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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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221.  セブンティーン・アゲイン 《ネタバレ》 
 バスケだけでなく、ダンスを披露するシーンまであるのは「ハイスクール・ミュージカル」ファンへのサービスなのでしょうか。  当時ザック・エフロンは既に二十歳を越えていた訳だけど、十七歳の主人公を爽やかに演じ切っており(やはり、この人は学園映画だと輝くなぁ……)と、しみじみ思えましたね。  本作のラストにおいて、主人公はバスケ部のコーチに就任していますが、ザック・エフロンがコーチ役を務める学園スポーツ物なんかも、何時かは観てみたいものです。   そんな与太話はさておき、映画本編はといえば「安心して楽しめる青春映画」そのものという感じ。  「もう一度、高校時代に戻って人生をやり直したい」という後ろ向きな願望を満たしてくれる内容なんだけど、しっかり前向きな結論に達して終わる為、後味も良いんですよね。  「これまでの自分が積み重ねてきた過去は、決して間違いじゃなかった。だから、やり直す必要なんて無い」という着地の仕方は、予定調和ではあるんだけど、やっぱり清々しくて気持ち良いです。  ・息子と友達になり、一緒にバスケ部に入って活躍する。 ・娘に惚れられ、近親相姦に陥りそうになる。 ・妻に愛を語ったら、熟女マニアと罵られてしまう。   といった具合に「家庭を持つ中年男が、十七歳に若返ったら……」というシチュエーションならではの面白い場面が、ちゃんと盛り込まれているのも嬉しいですね。  どれも目新しい展開という訳ではなく「こういう設定なら、当然こうなるだろう」と思えるような王道展開なのですが、そのベタさ加減が心地良い。   主人公の親友ネッドと、美人校長とのロマンスも良いアクセントになっており「主人公と妻は、どうせ復縁するだろうけど、こっちの恋が上手くいくかどうかは分からない……」という意味で、適度な意外性を与えてくれた気がします。  校長の台詞「孔雀ってるの?」という表現には笑っちゃったし、通信教育で習得したというエルフ語をキッカケに意気投合する流れも微笑ましくて、自分としては、もう大好きなカップルです。   ネッドに関しては、十七歳時点での小柄なオタク少年姿も可愛らしかったので、作中で大人の姿でばかり出ているのが、ちょっと勿体無いようにも思えましたね。  「一緒にカンニングしてバレた」「レイア姫をプロムに誘った」などの断片的なエピソードだけでも面白かったし、やり直す前の「一度目の高校生活」についても、もっと詳しく観てみたかったものです。   その他にも「主人公と選手交代した息子が試合で活躍して、勝つところまで描いて欲しかった」とか「娘の彼氏だったスタンと喧嘩したまま終わっているのが気になるので、和解するなり何なりして関係に決着を付けて欲しかった」とか、色々と不満点は見つかるんですが、それも「この映画の、ここが嫌」という欠点ではなく「ここは、もっとこうすれば良かったんじゃない?」という類の不満点に止まる辺り、自分好みの映画だったんでしょうね。   良い映画、好きな映画に対しては「これ一本で終わる映画ではなく、何十話も続くドラマであって欲しかった」と思う事があるんですが、どうやら本作もそれに該当する一本みたいです。
[DVD(字幕)] 8点(2018-07-30 08:36:59)(良:2票)
222.  プルーフ・オブ・ライフ 《ネタバレ》 
 誘拐を題材にした映画としては、かなり良く出来ていると思います。   ヒロインの旦那が拉致される場面は緊迫感があるし、人質が拘束されている粗末な小屋の描写なんかも良い。  最初の交渉人フェルナンデスが頼りない男であった分だけ、主人公のテリーが彼に代わって交渉する姿が、非常に頼もしく思えた辺りなんかも「上手いなぁ」と感心させられましたね。  終盤の武力突入による人質奪還シーンも迫力があり、そこは大いに満足です。   で、難点はというと……やっぱり「主人公とヒロインとが不倫する場面」って事になっちゃいますね、どうしても。  これに関しては、現実にラッセル・クロウとメグ・ライアンが不倫関係に陥ってしまったというスキャンダラスな側面もあり、映画の中だけの話として割り切って語るのは難しいのですが「映画単品で評価したとしても、この要素はいらない」という結論になる気がします。   そもそもヒロインの旦那が善人なので、不倫している二人に全く共感出来ないんですよね。  人質となり、過酷な状況の中でも、妻の写真を心の支えに生き延びようとする旦那の姿が描かれているのに、肝心の妻は他の男との許されぬロマンスを繰り広げているだなんて「ひでぇ話だ」と呆れちゃいます。  せめて関係を匂わせる程度で終わってくれたら良かったのに、ご丁寧にキスシーンまで挟んであるもんだから、決定的に幻滅。  試写会の段階ではキスどころか、もっとあからさまなベッドシーンまであったとの事ですが、それが本当なら「そりゃカットして正解だよ」という感想しか出て来ないです。   あるいは、命を懸けて人質を救出してみせた後「貸し借り無しだ」とヒロインに微笑んで見せるという「一度きりのキスの借りを返す為に、命を張った主人公」の恰好良さを描こうとしたのかも知れませんが、どうも受け入れ難いものがありましたね。  ラッセル・クロウも、メグ・ライアンも好きな俳優さんであるだけに、今作の二人が魅力的に思えなかった事が、非常に残念。    「父親に対し、敬語で話す息子」の存在が印象的で、最後は父子の和解で終わるのかなーって予想していたのに、それが外れちゃったのも寂しいですね。  ヒロインが流産していた過去が、単なるお涙頂戴のエピソードで終わっておらず、人質奪還の際の伏線になっている事には感心させられただけに、この「敬語で話す息子」の伏線も綺麗に回収して欲しかったなぁって、つい思っちゃいました。  酷な言い方をするなら「不倫するような男だから、息子も心を開かないんだよ」って事になっちゃいますし……やはり、どう考えても不倫の件は不要だったかと。   映画に道徳を求める方が変だし、どんなに不道徳でも面白ければそれで良いんですけど、本作みたいな描き方だと「主人公とヒロインが嫌な奴等に思えてくる」→「面白さが損なわれる」って形になっちゃう気がするんですよね。  傑作と呼べそうな部分も感じさせただけに、惜しい一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2018-07-24 19:48:01)
223.  団塊ボーイズ 《ネタバレ》 
 「Wild Hogs」という原題が恰好良過ぎるので、邦題もそのまま「ワイルド・ホッグス」にして欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいますね。  かつて「バス男」が「ナポレオン・ダイナマイト」と改題し再販されたように、こちらも再販して欲しいものですが、流石に難しいでしょうか。   そんなタイトルに関するアレコレはさておいて、映画本編はといえば、実に心地良い「旅行映画」であり「青春映画」であり、自分としては、もう大満足。  ツーリング中の風景は美しいし、音楽も良い感じだし、何より「水場を見つけて、そこで泳ぐ」「テントを張って、皆で焚き火を囲む」などのお約束場面が、しっかり盛り込まれているんですよね。  こういった映画である以上「良いなぁ、自分もツーリングしたいなぁ」と感じさせる事は必要だと思いますし、それは間違いなく成功していたんじゃないかと。   主人公のウディは「破産」に「離婚」にと、様々な問題を抱えているのに、ラストにおいてもそれらの問題が一切解決していないというのも、本作の凄い部分ですよね。  それが決して投げっ放しにならず、劇中で語られた通り「たとえ仕事も家族も失っても、俺には仲間がいる」という前向きな結論に繋がっているんだから、お見事です。  聞くところによると続編の予定もあったそうで、諸々の問題については、その続編にて解決するつもりだったのかも知れませんが、これ一作でも充分綺麗に纏まっていた気がしますね。  