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プロフィール
コメント数 2476
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  新 仁義なき戦い 組長最後の日 《ネタバレ》 
もう飯干晃一の原作とは何の関係もなくなっていた新シリーズの白鳥の歌、そして未練がましく続行するつもりだった東映の思惑が外れて文太・深作コンビの最終作となってしまった一遍です。すでにまったくのフィクションですが、実録ものじゃないだけに考えようではキレまくったストーリーだったとも言えます。個人的にはけっこう愉しめました。 末端のチンピラ売人同士のイザコザが大阪の大組織と九州の暴力団連合との戦争になってゆくというストーリーですが、手打ちになる展開を昔気質というか単なるKYとも見える菅原文太がぶち壊してしまうという展開です。東映がカーアクションに凝り始めたころの撮影ですので、とくに山道でのダンプ2台での襲撃シークエンスはけっこう見応えがありました。文太に狙われる大阪の組長は、どうもあの神戸の組織の三代目がモデルみたいですね。この小沢栄太郎が演じる大物は結局心臓発作で瀕死の状態になるのですが、その病室にカチこんで子分が「おやっさんはもう助からない、どうか安らかに逝かせてくれ」と懇願するのに射殺する文太の非情さにはちょっと震えます。もっとも護送される直前にパトカーを奪って小沢栄太郎を殺しに行く展開は、さすがに「そんなことあり得んだろ!」と呆れてしまいましたがね。妹の松原智恵子とは近親相姦の関係だったとか、文太のキャラはかなり癖が強かったですね。 まあ普通のヤクザ映画としては退屈しない出来だったと思いますが、このシリーズを通じてエスカレートしてきた手振れカメラ撮影が五月蠅過ぎた感がありました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-11-02 22:27:45)
2.  新・仁義なき戦い 組長の首 《ネタバレ》 
菅原文太が主演するだけでもはや『仁義なき戦い』とはなんの関係もなくなった物語で実録路線でもないフィクション、ここまで来るともはやタイトル詐欺、『組長の首』にしてもペキンパーの『ガルシアの首』のパクりですしね。ヤク中で破滅するサブキャラになんと山崎努が起用されているのが驚き、彼は東映初出演だったが本来は松方弘樹が予定されていたキャラだそうです。でも『暴力金脈』の単独主演が成功して役者としての自信が出てきた松方はキャスティングを拒否、文太も「わしゃぁもう実録路線には出演せん!」とごねた挙句の完全フィクション脚本、いろいろと製作には苦労があったみたいです。でも山崎のシャブで破滅する大物組長の娘婿というキャラはさすがにいい演技を見せてくれ、なんかお得な気分になれました。“修羅の国”北九州が舞台で文太が演じるキャラの方は単に“旅人”としか説明がない流れ者、でも『仁義なき戦い』の広能昌三とは違ってなんか脂ぎって執念深い生々しい男で、自分が対立組長を射殺して7年も懲役くらったのに出所後の対応が酷いと流れ者のくせにゴネて老舗組織をひっかきまわす。仁義とか義理なんて眼中になくひたすらカネと地位を追及する男で、考えてみればこいつさえ存在しなければ西村晃も成田三樹夫も室田日出男も死なずに済んだんじゃないかな、最後に自分だけは野望を成就して終わりってなんか酷くない?実在のモデルが存命中だった『仁義なき戦い』ではでは無理だったリアルなヤクザ像を、フィクションであるからこそ文太のキャラに投影できたんじゃないかな。あと抱いた男がみな死んでしまうという究極の死神女・ひし美ゆり子が強烈な印象を残してくれます。なんせあのアンヌ隊員が脱ぎまくるんですからね、こりゃ衝撃ですよ。薄幸の女という梶芽衣子が演じそうなキャラではなく、自分の魔性を自覚しながらしぶとく世渡りするしたたかな女だったところも良かったです。この死神女ぶりを判っているのに愛人としている成田三樹夫の(ちょっとここでは書きづらい)厄除け法が面白い、というか笑っちゃいます。けっきょく彼もジンクスは破れなかったけどね(笑)。まあ『仁義なき戦い』に拘らなければ、普通に退屈させないヤクザ映画だったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2024-09-24 23:49:02)
3.  スカイエース 《ネタバレ》 
原作は第一次世界大戦西部戦線での英軍の塹壕戦をテーマにした戯曲で、いわば『西部戦線異状なし』の英国版みたいな感じだそうです。それを航空隊の物語に変更して、志願したパブリックスクール生の若者が、部隊配属から戦死するまでの7日のストーリーとして脚色されています。この若者が配属された第76飛行中隊の指揮官は実はパブリックスクールの先輩で姉の婚約者、つまりもうすぐ義兄になる人で演じているのがマルコム・マクドウェル、すでに23歳で少佐のベテラン・エース戦闘機乗りで同窓の英雄というわけです。製作されたのが76年でマクドウェルにはまだ『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスのイメージが残っている頃ですが、そんなパブリック・イメージにはそぐわない有能で老獪な戦闘機乗りです。