トウキョウソナタ の すぺるま さんのクチコミ・感想

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トウキョウソナタ の すぺるま さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 トウキョウソナタ
製作国,オランダ,
上映時間119分
劇場公開日 2008-09-27
ジャンルドラマ
レビュー情報
《ネタバレ》 映画で人が走っている瞬間は素晴らしい。
この映画の主人公三人は、もう一度やり直したい、どうすればこの柵から抜け出せるかということをきっかけに、唐突に走り出す。
オープンカーの屋根を開けることで女の決意となった瞬間の美しさや、妻に見つかったことでの後ろめたさで狼狽する醜さや、大人に対する嫌悪感や子供であることの無力感、それらが一気に膨れ上がり映画そのものも走り出す。

そして彼らは「どこか」に向かう。家族という社会での最小単位のコミニュティから、救いがあるかもしれない「どこか」に辿り着くために外へ出る。しかし小泉今日子演じる佐々木恵が目にしたものは、海であり、海の向こうには陸だか船だかそれがあるのかもわからないくらいにまだ海が広がり続ける。
結局、三者とも、どこかに辿り着けそうで、どこにも辿り着けないのだ。
実際に存在したかもわからない橙色の光を見つめ涙したり、一度は死んでみたり、子供ながらに大人と同じ扱いを受けてみたり、果たしてそれが何か救いになるのか。
そして彼らは結局もとの位置に戻るしかないのだ。

恵は、自身を傷つけようとしている役所広司演じる泥棒に、最後に信じられるのは自分自身でしかないと言う。
井川遥が演じるピアノの金子先生は離婚するのだが、もともと他人だったのがまた他人同士に戻ったと言う。
所詮、個人は個人、他人は他人に過ぎない。自分ですらもうひとりの他人である。しかし一番信じられるのは自分でしかない。
この三人は静かに自分を信じ始めたからこそ家に帰り、お母さん役が作った朝食を食べたのだ。

確かに個人は個人で、自分の悩みなど自分で解決するしかないのだし、家族と言っても所詮は他人同士のコミュニティだ、でも違うんだよ、そうなんだけど違うじゃん、それだけであって欲しくないじゃんという、前向きな希望があの象徴的なラストシーンにはある。
それこそが救いだろう。許しや救いというのは愛の中にしかない。あの愛情に溢れた(ように見える)家族は陽の当たる中を、カーテンがたゆたうほどのそよ風に乗りながら、そうだけどもそうだけであって欲しくないじゃんというアカルイミライへ歩んでいくのかもしれないし、あるいはそうじゃないのかもしれない。

しかしながら、すべてはあの海だ。あの横一直線に光る白波と小泉今日子、そして朝日を目一杯浴びる。まるで生き返っていくようだ。
すぺるまさん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-31 23:59:22)(良:3票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2019-09-07ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド9レビュー6.88点
2017-06-02LOGAN ローガン9レビュー7.01点
2016-09-26ハドソン川の奇跡7レビュー7.34点
2015-06-06サンドラの週末9レビュー6.50点
2015-05-11ブラックハット9レビュー5.75点
2015-01-07脱出(1944)10レビュー7.60点
2014-07-18忘れじの面影(1948)8レビュー6.37点
2014-05-04とらわれて夏9レビュー7.08点
2014-01-04襤褸と宝石8レビュー8.00点
2013-12-14ゼロ・グラビティ9レビュー7.64点
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