この「仲間がいる」という結論は「仲間との絆さえあれば、どんな逆境でも乗り越えられる」というメッセージに繋がっているように思えて、本当に好きです。   一緒に水浴びしたハイウェイポリスをはじめ、同性愛ネタが多いのは鼻白むし「イージー・ライダー」を鑑賞済みじゃないとクライマックスで盛り上がれないんじゃないかと思える辺りは欠点なのでしょうが……それでもやっぱり好きなんですよね、この映画。  特に後者については、元ネタありきのパロディ展開なのを承知の上でも、観ていて熱くなるものがありました。  ピーター・フォンダって、恰好良い歳の取り方をしているなぁって、惚れ惚れしちゃいましたね。   腕時計を投げ捨てて旅に出る「イージー・ライダー」と重ね合わせる為、携帯電話を投げ捨ててから旅に出るシーンも面白かったし、それを踏まえての「時計を捨てろ」というラストの台詞も最高。  敵役となるデル・フェゴスのアジトを爆発炎上させちゃったのは「やり過ぎ」感があり、これじゃあ主人公達が悪者みたいでスッキリしないなと思っていたら、最後の最後で「以前より素敵な住処をプレゼント」というフォローが入っていたのも嬉しいですね。  その後、仲間達による乾杯シーンで終わるというのも、凄く気持ち良い〆方。  この「後味の良さ」は、偉大な先達である「イージー・ライダー」には備わっていなかった部分であり、本作が単なる模倣ではない、オリジナルの魅力を備えた品である事を証明している気がします。   「バイク好き限定」「中年男限定」などの枠に囚われず、女性や子供が観たとしても結構楽しめるんじゃないかな、と思えてくる。  とても愉快な、浪漫のある映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-07-23 05:17:06)(良:3票)
224.  ベガスの恋に勝つルール 《ネタバレ》 
 色んな意味で「夢を叶えてくれる映画」って感じですね。   ベガスで一攫千金、お金持ちになりたい。  美女(美男子)と一緒に暮らしてみたい。  そんな庶民の願望を疑似体験させてくれる、心地良い映画だったと思います。   スロットで大当たりする場面もテンポ良く、気持ち良く描いているし、自宅でのパーティーや社員旅行などのイベントの件も、とても楽し気で良かったです。  二人が同棲する事になる部屋も「ここに住んでみたい」と思わせるような魅力があって、好きなんですよね~  ヒロインは嫌がっていたけど、バーカウンターやピンボールの台があるなんて素敵じゃないかと思えるし「ドアを開けると、そこからベッドが飛び出す」ギミックなんかも好み。   「相手に浮気させようと互いにアレコレ画策する」「便座の上げ下げを巡って争う」「夫婦カウンセリングに向かう二人」などの夫婦喧嘩パートも、軽快なBGMに乗せて楽しく描かれており、良かったと思います。  テーマがテーマだけに、ここで攻防が陰湿になり過ぎて観ていて引いてしまう可能性や、主役二人が「嫌な奴」に思えてしまう可能性もありましたからね。  そこを暗くなり過ぎず、明るく能天気なテンションで描き切ってみせた事には、大いに拍手を送りたいところ。   「自分でサイコロを振る勇気すら無かったけど、とうとう起業を決意した主人公」「仕事に依存していたけど、仕事が好きという訳じゃなかったと気が付くヒロイン」などの真面目な部分を、ライトなノリを失わないまま、さりげなく描いているのも良かったですね。  お約束だけど「今回の騒動を通して、二人は大金よりも価値のあるものを手に入れる事が出来た」と感じさせるものがあって、凄く後味爽やか。   主人公の男友達と、ヒロインの女友達も魅力的であり、喧嘩してばかりだった二人が、最終的にはカップルみたいに仲良くなっちゃう結末も、ハッピーエンド感を高めてくれたように思えます。   その他にも「夫婦どちらも『レイダース』が好きだったと分かる」「結婚指輪を填めた薬指を、中指を立てるようにして旦那に見せ付ける妻」など、印象的なシーンが幾つもあって、本当に観ていて楽しい。  夕暮れを迎えた海辺での「結婚してくれませんか、もう一度」という二度目のプロポーズも素敵で(あぁ、良いなぁ……良い映画だなぁ)なんて、しみじみ感じちゃいました。   あまり評判は良くない(ゴールデンラズベリー賞にノミネートされてる)のを覚悟の上で観賞したのですが、意外や意外、本当に面白くて、楽しくて、吃驚させられましたね。  やはり世間の評判なんかに左右されず、自分の感性で判断しなきゃ駄目だな……と、そんな当たり前の事を再確認させてくれた、非常に価値ある一本でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2018-07-12 08:54:37)(良:2票)
225.  SAFE/セイフ 《ネタバレ》 
 「パソコンは何を記憶させても探り出されてしまう」という台詞が印象的。  ハッキングやら何やらを警戒する余り「大切な情報は、記憶力の良い人間に憶えさせておくのが一番安心」という時代錯誤な結論に行き着くのが、実に皮肉が効いていましたね。   そんな「記憶力の良い人間」が幼い少女というのは非常に漫画的だけど、あんまり美少女過ぎない子役を起用しているのが、適度なリアリティを生み出していたと思います。  ちょっと目が細過ぎて、典型的な「欧米人から見たアジア人」ってルックスの子なんですけど、笑うと愛嬌があって可愛らしいし、映画を観終わる頃にはかなり好きになっていました。  こういったストーリーの映画である以上、子供の事を「守ってあげたくなるような存在」として描くのは大切だと思うし、それは成功していたんじゃないかと。   それと、本作は彼女の養父となるチャンを演じるレジー・リーも、凄く良い味を出していましたね。  悪人だし、ボスの命令には逆らえないんだけど、養女のメイの事は彼なりに大切に思っているというバランスが、実に魅力的。  彼がメイに対し「きっといい父親になってみせる」と語り掛け、笑ってみせる場面は、本作の白眉であったように思えます。  不器用ながらも愛情を示して、彼女の為に少しでも「良い人間」になろうとした事が伝わって来て、好きな場面です。   それだけに、その後すぐ彼が殺されてしまう展開になるのがもう、残念で仕方ないんですが……  やはり、この辺りは「一度でも娘を殺そうとした奴が、本当の父親になんかなれる訳が無い」って事なんでしょうか。  「怖いものから、目を背けたりするな」という彼の教えを、メイが守ってみせて「彼とメイが過ごした時間は、無駄じゃなかった」という落としどころになっただけでも、良しとすべきなのかも。   その一方で、ジェイソン・ステイサム演じるルークに関しては「タフガイ」「アウトロー」の王道を行く主人公となっており、安心して観賞する事が出来ましたね。  浮浪者として生活しなければいけない悲壮感、靴を譲った相手すらも「ルークと関わったから」という理由で悪人達に殺されてしまうという「誰とも親しくなれない」という孤独感が、ひしひし伝わって来て(やっぱりステイサムって良い役者さんだなぁ……)と、惚れ惚れさせられました。   ただ、そんなルークがメイを必死に守ろうとする動機が弱いようにも思えて、そこはもっと説得力が欲しかったですね。  自殺を止めるキッカケになってくれた恩返しというなら「たまたま目が合ったお蔭で、思い止まれた」という展開ではなく、もっと積極的にメイが彼の命を救ってみせた展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  あるいは、冒頭にて殺されたのが「ルークの妻」ではなく娘だったという事にして、娘と同じ年頃の子だから助けずにはいられなかったとか、そんな形にしても良かった気がします。   一番悪どい存在に思えた中国マフィアのハンおじさんが、結局大したダメージを受けず「尻尾を巻いて中国に帰る」くらいで終わっちゃう事。  そして、黒幕のアレックス刑事とルークとの素手のタイマンが始まるかというところで、メイが銃でアレックスを撃ち、決着を付けちゃう事なんかも、欠点と言えそうですね。  そこは、もっとスッキリする形で〆て欲しかったです。   観賞前に期待していた「ジェイソン・ステイサムの骨太なアクション」は充分に堪能出来たし、ルークとメイが「父娘」ではない「友達」になるハッピーエンドは良かったしで、決して嫌いな映画じゃないんですけどね。  気になる点も多くて「そこそこ満足」くらいの感じで観終わってしまった……  そんな一品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2018-07-04 11:02:09)(良:1票)
