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予算も時間も無いので、余計な肉付けを削ぎ落し「ハードボイルド」のエッセンスそのものを映画にしました、みたいな感じの作品、たまらなくシビレちゃいます。殺し屋の男と人質の女。立場的には銃を女に突き付ける男の方が上のはず、しかも男は爬虫類のごとき冷酷な表情を顔に浮かべ、実に不気味な存在な訳ですが、しかし一方で、人質の女は、時に勝ち誇ったような、時にひたむきな表情を浮かべ、その女の前では、殺し屋の男なんてのは所詮「消耗品」に過ぎない訳ですね。殺し屋には「消耗品」としての意地があり、女には(人質の身でありながら)本質的な「勝者」としての意地がある。そして許婚である女の行方を追いながら事件の背景も追求し、一粒で二度おいしい立場である新聞記者の男の意地。彼らの意地は、カオス状態の神戸の街を走りぬけ互いに交差し合う“直線”であるかのように幾何学的に描かれて。なにせ、面白いように偶然に次ぐ偶然で事態は繋がり合い吸い寄せられ合い、その一方でこれまた面白いようにニアミスですれ違ってしまったりもするのです。靴屋のオヤジや、ヘンテコだけど気の毒なガイジン売春婦など、脇役のキャラも充実してます。ゴチャゴチャした舞台立ての中から、整然とした方程式が浮かび上がってくるような展開、まさにこれぞハードボイルドの真骨頂と言えるのではないでしょうか。
【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-12-11 18:11:37)(良:1票)
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