンスではやたらテロップが多用されているのも、こういう事情でしょう。■こうやって見ると、海軍の「便宜は与えないけど、口は出す」の方針でガチガチのザ・国策映画という風になってしまっているのは否めないでしょう。同じスタッフの『加藤隼戦闘隊』と見比べてみるとその差は歴然です。一般的なイメージとは違って、プロパガンダ映画に関しては陸軍の方が頭は柔らかかったようです。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-10 01:35:21)
13.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
バーバラ・スタンウィックと言えば今じゃすっかり忘れられた女優ですが、本作の悪女フィリスはこれだけしかないという彼女の代表作、あの独特のヘアスタイルは今でも悪女のアイコン的な存在であります。ハロプロ有名グループの某アイドルがこのフィリスとよく似たヘアスタイル(しかも金髪)だったことが懐かしく思い出されます、そういやこのアイドルもけっこう強気なキャラでしたね。 ジェームズ・M・ケインの原作をレイモンド・チャンドラーが脚色してビリー・ワイルダーが監督したのですから、そりゃ傑作にならないわけがないじゃないですか。でもチャンドラーとワイルダーは撮影中は険悪な関係だったみたいで、『見知らぬ乗客』でもヒッチコックと揉めているし、このレイモンド・チャンドラーという偉大な作家は人づきあいが上手くなかったみたいです。 “フィルム・ノワール”には色んな定義がありますが、本作は間違いなくその最初期に位置していることは間違いないでしょう。そしてたぶん本作がワイルダー唯一のフィルム・ノワールなんでしょうけど、要はこの人どんなジャンルでも手を出せば軽々と傑作にしちゃうし、やっぱ天才なんでしょうね。この時代は、優れた脚本を書ける映画作家が存分に腕をふるえる黄金時代だったと思います。 ストーリーテリングはフレッド・マクマレイが冒頭からヴォイス・レコーダーに事件を順繰りに語るというオーソドックスなものですが、それがナレーションにもなるというハードボイルド小説の定石みたいなテクニック、ここら辺にチャンドラーの爪痕があるのかもしれません。その単調になりがちなスタイルをぐいぐいと引っ張るのがやはりエド―ワード・G・ロビンソンの力量なんでしょうね。ただ一つ残念だったのは、フィリスが最後に二発目を撃てなかったうえにそこで(多少)改心したような展開になったところでしょう。なんか中途半端でとことんサイコパスみたいなキャラを通して欲しかったところですが、時代を考えるとヘイズ・コードが猛威を振るっていた頃ですからしょうがないかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-16 20:56:35)
14.  ヘンリィ五世(1944) 《ネタバレ》 
ノルマンディー上陸に成功してナチ・ドイツの敗北が見えてきたけどロンドンにはV2号が降りそそいでいる真っ最中に、オールカラー撮影でこれだけの規模の大作を制作しちゃうのが余裕というか大英帝国の底力なんでしょうね。製作者の中には戦意高揚の意図があったかもしれませんが、生粋のシェイクスピア俳優であるローレンス・オリヴィエは自らのキャリアとアイデアを賭ける意気込みで半端なプロパガンダ映画にすることはあり得なかったのだろうと思います。同時期にフランスで、占領下で自由がないなか仏映画人が『天井桟敷の人々』を長い時間をかけて完成させており、この両作にはなんか相通じるものがあるような気がします。映画というものが、文化だけじゃなく社会的にも強い影響力を持っていた時代のお話しです。 ロンドンのグローブ座で演じられる『ヘンリー五世』とアジンコートでの英仏決戦が空間を飛び越えて行き来するメタ・フィクショナルな構成は、ローレンス・オリヴィエの演劇人としての構想力には驚嘆させられました。こんなシェイクスピア劇はそれまで誰も考えたことなかったですからね。クライマックスのアジンコートの戦いも、広々とした草原というのは史実の戦場とはちとかけ離れているシチュエーションですが、騎馬が動き出しギャロップから突撃体制に移るまでの長回しなど迫力ある映像なので満足です。 シェイクスピア劇って本で読むと退屈で興味が湧かないのですが、映像になってみるとわくわくさせられて面白いことが多いです。やはり戯曲というものは、舞台や映像にならないと真価が理解できないというのが本質なんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-03-09 23:30:59)
15.  ロープ 《ネタバレ》 
