1. 黒部の太陽
スケールの大きい大作で見ごたえあるが、岩岡親子の確執に重点を置きすぎて散漫な印象がある。豪華キャストが熱演する中、辰巳柳太郎は悪目立ちしている。寺尾聰の芝居も素人っぽいのが残念。 「富士山頂」は好印象を残したが本作は少々物足りない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-01-19 15:40:55) |
2. アパートの鍵貸します
会社の階層構造や男女関係をコミカルに描いてタテ社会を痛烈に風刺し、主人公のロマンスも織り込んだ悲喜劇。 哀愁漂う独身男を演じるJ・レモンの細やかな表現が作品に深みを与えている。彼の名演技と、笑いを誘いながらペーソス溢れる展開で作品に魂を吹き込むB・ワイルダーの職人芸が見事に融合した。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-12-15 16:50:55) |
3. 太陽の下の18才
C・スパークの魅力に尽きる。お話は他愛ないものだが悪くない。ツイストを踊る彼女のシーンが特筆もの。名脚本家の娘である彼女が当時いかに輝いていたか、その一端を垣間見る思いだった。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-09-15 20:36:11) |
4. 喜劇 団体列車
《ネタバレ》 列車シリーズの中で一番面白い。「無法松の一生」を想起させるプロットは片思いあり涙あり怒りあり笑いありで、人情喜劇の王道とも言える。喜怒哀楽をはっきり表す渥美清と、対照的に芝居っ気を感じさせない笠智衆の組み合わせは後の寅さんシリーズに通じる。 小百合に振られた彦一が邦子とめでたく結婚。どちらかと言えば邦子の方でよかった。モロ渥美の赤ちゃんはご愛敬。 助役試験に合格しなくても、人命救助や事故防止で感謝される方がどれだけ価値あることか認識させてくれる主人公に共感した。 南廣の出演場面を今か今かと待っていたら最後に登場。自分にとってはかつて聞いたことのある名言(?)「いい役者は最後に出てくる」だったな。Wけんじの出演もうれしいね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-08-31 19:49:51) |
5. 永遠の人
《ネタバレ》 帰還兵の帰郷で始まり、物語に戦争の影が終始つきまとう。全編にわたって人間の業と哀しみに彩られ、感情を掻き立てるようなフラメンコギターの音色が印象深い。音楽に合わせて奏でられる言葉が情景や心情を表して心に突き刺さる。 愛しながらも結ばれなかったふたりだが、孫同士結ばれることで願いが成就するという、最後に訪れる希望の光が救いになる。芯の強い女性像は木下恵介アワー「女と刀」に通じるものがあった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-03-31 17:20:36) |
6. 小早川家の秋
《ネタバレ》 造り酒屋当主の人生と重ねて“小早川家の晩秋”を描いた人間模様。“家”に焦点を当てているせいか主要キャストの人物像が散漫で、強いて言えば家父長的な万兵衛の生きざまが中心と言えるだろう。 店を繁盛させた老舗の主人が陰では愛人にせっせと通い続ける。「英雄色を好む」的で、典型的な人物像が古い。もっと娘たちに焦点を当ててもよかった。また、東宝作品にもかかわらず森繁と宝田にあまり存在感がないのは残念。 死の象徴たるカラスがその後の小早川家を暗示しており、作品全体に人生の儚さ・死生観が感じられた。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2024-03-17 20:40:12) |
7. 宇宙大怪獣ギララ
松竹の珍品怪獣映画。わが“風の神”和崎俊也、軽妙洒脱な柳沢真一、昼メロで名を馳せた園井啓介、“レ・ガールズ”原田糸子のキャストに加え、歌もボニー・ジャックスや倍賞千恵子を動員する豪華さ、というよりバラバラ感いっぱい。おまけに、いずみたくの音楽はテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」予告を想起させる。 ギララの登場シーンは、ゴジラやガメラの初登場場面に比べ緊迫感が不足で見劣りする。造形は割と好きな方だが動きに重量感がないのは惜しい。女性隊員2人の活躍は時代の先取りを感じさせて良かったが・・・ [インターネット(邦画)] 4点(2024-01-14 18:05:15) |
8. ミクロの決死圏
人体をめぐるセンスオブワンダー。広大な宇宙の果てと同様、ミクロの先の先は宇宙そのものの世界観がいいね。その視覚化に挑戦し、アドベンチャーを通じて医療とスパイとSFの融合が程よい。タイムリミットのハラハラ感も秀逸。 医療チームの縮小は、今の視点でみれば内視鏡(潜航艇ならぬカプセル型が実現)やカテーテルなど、高度医療のメタファーと言える。 現代の映像技術と比較して古さを指摘してもアンフェアであり、むしろわかりやすさに重点をおいた映像化は高く評価できる。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-12-10 22:23:13)(良:1票) |