226.  ホリデイ 《ネタバレ》 
 休日にノンビリ過ごしながら観賞するには、最適の映画なんじゃないかと思います。   それというのも、これって「面白過ぎて目が離せない」とか「続きが気になって仕方無い」とか、そういうタイプの作品じゃないんですよね。  話の展開は王道に則っており、主役の男女四人も予定調和で結ばれて、ハッピーエンドを迎える事になる。  いきなり大きな音がして吃驚させられる事も無いし、劇中の音楽も穏やかで、心地良いものばかり。  だから観賞中、ウトウトして眠くなったら、そのまま寝ちゃったとしても問題無いような、独特の包容力があるんです。  つまりは「退屈な映画」って事じゃないか……とも言えそうなんですが、自分としては好きなんですよね、こういう映画って。   まず、ホーム・エクスチェンジを題材にする事によって「夢のような豪邸」「お伽噺のようなコテージ」の魅力を、両方味わえる形になっているのが上手い。  しかも、劇中のヒロイン達にとっても、その豪邸とコテージは「初めて訪れる場所」である為、新鮮な反応を示す彼女達と観客とが、同じ気分になって楽しむ事が出来るんです。  旅行映画のお約束「新鮮な場所での、新鮮な恋」も描かれているし、素敵な異性以外にも「偏屈だけど、チャーミングな老人」「とっても無邪気で、可愛い子供達」と出会えたりするんだから、もう言う事無し。  「今いる場所から抜け出して、生まれ変わってみたい」という願望を満たしてくれる、実に良質な作品だと思います。   主演の四人も全員好きな俳優さんだし「予告編」や「劇中曲」の使い方も上手い。  リンジー・ローハンとジェームズ・フランコが出演しているという「危険な罠」についても(予告編だけでなく、本編も観てみたいなぁ……)と思っちゃったくらいですね。  老脚本家のアーサーが自力で歩き、階段を登ってみせる場面にて「マイルズがアーサーの為に作った曲」が流れ出す演出も、凄く好み。  正直、アーサーという人物については考え方が懐古主義過ぎて、あまり共感出来ずにいたのですが、この場面の感動によって一気に好きになれた気がします。  「映画は私にとって、永遠の恋人なのです」というスピーチも、心に響くものがありました。   タクシーが「Uターン出来ない道」と言っていたのに、その後に家から車で出掛けたりする場面があるのは戸惑ったし(多分、反対側の道なら普通に車で移動出来るって事なんだと思われます)折角の可愛い子犬が途中から空気になっているという不満点もあるんですが、気になるのはそれくらい。   アイリスが元カレへのメールで「Dear」と書きかけてから消す場面。  グレアムが「ナプキンヘッド」に変身して、幼い娘達を笑顔にする場面。  マイルズがビデオ店にて、色んな映画音楽を紹介する場面。  そしてアマンダが子供時代のトラウマを克服し、涙を流す場面と、主役四人にそれぞれ印象的な場面がある点も良いですね。   劇中の台詞に倣い「ホリデイ」は自分にとって「恋人のような映画」だと、そう紹介したくなるような、素敵な一品でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2018-06-22 05:35:41)(良:1票)
227.  愛しのローズマリー 《ネタバレ》 
 ジャック・ブラックという俳優の魅力に気が付かされた、記念すべき一品。   元々はヒロインであるローズマリーことグウィネス・パルトロウ目当てで観賞したはずなのですが、終わってみれば主人公である彼の虜になっていた気がしますね。  それくらい衝撃的だったし、本当に良い役者さんだなと、しみじみ感じ入りました。   失礼ながら自分は「太った男優」を恰好良いと思った事が無かったもので、そんな自分の「太ってるのに、こんなに恰好良いんだ」という驚きが、劇中の「太っていても、ローズマリーはこんなに綺麗だ」という主人公の考えとに、上手くシンクロしてくれた気がしますね。  実際に観ている自分自身「外見に左右されない、内面の魅力」に気が付かされた訳だから、主人公の考えの変化にも自然に共感出来たし、そういう意味では非常に運が良かったというか、相性の良い映画だった気がします。   ・主人公が受けた暗示について「以前からの知り合いは従来通りの姿で見える」という部分が分かり難い。 ・ローズマリーと出会う前に色んな女性と絡む為、誰がヒロインなのかと混乱する。 ・美女は次々に登場する一方で、美男子は殆ど出て来ないので女性の観客にとっては物足りなさそう。 ・そもそも主人公の主観とはいえ「太ってる」「老けてる」などの特徴を「醜い」として劇中で扱ってるのは酷いんじゃない?   等々、欠点らしき部分はあるけど、それでも自分にとっては大好きな映画なんですよね。  音楽のセンスも好みだし、ファレリー兄弟の作にしては比較的上品な脚本なのも嬉しい。  ローズマリーの体重でボートが傾いている場面や、脱いだ下着が「パラシュート」サイズで驚く場面なんかも面白くて、コメディ映画としても、しっかり楽しむ事が出来ました。   そして何といっても「主人公が、火傷の女の子と再会する場面」が、本当に素晴らしい。  それまで見た目に囚われていた主人公が、彼女の真実の姿に大きなショックを受け、それでも相手を傷つけないようにと平静を装いつつ「元気かい? 美人ちゃん」と言って、優しく抱き締めてあげる。  その時の(俺は、どれだけ馬鹿な奴だったんだ)(こんな幼い子を見た目で判断して傷付けてしまうような、最低な奴だったのか)という「気付き」と「後悔」の演技とが実に見事で、ここが本作の白眉であったと思います。   それと、もう一つ。  ラストにてローズマリーに告白してみせた際の「鳩時計の真似」も、凄く素敵でしたね。  「本当に、それで後悔しない?」と不安そうに問い掛ける彼女に対し、お道化てみせるだけで、言葉では応えず、その後の優しい笑顔で「後悔なんてするはずないだろう」「だって、君を愛しているから」などといった、色んなメッセージを伝えてみせる。  凡百の台詞よりも遥かに雄弁な、その仕草と笑顔とを見せられた瞬間、この映画は傑作だと確信を抱く事が出来ました。   太っている女性が別人のように痩せた際「生まれ変わった」という表現を用いる事がありますが、本作のローズマリーは生まれ変わったりしません。  生まれ変わるのは、主人公のハルの方。  決して悪い奴じゃないんだけど、偏見に囚われてしまっていた彼が、心優しいヒロインのローズマリーと結ばれて、とびきり魅力的で恰好良い男へと、鮮やかに変身してみせる。  それが実に痛快で、皆が祝福してくれるハッピーエンドも心地良くて、観ているこっちまで幸せな気持ちになれるんだから、本当に良い映画だと思います。   「最初は勘違いから始まった恋が、真実の愛に帰結する」というラブコメの王道を、分かり易く表現してみせた、鮮やかな逸品でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2018-06-19 22:22:02)(良:2票)
228.  ハリウッド的殺人事件 《ネタバレ》 