設定は1917年の10月ですけど、史実としては西部戦線の航空戦は激しさを増していて、少数のエースパイロットが奮闘しているけど新人として配属されてくるパイロットはバタバタと撃ち落されてゆき、7日で戦死というのは実情に近かったんじゃないでしょうか。そんなわけでパイロットたちは酒に女と戦闘後はひたすら快楽を求めますが、中には精神が破綻して離脱する者も出てくる始末です。 空戦シークエンスにはレプリカの複葉機が使われていますが、英軍機はけっこう再現度が高かったと思います。それに反して独軍機の方はイマイチどころかイマサンぐらいの代物で、一次大戦の独軍戦闘機は赤く塗装しておけばそれらしく見える、というのは大間違いですぜ。とはいえ空戦シーンはそれなりのものでしたが、英軍機のパイロットが撃墜されたときに全身が燃えながらパラシュートなしで空中に投げ出され、地面に激突するまでをワンカットで見せるところは強烈でした。 『レッドバロン』や『ブルー・マックス』の様な派手な空戦映画を期待すると肩透かしを喰いますけど、塹壕戦と同じように消耗品として消費されてゆく戦闘機乗りにスポットを当てた地味ながらも英国映画らしい佳作でした。ジョン・ギールグッドやクリストファー・プラマーなどの渋い大物俳優たちも脇を固めています。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-09-18 22:14:46)
4.  オール・ザット・ジャズ 《ネタバレ》 
巨匠・名匠と呼ばれるぐらいの映画作家は大なり小なり自分なりの『8 1/2』を撮る傾向があるけど、これぞまさにボブ・フォッシー版の『8 1/2』でございます。ぶっちゃけて言うと、フェリーニの『8 1/2』を知らなかったり好きではない人には響かない作品なのかもしれません。 この種の映画はその時の監督自身が抱える悩みや迷いがテーマになるけど、本作ではずばり“死への恐れ”だと言えるでしょう。実際フォッシーはこの後8年しか生きれなかったし、すでに自分の健康状態に不安を持っていたんじゃないかな。その他にも劇中で完成に苦労する映画『スタンド・アップ』は明らかに『レニー・ブルース』のことですし、女性関係のイザコザも赤裸々にぶっこんでいます。あのケイティを演じたアン・ラインキングに至っては実生活でも劇中通りのフォッシーの愛人(の一人)であり、いわばセルフパロディみたいなもんです。オードリーは妻のグウェン・ヴァードンで娘のミシェルはニコル・フォッシーがモデルであり、ほとんど私小説みたいな感じです。 やっぱ圧巻なのはラスト三十分の“Bye, Bye Love”のミュージカル・シークエンスでしょう。このキレッキレッのパフォーマンスはボブ・フォッシーのミュージカル集大成という迫力を感じます。自虐的なネタも光っていて、毎朝目薬さしてヤクでキメて「イッツ・ショータイム!」と気合い入れするのが繰り返されたり、ギデオンが入院して舞台制作が危ぶまれたときにプロデューサーたちが保険会社を呼ぶと、実は手術が失敗してギデオンが死ぬ方が彼らは儲かると判明するところなんか強烈な皮肉になってます。そうは言ってもショービジネスの非情さを糾弾するのではなく、どっぷりとショービジネスの世界に浸ってきたフォッシーのショーを創る喜びの方が強く感じられました。 人間は死ぬときには過去の人生が走馬灯のように流れるとよく言われますが、わずか六十歳で他界したフォッシーが見た走馬灯はきっと本作のラスト30分だったんじゃないだろうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-09-12 22:18:39)
5.  オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック 《ネタバレ》 
この映画、『オスロ国際空港』なんて邦題を勝手に付けちゃってるけど、実は設定上は“スカンジナビア国”という架空の国家が舞台で、どう見てもミエミエなのにノルウェーやオスロというセリフは一切使われておりません、エンドクレジットでは“ノルウェーでロケした”って出てるのにね。そしてダブル・ハイジャックなんてワードはどこから来た?って感じで、そのスカンジナビア国の英国大使館がテロリストに占拠されて大使たちが人質にされて英国に囚われている仲間の釈放を要求する事件が起き、その首都空港に着陸寸前の旅客機がテロリストの仲間にハイジャックされるという事件が同時に起きる。最初は軍用機を用意させて人質とともに脱出する計画だったのに、「降下地点が当局にバレた」ということでハイジャック機を脱出に使うとして仲間が急遽英国から駆け付けたというわけです。なんか腑に落ちないところがあるな、と観てて思いましたがこれがラストのオチに繋がってくるわけです。このテロリスト・グループは冒頭では派手に英国内で爆弾テロをかましますが、これもどう観たってIRAがモデルだろって判りますが、もちろんIRAなんてワードは出てきません。この当時の現実の英国は今では想像もつかないほど物騒な状態だったので、このような配慮というか忖度は必要だったんでしょうね。ストーリーはドキュメンタリー調というか淡々とした語り口で進行してゆきますけど、やはりジェームズ・ボンドから足を洗ったばかりのショーン・コネリーの渋さは光ってます。対するハイジャック犯の親玉はイアン・マクシェーン、『ジョン・ウィック』シリーズのウィンストンの若き日のお姿です。両者の知恵を駆使した駆け引きが見どころとも言えますが、ちょっと意表を突かれるあの結末には、正直なんか複雑な感じが否めなかったかな。まあ派手な見せ場が無いし演出もあまりに単調だったので、こりゃあしょうがないね。フレデリック・フォーサイスあたりがノベライズしたら面白くなりそうな題材だったので、ちょっと残念でした。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-12 22:13:46)