9. 暴力脱獄
何度も何度も脱出しようと試みる主人公を演じるP・ニューマンは「大脱走」のマックイーンに刺激を受けたか?「ショーシャンクの空に」の監督はこの映画の影響を受けたのでは?という思いが頭をかすめる。 ベトナム戦争や公民権運動などを背景としたアメリカン・ニューシネマ前夜ともいえる時代の物語。反逆をよしとする風潮の中、権力に屈せずひたすら自由を求める主人公の動機付けが弱い。 主人公の名前がルーク(ルカ)だったり十字架にかけられたキリスト風のポーズをとったり、刑務所を舞台に反体制と結びつけて神を語られてもなんだかなあ、キリスト教を語られてもなんだかなあ、という感じ。暗喩としては安易だな。 この種の映画において、罪人の脱獄と戦争捕虜の脱走が同一視されている文章を時折見かけるが、この二つは似て非なるものだと思うよ。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-11-12 11:08:23) |
10. 燃える平原児
歌って踊って恋をするプレスリー映画は理屈抜きで楽しめる。本人は「くだらない映画」と思っていたとのことだが、明るく屈託のない役柄はエルヴィスにお似合いだと思う。対照的に、本作ではJ・ディーンを意識したかのような陰影のあるシリアスな演技を見せるが、これはこれで悪くない。白人と先住民の子という葛藤を抱え、反抗心を見せる複雑な青年像を手堅く演じた。 本作のように先住民を悪役視するだけでない映画がニューシネマ以前にいくつか製作されており、アメリカ映画の奥深さを感じた。最後は尻切れトンボが惜しい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-10-29 13:21:15) |
11. パリで一緒に
《ネタバレ》 A・ヘップバーンとW・ホールデン、1954年のオスカー主演賞コンビのコメディとして肩の力を抜いて観賞。原作にJ・デュヴィヴィエが名を連ね、T・カーティスやM・デートリッヒのカメオ出演などスタッフ・キャストが豪華。パロディ精神と遊び心いっぱいで、脚本家の仕事ぶりを見せながらの展開が楽しい。リックの役名からしてもうミエミエだね。おまけに、D・マッカーサーの名セリフ「老兵は死なず・・・」をもじって「老兵のように消える」とは恐れ入った。「完璧な人間はいない」のセリフもお馴染み。少し老けたホールデンが、オードリー相手に脚本の場面を力説してブローニュの森へディゾルブ・・・気楽に観られるものの、どこでパロディが現れるか気が抜けない。 理論派気取りの俳優役カーティスが笑わせる。感情移入や自己陶酔、品のなさとメチャな言葉遣いを批判という、ヌーベルバーグやニューヨーク派に対するハリウッドの対抗意識をちょっぴり味付け。N・リドルの洒落た音楽も結構でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-20 20:45:14) |
12. 片目のジャック
M・ブランドの監督・主演作。初見は吹き替えだったが字幕で改めて観るとブランドの演技の特徴が垣間見えた。内容は悪くなかったが、ぼそぼそ喋るセリフ回しに違和感を覚えた。吹き替えでは全然知ることができなかったこと。リアル志向のメソッド演技で注目を浴びた彼の演技かもしれないが観客は置いてけぼり。 日本映画含め、原語で聴いているとセリフの聴き取れないことがなんと多いことよ。そんな時は自国の映画でも字幕をつけたらどうかと思うことさえある。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-07-23 16:33:32) |
13. 続・荒野の七人
第1作の構成をなぞって手堅くまとめたものの、キャストに魅力が乏しい。Y・ブリンナーとR・フラー以外あまり華がなく、C・エイキンスやW・オーツはモロ悪役向き。 複雑な心情を表す家父長ロルカの性格設定が興味深い。この人物像にもっと焦点を当てれば面白いが、「七人」シリーズとは別な映画になっちゃうしなあ…。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-08 15:49:18) |
14. パリは燃えているか
第二次大戦時の連合国対ドイツ軍の攻防をオールスター・キャストで描く。白黒作品として実写映像を活かし、演出映像と違和感なく融合させた。 レジスタンス運動を軸に、自由フランス軍、アメリカ軍、ドイツ軍それぞれのパリ解放をめぐる思惑や駆け引きが興味深い。多くの歴史的建造物を有し文化香る花の都に対するフランス人の思いだけでなく、敵国の将軍も本音はパリを破壊したくないのでは?と思わせる。A・パーキンス演じる兵士がアメリカ人のパリに対する思い入れを体現している。 パリ解放をよそに「パリは燃えているか」と打電を繰り返すシーンが印象深い。 余談ながら同名の音楽を用いた日本の番組、”バタフライエフェクト”というタイトルはいただけない。人間の活動をこじつければ何でもつながるんじゃないの? [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-18 14:59:14) |