 映画好きなら誰しも「世間の評価は芳しくないけど、自分は好き」という映画を胸に抱えているものだと思いますが、本作が正にそんな一本。   副業で不動産を扱っているベテラン刑事に、俳優志望の若手刑事という二人によるバディムービーなのですが、彼らの年齢差が丁度親子くらいで、会話にも何処となく疑似親子めいた匂いが漂っているのとか、凄く好きなんですよね。  若手の方が「刑事を辞めて、本格的に俳優をやりたい」と将来についての展望を語ったり、初老のベテラン刑事の女性関係を心配してみせたりと、二人のやり取りが実に微笑ましい。   特に、若手刑事のコールデンを演じたジョシュ・ハートネットに関しては、本作が歴代でもベストアクトだったんじゃないかと思えるくらいですね。  「このまま刑事を続けていて良いのか」という作中の悩みが、現実世界の彼が当時抱いていたという「このまま俳優を続けていて良いのか」という悩みとも重なり合っているように思え、非常に説得力があったかと。  ラストにて「役者の才能は無いみたいで……刑事止まりかな」と、何処か照れくさそうに語る辺りなんかも、コールデンの「なんだかんだ言っても、刑事という職業が好き」という気持ち、そしてジョシュの「俳優という職業が好き」という気持ちが伝わってくるかのようで、凄く良い場面だと思います。   脚本担当の方も「実際に不動産の副業をしつつ刑事をやっていた」「その時の相棒は俳優志望だった」というキャリアの持ち主のようであり、そういった現実とのシンクロ具合が、本作に適度なリアリティを与えていた気がしますね。  破天荒な設定の、コメディ仕立てな刑事物なのに、地に足が付いている感じで安心して楽しめたのは、そういった裏付けがあったからこそなのかも知れません。   ハンバーガーのトッピングに、携帯電話の着メロといった小道具の使い方も上手いし、マジックミラー式の取調室のシーンなんかも、コミカルな魅力があって好きですね。  カーチェイスや銃撃戦に迫力が無いという、根本的な欠点もあるのは分かりますが、それさえも 「女の子用の自転車や、タクシーを使って追跡するのが面白い」 「俳優志望だからこその演技力を駆使し、相手を騙してから撃つのが痛快」  なんて具合に、好意的に捉えてしまうんだから、本当に自分と相性の良い映画なんだと思います。   115分で終わるのが勿体無くて、この二人を主役とした刑事ドラマを、何十話分でも観てみたくなるような……独特の魅力を備えた一品でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-06-13 17:43:55)
229.  U.M.A レイク・プラシッド 《ネタバレ》 
 数あるワニ映画の中でも、最も好きな一本。   「面白い」ではなく「好き」なタイプの映画である為、感覚的なものを伝えるのは難しいのですが……とにかく定期的に観返したくなる魅力があるんですよね。  監督さんが「ガバリン」や「ハロウィンH20」「フォーエヴァー・ヤング」という、自分好みな品を色々手掛けている人なので、波長が合うのかも?  何気ない場面や、ちょっとした音楽にも(あぁ、良いなぁ……)と感じてしまうんだから、とことん自分とは相性の良い作品なのだと思われます。   典型的な「誤解を招く邦題」である事。  作中での牛の扱いが可哀想である事。  メインとなる登場人物達が皮肉屋揃いで「良い子ちゃん」とは掛け離れている事。  などなど、欠点と呼べそうな部分は幾らでもあるんですが、それより長所の方に注目したい気分になるんですよね。    雄大な自然を捉えた空撮画面が美しくて、それを眺めているだけでも楽しいし、川辺でキャンプして焚き火したりと「レジャー」「アウトドア」的な魅力を味わえる辺りも嬉しい。  一応、作中で死人も出ているんだから、シリアスな空気になっても良さそうなものなのに、どこか皆ノンビリしていて「楽しいワニ釣り」めいた雰囲気すら漂っている。  それは「緊迫感が無い」という短所でもあるんでしょうが、自分としては「そこが良いんだよ」って思えました。   巨大ワニが実は二匹いたというオチにして「殺さずに捕獲出来た達成感」「ミサイルで派手に吹っ飛ばした爽快感」を、それぞれ一匹ずつ味わえる形になっているのも良いですね。  (そりゃあ無事に捕まえられたら一番だけど……保安官が持ち込んだ小型ミサイルの伏線もあるし、どうせ殺すんでしょう?)と予想していただけに、適度な意外性を味わう事が出来ました。   そして何といっても、最初は喧嘩ばかりしていた主人公四人が、一連のワニ騒動を通して仲良くなっていく姿が微笑ましいんですよね。  それも、物凄く強固な友情が生まれるとかじゃなくて「病院に付き添う」「一緒に飲みに行く」程度に留めているのが、程好いバランス。   最後も「まだまだ赤ちゃんワニが沢山いた」というバッドエンドのはずなのに、妙に明るく〆ているのも良かったです。  ワニを飼ってるお婆ちゃんは、そりゃあ道義的に考えれば「悪」なんだろうけど、彼女にとってワニは「可愛い子供達」な訳だし、それが全て奪われずに済んだという、一種のハッピーエンドにも感じられました。   この後、続編映画が色々と作られて、最終的には「アナコンダ」とクロスオーバーした「アナコンダ vs. 殺人クロコダイル」なんて品まで生み出す事になる本作品。  シリーズ化されるのも納得な、確かな魅力を備えた一品でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2018-06-08 09:37:39)(良:2票)
230.  サボテン・ブラザース 《ネタバレ》 
 「物語の中のヒーローが、本物のヒーローになる」映画の、元祖的存在ですね。   洋画では「ギャラクシー・クエスト」邦画では「ザ・マジックアワー」アニメにおいても「バグズ・ライフ」に「宇宙英雄記」と、様々な媒体で本作のプロットを拝借した作品が見つかる事に、その影響力の大きさが窺えます。  もしかしたら1986年以前にも似たような映画があったのかも知れませんが、自分は未だそんな映画に出会えていませんし(あえて言うなら「荒野の七人」?)やはり本作のオリジナリティはズバ抜けているんじゃないかと。   そんな訳で「映画史を語る上では外せない一本」「非常に斬新な、革命的作品」と、ひたすら絶賛したい気持ちもあるんですが……  正直、中弛みしている部分もあって、完成度が高いとは言い難い映画なんですよね。   象徴的なのが「唄う樹」と「透明な剣士」の存在であり、彼らだけ妙にファンタジー度が高い点も併せて、凄く浮いちゃっている。  作り手側としてもそれを気にしたのか、直前に「馬や亀も唄ったり喋ったりするシーン」を挟み、自然に感じられるようにと配慮しているのは窺えるのですが、それが成功しているとは言い難いかと。  結局、悪党のアジトは飛行機が原因で判明するので「アジトの場所を知る為には、唄う樹がある場所に辿り着き、透明な剣士に教えてもらう必要がある」って流れ自体が不要になっており、本当に(何だったんだアレは……)って思えちゃうんですよね。  そんな肩透かし感も、本作を彩るギャグの一種、愛嬌の一つではあるんですが「この映画の、そこが嫌」と言われたら、全く反論出来ない部分でもあります。  実際、上述の作品群も本作のプロットを拝借する一方で、この「唄う樹」と「透明な剣士」については、殆どスルーしちゃっていますからね。   それでも、やっぱりこの映画は好きというか……本当に魅力的な部分が幾らでもあって、語り出すと止まらなくなっちゃうくらいなんです。   まず、劇中劇となる白黒映画が意図的に稚拙に作られており(柵に切れ目があるのが破壊される前から見えてしまっている、など)それによって後の「映画ではない、本当の戦い」に迫力が生まれている点が素晴らしい。  主人公達が、一頭の馬に三人で乗ったり、一つのベッドに三人で寝たりする場面なんかも「仲良過ぎだろっ!」とツッコまされて、楽しかったですね。  荒野を彷徨い、他の二人が乾いている中で、ダスティだけが浴びるように水を飲む場面も可笑しくって、ギャグとしてはここが一番好きな場面かも。   「唄う樹」と「透明な剣士」とは反対に、後続の作品で頻繁に真似されている「相手が本物の悪党と分かって、怯える主人公達」の場面も、極めて面白く描かれており(こりゃあ真似したくなるわ)と、大いに納得させられました。   また「本当のヒーローじゃなかった」とヒロイン達がショックを受ける一方で、同じように「映画は嘘だった」とショックを受けて、かつての憧れが恨みに変わった男を敵役に配している辺りも凄い。  「映画の中のヒーロー」が、人々に希望を与えるだけでなく、絶望を与える事もあるという、非常に考えさせられる一幕。  このジャンルの映画が成熟して、数十年後にようやく生まれそうな展開を、元祖的存在の本作で既にやってのけているんだから、もう驚嘆するばかりです。   主役三人組の中で、一番頼りないかと思われたネッドが「男になるか、逃げだすか」と言い出して、三人が本物のヒーローになるキッカケを作ったり、銃による決闘に勝利したりと、作中で最も活躍しているという意外性も心地良い。  ラッキーによる終盤の演説「人は皆、心にそれぞれのエル・アポを抱えている」も胸を打つものがあり、本作に普遍的な物語性を与えているように思えましたね。    そして何といっても「正義。それが我らの報酬だ!」と劇中の映画同様に叫び、お金の入った袋を村の人々に投げ返してから別れるラストシーンが……もう、本当に名場面としか言いようが無い。  ここ、最初からお金を受け取らないつもりだった訳じゃなく、数秒の沈黙を挟んで、考えて、見つめ合って、それから「映画のように恰好付けて」袋を投げ返すっていうのが、たまらなく好きなんですよね。  決して完璧なヒーローではなく(このままお金を受け取っても良いかも?)と一瞬迷うという、人間的な弱さを備えている主人公達。  そんな彼らが、心の弱さに打ち勝って、女性や子供達に「ヒーローとは、斯くあるべし」という姿を見せ付け、颯爽と去っていく。   本当に素晴らしい、傑作という言葉が似合う一品でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2018-05-30 14:03:26)(良:3票)