製作当時は一缶のフィルムで最大15分程度しか撮影できなかったので、いくら80分と短めの作品でも全編長回しで撮るのは不可能、したがって本作はあくまで“ノーカット風”と呼ぶのが正解。前半はそれなりに頑張っているけど、中盤すぎると切り返しのカットがあるうえに、明らかに編集点と判る映像もあります。まあヒッチコックは、技術的には不可能なので過去には誰も思いつかなかった全編ワンカットで撮られた映画がもし実現できるとしたらどんな風になるだろうか、という発想で実験というよりも遊び心で本作を撮ったような気がします。そうなると登場人物が少ない室内劇が題材とならざるを得ず、テーマはともかくとしても映像的には退屈な映画となってしまったわけです。そういうワンカット撮影の時間的な制約を逆手にとった、カメラが屋外を縦横無尽に動きまわるオーソン・ウェルズの『黒い罠』のオープニングが、やはりこのテクニックの最高峰となるんじゃないですかね。 肝心のストーリーですが、推理劇というか会話劇として観るとヒッチコックらしい王道だなと感じます。まるで『罪と罰』のラスコーリニコフみたいな主人公の思想は凡人には理解不能ですが、ほとんど変人の部類のひねくれたインテリであるジェームズ・スチュワートが自分たちと同種の人間だと勘違いする心理が面白い。この犯人像はモデルとなったレオポルド&ローブ事件とほぼ一緒らしいですが、現代ではこの手の人間はサイコパスと呼ばれるわけです。 この作品はヒッチコック初のカラー映画ですが、色彩設計もやはり力が入っています。劇中と実際のタイム・ランが一致していますから、窓から見える摩天楼の遠景とその背後にかかる大きな積乱雲が、鮮やかな夕焼けからマジックアワーを経て暗闇に沈んでゆく経過がとくに美しい。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-08-30 22:03:58)(良:1票)
16.  深夜の告白(1949) 《ネタバレ》 
『深夜の告白』と言いましてもビリー・ワイルダーのアレとはまったく関係はございません。もっともワイルダーの方は44年製作で日本では53年に公開されていますので、本作の方が元祖『深夜の告白』ということになります(あくまで邦題だけの話です)。中川信夫の新東宝移籍後の第二作目になるそうです。このころの新東宝はまだ発足したてのころで、最初に東宝のロゴが「東宝配給」という文字とともに映されるぐらいの時期です。この頃の新東宝はもちろんあの大倉貢とはまだ何の関係もなく、本家の東宝も顔負けのまじめな映画ばかり製作していました(実は黒澤明の『野良犬』も当時の新東宝配給です)。 さて、中川信夫推しのわたくしとしてはこの滅多に観れない一編なのでちょっと期待して観たのですが、正直言わせてもらうと面白くもなんともない凡作でした。戦時中に背任横領の嫌疑をかけられて謎の失踪をした軍用機製造会社の社長が実は横浜のスラム街で名前を変えて生きていた、まるで『第三の男』を彷彿させるプロットはちょっと期待しちゃうんですがね。当然この失踪劇には隠された陰謀や策略があって、新聞記者の池辺良がそれを暴いてゆくという展開だとふつう誰でも考えますよ。それがいつまでたってもサスペンスにならず、けっきょくベタなメロドラマでしたって終わり方をされちゃあ、もうがっかりです。社長役の小沢栄(若いころの小沢栄太郎です)はこのころから老け役が上手くてまるで後年の東野英治郎みたいだな、と感心したらなんと東野英治郎ご本人もちょこちょこ悪事を働くわき役で出演してました(笑)。彼はほぼ実年齢通りのキャラでしたが、この人も志村喬と同じで若いころから風貌が全然変わらなかったみたいです。 出演者みなけっこうしっかりした演技を見せて中川信夫の演出手腕の確かさは再確認できましたが、いかんせん脚本があまりに古臭くて陳腐すぎです。よく考えてみると、終わってみれば嫌な奴はいても誰も悪人じゃなかったという、ありふれた結末でした。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2018-10-06 22:50:51)
17.  ミルドレッド・ピアース 《ネタバレ》 
全盛期を過ぎてからのジョーン・クロフォードしか知らなかった自分が恥ずかしい、彼女が見せてくれた演技はそこまで言わせてしまうほどのすごい演技で、アカデミー主演女優賞90年の歴史でも十指に入ると確信しました。とても40年代の女優とは思えない現代でも通じる知的な演技とでも申しましょうか、意志強固ながらもどうしても隠すことのできない母性に運命が翻弄されてしまう女性像を、見事に演じ切っています。 監督がマイケル・カーチスですから臭いメロドラマかと舐めてかかってはいけません、見事に予想を裏切るストーリーテリングです。ミステリーとしても上質な出来ですが、「誰がベラゴン氏を射殺したのか?」という謎解きについては物語が進行してゆくにつれてどうしても感づいてしまうんですが、そんなことはこの映画の価値を下げることは全然ありません。ミルドレッドを取り巻く三人の男が、また大なり小なりろくでなしなんです。その中でもジャック・カーソンが演じる共同経営者が、ある時は善人ある時は小悪党という絶妙なキャラで、最後までミルドレッドに振り回される男を好演していました。そして忘れてならないのは甘やかされて育てられたおかげですっかり人間性を喪失してしまったような娘ヴィーダ役のアン・ブライスで、彼女にもオスカーを与えて欲しかったとしみじみ思います。 とにもかくにも、ジョーン・クロフォード一世一代の名演を得とご堪能あれ!