6.  白昼の死角 《ネタバレ》 
過去に商法・手形小切手法をかじったことがある身だけど、正直言って約束手形と言うものは実に判りにくい制度でもある。約束手形の法理なんて理解できていたとは言い難いし今ではすっかり忘れてしまったけど、約束手形と言うものは厄介な代物で無借金経営の様な優良企業には用ないものだというイメージがある。なんでも2026年には紙の手形小切手は廃止されて電子化されるそうで、最近はめっきりニュースなどでも耳にすることもなくなっている手形パクリや手形サルベージと言った犯罪も消滅してゆくんだろうな。 高木彬光の原作は、手形詐欺を扱った日本では珍しい部類の推理小説というか経済犯罪がテーマのピカレスク小説です。この映画化である本作は、角川春樹がプロデューサーをしているけど角川映画ではなく、あくまで東映の映画です。だもんで、普段の角川映画では見られない様な大物俳優がこれでもかというぐらいに登場する賑やかさです。友情出演や特別出演の大物の他にも、原作者の高木彬光や角川春樹そして鬼頭史郎(もはやこの人が何をやらかしたのか覚えている人はいないでしょうね)といった色物(?)までも顔だししてるんですからねえ。主人公演じる夏八木勲は、確かに大作映画の主演と言うのは珍しい言えますが、終始脂ぎった色艶の顔でとても東大法学部卒のインテリらしくないところが難点だったかもしれない。実在の事件をモチーフにしているそうですが、劇中で描かれる手形パクリの手口はなんか乱暴であまり知的な感じがしないってのもどうなのかな。実際夏八木勲は善意の第三者という盲点を突いて稼ぐわけだけど、起訴されないとは言っても警察には完全にマークされているわけで、どこかで綻びが出て逮捕されるというのは必然でしょ。闇の権力者の尽力で保釈されて結局は海外に逃亡するという結末には、ちょっと肩透かしされた気分です。けっきょく昭和のアナログ時代のお話しで、生身の姿を相手に晒さないといけなかったのが宿命で、匿名が当たり前の現代のSNS詐欺の方がはるかに知的犯罪としての要件を満たしているんじゃないかな。 監督の村川透は本作がフィルモグラフィ中で最大の大作、でも撮り方は東映セントラルフィルム時代と同じなんでなんか安っぽさが目に付いちゃうんだよな。千葉真一なんかもうちょっと違う活かし方があったんじゃないかな、出番は少ないしあれじゃ『仁義なき戦い 広島死闘篇』の大友勝利と大して変わらん(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-08-03 23:58:00)
7.  ワンダラーズ 《ネタバレ》 
ジョージ・ルーカスが『アメグラ』で1962年のカリフォルニアの高校生たちの青春を描いたのに対して、フィリップ・カウフマンは翌年63年のNY・ブロンクスの高校生不良グループをテーマにしている。劇中でも印象的に挿入されているけど、63年はケネディ大統領が暗殺された米国社会の大転換が始まった年でもあり、それは能天気なストーリーテリングながらもその前触れみたいなものが織り込まれた脚本でもあります。やはり劇中で、リッチーが明らかにボブ・ディランを模したシンガーが“The Times They Are a Changin'”を歌っているところで足を止めて聞きほれるところなんかも印象に残ります。フォーシーズンズはじめオールディーズばかり流れるこの作品の中では、唯一異質な楽曲なので強いメッセージ性を感じてしまいました。 観るまでは『ウォーリアーズ』の様な硬派な展開なのかと思っていたら、実際にはどちらかと言うと『グリース』に近い様なコミカル要素が強い映画でした。冒頭で颯爽と登場してジョーイとターキーをボルティーズから助けるペリーがてっきりこの映画のキーマンなのかと思ったのにその後は活躍せずに影が薄くなってゆき、ボンクラなイタリア系高校生の群像劇みたいな感じでストーリーが進みます。色男のリッチーが恋人を孕ませたら、実は娘の親父はどう見てもマフィアの関係者という展開には笑ってしまいます。強面親父が実は愛すべきキャラだったというのも定石通りでしたがね。不気味だったのは幽鬼のごとくに現れるダッキー・ボーイズの面々、こいつらがアメフトの試合中に大挙出現して大乱闘を繰り広げるシークエンスは、シュールと言うか訳が判らんというのが本音です。 冒頭でワンダラーズの面々が通うクラスの担任がシャープ先生、生徒の人種出自を申告させると、イタリア系18人で黒人が15人。人種融和のつもりなのか互いのグループに相手方の侮蔑的な呼び名を言わせて列挙すると、教室内で乱闘騒ぎになってしまう。いやー先生、思いっきり外してしまいましたね、そりゃケンカにならないわけないでしょ!それにこの先生“すべての人間は平等に造られている”と言ったのは誰かと問題を出し、「その答えはエイブラハム・リンカーンだ」と言いますが、先生そりゃ違いまっせ、トマス・ジェファーソンですよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-07-27 22:18:43)