231.  ギャラクシー・クエスト 《ネタバレ》 
 「スタートレック」のパロディ作品なのですが、どちらかといえば「サボテン・ブラザース」の影響の方が色濃いようにも思えましたね。   「物語の中のヒーローが、本物のヒーローになる」という筋書きが全く同じであり、その枠組みを「西部劇」から「スタートレック」に置き換えただけ、という感じ。  である以上、既視感だらけで退屈な映画になりそうなものなのに……なんと吃驚。  これがまた、元ネタに優るとも劣らぬ傑作に仕上がっているのですよね。  自分の場合「サボテン・ブラザース」を観賞済みだったので、ある程度展開が読めてしまった部分があるのですが、そういった予備知識無しで観ていたら、本当に衝撃的な面白さだったんじゃないかと思います。   ストーリー展開が読めているのに、何故こんなに面白かったのかと考えてみたのですが、それに関しては「登場人物が魅力的である」という一点が大きかった気がしますね。  往年のSFテレビドラマ「ギャラクシー・クエスト」の栄光に縋って生きている、売れない俳優達。  互いに喧嘩したり、仕事に対する文句を言ったりはするんだけど「基本的には良い奴等」という線引きが絶妙であり、観客としても素直に彼らを応援出来るんです。   特に感心させられたのが、序盤にて主人公のジェイソンがファンに八つ当たりしてしまう場面。  ここって「主人公達は現状に不満を抱き、鬱屈としている」「そんな彼らが、この後ヒーローになる」という事を示す為、決して外せない場面だと思うんですが、一歩間違えば序盤の段階で「こいつは嫌な奴だ」と観客に悪印象を与えてしまう、非常に危うい場面でもあるんですよね。  でも、この映画ではヒロインのグエンが「ファンを相手に、あんなにカッとするなんて初めて」と驚く展開が用意されている。  それによって「主人公はファンサービスを大切にするような、優しい男である」「そんな彼が思わずファンに八つ当たりしてしまうほど、現状に対しては不満を抱いている」という二つの情報を、同時に観客に与える事に成功しているんだから、これは本当に上手かったと思います。   「ドラマでは直ぐに死ぬ端役だが、現実の世界では今度こそヒーローになろうともがいている男」を、ゲスト枠のような形で参戦させているのも良いですね。  主人公達が「ドラマのようにヒーローになる」という展開ならば、彼に関しては必然的に「ドラマと同じように死んでしまうのでは?」と思わされるし、その存在によって、適度な緊迫感が生まれてる。  女性型宇宙人とのロマンスを繰り広げる技術主任なんかも、程好いアクセントになっていたかと。   彼らに助けを求める宇宙人側の描写も、これまた良いんですよね。  「コスプレかと思ったら、本当に宇宙人だった」という序盤の展開だけでも面白いし、歩き方や笑い方がぎこちないという、わざとらしい「宇宙人っぽさ」の演出も素敵。  リーダー格のマセザーが、ジェイソンから「本当の俺達はヒーローなんかじゃない。全ては作り物だった」と告白されて、凄く切ない反応を返す場面も、忘れ難い味がありました。   「サリスの船から盗み出したテープ」「小さな猿のような生物」など、要所要所でハッとさせられる場面があり、コメディでありながら油断出来ない、シリアスな物語としての魅力が充分に備わっている点も、見逃せない。  そんな魅力がピークに達するのが「ドクター・ラザラスに憧れていた青年」の死亡シーンであり、彼を看取りながら「役者のアレクサンダー」が「ヒーローであるドクター・ラザラス」へと生まれ変わる流れは、本当に感動的だったと思います。   無名時代のジャスティン・ロングがオタク少年役で出てくるサプライズも嬉しかったし「いつも一秒で止まるのよね」などの台詞も、ユーモアがあって好み。  仲の悪かったジェイソンとアレクサンダーが、咄嗟の機転で一芝居打ってみせ、窮地を脱する辺りも面白かったですね。  無事に悪者を退治した後「ギャラクシー・クエスト、十八年振りのシリーズ復活!」「かつての端役が、今度はレギュラーに抜擢」「技術主任と女性宇宙人も、ラブラブなカップルに」といった映像が次々に流れるハッピーエンドも、非常に後味爽やか。   気になる点としては、切り札であるオメガ13の使用シーンにて(明らかに十三秒以上、時間が巻き戻ってない?)とツッコまされる事。  そして、上述のオタク少年も皆を救った功労者なのに、それが認められる場面が無かった事なんかが挙げられそうですが、精々そのくらいですね。   元ネタありきの内容でありながら「これは元ネタより面白いんじゃないか」と思わせてくれる。  非常に貴重な映画でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-05-29 14:19:58)(良:4票)
232.  ファンボーイズ 《ネタバレ》 
 良くも悪くも、スター・ウォーズオタク目線の映画ですね。   劇中にて「ホバ・フェットの強さ」「ルークはレイア姫を好きだったか」について真剣に言い争っちゃう辺りなんて、実にそれっぽい。  元ネタを知っていればニヤリとするようなパロ台詞も盛り込まれてるし、何より「夢を追い続けるオタクではなく、現実的なサラリーマンの道を選んだ若者」を主人公に据えているのが上手かったと思います。  それによって、オタク気質ではない観客も物語に入り込み易くしているし、その一方で「俺はもう大人になったんだ」と達観するだけの主人公で終わらせず「かつて熱狂していた世界に、再び戻っていく」様を描いているから、オタク映画であるという大前提にも反していない。  自分は熱狂的なスター・ウォーズ好きという訳ではありませんが、大人になりきれないオタク人間である事は間違いないと思いますし、そんな立場から見ても「この主人公の設定は絶妙だな」と、大いに感心させられました。   とはいえ、そんな「オタク」の悪い部分も如実に表れているのがこの映画であり……ちょっと、観ていて辛かったですね。   「スタートレック」のファンを作中で貶したり、エピソードⅠにも文句を付けるような形で終わったりと、やたら攻撃的で排他的。  「ウィリアム・シャトナーを大物っぽく描いているからセーフ」「駄作と断定した訳じゃないからセーフ」という作り手側のフォローというか、最低限の配慮も感じられましたが、ちょっと受け入れ難いです。   そもそも、作り手から「エピソードⅣからⅥまでは好きだけど、エピソードⅠは嫌い」ってメッセージが窺えちゃうんだから、これって「スター・ウォーズ愛を描いた映画」としては致命的な欠点だと思うんですよね。  エピソードⅠのキャラであるジャー・ジャーやらダース・モールやらを「美人局の悪党」「意地の悪い警備員」に仮託させている辺りなんて、非常にやり切れない。  それに対し、ⅣからⅥまでのキャラはレイア姫やランドなどを「良い人達」「主人公の味方側」として出しているんだから、あからさま過ぎてゲンナリです。   主人公の父親に対するコンプレックスを、ダース・ベイダーの存在と重ね合わせておきながら、結局は対話する事無く終わった辺りも残念でしたね。  オタクらしく現実逃避して旅に出る様を描いておきながら、その現実と向き合って乗り越えなきゃいけないという辛い過程は省き、努力も無しに夢を叶えて漫画家になれたという結果だけ見せられても、カタルシスは得られません。  そんな欠点が明らかな作りであるだけに、劇中の「欠点も必要さ」という感動的な台詞も「スター・ウォーズ」を擁護する為の台詞ではなく「ファンボーイズ」に対する自己弁護のように聞こえちゃって、凄く格好悪かったです。  