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乱歩自身、“吐き気を催すほど”と言ったという『盲獣』、その盲獣のオハナシかと思いきや、何と、モンスターペアレンツのオハナシでしたとさ。そんでもって、怖いおっかさんと、怖い憧れの女性との間に板ばさみになった、ダメ男のオハナシでしたとさ。変態映画のように見せつつ、この辺り(映画の前半)は、妙に現実的で身につまされる部分もあります。目の見えない変態男が、女性を誘拐してきて、ヘンテコなオブジェで満たされた倉庫に監禁、彼女をモデルに「触覚の芸術」を作り上げようとする、という変態的なストーリーの中において、彼をサポートするおっかさんの、旧時代的かつ健康的な姿がかえってアブノーマル。変態の中においては、正常こそが変態とも言えますナア。ところで、船越演じる変態男、粘土コネコネしながら、「いままでにない彫刻ができそうなんだ~」とか、しきりに彫刻、彫刻、って言ってますけど、アナタが作っているソレは、「彫刻」じゃなくって「塑像」ではないでしょうか。ま、それはさておき、映画後半は、変態というより退廃路線を暴走していっちゃいますが、だんだんおかしくなっていく主人公の女性の姿に対し、妙に淡々とした彼女の独白が重なり、「アンタ、冷静なのか忘我状態なのか、どっちなんだよ。そもそもこのナレーションって必要なの?」と思っちゃうのだけど、しかし一方で、この異常な映像と淡々としたナレーションのミスマッチが、不気味さを醸し出しているのも事実。この淡々としたナレーション、お昼のワイドショーの「あなたの知らない世界」の再現VTRを思い出させます。ああコワ。
【鱗歌】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-03-24 22:17:03)
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