8.  ヒッチコックの ファミリー・プロット 《ネタバレ》 
これがヒッチコック御大の遺作というか白鳥の歌かと思うと、なんか複雑な感情があることは否めないかな。出演者というか実質的にはどちらも主役である二組のカップルのキャスティングは地味と言うか華がない、往年のヒッチコックならもうちょっとビッグなスターが出ているもんだったから寂しいよな。ブルース・ダーンが演じたジョージ役にはアル・パチーノやエドワード・フォックス、ウィリアム・ディヴェインが演じたアダムソン役にはバート・レイノルズやロイ・シャイダー、カレン・ブラックのフランにはフェイ・ダナウェイやキャサリン・ロス、ブランチ役にはなんとゴールディ・ホーンが検討されていたとのこと。ハリウッド俳優ならヒッチコック御大からお声が掛かれば喜んで出演しそうなもんだけど、ハリウッド界隈のヒッチコックに対する冷遇ぶりが判っちゃいます、まあ単純に予算と言うかギャラの問題なのかもしれませんけど。それでもバーバラ・ハリスのインチキ霊能者ブランチは傑作でした、彼女のことは不覚にも全然知らなかったけど、受賞こそなかったけど本作も含めオスカーとゴールデン・グローブ賞に合わせて5回もノミネートされた名女優だったみたいです。あと音楽がジョン・ウィリアムズなのがヒッチコック作品にしては珍しい、なんかいつもと全然違う雰囲気がありました。 どちらも脛に傷持つ接点がない二組のカップルが、妙なきっかけで段々と交わるようになってゆく過程が、軽いタッチながらも適度なサスペンスを織り交ぜてちゃんとヒッチコック映画になっているところは高評価でしょう。ジョージ&ブランチのカップルの方はケチな詐欺師なので二人の掛け合いが面白いが、アダムソン&フランの方は殺人も含めてけっこうシビアな犯罪カップルなので対照的。でも一見成功して店を構える宝石商であるアダムソンが、なんで誘拐を生業としているのかが理解し難いところがあります、しかも身代金がキャッシュでなくてダイヤモンドですからね。これならレインバード夫人に自分が養子に出された甥であることを名乗り出て全財産を相続する権利を確保した方が割が良くないんじゃないですかね、まあそうしたら養父母が火事で焼死した件が蒸し返されてしまうかもしれないか… 恒例のヒッチコック御大のカメオ出演ですが今回はすりガラスに映った影でした、これが今生の別れだったかと思うと感慨深いものがあります。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-07-24 22:53:55)
9.  パニック・イン・スタジアム 《ネタバレ》 
70年代パニック映画ブームに乗って『パニック…』と邦題も便乗したおかげでどうも安物のTVムービーの様なイメージがあって敬遠していたが、私の中では本作はいわゆるパニック映画とは違う種類の映画だったと思います。でも実際にも40分も追加撮影をしたTVムービー版(これがまた酷い駄作になってしまったそうです)もあるみたいで、『ミッドウェイ』も同じようなバージョンがあり当時のユニヴァーサルの営業方針だったんじゃないかな。 パニック映画的な要素としては互いに全く交わらない数組の観客の薄いドラマを挟んでいるところですが、余りに薄すぎて群像劇の出来損ないみたいになっちゃった感じです。犯人が何者でどんな意図があったのかはその容姿を含めてナゾのままで通していたところは好感が持てる、ある意味で『ジャッカルの日』以上だったのかもしれません。主役はもちろんビッグスター・チャールトン・ヘストンですが、どう見てもジョン・カサヴェテスのSWAT隊長に喰われてしまってます。前半ははっきり言って退屈気味でしたが、ハーフタイム過ぎてからはけっこう盛り上がる展開だったと思います。フィールド上で繰り広げられるLAとボルチモアの両チームとも、NFLから拒否されたため架空チームで、試合の映像もカレッジ戦のものだったそうです。それでも大観客がパニックになって逃げ惑うシーンは大量のエキストラを使っていて、さすがメジャーが製作した映画でした。 前半のテンポの悪さはありましたが思っていたより見応えがあったと思います。ラストのジョン・カサヴェテスの虚無的な独白も良かったが、ラストカットで暮れなずむスタジアムでハラハラと涙を流すマーチン・バルサムも印象に残りました。監督はラリー・ピアースで、あの『ある戦慄』を撮った人です。どおりでボー・ブリッジスが出演していたわけですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-07-18 22:29:10)
10.  さらば冬のかもめ 《ネタバレ》 