主人公が描いた漫画を「最悪」と酷評する読者に対し、主人公達が「お前はクソッタレだ」と徹底的に馬鹿にして溜飲を下げて終わるのも、これまた酷い。  他の映画やファンを馬鹿にするような作りであるくせに「俺達は他の作品を批判するが、俺達の作品を批判するのは許さない」と主張しているようにも思え、どうにも居心地が悪かったです。   そんなややこしいアレコレを考えず、純粋に青春映画として観れば綺麗に纏まっていたと思いますし、仲の良い友達連中で車に乗り込み、旅する楽しさなどは味わえただけに、非常に勿体無いですね。  ファルコンの模型を人質(?)に取る件や「右手をレイア姫と呼ぶ」件は笑っちゃったし、予想以上にスカイウォーカーランチの壁が低くて「侵入する為のフックって、別に要らなかったじゃん」とツッコまされる辺りも面白かったです。  何より、エピソードⅠ公開当日の「皆でワイワイ集まって、お祭り気分で騒ぐ」雰囲気は凄く心地良くて、そこの場面だけでも(観て良かったな……)と思えたくらい。  それだけに、余計なオチなどは付けず、あの楽しい盛り上がりのまま、亡き友に乾杯し、待ちに待った新作映画が上映される場面にて、ハッピーエンドを迎えて欲しかったところです。   作中にて「6デイズ/7ナイツ」(1998年)が失敗作じゃないかと揶揄されていましたが、自分としては、その「6デイズ/7ナイツ」に付けたのと同じ点数を、この映画に進呈したいと思います。
[DVD(字幕)] 5点(2018-05-15 16:01:23)
233.  6デイズ/7ナイツ 《ネタバレ》 
 映画「ファンボーイズ」(2008年)にて本作が「失敗作」ではないかと揶揄するような場面があったのを思い出し「そんなに酷い出来だったかな?」と考えて、此度再観賞。   結論からいうと、確かに「傑作」とは言い難い内容でしたが、自分としては好きなタイプの映画でしたね。  お気楽な無人島ロマンス映画として、しっかり楽しめるように作ってあるし、娯楽作として一定の基準は満たしているんじゃないかな、と感じました。  「エボリューション」(2001年)や「ドラフト・デイ」(2014年)を手掛けたアイヴァン・ライトマン監督だし、元々この監督の作風が好みに合ってるんだと思います。   「この島から多分ずっと出られない」と言っていたはずの主人公が、その後「無線用の信号機のスイッチを切れば、修理班が島にやって来るはず」と言い出すのは一貫性に欠けるとか、敵役となる海賊が間抜け過ぎて(せめて服をロープ代わりにして手を縛るとかしろよ。そんなんじゃ逃げられて当然だろ)と呆れちゃうとか、脚本にはツッコミどころが多いけど、何となく笑って許せちゃう。  無人島の雄大な自然を捉えた上空からのカットとか、崖から飛び降りるシーンでのスローモーション演出だとか、そういう細かい部分がしっかりしているからこそ「脚本の粗を気にせず、何も考えずに観ている分には楽しい」って気分になれる訳で、そこは素直に凄いと思います。   五十歳を越えているだろう主人公と、若々しい金髪美女のロマンスって時点で、結構トンデモない内容のはずなのに、男側をハリソン・フォードが演じる事によって(まぁ、これなら有り得るかも……)と思わせてくれる辺りも嬉しいですね。  男にとって都合の良い、妄想を具現化したような映画だからこそ、最低限の説得力は欲しくなる訳ですし、その点でもこの映画は合格だったように思えます。   でも、上述の通り「傑作」とは言い難いのも確かであって……やっぱり欠点も多いんですよね、この映画。   そもそも「妻を親友に奪われた」って過去がある主人公なのに、最終的には「婚約済みであるヒロインを主人公が奪う」って展開になる訳だから、実は凄く後味が悪い話なんです。  「主人公とヒロインだけでなく、婚約者も浮気していた」「お互いに浮気していたから無罪」みたいな展開になるのも、ちょっと都合が良過ぎるかと。    アン・ヘッシュ演じるヒロインが「乳首の形が透けて見える恰好」だったり「胸の谷間が丸見えな恰好」だったりと、あまりにも扇情的なファッションな点も、観ていて気恥ずかしいものがありましたね。  好みの女優さんだし、サービスシーンがある事自体は喜ばしいのですが、あからさま過ぎて面食らうという形。  (どうせ胸をアピールするなら、もうちょっと控えめな形にしてくれた方が嬉しいなぁ……)なんて、つい思っちゃいました。   水場も簡単に見つかるし、壊れた飛行機も簡単に直せちゃうしで、漂流難易度が低過ぎるのも気になるし「タヒチに運ぶ貨物」がサバイバル生活にて役立つかなと思ったら、そうでもなかった辺りも残念。  特に後者に関しては「キャスト・アウェイ」(2000年)において「一見すると役に立たないような貨物を、何とか利用して生き延びてみせる」様が見事であった為に、どうしても比べたくなっちゃいます。  調味料以外にも明確に「貨物が無人島生活に役立った」と思える描写があれば「この映画はキャスト・アウェイの元ネタになっているのでは?」なんて推論も書けたでしょうし、実に惜しい。   最後はお約束通り「文明社会に帰って来た二人が、無事に結ばれる」ハッピーエンドだし、エンディング曲も好みだったしで、ある程度の満足感は得られるんですが「本当にそれで良いのか?」ってツッコみたくなる部分が多過ぎるんですよね。  良かった部分と、悪かった部分とで、差し引きゼロみたいな形になるんだから、つくづく勿体無い。   「恋愛の69%はレストランで終わる」「砂糖にくるんだ嘘」など、印象深い台詞もありましたし、好きか嫌いかと問われたら好きな映画になるんだけど、高得点を付けるのは憚れる……  もどかしい一品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2018-05-11 14:15:17)(良:2票)
234.  クリスティーン 《ネタバレ》 
 「意思を持った車と人間との交流を描いた映画」といえば、ハートウォーミングな内容が多いものですが、本作はホラー物。   しかも車が女性であるという点が、今観ても画期的ですね。  「冴えない駄目男だった主人公が、悪女と出会う事によって逞しく生まれ変わるも、結局は悲劇的な結末を迎えてしまう映画」として捉えても、充分に楽しめる内容になっています。   主演のキース・ゴードンも、これまた良い味を出しており、冒頭の「水溜りをパシャパシャ踏みつけながら母親から弁当を受け取る姿」だけでも(なんか……頼りない感じだなぁ)と思わせてくれるんだから凄い。  クリスティーンと出会った後の「カッコいい不良」的な風貌も見事に決まっており、周りから「アイツは変わっちまった」という扱いを受けてしまう事について、確かな説得力を生み出していたと思います。   ただ、そんな彼の存在感が、この映画の欠点にも繋がっていて……  観客としては、彼が演じるアーニーこそが主人公と信じて疑わなかったのに「主人公の親友で、良い奴」枠かと思われたデニスの方こそが真の主人公だったと明かされるという、ちょっと歪な構成になっているんですよね。  確かに画面に登場するのはデニスの方が先だし、ヒロインであるリーに最初にアプローチをかけたのもデニスなのは分かるんですが、やはり観客としては出番が多く、家族の描写なども多いアーニーの方に感情移入してしまいます。  だからアーニーの死後、デニス達とクリスティーンの戦いをクライマックスに持ってこられても、ちょっとノリ切れないし、最後も「アーニーを助けられなかった……」という彼らの後悔の念と共に終わる為、後味も悪い。  せめて、もっとデニスの比重を増やすなり何なりして「ダブル主人公制の映画である」と、序盤から感じさせて欲しかったところです。   その他、気になる点としては「メーターがカウントダウンのように下がっている描写の意味が分からなかった(クリスティーンの寿命を示してる?)」とか「冒頭では優しい母親にしか思えなかったのに、実は支配的な性格の母親で息子のアーニーは長年迷惑していたという展開になるのに違和感がある」とか、その辺りが挙げられるでしょうか。   とはいえ、長所も数多く備えている映画であり、視覚的、聴覚的な意味でも、様々な楽しさを与えてくれましたね。  