1. 七人の侍
《ネタバレ》 邦画史上最高レベルの傑作と言っても過言ではないだろう。 黒澤明監督作品の中でも1、2を争う作品であり娯楽映画の頂点で間違いない。 3時間半というかなり長い作品ながらも決して退屈せず、非の打ち所がない作品。 とりあえず見ればわかるが何もかもが素晴らしい。 七人全員が濃いキャラで全員に魅力があり、特に三船敏郎演じる菊千代の立ち位置というか役割があったからこそこの映画をここまで昇華させたように思える。 侍と百姓が団結したかと思えた矢先の百姓の落ち武者狩りの発覚。 六人の侍の視点では落ち武者の境遇を知っているからこそ許せないありえない行為だと見えるであろうが百姓からすればそれは違い、仕方のないことでむしろこの様な事態を引き起こしているのはそっちじゃないかと元百姓である菊千代が代弁する。 ただ野武士を返り討ちにするだけではなくこのようなシーンがあったからこそ感動を生み引きこまれていくんだと思う。 そしてアクションシーンも素晴らしい。 土砂降りの中での野武士との攻防。素晴らしいとしか言えない。 撃退した後官兵衛が呟く言葉でこの作品は完璧なものになった。 とにかく邦画だけではなく洋画合わせてみても最高レベルの出来である。 [DVD(邦画)] 10点(2014-08-07 21:39:33) |
2. 酔いどれ天使
《ネタバレ》 1948年の黒澤明監督映画。 結核を患うヤクザ松永をなんとか治療しようとする医師真田の物語。 この映画のテーマは2つある。 1つは反社会的勢力的な意味である。 松永はヤクザの仁義を信じて疑わないある意味で純粋な人間であるのだが、ヤクザの仁義などというものは虚像であり、惨めな末路を辿る。 もう1つは理性である。 理性と欲望の間で葛藤する松永であるが、岡田の登場を機に欲望に溺れていく。 対照的に最後まで理性を失わず真面目に結核と向き合い松永とは正反対の結末を迎える。 黒澤明は、バラが沼へ沈んでゆくシーン、クライマックスで飲み屋の女が女学生と真田に見せる目など、洗練された演出でこのテーマを完璧に魅せる。 そして俳優陣の素晴らしさがそれを際立てる。 反骨心溢れる演技を見せた主人公真田役の志村喬も勿論素晴らしいが、熱いギラギラとした演技を見せとてつもない存在感を表した三船敏郎が素晴らしい。 黒澤明監督映画の中でも1、2を争う傑作である。 [DVD(邦画)] 10点(2014-08-07 21:33:40) |
3. 生きる
《ネタバレ》 黒澤明が生きるをテーマに描いた作品。 お役所で事なかれ主義を30年間続けてきた志村喬演じる渡辺が死を間近に感じることで生きる意味を見出す。 ただ怠惰な生活を送っているだけでは命はあっても生きるとはいえない。 生きるとはどういうことか、それを知り実行し、完遂した渡辺がブランコを漕ぎながらゴンドラの唄を歌うシーンは涙を誘う。 これだけ重く難しいテーマを完璧に使いきった黒澤明は流石である。 そして志村喬の演技があるからこその作品であり、三船をあえて使わなかった理由というのもよく分かる。 傑作である。 [DVD(邦画)] 9点(2014-08-07 21:38:08) |
4. 台風クラブ
《ネタバレ》 相米慎二監督作品。 思春期の中学生を台風を通じて描いた作品。 子供の頃は誰もが感じたであろう台風が近づいてくる際の高揚感に着眼し、それを契機として中学生の日頃感じている不安や性的欲求、苦悩を見事に表現している。 冒頭から通じて身近に水があり、やけに湿気のある空気感で、それがまた彼らの不安定さを演出しており良い。 健のドアを何度も蹴るシーンや三上の机を積み上げるシーンなどかなり長い長回しが使われているがこれがまた彼らの狂気を引き立てている。 これこそ青春映画である。 [DVD(邦画)] 8点(2014-08-07 21:43:13) |
5. マルサの女