原題は“The Last Detail”、まあ“最後の任務”とでも訳すのが妥当かな。それを『さらば冬のかもめ』という詩情を感じる邦題にした配給担当者のセンスは素晴らしい、どう考えても水野晴郎じゃないよね(笑)。70年代の名邦題ベスト3を選ぶとしたら、私は迷わず選出いたします。たしかに“冬”の物語だったけど“かもめ”はまったく登場しませんでしたけどね。 募金箱からわずか40ドルを盗んだだけで8年の懲役を喰らった若い水兵を軍刑務所に護送する任務を命じられた二人の下士官、題材はちょっと変わっているけど展開自体は典型的な70年代ニューシネマお得意のロードムービーです。ジャック・ニコルソンが演じる“バッド・アス”ことバタースキー、葉巻をふかすこの映画のポスターはニコルソンのアイコンの一つになっているぐらいで、きちんと口髭を生やして実にダンディーです。40手前の中年男のセーラー服姿がこれほどカッコよくなるとは意外です。この反抗的で自由奔放な男が、生真面目で「俺とお前は海軍に一生務めるんだぞ」が口癖の黒人同僚を翻弄するさまは観ていて可笑しい。護送される水兵はランディ・クエイド、ガタイはいいけどガキっぽいというかちょっとおつむが足りないんじゃないかという感じが良く出ていました。同じ東海岸に位置する基地と刑務所を往復するのに一週間近くかけてもイイなんて、雑というかいかにも70年代の弛んだ米国の軍紀が垣間見れます。お題目を唱えることを布教する謎の日蓮宗若者集団、これはやっぱり例の学会なんでしょうね。ランディ・クエイドは彼らと交流した後は「ナムミョウホウレンゲキョウ」がすっかり口癖みたいになっちゃうのも可笑しい。彼を折伏しようとする女信者、どっかで見たことあるなと思ったら、若き日のナンシー・アレンでした。 すっかり二人と意気投合して友情関係を育んだと思わせたメドウズ=ランディ・クエイドでしたが、公園で突然脱走しようとするところはいかにもニューシネマらしい展開。でもそこでジャック・ニコルソンが銃を撃たなかったところは、明らかにそのパターンからは外れていました。メドウズはけっきょく予定通り収監されてしまうのでハッピーエンドと言えるのかは微妙なところですけど、なんかホンワカな気分になる味のある作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-07-12 22:14:32)
11.  アデルの恋の物語 《ネタバレ》 
実話とは言え、重い、すごく重たい話しで、まるでエミール・ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』の中の一編を映画化したような感すらあります。19歳だったイザベル・アジャーニの初主演作であり、彼女の登場は全世界に衝撃を与えたと言っても過言ではないだろう。構想自体はトリュフォーがずっと温めていた企画で、TV出演していたアジャーニを観てすかさずアデル役に抜擢して一気に脚本を書きあげたとか。ほんとにこの人は女優を発掘する天才です。 トリュフォー作品にしては珍しい時代劇、いわば歴史劇的な作品であり、彼のロマン主義的な指向が伺えます。一人の人間がある人物を執拗に追っかけまわすというプロットは、例えは悪いかもしれないがリドリー・スコットの『デュエリスト/決闘者』に通じるものがあります。もちろん本作は男女の恋愛関係のお話しですけど、物語ではアデルが追い回すイケメン軍人とは彼女の一方的な片思いで、ビンソン中尉の眼からはアデルはとっくに恋愛対象じゃなくて、もはや恋愛関係とは言い難くなっている。そういう意味では『デュエリスト/決闘者』と同じように二人は修羅場という決闘を延々と続けていたという事も出来るでしょう。とにかくイザベル・アジャーニの鬼気迫る演技を見ているとまるでソフトな心理ホラーで、とてもじゃないけど『恋の物語』とは呼べません。アデルはやってることは滅茶苦茶でとても感情移入できる代物じゃなかったが、さすがにラスト近くになると可哀そうになってきます。これもイザベル・アジャーニの熱演の賜物でしょうね。 そう言えば前半で夜会にアデルが潜り込んでビンソンと人違いする将校、どう見てもトリュフォーのカメオ出演でしたね。これもヒッチコックへのオマージュなのかな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2024-07-09 23:33:15)
12.  スケアクロウ 《ネタバレ》 
やたらと重ね着をしたがるムショ帰りの粗暴な大男=ジーン・ハックマンと、妻子を捨てて5年も船員として放浪していた気はイイんだがちょっとおつむがたりなさそうな小男=アル・パチーノ、この若かりし頃の二大名優が最初で最後の共演をしたロードムービー。クレジットの人名をすべて小文字にするという、典型的なアメリカン・ニューシネマの一編です。この当時のアメリカ国内は見るも無残な状態にまで堕ちていましたから、ロケで見せられる風景もわざと荒んだ場所を選んでるんじゃないかと思わせるような感じです。はっきり言って中盤まではダラダラした展開なんだけど、ハックマン&パチーノの組み合わせが妙な化学反応を起こしているような感じで、やっぱ引き付けられるものがあります。刑務農場での体験を経てからは二人のキャラが入れ替わっちゃうのが面白い、とくにハックマンのストリップは強烈でした。デトロイトにパチーノの妻子に会いに行ってからラスト三十分には、観ていて胸が締め付けられる感がありました。亭主が生死不明の失踪ということにして他の男と再婚した妻の心境は判らんでもないが、息子は八ヶ月で流産したなんて大嘘をつくところはいくら何でも…って思いますよ。これでパチーノのメンタルは完全に崩壊してしまうんですから、なんちゅう残酷なことをしてくれたんだ、と思います。思うにアメリカン・ニューシネマに登場する女性キャラにはロクでもない女が多い様な気がします、まあ女性が主人公というニューシネマ自体がパッと思いつかないぐらいですからねえ。まだアメリカですらそういう時代だったのかな。
[DVD(字幕)] 7点(2024-06-28 22:52:30)
13.  ギャンブラー 《ネタバレ》 