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-04-18 22:31:05)(良:1票)
18.  扉の影の秘密 《ネタバレ》 
ドイツ表現主義の雄フリッツ・ラングがメガホンをとって“光と闇の貴公子”スタンリー・コルテスを撮影監督に起用されれば、これぐらいの映画は余裕でできちゃうんですね。特に舞台がアメリカのお屋敷に移ってからは、その陰影の濃い映像とミステリアスなストーリーテリングに引き込まれてしまいます。さんざん引っ張っておいてあのラストはなんだという非難は当然かもしれませんが、これは『飾り窓の女』にも通じる当時のハリウッドでのお決まりなんですから、大目に見てやってください。でもマイケル・レッドグレーヴは本当に殺人者ではなかったのか?という疑問は当然残りますけど、何でもかんでも種明かししてしまう昨今のヘボミステリー映画では味わえない感覚は貴重であります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-11 23:07:39)
19.  猿人ジョー・ヤング 《ネタバレ》 
恥ずかしながら、今までこの映画は怪獣・モンスター映画だとばかり思っていました。てっきりメリアン・C・クーパーが二匹目のドジョウを狙ったキングコングの二番煎じだとね。ところが本作のジョー・ヤング君はただのでかいゴリラそのものでしかなく、もちろん猿人であるわけがありません。ちょっとがっかりしましたが、これがどうして、けっこう面白いんです。レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメはキングコング当時よりも格段の進歩を見せており、ジョーとライオンの格闘なんか見事なシーンとなっています。でかいと言ってもしょせんはゴリラなんで街中に出て行ったら警察や軍隊にあっという間に仕留められちゃいますが、そこはナイトクラブの店内という閉ざされた空間で暴れさせるというところは脚本の妙味です。このナイトクラブでの破壊シーンはストップモーション・アニメと実写の合成が見事に決まっていますし、セット自体も大掛かりで迫力満点です。人間ドラマも良く撮れていて、悪役かと思っていた興行主オハラがジョー脱出に大活躍するようになるところなぞ傑作で、製作のジョン・フォードが助監督まで務めている効果が出ている感じがします。 ちょっとジョー君の顔つきがゴリラらしくないところが難点ですが、ラストのアフリカからのムーヴィー・レターのくだりは、なんかほっこりさせられました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-04-30 21:41:06)(良:1票)
20.  頭上の敵機 《ネタバレ》 
㈱“アメリカ陸軍航空隊”産業は社業隆盛を狙って新たにヨーロッパ支社を開設しました。新規開拓のために爆撃営業部隊がフランスで飛び込み営業を開始しましたが、営業課長は部下からの信頼は厚いけど営業成績はイマイチでした。そこで本社は課長を更迭して営業企画の部長を代わりに送りこみました。彼は部下を再教育し自らも営業現場に同行して徐々に成果をあげるまでになりましたが、営業地域がドイツ第三帝国に拡大するとライバルのルフトヴァッフェ商事が自社の商圏を荒らされて堪るかと激しく商戦を挑んできました。 判り易く解説すると本作の内容はこういう感じです。大戦終結からわずか4年でこんなユニークな戦争映画が撮られていたとは驚かされます。最近のイラクやアフガニスタンを扱った安っぽいヒーロー礼賛のハリウッド映画なんか問題外で、現代でも全然色あせない切り口だと思います。ラストのたぶんシュバインフルト爆撃作戦をモデルにしたシークエンス以外に空戦シーンはありませんが、それでも終戦直後だけあって実物のB17爆撃機が多数出演しているところはさすがです。精神的ショックでお地蔵さんみたいになっちゃうグレゴリー・ペックの演技も強く印象に残りました。 実際のシュバインフルト爆撃では出撃機の七分の一が撃墜され、帰還できても廃機処分された数も入れると実に出撃機の三分の一が消えうせたという米軍史上空前の大損害だったそうです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2016-02-05 23:23:41)
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