車体の色が、さながら女性の口紅のようなクリスティーンの姿を見ているだけでも惚れ惚れさせられるし、BGMには(やっぱりカーペンターの音楽は良いなぁ……)と実感させられるしで、それだけでも満足度は高め。  親に買ってもらった車ではなく「自分でアルバイトして貯めた金で買った車」という設定なのも絶妙でしたね。  アーニーがクリスティーンに愛着やら独占欲やらを抱く気持ちも、良く分かるというものです。   建物に挟まれた、車の幅とピッタリサイズの道をクリスティーンに追い掛けられている場面なんかは「どうやっても逃げられない」感が伝わってきたし、炎を纏って追いかけてくるクリスティーンの姿なんかも、迫力があって好き。  単なる「悪女」「恐ろしい車」で片付けずに「ロックが好き」「人間の彼女にヤキモチを妬いてしまう」など、クリスティーンを(可愛いやつだな)と感じさせる部分がある事も、大いに評価したいです。   最後は、お約束の「まだ怪物は死んでいない」シーンで終わるんですが、そんな風にクリスティーンの魅力も描いているからこそ、完全なバッドエンドとは思えない形になっている訳ですからね。  彼女の視点で考えれば、愛するアーニーを奪われた復讐をまだ諦めていないという、歪んだ「希望」を感じさせる結末にもなっていると思います。   観賞後は「人でも車でも、やっぱり女ってのは怖いもんだなぁ……」なんて、笑って呟きたくなるような、面白い映画でした。
[地上波(吹替)] 6点(2018-05-02 07:17:31)(良:2票)
235.  ハービー/機械じかけのキューピッド 《ネタバレ》 
 これ、シリーズ物の中の一本だったんですね。   すると「ハービーは何故、意思を持って動く事が出来るのか」という謎に対する答え合わせが行われなかったのは、過去作にて既に描かれた後だったからなのかな?  まぁ、その辺りに関しては同じ「意思を持った車」を題材にした「クリスティーン」(1983年)でも明確な説明は為されていなかったし、自分としてはそれほど気にならなかったです。   作中でもドラマ「ナイトライダー」(1982年)をネタにしていたし、過去作品から色んな魅力を受け継いでいる一方で、本作もまた後続の作品に影響を与えているのが窺える辺りも、面白かったですね。  「チャーリーはスーパーカー」(2006年)という、本作に優るとも劣らぬ面白さの品がドイツで作られていますし、もっと部分的な話をすれば、主人公がハービーと出会う流れは「トランスフォーマー」(2007年)に影響を与えている可能性もありそう。  それだけの魅力を秘めた、中々影響力のある一品だったんじゃないかな、と思います。   とにかくハービーの動きやら表情やらが可愛くて、それを眺めているだけでも楽しいんですよね。  ジャスティン・ロング演じるケヴィンが、ヒロインの着替えを覗こうとするも、ハービーに邪魔されてしまう場面なんかは、特にお気に入り。  ドライブインシアターにて、ホラー映画を観て怖がる姿も、実にキュートでした。   ただ、肝心のレース物としては盛り上がりに欠けるように思え、そこは残念。  そもそも「序盤で一度勝っている相手に、もう一度勝つ」という形なので、カタルシスが得られにくいんですよね。  最後の「フェンスを走る」荒業に関しても、序盤のトンネルの場面にて微かに伏線があったので「それは反則だ」という気持ちが薄れる代わりに、意外性すらも無くなってしまった気がします。  カーアクションとしては、モンスタートラックからヒロインを間一髪で救ってみせる場面が一番面白かったし、本作のクライマックスはそこの「ハービーとヒロインが仲直りする場面」であって、レースで勝つのはあくまでもオマケに過ぎない……とも考えられますが、それならそれで、もっとハービーとヒロインの絆を濃密に描いて欲しかったところ。   黄色い彼女(?)と結ばれるハッピーエンドは心地良かったし、音楽のチョイスや使い方も好みであっただけに、レース部分に魅力を感じなかった事が、非常に残念ですね。  今でも充分「好きな映画」と言える品なのですが、そこをもうちょっと何とかしてもらえたら「好きな映画だし、傑作だ」と、胸を張って言えた気がします。
[DVD(吹替)] 6点(2018-04-25 05:37:03)
236.  ミステリー・ツアー 《ネタバレ》 
 「こいつが犯人か?」→「違いました」という肩透かしな展開が多過ぎて、途中から犯人探しに対する興味が失せてしまうのが難点ですね。  終盤にて、得意気に「警官が犯人とは思わなかっただろう?」と言われても「こんなキャラ、いたっけ」と思っちゃうくらいだったし、ミステリーとして楽しめたとは言い難いです。   そんな本作は「犯人探し」「見立て殺人」といった謎解き要素だけでなく「閉ざされた島にて殺人鬼と対決する」というスラッシャー映画的な側面も備え持っており、こちらに関しては結構面白かったんじゃないかと思います。  それまでの如何にもな被り物を捨てて、普通の人間の姿になって犯人が襲い掛かってくる展開なんかは、ちょっと新鮮でしたね。  性的な快楽を与えるツボを押して、犯人が悶えている隙に「あと数分は感じてる」「早く逃げろ」という緊迫したやり取りを主人公達が交わす場面なんかも、あまりにも下らなくて、シュールで、面白い。  ボートと縄を使って犯人の胴を引き千切るという倒し方も、中々豪快で良かったんじゃないかと。   序盤の「バカンス」「パーティー」部分が、ちゃんと楽しそうに描かれているのも嬉しかったですね。  迷路でパックマンのBGMを流し、皆でゲームを再現して遊ぶ場面なんかもお気に入り。  ・実質的な主人公であるツボ押しの達人が、万能の存在過ぎて魅力に欠ける。 ・監督本人が情けない殺され役で出演しているのは、自虐的過ぎて興醒め。 ・「意外」な犯人ではなく「地味」な犯人を出して得意気にされても困る。   等々、不満を論ったらキリが無いんですが、演出や音楽などは結構ちゃんとしているし、観ていて不愉快になる、って程では無かったです。  ツッコミを入れながら楽しく観賞するのをオススメしたくなる、憎めない映画でした。
[DVD(吹替)] 5点(2018-04-18 23:01:52)
237.  アイス・クエイク<TVM> 《ネタバレ》 
 ポール・ジラー監督作の中では、本作が一番好きです。  脚本にツッコミどころが多いとか、低予算な作りなのを全く隠しきれていないとか、欠点と呼べそうな部分は色々あるけど、長所も同じくらい備わっていると思います。   主人公一家のキャラ造形も非常に自分好みであり、それだけでも大分ハードルが下がっちゃいましたね。  父親と母親は、演者さんのルックスも中身も典型的な「主人公」と「ヒロイン」って感じで、安心して観ていられたし、子供達二人も可愛らしい。  この子達が「まだ幼く、無邪気にパパに懐いている息子」と「思春期を迎え、少し反抗的なお年頃の娘」っていう王道な組み合わせの時点で、もう自分としては白旗を上げちゃうというか、全面的に主人公のパパさんに感情移入しちゃうんですよね。  飼い犬も含め、一家から死者が出る事無くハッピーエンドを迎える辺りも「そうこなくっちゃ!」という感じ。  クリスマス用のツリーという小道具を活用して「無事に助かった」という安堵感だけでなく「当初の目的であるツリーもゲット出来た」という達成感を与えて終わる辺りも、中々上手かったんじゃないかと。   ビジュアル的にも「超低温ガスが地割れから噴き出し、それを浴びた男が凍死してしまう」なんていうシュールな映像があったりして、忘れ難い味がありましたね。  こういったTVMならではの「潤沢な予算のある映画では拝めないような、独特の映像」が見つかるのは、立派な長所だと思います。   プラスティックの瓶に雪を詰めてから、それを懐に仕舞いこみ、体温で溶かして水を作る場面なんかも印象深い。  主人公は冷たいのを我慢して水を作り、それを子供達に飲ませる訳ですが、そんな「自己犠牲」を「子供達の為なら当然の行いだ」とばかりに、サラッと描いちゃうのが良いんですよね。  そんな優しいパパさんだからこそ、ハッピーエンドを迎えても嫌味じゃないし、むしろ祝福したくなる訳なのだから「主人公の優しさ、良い奴っぷり」を示す場面として、非常に価値があったと思います。   欠点も多い為、手放しで絶賛する事は出来ませんが……自分としては「好きな映画」と言える一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2018-04-18 02:34:24)(良:1票)