『ビッグ・アメリカン』 (個人的にはこの作品はウエスタンと括ってしまうのは疑問) もあるけど、ロバート・アルトマンの最初で最後の西部劇映画でしょう。製作年代はアメリカン・ニューシネマの全盛期、西部劇自体が瀕死状態になりつつある頃ですが、いかにもアルトマンらしいタッチのウエスタンに仕上がっています。ラスト近くなるまで何か起こりそうで起こらない展開は現在ではよくあるストーリーテリングなんですけど、雪が降り積もる様な地を舞台にしていることなんかも当時は斬新に受け取られたんじゃないでしょうか。プロのギャンブラーで僻地に売春宿兼ホテルを建設して事業家になろうとするのがウォーレン・ベイティ、このキャラがまたちっともヒーローらしくなくて商売の駆け引きも下手、おまけに銃の腕も大したことがなくてラストの銃撃戦も隠れて敵を撃つタイプ、挙句には敵弾をくらって致命傷を負う始末。つまりいかにもニューシネマ・ウェスタンらしいヒーロー像なわけです。彼らが死闘を繰り広げているところにカットバックされる燃える教会を消火しようと奮闘する町民や娼婦たち、ここはいかにもアルトマンらしい感じがありましたね。 本作は公開時にはアカデミー賞ではジュリー・クリスティー以外は完全にスルーされましたが、『死ぬまでに観たい映画1001本』に選出されたりアメリカ国立フィルム登録簿に登録されたり後年に評価が高まってきているそうです。でも自分にはウケはイマイチだったというのが率直な感想で、やっぱアルトマン作品とは相性が悪い傾向があるみたいです。
[ビデオ(字幕)] 5点(2024-06-19 21:31:42)
14.  軍用列車 《ネタバレ》 
アリステア・マクリーンがこんな西部劇を書いていて、しかも映画脚色までしていたとは知らなんだ。 南北戦争後、西部の辺境の砦でパンデミックが起こったので救援のために医薬品と交代の兵士を運ぶ軍用列車が舞台。ウエスタンと言っても延々と雪が積もった大地を列車は進むわけで、あまり西部劇らしくないとも言える。正直なところ登場人物や設定にかなりのムリがある。ぶっちゃけネタバレすると、途中の駅から捕まった指名手配犯のチャールズ・ブロンソンが同乗するわけだが、実は連邦政府の秘密情報員で略奪されたライフルとダイナマイトを追跡してわざと捕まったという設定、FBIすらなかった19世紀にアメリカにCIAみたいな組織が存在したというのはお笑い種ですがね。列車には兵士たちはもちろん保安官やなぜか知事まで乗り込んでいるが、停車中の仕草を見てるとなんかみんな怪しそうである。実は知事や保安官たちはみなグルで、医薬品と偽っている武器は砦を占拠している原住民と無法者たちに横流しする計画で、オリエント急行よろしく無関係な同乗者である医師や牧師を次々に殺害してゆく。逃げ場のない列車内での密室殺人なのに、ブロンソンと将校以外は誰もショックを受けていない、そりゃあほとんどがグルで共犯なんだから当然ですよね(笑)。リチャード・クレンナやベン・ジョンソンなどの顔ぶれの中で、それまでの出演作ではワルがパブリックイメージであるエド・ローターが実は善玉だったというのはちょっと捻っていますね。密室殺人のミステリーも盛り上がらないし、後半はスーパーエージェント・ブロンソンの大活躍でいつの間にか終幕といった感じ。ブロンソンの愛妻ジル・アイアランドもお約束の様に顔見世していますけど、彼女のキャラってほとんど見せ場のない不必要な存在だったんじゃないかな。 違和感があったのは、この蒸気機関車が石炭じゃなくて薪を燃やして走ってるんです。なんでわざわざ薪にしたのか不思議でしたが、これはある伏線のために石炭が使えなかったというウラが途中で判ります。まあ色々と苦労してたわけですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2024-05-12 22:33:27)
15.  ペトラ・フォン・カントの苦い涙 《ネタバレ》 
終始ある家の寝室で進行する、登場人物は全員が女性で六人だけという、いかにも舞台劇の映画化という雰囲気のストーリーです。 ペトラは三十代のファッションデザイナーでそこそこファッション界では名が知れている存在みたい。離婚経験があり、娘は遠方の寄宿学校に入れていて疎遠になっている。マレーネという住み込みのお針子というか助手と同居している。どうも二人は同性愛関係にあるみたいだが、家事から仕事上の事務までなんもかも彼女にやらせていて、しかも常に命令口調で接している。そこに旧知のシドニーが訪ねてきて、カーリンという若い女性を紹介した。ペトラはカーリンを自分のコレクションのモデルにデビューさせるという口実で同居し始めるが、次第に彼女にレズの関係を求めるようになり、ペトラ、カーリン、マレーネの奇妙な同居生活になってゆきます。舞台演出家としてキャリアをスタートしたファスビンダーが、自作の舞台劇を映像化した作品です。全編がペトラの寝室だけで展開して、まるっきり舞台演劇を見ている感覚ですな。カーリンを演じるハンナ・シグラにはコケティッシュな魅力があり、ペトラが性愛の対象にしてのめり込んでゆくのは納得です。このカーリンがまた怠惰なうえにツンデレで、いろいろと際どい話しをしてペトラを苦しめます。そんなカーリンですけど、舞台展開の全くない密室劇なのに出番は意外と少なくて尺の三分の一程度しかない。ペトラ役のマルギット・カルステンセンはほぼ出ずっぱりでしたけどね。ラストを観て気が付くのは、この物語の陰のと言うか真の主人公は、ペトラとカーリンの痴態を散々見せつけられていたマレーネだったという事です。この若いんだか歳行ってのか判りづらい女性は、劇中でペトラにこき使われながらも一言もセリフを発しないのです。そりゃあ最後にはああいう行動をとりたくもなりますよね。 もうねちっこいとしか言いようのない女同士の愛憎劇、観ててほんと疲れました。観念的なセリフも多くて、正直物語に引き付けられることはなかったですが、この女性心理の描き方は自身もバイセクシャルだったファスビンダーならではといった感じですかね。因みに最近フランソワ・オゾンが、設定をゲイの物語にして『苦い涙』としてリメイクしているそうです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-04-30 23:30:17)