伊丹十三の~の女シリーズの第一弾。 脱税をする人達と国税局の査察官(マルサ)の攻防を描いた作品。 マルサをテーマとした目の付け所が素晴らしいし、このテーマでここまでおもしろい作品に仕上げられるの伊丹十三ならではである。 軽快な音楽、テンポの良さ、少しずつ散りばめられているコミカルなシーンが少し難しいテーマながらも全く退屈にさせず、俳優陣の演技も皆素晴らしく見とれる。 特にマルサの女(宮本信子)と権藤(山崎努)のキャラはどちらも格好良く魅力的。 終盤のマルサの一斉操作は目が離せない。 良い映画である。 [DVD(邦画)] 7点(2014-08-07 21:44:49) |
6. 大人の見る絵本 生れてはみたけれど
《ネタバレ》 1932年公開の小津のサイレント映画。 小津のサイレント映画は初めて鑑賞したが、小津らしい作品であった。 子供ならではの悩みや思いがメインで小津らしく表現されている。 しかしながら「大人の見る絵本」とあるように大人をターゲットに(小津作品は大体そうだろうけど)描いている。 前半は子供同士のいざこざで笑いも交えたほのぼのとした日常。 そして後半、子供が父親自慢をはじめ、主人公の長男次男もうちの父親が一番偉いんだと主張するのだけど、父親が他の子の親に媚を売っていたり変顔で機嫌取りをしたりするのを目撃し、父親に失望して言い争う。 ここからクライマックスにかけてのシーンが私はメインだと思う。 子供にとっての父親とは一番の存在であり、誰よりも偉いと思っている。 だけどそうじゃなかった事を知った時のショックというのは大きいものだろう。 そしてそんな姿を見せてしまった父親も後悔し、自分だってそうはしたくないと思うがどうしようもないんだと酒を飲み、この子たちは自分とちがって誰よりも偉くなって欲しいとそっと呟く。 うーん。流石だ。実に小津らしいテーマ。 一つ疑問なのが子どもたちのやっていたよくわからない遊び。 あれ他の作品でも見たような気がするのだけれど一体何なんだろう。 とにかく小津らしい良い作品であった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-08-07 21:36:39) |
7. マルサの女2
《ネタバレ》 マルサの女の続編。 今作は前作よりも社会的要素が含まれており、もっと大きな悪が描かれている。 そして今回の悪役は地上げ屋で宗教団体を利用し脱税を行う人達(ヤクザ)でタブーに踏み込んでおり、伊丹十三らしい。 2でもテンポの良さ音楽の良さは健在。物語のわかりやすさという部分では多少わかりにくくなったかもしれないがより複雑な組織構成となっているので仕方がないか。 鬼沢の開き直り発した発言には説得力が有り、こういう人達にしかできない社会の部分が有るという現実を突きつけられ考えさせられる。 そしてチビ政、そして鬼沢までもがトカゲの尻尾切りにあい、悪はとてつもなく大きく圧力に屈しざるを得なかったマルサの宮本信子の悔しげな顔が印象に残る。 ラストはリアリティがありとても良かったと思えるが、スナイパーは少しやり過ぎではないかと感じてしまった。 それに悪役の魅力も三國連太郎よりも山崎努のほうが勝ってたように思える。 しかし前作に続き良作であることには間違いない。 [DVD(邦画)] 6点(2014-08-07 21:46:16) |
8. 狂い咲きサンダーロード
《ネタバレ》 石井聰亙監督作品。 一言で言えば一人の少年が暴走族連合内での平和的決定に背きツッパリを突き通すというストーリーなのだが、リアリティは完全無視でとにかく突っ走っている。(特にスーパー右翼が登場してから) その分勢いがあり最後まで見飽きない。 泉谷しげるの音楽も調和しており仁の突き抜け具合にはある意味かっこいいという感情も生まれた。 なんというか太陽を盗んだ男と似た感じ。 学生映画でこれを作ったというのは驚きだ。 [DVD(邦画)] 6点(2014-08-07 21:41:03) |