238.  キューティ・バニー 《ネタバレ》 
 「元々は地味なタイプの子だった」「児童養護施設の出身である」という主人公の過去が、物語の進行をスムーズにしている点が上手いですね。  それによって、華やかなグラビアモデルだった彼女が、地味な「ゼータ」の子達に肩入れするのも、介護の仕事をしているオリバーに惹かれていくのも、自然に感じられるという形。   主人公の影響を受け「ゼータ」の子達が美しく着飾ってみせた場面では(……いや、元の方が可愛いじゃん)とノリ切れずにいたのですが、それがキッチリ伏線になっていた辺りにも感心。  周りにチヤホヤされる事によって増長し、彼女達も「見た目で他人を判断するような、嫌な女」になってしまうという、非常に皮肉の効いた展開になっているんですよね。  そこから改心し「元のままの、ありのままの自分の方が良い」と気が付いていく流れはとても心地良くて、ここが本作の白眉であったように思えます。  着地の仕方に関しても「綺麗になる事なんて意味は無い」とまで極端な結論には至らず「着飾るのは、それなりで良い。自分を見失わないまま綺麗になるのが大事」という辺りに留めているのが、これまた絶妙なバランス。  「変わる前の自分」と「変わった後の自分」の、良いとこ取りをしちゃおうという感じで、彼女達が下した答えに、自然と賛同する事が出来ました。   とはいえ「招待状を盗まれた」という件に関しては(今からでも事情を説明して呼び込めば良いのに、何で悔しがって見てるだけなの?)とツッコんじゃうし、ゼータ存続を決定付ける「三十人目」の存在については、もっと伏線が欲しいと思っちゃうしで、脚本の粗も色々と見つかってしまうのは、非常に残念。  特に後者の「三十人目」については致命的で、映画のオチに相当する部分にしては、インパクトが弱かった気がしますね。  これなら、観客に先読みされるのを覚悟の上で彼女の出番を増やし「本当はゼータに入りたいのに、周りの目を気にしてミューに所属している」などの描写を挟んでおいた方が良かったんじゃないかと。   後は……マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」を上手に歌えず、皆に馬鹿にされる場面が中盤にある訳だから、エンディング曲も「ライク・ア・ヴァージン」にして、今度は上手に歌ってみせるという展開にしても良かったかも知れませんね。   全体的には好きな作風ですし、楽しめたのですが「ここ、もっとこうしても良いんじゃない?」と口を挟みたくなる部分が、一杯ある。  魅力的だけど隙も多い、もっともっと綺麗になる可能性を秘めた女の子のような、そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2018-04-13 18:12:12)(良:2票)
239.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》 
 ストーリー展開が「怪獣ゴルゴ」そのままな訳ですが、それを差し引いても「ガッパという怪獣だからこその魅力」をあまり感じられない内容だったのが寂しいですね。  熱線を吐いて戦車を爆発させる描写、翼から生じる風圧で瓦が剥がれていく描写なども、ゴジラとラドンの良いとこ取りを狙ったんでしょうけど、それが結果的に個性を削ぐ形になっていたと思います。   そんな中、忘れられないインパクトを与えてくれるのは主題歌の存在。  最初に聴いた時こそ(なんじゃこりゃ)とズッコけたけど、二度、三度と聴く内に(あれ……案外良い曲かも)と思えてくるんだから、全くもって不思議。  牧歌的で、如何にも昭和特撮ソングってノリなのが、映画の内容とも良く合っていた気がします。   現代の観点からすると特撮がチャチだとか、島の原住民がどう見ても肌を黒塗りしているだけの日本人だとか、欠点と呼べそうな部分は多々あるんですが、まぁ御愛嬌。  河童というより鳥みたいな外見だなぁと思ったら、本当に劇中で「鳥に近い生態を持っている」という研究結果が出るのは面白かったし、人間側に「仕事にかまけ、娘に素っ気ない父親」を配置し、家族の事だけを考えて行動する怪獣側と対比させているのも良かったです。  「女性は仕事を頑張るよりも、家庭に帰ろう」というメッセージが提示されているのも、当時の世相が窺えて興味深い。   ただ、ガッパが蛸を咥えているシーンに関しては、特典の解説によると「我が子に食べさせようと蛸を持参する親の優しさ」を表しているそうなのですが、ここはもう少し分かり易く、映画単体を観ただけでも伝わってくるように描いて欲しかったですね。  解説されないと(なんで蛸?)と戸惑っちゃうし、解説を踏まえた上で観れば良いシーンだと思えるだけに、実に勿体無い。   後は……クライマックスにて、親が子に飛び方を教える流れも感動的で良かったんですけど、空港のセットが簡素過ぎて、せっかくの感動が冷めちゃう辺りも「勿体無い」「惜しい」って思える部分。  城や都市部のセットは結構頑張っていたのに、よりにもよって最後の最後で一番力の入っていない空港のセットが舞台となっている訳で、なんかチグハグなんですよね。  背景の書き割り感も凄いし、地面には滑走路に見えるようマットを敷いているだけって丸分かりだしで、せっかくの感動的な音楽や、ガッパの涙が台無しになっている形。  これって「中盤のセットは稚拙だが、クライマックスでは流石に気合いが入っている」という形なら、大分印象が違っていたでしょうし、本当に(もっと上手くやればいいのに……)って、じれったくなっちゃいます。   本来は畑違いの日活が、当時のブームに乗って怪獣映画に手を出してみた一本、という事で、やはりその辺りの「手探り感」「ノウハウの無さ」は、如何ともしがたいものがあったのでしょうね。  そういった背景の諸々も含め、色々考えながら観る分には楽しめたけど、純粋に娯楽作品として考えると、ちょっと厳しいかも。   ともあれ、怪獣映画好きであるならば、押さえておいた方が良い一本だと思います。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-09 12:42:26)(良:1票)
240.  アフリカン・ダンク 《ネタバレ》 
 「才能」を発掘する喜びを味わえる映画ですね。   冒頭、生意気な新人選手と対決する件では主人公を応援したくなるし、舞台をアフリカに移してからの敵となる「町の顔役」も憎たらしいので、勝利の瞬間には大いにカタルシスを得られるという形。  「ディフェンスは息するより大事」などの台詞も印象深く「身体能力は高いが、粗削りなメンバーを磨き上げる」楽しさが、しっかり描かれていたと思います。   第二の主人公と言えるサーレが一度わざと下手な振りをして、落胆させた後に本気のプレイを披露し「やっぱり駄目かと思ったのに、本当に凄かった!」と歓喜させてくれる流れも上手いですね。  観ている側としても(アフリカの奥地に物凄い才能を持ったバスケットプレイヤーがいるだなんて、そんなに上手い話があるのか?)という疑いの念を抱いてしまうのは避けられない訳で、それを逆手に取っている。  「嘘みたいなストーリー」だからこそ出来る、気持ち良い展開でありました。   実はサーレーの兄もバスケが上手いという点に関しては、もうちょっと伏線が欲しかった所ですが……気難しい父と和解し「ウィナビに戻す」と宣告される場面が凄く良かったので、あんまり気にならなかったですね。  アメリカ人の主人公と、現地の部族が交流し「水道を作ろう」「それじゃあ、皆で一緒に水を運ぶ事が出来なくなる」という会話を交わす件も、現代人の価値観に違う方向から光を当てる効果があり、良かったと思います。   部族の仲間入りを果たす為、チャンピオンリングを空に捧げる場面も、雄大な自然を感じられて心地良いし「振り回し」のテクニックが、主人公からサーレーに受け継がれた事を証明して、試合に勝利する流れも素敵。  展開が王道、お約束に沿っている為、意外性や斬新さには乏しいかも知れませんが、その分だけ安心して楽しめる一品でありました。
[DVD(吹替)] 8点(2018-04-04 05:18:53)(良:1票)
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