16.  マシンガン・パニック 《ネタバレ》 
スウェーデンの警察小説『マルティン・ベック』シリーズの一編を映画化、舞台はストックホルムからサンフランシスコに変更されて米国の物語に変更されている。70年代のサンフランシスコが舞台だが、当時の荒れた米国の世相が反映したストーリーで、事件のモチーフ自体はスウェーデンより米国に違和感なく置き換えることが出来てます。バス乱射事件で相棒を殺された刑事ウオルター・マッソーと新たにコンビを組むブルース・ダーンが捜査に取り組むのだが、彼ら二人を含む警察の空振り捜査を延々と見せられ事件の真相にさっぱり近づけないのが、もうイライラすることこの上なしです。現実の捜査も快刀乱麻に解決するはずがないのでまあリアルと言えなくもないが、中盤で起こる本筋とは無関係な銃乱射事件など、ムダとしか言いようのないシークエンスがある雑な脚本です。マッソーはパブリックイメージとは違う寡黙でハードボイルドなキャラですが、名優なだけにさほど違和感はなかったです。対するブルース・ダーンがハードボイルドを超したがさつな刑事で、二人が絡むシークエンスの三分の二ぐらいは口論していた感があり、これだけ噛み合わない刑事コンビはちょっと珍しいぐらいです。この映画の最大の難点は、観終わってみても犯人がなんで乗客皆殺しすることになったのかがさっぱり理解できないことで、そもそも犯人があの二人のうちどっちを(両方か?)狙っていたのかすら不明瞭な終わり方なのもイラつかせてくれます。やっぱ同時期のサンフランシスコ市警に在籍していたはずのダーティハリー=ハリー・キャラハンが出てこないと、事件はもつれるばかりです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2024-03-17 22:24:53)
17.  地獄(1979) 《ネタバレ》 
70年代東映ラインナップの主柱だった異常性愛路線が行き詰まって、社長の岡田茂はロマンポルノの巨匠・神代辰巳を招いてエログロ路線を踏襲した新分野開拓を狙った企画。もっとも地獄を題材にする10年も前に石井輝男がメガホンを取る予定だった企画の復活だったみたいです。“地獄もの”といえば中川信夫の怪作『地獄』が有名ですが、主要登場人物が全員死亡という展開などはかなり同作を意識して書かれた脚本みたいです。肝心の神代辰巳は本来ドロドロの人間関係や情念を描くのが芸風で、ホラー要素がある登場キャラが多い大作を撮るのに適した人材ではなかったということでしょう。じっさい「最後まで脚本が良く判らなかった」と監督本人が告白する体たらく、興行も大惨敗で岡田社長は「俺の目が黒いうちは神代には絶対東映では撮らせない」と激怒したそうです。 ストーリーは近親相姦と因果応報を縦軸にしたドロドロ愛欲劇ですが、随所にムリというかおかしなところが目立つ脚本です。ほぼ現代の設定なんですが、いくら山間部の旧家が舞台だとしても江戸時代じゃあるまいし殺人やレイプがあっても隠し通して警察も動かないなんてあり得ない。捨て子の栗田ひろみと取り換えられて養護施設に送られた原田美枝子が20年たったらレーシングドライバーになっているなんて、現実味がなさすぎでしょ。しかも、レース中に追い込み過ぎて事故らせて引退に追い込んだ石橋蓮司が、旧家に帰ってみるとその家の長男で異母兄だった!もう笑うしかないです。肝心の地獄のシークエンスも、中川版をオマージュしたような見世物小屋的なチープさで観るとこもあまりないです。どうせみんな死んでしまったから岸田今日子を始め登場キャラたちが責め苦に遭うところを見せてくれたら少しはカタルシスがあったろうに、それとも何人かは極楽の方に行けたのかな(笑)。でもなんも悪事を働いてなかった栗田ひろみが地獄にいるのはなんか可哀そう。ラストで原田美枝子は先に堕ちていた母親と出会えるわけですが、その母親(原田の二役)がひょうきん族のアミダババアにしか見えないのはなんか情けない。まあこの辺りというかラストの展開は、映画としてはほとんど破綻していましたがね。 没にされた石井輝男は99年に念願の『地獄』を苦労の末に映画化しましたが、この作品は色んな意味でぶっ飛んでいてBS・CSでも放送は難しそう、でもぜひ観てみたい。若き日の原田美枝子のあまりに美しい容姿と迫力ある裸体にプラス一点を献上させていただきます。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-12-23 22:45:11)
18.  シャンプー 《ネタバレ》 
