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《ネタバレ》 黒澤の『生きる』を洗練した感じではある。『生きる』のモチーフはちゃんと引き継がれている。違いがあるとすれば、主役のビル・ナイに志村喬のような切羽詰まった感じがなかったこと、途中で元部下の女性に決定的に気味悪がられたりもしない。
黒澤版『生きる』後半のあのグタグタした葬儀の後の喧々諤々は、列車内の率直なやり取りに変わっている。実は、私が『生きる』で一番感銘したのは葬儀の後のグダグダの喧々諤々なのである。それが黒澤らしさでもあった。 イシグロらしさは何だったのかなと、『浮世の画家』『日の名残り』『夜想曲集』を思い浮かべる。特別な境遇にある人間が彼らの理路によって普遍を語りながら、全く普遍的な共有感が見いだせないような、それでいて、共有の欠落感に共有感を感じてしまうような不思議な感覚。そんな捻くれた感じは完全に抑えられていたように思う。 黒澤らしいある種の分かり易い社会的グダグダ感をより捻れたニンゲン的グダグダへと昇華できればもっと面白かったかなと。でも、率直に素直に感動はした。 【onomichi】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-04-30 22:24:15)
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