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《ネタバレ》 こんな歴史的名作を、私ごときが今さらもっともらしくアレコレ誉めても、大変に嘘クサイし、第一、それは多分私の役目じゃない(ははは)。でもやっぱり、こりゃスゴイ映画だと思うので書いちゃう。やっぱり各シーンが生きてます。1ショットに、空間的時間的動きが収められる手腕、全く時代を感じさせません(ってか、その後ウン十年の映画の「進歩」って、何なんでしょね?)。しかしこれ見よがしの「映像美」大安売りには決して陥らず、おかげで最後はまさに「とっておきのラストシーン」が光っています。そういや後半の、エルザがランプ片手に歩くシーン、横からスポットライトを照射して撮影してるので、後ろの壁面への影の出来方が明らかにヘンなんですけどね。でもこれも一つの映画的効果、やはり「暗闇の中で灯を持つエルザ」というモチーフのための必然性すら感じてしまう(気のせいだろうけどな)。 ま、それはさておき、ストーリー的には、作品世界自体が「大いなる幻影」である---ってオイ↓【しったか偽善者】様のレビューをパクるなっての。いや私も全く同感、いざ書こうとしたら、ずでにお書きになってた! 現実にはありえないでしょ、と思える程に人間関係が和やかで、肯定的な描き方。が、これはイコール現状肯定、という訳ではなく、「でもコッチの方がよくないかい?」みたいな感じで、そっと平和と人間讃歌を謳い上げています。だからこそ「幻影」が効果的なのでしょう。、一見、幾つかのエピソードに分かれたストーリー、しかし主題は確かに掘り進められていく。演芸会の途中で、ドゥオーモン奪還の一方が入り、舞台は中断されてラ・マルセイエーズの合唱となる。私は正直、舞台の続きが見たかった。そんな愛国心丸出しの国歌で楽しい舞台が中断されたのが残念だったのだ。フランス人が私と同じ感想を持つとは思えんけど。ま、どっちみち、前半で描かれた大脱走計画は頓挫、盛り上がったエネルギーは不発に終わる。そして、所長とボアルディエとの国境を超えた友情・敬意、それは最終的に、脱出する二人とそれを匿うエルザとの関係に託され、花開く。彼らとて、帰国しても待ってるのは軍隊生活、しかし今や新しい希望出来たのだ。雪の山岳地帯に消えていく彼らと、それを「すでに国境を超えたから」と見逃すドイツ兵。二人は自分達が「見逃されている」事に気づいたかどうか・・・。溜息の出るラストシーンであります。
【鱗歌】さん 9点(2004-02-14 23:00:59)(良:2票)
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