女にモテモテの美容師ジョージのキャラは、演じるウォーレン・ベイティ自身のセルフパロディみたいな存在、なんせその頃関係があったジュリー・クリスティーとゴールディ・ホーンを出演させてるんだから、これぞプロデューサーの特権ですね。この映画はクリスティーとゴールディそしてリー・グラントとの三角関係のもつれとその顛末というところですかね。ベイテイはけっきょくボロボロになった挙句にクリスティーが去って行くのを寂しく見届ける結末ですが、まさにLA版『アルフィー』というストーリーなわけです。マイケル・ケインの『アルフィー』と異なり洒落っ気がないしょうもないお話しと言ってしまえば身も蓋も無くなってしまいますけど、そうとしか言いようがありません。ニクソンが大統領に初当選した1968年11月の三日間という設定ですけど、ベイティを取り巻く三人の女とベイティの関係が、美容院の客という以外は説明不足過ぎてほんと判りにくい。おまけにグラントの娘エディ・フィッシャー(これが映画デビュー)にまで手を付けたことが暗示され、ほんとこの映画のキャラたちはどいつもこいつも感情移入できないろくでなしばかりで嫌になっちゃいます。でもいちばんイライラさせられたのはベイティのヘアスタイルで、いくらカネになるからと言っても女の髪ばかりいじってないで自分の髪形を何とかしろって!まさに“紺屋の白袴”です(笑)。そして60年代のお話しなのに他の登場人物たちも70年代の人みたいなのも、違和感アリアリでした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-11-24 22:51:46)
19.  コーマ 《ネタバレ》 
『ジュラシック・パーク』の原作者としても有名なマイケル・クライトンは映画監督・脚本家としても活動しましたが彼は生涯で四作しか監督していません。本作はその一本ですけど、個人的には本作がいちばん面白いと思っています。クライトンと同じく医師資格を持つロビン・クックのベストセラーが原作、学生時代に洋書屋に行ったらこのペーパーバックが山の様に積まれていたのを思い出します。医療がテーマですので、まさにクライトンの本領発揮という感じの病院内の描写がリアル。とくにジェヌヴィエーヴ・ビジョルドが解剖死体が詰め込まれた部屋に逃げ込むシークエンスは、さすがにゾワッときました。恋人役のマイケル・ダグラスは、病院内の政治的な動きや自身の立身にしか興味がない様な、いつもの脂ぎったキャラです。こいつが実は病院の闇勢力に取り込まれていて、ビジョルドを裏切っているんじゃないかと疑わせる演出は上手いですね。サスペンス映画としても、ハラハラドキドキ濃度は一級品じゃないでしょうか。でもラストで突然彼がヒーローになる展開だけは、なんか唐突過ぎて解せませんでした。因みに、クライトンが60年代に弟ダグラスと共著で小説を上梓していますが、その時に使ったペンネームは“マイケル・ダグラス”だったそうです、奇遇ですねえ。謎の研究所の目的はなんと臓器の競り売り、謎めいた看護婦の役目が競りのディーラーだったという展開は、笑えて来るほどシュールでした。疑問点としては、いくら大病院と言っても年間で10人以上も脳死昏睡者が発生したら世間でも大問題、そりゃ遺族が黙っちゃいないと思うんですけどね、医療過誤訴訟を山ほど抱えて病院が潰れちゃうのは間違いないでしょう。70年代はアメリカでもまだ医療過誤訴訟は流行ってなかったのかな?
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-10-12 21:18:47)
20.  チャイナ・シンドローム 《ネタバレ》 
“大企業は悪、マスコミは善”という幻想が蔓延っていた(今じゃマスコミも大悪であるのはバレてしまってますけど)いかにも70年代のアメリカらしい作風だけど、本作はその衝撃性では歴代企業告発もの映画ではトップに位置するんじゃないでしょうか。なんせ劇場公開12日後にあのスリーマイル島原発事故が起こり、しかもその原因が劇中と同様の人為的なミスだったわけだから、まさに映画史上屈指の予言映画だと思います。劇中でもスリーマイル島事故でも結局破滅的な結果にはならなかったけど、わずか7年後にソ連でも人為的エラーでチェルノブイリ原発事故が起こり壊滅的な被害が発生してしまったわけで、単純に“大企業が悪”とは言えなくなったわけです。 ジャック・レモンはコメディが持ち味の俳優というイメージが強いけど、実はシリアスな役柄においてこそ本領を発揮するタイプなんだと思います。と改めて力説したくなるほど、本作での彼の演技には圧倒されます。とくにラストにかけての三十分間の緊迫感は、彼の演技無くしては成立しなかったでしょう。ジェーン・フォンダはいかにも彼女らしい適役でしたが、やはり特筆すべきはマイケル・ダグラスの功績だと思います。大俳優の息子とはいえ弱冠30代の彼がプロデュースしなければこの映画は誕生しなかったわけでなんですから。彼は俳優としても非凡ですけど、プロデューサーとしても引けを取らない実績を残してきた人なんですね。 結局チャイナシンドロームが起こらなかった結末は今風では物足りない感はあるでしょうが、かえって現実世界に向かって警告を与えるような社会性を持たせたと感じました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-10-09 22:33:35)
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