15. 女系家族
《ネタバレ》 大阪・船場の老舗商店を舞台に、娘婿の死をきっかけにした“遺産争続”の悲喜劇を描く。ドロドロした人間模様が展開する愛憎劇ながら、そこはかとないユーモアが感じられる。加えて、妊娠を確かめるえげつなさも盛り込み人間の本性に食い込む。 終盤、勝ち誇ったような文乃が、遺言状の日付が決め手になることを指摘され動揺する表情がいい。一見文乃が大逆転で爽快にも思えるが、最後に愛人が得するのもなんだかなあ……という感じ。 3姉妹だけでなく大番頭や叔母含め欲深なキツネとタヌキの化かし合いの末、吹っ切れてサバサバした表情を見せる雛子に唯一救いがあった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-10-30 14:30:21) |
16. アラベスク
傑作「シャレード」の好評を受けて製作されたロマンチックサスペンス。マジメ人間G・ペックがロマンスありウィットありアクションもありで、微妙にC・グラントしてるね。前作ほどではないが、シャワーシーンや軽妙なセリフの応酬等、遊び心がいっぱい。様々な撮影による映像表現も駆使して飽きさせない。 主演二人のしゃれた会話はS・ドーネン監督の真骨頂。無理筋の展開も多いが、コメディ・タッチのハラハラドキドキが楽しめる。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-24 15:12:27) |
17. 雨のニューオリンズ
《ネタバレ》 保守的な土地に生まれ、母親との愛憎に苛立ちを募らせながら翔び立とうとした主人公の悲劇。子の親離れ・親の子離れが重いテーマ。そして田舎に留まる妹の姉への複雑な思い。自らは翔ばず故郷に残る選択をした妹の思いが切ない。 現代のラストベルトにも通じる、忘れられた町の人間模様。南部特有の(?)高温多湿が肌に伝わってくる。序盤から中盤までは哀感漂う文学的香りがあってよかったが、アルヴァとオーウェンが再会してからは通俗的な展開。失速気味だったが最後は「アラバマ物語」のM・バダムとテレビ版「名犬ラッシー」のJ・プロボスト、ふたりの会話に癒され余韻が残る。キャストがよかったね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-10 16:15:50) |
18. 俺たちに明日はない
凶悪犯罪を繰り返し、破滅に向かう男女の逃避行を描いたバイオレンス劇。アンチヒーローや反体制的、暴力的な表現等、この分野の先駆けとして後の映画に多大な影響を与えた。 出演者も各々アクの強いキャラを演じており、特にF・ダナウエイの芝居は「いかにも」な感じの女性像を確立したと思う。ボニー&クライドの性格を基に人物設定した映画のなんと多いことよ。 後にA・ペン監督は本作に対する自省を語っているが、いつか誰かがこのような表現をやるだろうと思えば、先駆者として評価したい。 ボニーとクライドが蜂の巣にされるシーンは、それまでが二人のやりたい放題だっただけに因果応報で、観ている側は爽快感さえ覚える。悪党に対して寛大な雰囲気があるのは1930年代の大恐慌を背景にしているためだろう。凶悪犯を描きながらどこか滑稽味がある(音楽含め)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-12 16:29:51)(良:1票) |
19. 暗くなるまで待って
《ネタバレ》 麻薬犯罪に巻き込まれた盲目の人妻をオードリーが熱演。冷蔵庫の開閉が最後まで伏線となり、光と闇を効果的に駆使した秀作。 スージーに対するサムの一見冷たそうな言動だが、よくよく考えれば障害者の自立を促す愛の鞭とも思える脚本が見事。 信じたマイクに絶望し、電話線が切られて絶望する中、屈折した性格の少女グロリアがスージーの目となり手足となって行動する。弱者と言える二人が協力して事件解決も意義深い。 悪党にも濃淡ありでロートの凶悪ぶりが際立つ。サスペンス映画はより強い刺激を求めがちであるが、本作はロマンチックな題名と裏腹の怖さが程よい。暗くなれば相手と対等以上に対峙できる強みは原題通りで、邦題「………待って」がいいセンス。 人形を力ずくで奪えば済むところだが、舞台劇を基にした“劇場型犯罪”は現代的ですらある。 [映画館(字幕)] 8点(2021-11-07 15:15:58) |
20. ワイルドバンチ
アクションシーンは臨場感たっぷりで迫力は充分。キャストも興味津々だがW・オーツには興味なし。西部劇と言うより新タイプのバイオレンスアクション映画という印象で、「俺たちに明日はない」の二番煎じの感は否めない。 集団劇で芯になる人間がいないこともあり人物描写が単調。全体的に、男の美学・友情や滅びの美学というほどのものは感じない。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2021-07-18 13:44:24) |